次の7つの習慣にのっとって生きていけば、だれでもうつのつらさの大半は避けられると確信しています。
もちろん、ある程度の気分の上下はあるでしょうが、そしてだれでも同じようなグリーフ反応(喪失による深い悲しみに対する反応) はあるでしょうが、それでも(遺伝的な障害がないかぎりは) うつの症状は軽くなるでしょう。「7つの習慣」に入る前に、ひとつ大切なことをつけ加えなければなりません。精神科医として私たちは、患者が「できない」という言葉を使うと悲しい気持ちでいっぱいになります。
たとえば、「夫と仲良くできません」、「夫とは話ができないのです」、「子どもを思うようにしつけられない」、「なかなか愛人と別れられない」、「仕事が見つけられない」、「むちゃ食いがやめられない」、「やってみたけど妻を愛せない」等々。いい精神科医ならだれでも、「できない」、「やってみたけど」の多くは言い訳であることを知っています。
私たちは、自分に正直になって、状況の真実を表す言葉を使ってほしいと主張します。それで、患者に「できない」のかわりに「しない」を使ってもらいます。
「夫とは仲良くしません」、「夫とは話をしません」、「子どもを思うようにはしつけません」、「愛人とは別れません」、「仕事は見つけません」、「むゃ食いはやめません」、「妻のことは愛していません。少しは愛そうとしたのですが、うまくいかない」。
「できない」をすべて「しない」にかえれば、現実を避けることをやめ、自分をあざむくことをやめて、真実に生きられるようになります。つねに転んでしまう人は、自分で自分を挫折させているのです。自分を自分最大の敵に回しているのです。うつになっている人は、自らうつを選んでいるのです。
人によっては、普通なら8~9ヶ月のところを数年かかる人もいますが、最終的には全員がうつの症状を乗り切ります。しかし何かを信じて受け入れようとしない人は、うつから抜け出る力を持っていません。
1年後には、またもとに戻ってしまいます。しかし「7つの習慣」に従う人は、うつを克服したあとにうつが戻ることはまずありません。ではここで、幸福な、生きがいのある、有意義な人生のための7つの習慣を、ひとつずつ見ていきましょう。
1.毎日、人生に感謝し、生きる決心をする。
朝起きて、また1日、人生を楽しめる日を与えられたことを感謝します。すべての人が日々あやまちを犯すように、今日もあやまちを犯すかもしれませんが、自分自身をよりいっそう愛すること、自己批判的にならないことを決心します。
2.毎日、黙想する時間を持ち、生活に取り入れる。
私たちの脳は、意志のあるコンピューターのようなものです。私たちは自己中心的な性質を持って生まれているので、時々間違ったこと(うつや自己被壊につながるようなこと) をしてしまいがちです。
そればかりか自らのあやまちを否認しさえします。もし私たちが幸福を選ぶなら、私たちの「コンピューター」である脳を、自分のおかしな思考ではなく、健康な状態にプログラムすることを選ばなくてはなりません。黙想することによってのみ、それができるようになります。
ある脳神経外科医が、電極を使って脳の実験をしたことがあります。彼は、脳のあちこちの部位を電極でふれると、被験者が過去の出来事を思い出すことを発見しました。さらに、出来事だけでなく、その出来事に付随しておこつた感情もまた思い出せるのです。
ときには特定の出来事は思い出せなくても、ある感情だけを思い出すこともあります。この実験結果から、脳はコンピューターのような役割をはたすこと、ときに記憶を、ときに感情を、ときには記憶と感情の両方を記録することが推論できます。
またいったん記録されたことは、いつでも再生することができ、そのときの行為の多くに影響を与えうることもまた推論できます。
つまり、過去からの悪いプログラミングは現在の行為に影響を与えるのです。さらに私たちは日々自分にひとりごとを言い聞かせていますが、それをどう感じるかにも影響を与えます。人の関心を得るための手段として、また人を操作する手段としてうつを使うことも促します。
1日中、否定的な思考パターンを抱かせることもします。四六時中、くよくよ心配ばかりさせたりもします。うつをいっそう深めるようなつらい思考を抱かせ、自己疑惑と批判でいっぱいにさせたりします。他者との関係を疑い、また人から受け入れられているかどうか疑問に思わせたりもします。何年も前にプログラムされたことを、直接コントロールすることはほとんどできませんが、コンピューターをプログラムし直すことはできます。心を入れ変えるプロセスはゆっくりとしたもので、1回きりの現象ではありません。一生涯続くものです。心に相当悪くプログラミングされた場合は、正しい方向にプログラムし直すためには何年もかかるかもしれません。
しかしそれは可能なのです。もうひとつの再プログラミングする方法は(少なくとも悪いプログラムを再強化しないようにするには)、自分が何を考えているかをチェックしてみることです。批判的、否定的思考はうつの気分を強化します。その考え方を変えることで、気分をよくすることができます。ポジティブ思考には実にパワーがあるのです。
3.怒りを翌日にもち越さない
憤ったままで日が暮れないようにつとめましょう。それができれば、怒りはまったく蓄積されません。
4.伴侶、子どもたち、親、兄弟姉妹、親しい友人たちと、時間をともにすごすことを毎日心がける
家族との衝突を解決するためには、できるかぎりのことをしなくてはなりません。家族のメいやンバーにけっして恨みを抱かないことです。そのためにはできるかぎり、自分の傷を癒すことです。
家族との親しさは、自己肯定感、そして心の健康にとってとても大切です。ときとして家族の衝突は未解決のまま、何年も続きます。家族という言葉はこの場合、身近な親戚というよりももっと広義で理解してください。今日の社会のいい例は、アラブとイスラエル間の絶え間ない「家族戦争」です。兄弟のライバル意識はもう数千年も続いています。これが数千年前に解決されていたならば、実際そうであるべきなのですが、アラブとイスラエルは今日、苦々しい敵ではなく親密な友だったことでしょう。
精神科は、多くの医師が多忙ですが、子どもがまだ小さかったころ、毎晩週日は平均2時間、週末の土日は4時間、いっしょにすごすように努力します。
「子どもとすごす時間数でなく、時間の質が大切だ」などとよく言われますが、これはナンセンスです! 時間は質と同じくらい大切です。
また、毎日、深く、親密に妻たちとも意思疎通をはかるための時間をとります。また毎週、最低1~2回は妻たちをデートに連れ出しています。また親、兄弟姉妹、親友たちと親密な友情を深めるためにすべきことを、常に考えています。みんなは認めようとしませんが、私たちの自己肯定感は、親からの愛情と私たちがいかに受け入れられたかに基づいているのです。家族の衝突を解決するためのイニシアチブをとらなくてはなりません。
親戚が私たちの感情を害したことを「反省」するまで、疎遠にしてはいけません。もっとも大切なことは、家族の衝突の解決に100% 責任を持って、仲直りをするためのクリエイティブな方法が見つかるよう努力することです。
それがうまくいかなければ、別の方法を試してみなくてはなりません。もちろん親戚が虐待をする人なら、彼らとのつき合いを絶つことで自分を守ることが必要になるかもしれませんが。
5.毎週、友人1~2人と時間をともにすごす
既婚者ならほかの既婚者たちと楽しめばよいでしょう。こうすれば、夫婦ともに、他者との親密さから多くのものを得ることができます。
「知恵ある者とともに歩む者は知恵を得る。おろかな者の友となる者は害を受ける」という言葉があります。友人は注意深く選ぶことです。自分が意図する、しないにかかわらず、あなたはますますその友人のようになっていくからです。
心の重荷を友と分かち合いましょう。だれも1人では生きられません。1人で幸福にはなれません。孤独はつらいものです。親しい友がいなくてはなりません。そして、友人を選ぶ責任は、自分が100% 持たなくてはなりません。
もし友人がほしいなら自分から出かけていって、親しくなることです。友人は自分で得るものです。人間はだれもが拒否されることを恐れます。この恐れが人一倍強い人もいます。しかし、人に好かれることを期待してはいけません。
3~4組の夫婦に親しく接して、そのうち1組からいい反応が返ってくれば、それはラッキーだと考えるべきです。数多くの友人はいりません。親しい人が2~3人いればいいのです。もしそのうちの1人が死んだり、引っ越していなくなっても、自分が苦しむ程度はかなり軽減されるでしょう。
まだ二人、頼れる友が残つているのですから。「世には友らしい見せかけの友がある。しかし兄弟よりもたのもしい友もある」という言葉もあります。親密さが必要なのであって、数ではありません。そして、どの友にもけっして恨みを抱かないことです。恨みは簡単にたまっていきます。
それを口に出して怒りを消化しないと、それは無意識レベルに蓄積されるようになるでしょう。「愛を追い求める人は人のあやまちを許す、人のことを言いふらす者は友をはなれさせる」という言葉もあります。
6.自分に満足をもたらす、決まった日課をする(仕事、遊び、家事、その他の活動などを含む)。
日々の日課を選ぶ際、あまり意気ごみすぎないように注意しましょう。参考までに、私たちは以下の優先順位リストにしたがって日々の日課を選びます(もちろん読者は読者自身の優先リストに基づくべきです)。
- 祈りと黙想の時間を作る。
- 自分の心の健康のための時間をとる。自分の心が健康でないことは、家族や他者にとってもあまり有益ではありません。だからこのような時間を作る必要があります。これには、骨休めしてリラックスする時間も含まれます。自分が好きならフットボールなどスポーツの観戦もいいでしょう。伴侶や他の夫婦らとの交流、また運動なども含みます。
- 伴侶とのより親密な関係を築いて継続していくための時間を十分に設ける。これには楽しみを共有する真剣な会話、いい性生活も含まれます。伴侶は子どもよりも優先順位を高くするべきです。
- 子どもをしつける時間を十分にとる。これには、子どもと遊び、彼らの問題に耳を傾け、学校の活動に参加するなどが含まれます。
- その残りの時間の一部を、生活の糧を得るためにすごす。家族の面倒をみることも大切です。たとえ優先順位の1~4 によって、収入が減ることになっても(多くの家庭がそうでしょうが)、そうであるべきです。家族はあなたのお金よりも、あなたのことを数千倍必要としているのです。
- そして、時間が少しでも余ったなら、才能、特技を使って人のために役立つことをする。
7.週1回、だれか1人のために何かいいことをする
この親切な行為は、肉体面で(たとえば家事を手伝うとか)、心で(本をプレゼントしたり、相談にのってあげたり)、あるいは精神面の(ともに献身、祈りを捧げる) ものでもいいでしょう。これらの「7つの習慣」のうち、あなたはすでにどのくらい実行しているかを考えてみましょう。
こうした「7つの習慣」は、熱心に( いい加減な気持ちでなく) 実践する人には数か月のうちに幸福をもたらします。幸福は自分で選びとることができるものなのです。