「うつ」な気分から抜け出す方法

次の7つの習慣にのっとって生きていけば、だれでもうつのつらさの大半は避けられると確信しています。

もちろん、ある程度の気分の上下はあるでしょうが、そしてだれでも同じようなグリーフ反応(喪失による深い悲しみに対する反応) はあるでしょうが、それでも(遺伝的な障害がないかぎりは) うつの症状は軽くなるでしょう。「7つの習慣」に入る前に、ひとつ大切なことをつけ加えなければなりません。精神科医として私たちは、患者が「できない」という言葉を使うと悲しい気持ちでいっぱいになります。

たとえば、「夫と仲良くできません」、「夫とは話ができないのです」、「子どもを思うようにしつけられない」、「なかなか愛人と別れられない」、「仕事が見つけられない」、「むちゃ食いがやめられない」、「やってみたけど妻を愛せない」等々。いい精神科医ならだれでも、「できない」、「やってみたけど」の多くは言い訳であることを知っています。

私たちは、自分に正直になって、状況の真実を表す言葉を使ってほしいと主張します。それで、患者に「できない」のかわりに「しない」を使ってもらいます。

「夫とは仲良くしません」、「夫とは話をしません」、「子どもを思うようにはしつけません」、「愛人とは別れません」、「仕事は見つけません」、「むゃ食いはやめません」、「妻のことは愛していません。少しは愛そうとしたのですが、うまくいかない」。

「できない」をすべて「しない」にかえれば、現実を避けることをやめ、自分をあざむくことをやめて、真実に生きられるようになります。つねに転んでしまう人は、自分で自分を挫折させているのです。自分を自分最大の敵に回しているのです。うつになっている人は、自らうつを選んでいるのです。

人によっては、普通なら8~9ヶ月のところを数年かかる人もいますが、最終的には全員がうつの症状を乗り切ります。しかし何かを信じて受け入れようとしない人は、うつから抜け出る力を持っていません。

1年後には、またもとに戻ってしまいます。しかし「7つの習慣」に従う人は、うつを克服したあとにうつが戻ることはまずありません。ではここで、幸福な、生きがいのある、有意義な人生のための7つの習慣を、ひとつずつ見ていきましょう。

1.毎日、人生に感謝し、生きる決心をする。

朝起きて、また1日、人生を楽しめる日を与えられたことを感謝します。すべての人が日々あやまちを犯すように、今日もあやまちを犯すかもしれませんが、自分自身をよりいっそう愛すること、自己批判的にならないことを決心します。

2.毎日、黙想する時間を持ち、生活に取り入れる。

私たちの脳は、意志のあるコンピューターのようなものです。私たちは自己中心的な性質を持って生まれているので、時々間違ったこと(うつや自己被壊につながるようなこと) をしてしまいがちです。

そればかりか自らのあやまちを否認しさえします。もし私たちが幸福を選ぶなら、私たちの「コンピューター」である脳を、自分のおかしな思考ではなく、健康な状態にプログラムすることを選ばなくてはなりません。黙想することによってのみ、それができるようになります。

ある脳神経外科医が、電極を使って脳の実験をしたことがあります。彼は、脳のあちこちの部位を電極でふれると、被験者が過去の出来事を思い出すことを発見しました。さらに、出来事だけでなく、その出来事に付随しておこつた感情もまた思い出せるのです。

ときには特定の出来事は思い出せなくても、ある感情だけを思い出すこともあります。この実験結果から、脳はコンピューターのような役割をはたすこと、ときに記憶を、ときに感情を、ときには記憶と感情の両方を記録することが推論できます。

またいったん記録されたことは、いつでも再生することができ、そのときの行為の多くに影響を与えうることもまた推論できます。

つまり、過去からの悪いプログラミングは現在の行為に影響を与えるのです。さらに私たちは日々自分にひとりごとを言い聞かせていますが、それをどう感じるかにも影響を与えます。人の関心を得るための手段として、また人を操作する手段としてうつを使うことも促します。

1日中、否定的な思考パターンを抱かせることもします。四六時中、くよくよ心配ばかりさせたりもします。うつをいっそう深めるようなつらい思考を抱かせ、自己疑惑と批判でいっぱいにさせたりします。他者との関係を疑い、また人から受け入れられているかどうか疑問に思わせたりもします。何年も前にプログラムされたことを、直接コントロールすることはほとんどできませんが、コンピューターをプログラムし直すことはできます。心を入れ変えるプロセスはゆっくりとしたもので、1回きりの現象ではありません。一生涯続くものです。心に相当悪くプログラミングされた場合は、正しい方向にプログラムし直すためには何年もかかるかもしれません。

しかしそれは可能なのです。もうひとつの再プログラミングする方法は(少なくとも悪いプログラムを再強化しないようにするには)、自分が何を考えているかをチェックしてみることです。批判的、否定的思考はうつの気分を強化します。その考え方を変えることで、気分をよくすることができます。ポジティブ思考には実にパワーがあるのです。

3.怒りを翌日にもち越さない

憤ったままで日が暮れないようにつとめましょう。それができれば、怒りはまったく蓄積されません。

4.伴侶、子どもたち、親、兄弟姉妹、親しい友人たちと、時間をともにすごすことを毎日心がける

家族との衝突を解決するためには、できるかぎりのことをしなくてはなりません。家族のメいやンバーにけっして恨みを抱かないことです。そのためにはできるかぎり、自分の傷を癒すことです。

家族との親しさは、自己肯定感、そして心の健康にとってとても大切です。ときとして家族の衝突は未解決のまま、何年も続きます。家族という言葉はこの場合、身近な親戚というよりももっと広義で理解してください。今日の社会のいい例は、アラブとイスラエル間の絶え間ない「家族戦争」です。兄弟のライバル意識はもう数千年も続いています。これが数千年前に解決されていたならば、実際そうであるべきなのですが、アラブとイスラエルは今日、苦々しい敵ではなく親密な友だったことでしょう。

精神科は、多くの医師が多忙ですが、子どもがまだ小さかったころ、毎晩週日は平均2時間、週末の土日は4時間、いっしょにすごすように努力します。

「子どもとすごす時間数でなく、時間の質が大切だ」などとよく言われますが、これはナンセンスです! 時間は質と同じくらい大切です。

また、毎日、深く、親密に妻たちとも意思疎通をはかるための時間をとります。また毎週、最低1~2回は妻たちをデートに連れ出しています。また親、兄弟姉妹、親友たちと親密な友情を深めるためにすべきことを、常に考えています。みんなは認めようとしませんが、私たちの自己肯定感は、親からの愛情と私たちがいかに受け入れられたかに基づいているのです。家族の衝突を解決するためのイニシアチブをとらなくてはなりません。

親戚が私たちの感情を害したことを「反省」するまで、疎遠にしてはいけません。もっとも大切なことは、家族の衝突の解決に100% 責任を持って、仲直りをするためのクリエイティブな方法が見つかるよう努力することです。

それがうまくいかなければ、別の方法を試してみなくてはなりません。もちろん親戚が虐待をする人なら、彼らとのつき合いを絶つことで自分を守ることが必要になるかもしれませんが。

5.毎週、友人1~2人と時間をともにすごす

既婚者ならほかの既婚者たちと楽しめばよいでしょう。こうすれば、夫婦ともに、他者との親密さから多くのものを得ることができます。

「知恵ある者とともに歩む者は知恵を得る。おろかな者の友となる者は害を受ける」という言葉があります。友人は注意深く選ぶことです。自分が意図する、しないにかかわらず、あなたはますますその友人のようになっていくからです。

心の重荷を友と分かち合いましょう。だれも1人では生きられません。1人で幸福にはなれません。孤独はつらいものです。親しい友がいなくてはなりません。そして、友人を選ぶ責任は、自分が100% 持たなくてはなりません。

もし友人がほしいなら自分から出かけていって、親しくなることです。友人は自分で得るものです。人間はだれもが拒否されることを恐れます。この恐れが人一倍強い人もいます。しかし、人に好かれることを期待してはいけません。

3~4組の夫婦に親しく接して、そのうち1組からいい反応が返ってくれば、それはラッキーだと考えるべきです。数多くの友人はいりません。親しい人が2~3人いればいいのです。もしそのうちの1人が死んだり、引っ越していなくなっても、自分が苦しむ程度はかなり軽減されるでしょう。

まだ二人、頼れる友が残つているのですから。「世には友らしい見せかけの友がある。しかし兄弟よりもたのもしい友もある」という言葉もあります。親密さが必要なのであって、数ではありません。そして、どの友にもけっして恨みを抱かないことです。恨みは簡単にたまっていきます。

それを口に出して怒りを消化しないと、それは無意識レベルに蓄積されるようになるでしょう。「愛を追い求める人は人のあやまちを許す、人のことを言いふらす者は友をはなれさせる」という言葉もあります。

6.自分に満足をもたらす、決まった日課をする(仕事、遊び、家事、その他の活動などを含む)。

日々の日課を選ぶ際、あまり意気ごみすぎないように注意しましょう。参考までに、私たちは以下の優先順位リストにしたがって日々の日課を選びます(もちろん読者は読者自身の優先リストに基づくべきです)。

  1. 祈りと黙想の時間を作る。
  2. 自分の心の健康のための時間をとる。自分の心が健康でないことは、家族や他者にとってもあまり有益ではありません。だからこのような時間を作る必要があります。これには、骨休めしてリラックスする時間も含まれます。自分が好きならフットボールなどスポーツの観戦もいいでしょう。伴侶や他の夫婦らとの交流、また運動なども含みます。
  3. 伴侶とのより親密な関係を築いて継続していくための時間を十分に設ける。これには楽しみを共有する真剣な会話、いい性生活も含まれます。伴侶は子どもよりも優先順位を高くするべきです。
  4. 子どもをしつける時間を十分にとる。これには、子どもと遊び、彼らの問題に耳を傾け、学校の活動に参加するなどが含まれます。
  5. その残りの時間の一部を、生活の糧を得るためにすごす。家族の面倒をみることも大切です。たとえ優先順位の1~4 によって、収入が減ることになっても(多くの家庭がそうでしょうが)、そうであるべきです。家族はあなたのお金よりも、あなたのことを数千倍必要としているのです。
  6. そして、時間が少しでも余ったなら、才能、特技を使って人のために役立つことをする。

7.週1回、だれか1人のために何かいいことをする

この親切な行為は、肉体面で(たとえば家事を手伝うとか)、心で(本をプレゼントしたり、相談にのってあげたり)、あるいは精神面の(ともに献身、祈りを捧げる) ものでもいいでしょう。これらの「7つの習慣」のうち、あなたはすでにどのくらい実行しているかを考えてみましょう。

こうした「7つの習慣」は、熱心に( いい加減な気持ちでなく) 実践する人には数か月のうちに幸福をもたらします。幸福は自分で選びとることができるものなのです。

 

うつが起こる仕組みの解明

では、うつの心理的、生理的メカニズムについてざっとまとめたいと思います。不健全な家族パターン、とくに人生最初の六年が、その後の人生でその人がうつにおちいるかどうかの重要な鍵となります。

そのおもな原因のひとつは、幼いときに、怒りをうまく建設的に表現するかわりに、怒りを抑圧することを教えられることです。それほど重要ではありませんが、遺伝という要因も考えられます。

強迫的人格(完全主義的)、演技性人格のダイナミクスについては、前にふれました。これらの要因のすべてがうつの土壌となり、そこヘストレスが加わるのです。

一時的にグリーフ反応はあってもうつにおちいることなく乗り切ることができるでしょう。しかし幼児期の環境(もしかして遺伝も) 要因を持っており、怒りを抑圧することを学んだ人は、うつをひきおこすまで肥大してしまうのです。そして前述した生理的症状などが出てきます。

学習によるパターン化

うつは学習によってパターン化します。親がうつだと子どもも同様に、うつのライフスタイルを発達させるようになります。

生き方として、ストレスの対処法として、うつを学習するのです。うつの家族は、次世代にもこのうつのライフスタイルをひき継がせます。子どもたちの人格も、親に似てきます。

脳には気分を司る大脳辺縁系と呼ばれる部位があり、上機嫌、意気消沈、安定した気分などをコントロールします。脳内アミンは神経細胞間のシナプスを行き来する神経伝達物質です。こかつこうした伝達物質( ノルエビネプリン、セロトニン) の枯渇がうつの一大要因であると考えられています。

ためこまれた怒りはこうしたアミンの枯渇をもたらし、その結果、神経系が正しく機能せず、不眠、疲労感、食欲の変化、動惇などがおこります。子ども時代を、否定的で、慢性的にうつ状態の親とすごした子どもも、同じような態度を学習します。

よって、彼らは普通の人以上の怒りを持ち、脳内アミンはほとんどいつも枯渇しているようになります。ぜひとも私たちの子どもを、うつのライフスタイルのなかで育てないようにしましょう。

他人を操作するためにうつになる人

ときには、うつは人に対処する手段となります。実際、うつは人を操作し、自分の思い通りにするためのパワフルな手段となりえるのです。伴侶を操作するためにうつを使う人もいます。子どもは感情を分かち合うよう奨励されるべきですが、悲しいふりをして人を操作するやり方に、あまり左右されないようにしましょう。

自分で自分を罰する人

うつは、自分で自分に歯向かう病です。ですからうつを感じ、みじめになると、それで当然だと思ってしまうのです。そして、自分で自分を罰してしまうのです。もし罰を受けるべき行為をしたとしても、それは神が与えるものであって、自分でもたらすものではないことを知る必要があります。神は何とか彼に教えをさとそうと思うかもしれませんが、それは神がすることであって、自分ですることではないのです。

つら い思考 が エスカ レート す る人

うつになると、どんどんつらい思考に向かっていきます。希望はますますなくなり、無価値感、罪悪感を強めていきます。自己批判が強くなり、自己評価も低くなります。

そしてうつに2なると、全般的につらい思考パターンが現れてきます。不適当な思考はより不適当な思考を生10むという循環を招くというわけです。この思考を変えることはできるのでしょうか?

カウンセリングを受けている人は、自分にこく言い聞かせるメッセージを変えることでずいぶん気分が楽になっています。自分をそんなに酷し便せず、批判的にならないことが大切だと感じています。

うつの人は、20人からほめられても、たった1人に批判されると、20人からほめられたことを忘れてしまいます。これを逆にして、人からの肯定的な評価を重要視するようにし、それほど大切でない、たまにしか出ない否定的な意見ばかりに気を集中させないことが大切です。

うつになって得た報酬に味をしめる人

子どもは子ども時代にどんな報酬を与えられ、しつけを受けたかによって反応の仕方を学びます。

たとえば、うつになると学校を休むことが許されて、余分に関心をかけてもらえることを学んだ子どもは、うつをライフスタイルとするようになります。うつに不適当な報酬が与えられたので、それが強化されたのです。

夢をみないとうつになる

うつの最大原因のひとつが、ありふれた疲労です。身体的、精神的に頑張りすぎると、うつがおこります。

よく学生が徹夜して勉強したり、幾晩も連続で5~6時間の睡眠ですませようとしたりします。催眠のニーズを無視するのは危険です。私たちの体は平均して8時間の睡眠を必要とするのです。

健康を保つには、夢をみる時間も必要です。大人はみな寝ている間、90分につき約20分は夢をみています。

しかし、途中で起きることがないかぎり、その夢を覚えてはいません。3晩夢をみなければ(睡眠は十分でも)、大半の人がうつになり、また妄想的になるでしょう。では、どの脳内物質が人に夢をみせるのでしょうか?

最近の研究では、ノルエビネフリンとセロトニンが夢の開始、維持を司ることがわかっています。夢では、現在の無意識の衝突がすべて象徴化されます。どの夢にも象徴的な意味があります。幸福を選ぶのなら、健全な睡眠パターンを選ばなくてはなりません。睡眠、夢は健康と命を保つのに必要なのです。

思春期のうつ

成人は、うつになると行動でわかります。しかし思春期の子がうつになっても典型的なうつの現れ方をしません。

そのかわり、嘘をついたり、不法薬物に手を出したり、性的にまずい行動をしたりします。ある10代の女子の例を見てみましょう。

彼女は最近まで極めて健康な子でした。娘がうつにかかっていると知らされた母親は、娘に性的行動や薬物の乱用に制限を設けるようにと言われました。娘はセラピーを受け、抗うつ剤を服用すると、数週間のうちに、以前のような健康な子に戻りました。

数多くの思春期の子が同じょうなことで治療を受けています。しかしこの治療は、甘やかされて、小さいころから好き放題してきた子にはうまくいきません。親が離婚したあと、子どもがうつにおちいることはよくあります。

子どももまたうつを行動化します。10代のうつ、自殺はアメリカで過去40年の間に300% の増加を見せています。これは家族崩壊のためです。親の離婚に関する子どもの怒りを話し合い、そして親を許すことができれば、子どもは良くなります。また、父親の死後、グレたり薬物に手を出したりする子は、父の死について、感情を話し合うことができ次第、改善されていきます。

産碍期のうつ

女性が出産後(とくに第1子の) にうつになることはよくあることです。この産後のうつは、とくに出産に関する複雑な感情を抑圧している母親にもっとも多く見られます。

複雑な気持ちを持つことは正常です。赤ん坊を産んで、一生親となることは大変な責任です。しかし、赤ちゃんを産むことの恐れが母親にとって受け入れがたい場合、そしてこの感情を抑圧すると、うつがおこります。こうした恐れを素直に認めて、夫や友人に話をするほうがはるかに簡単ですし重要です。母親がこうした感情を話し合うことができれば普通、うつは消えますが、抗うつ剤を必要とする場合もあります。ただし、抗うつ剤は、妊娠中、授乳中は普通は避けるべきです。

中年期のうつ

中年期にうつがおこることはよくあります。自分で設定した目標にけっして到達できないと感じている強迫的な人には、とくに顕著に見られます。これに気づいた彼らは自分自身に非常に腹を立て、うつになります。それとは逆に、目標を達してうつにおちいる人もいます。

目標に達しても不安定に感じているからです。彼らのつらさは外的要因でなく、自分とつき合って生きなくてはならないところから来ています。彼らはよくうつになって、つらさを罪のない伴侶やだれかのせいにします。

中年期には多くの喪失がおこり得ます。たとえば研究によると、中年女性の最大の恐れは、美貌が衰えるということです。その次の恐怖感は、伴侶に先立たれ、1人になってしまうのではないかという恐れです。こうした恐れのほかに、女性は子どもが家を離れて独り立ちしていくこと、子離れもあります。

また、以前はあった夫からの関心がなくなるという喪失に反応しても、うつになるのです。閉経にともなうホルモンの変化によって、うつになる場合もあります。データははっきりしませんが、女性によってはエストロゲンなどのホルモン療法が有効な場合もあります。

男性も中年期にうつになり、これを不適切な性的行動で表すことがあります。自分がまだ若いことを確認するように、若い女性にひかれたりします。これは深刻な不安定さ(自分が老いていくのではないと信じこもうとしている) のためです。

中年期のうつは性的行動に現れることが多く、または飲酒量が増える、体重増加、さらに前述したうつの諸症状として現れることもあるでしょう。

加齢とうつ

高齢化すると、個人の人格が際立ってきます。そしてこれまでもずっとうつの症状があった人は、加齢とともにいっそううつの症状がひどくなります。村照的に、人生を肯定的にとらえ、ありのままの自分に自己評価を感じている人は、成長し続けるために加齢とともにいっそう満ち足りて、賢くなっていきます。

基本的ニーズ(自己評価、他者との親密さ) は以前にもまして満たされることでしょう。一方、年をとると、脳細胞の一部が減少していくために差恥心が減っていき、罪悪感が増えることが問題となります。

老人はまた、孤独になるためにうつになることがあります。伴侶を失って、落ちこむこともよく見られます。この場合、同性の友人たちが大きな支えになります。

仕返しの手段としてうつになる

多くの人が、仕返しのための手段として、うつ、怒りを吐き出します。こうしてある程度の怒りは出せますが、しかし他者もみじめにしてしまいます。慢性的なうつの伴侶と暮らすことは相当に刑罰的ですが、これはその人の無意識の仕返しの場合があります。こうした患者には、私たちはほかの方法で伴侶に接する方法はないか考えてもらいます。そして怒りと向き合い、伴侶を許し、それによってうつを晴らすようにと薦めます。

人の関心をひくためにうつになる

うつを、人の関心をひくための手段として使う人がいます。これはすでにふれたようにうつで人を操作するのと同じです。

実際、うつは最初は人の関心を集めますが、しかし本人に舞い戻ってきて、やぶへびの結果に終わります。本人と向き合おうとする家族や友人がイライラするようになって、いっそうのトラブルをひきおこします。関心をひくためのうつは、伴侶や友人の喪失につながることが多く、さらなる深刻なうつにおちいることになります。

仮面うつ

1950年代に一般に知られたのが、この「仮面うつ」です。これは、病理学的には何の根拠も持たないように見える体の不調をいいます。

この状況には抗うつ剤が効果的です。前述したように、自分には何ら感情の衝突はないとして自分をごまかすために、感情の衝突を身体の衝突にすりかえます。これは面子を保つ防御メカニズムです。こうした人の多くが、筋肉痛、咬合不全、慢性疲労感、内耳障害、多発性硬化症などの不安を訴えますが、根拠が見られません。

生活の変化は想像以上のストレスとなり、うつを招く

自分がなぜうつなのか理解できないある若い男性です。しかし、よく話を聞いてみると、彼は前の年に多くの変化を経験していたのです。

実際、彼が経験した人生の変化を、「変化適応ストレスチャート」で加算してみると、なんと400以上になりました。研究者は、人生の変化のポイントが年間で合計200以上の場合、精神障害の深刻な増加につながると言っています。

また、ストレスをおこすひとつの原因に、喪失のひとつである引越しがあります。何度も引越しをさせられる子どもは、うつになることがよくあります。

もっともストレスをおこす変化は、配偶者、親、その他の親しい親戚との死別です。そして、死亡率は死別の1年目にぐんと高くなります。しかし、私たちが全米中の治療した数千件のケースでは、愛する配偶者の死よりも離婚のほうがより高いストレスとなっているようです。

子どもにとっては、親の死がもっともつらいものです。明らかなうつになったり、してはいけないことをしたり、未練がましい行為などでそれが示されます。子どもが不安定であれば私たちはほかの方法で伴侶に接する方法はないか考えてもらいます。そして怒りと向き合い、
伴侶を許し、それによってうつを晴らすようにと薦めます。

うつを多角的に見る

精神疾患は、普通ひとつの要因のみでおこるのではなく、いくつかの要因がかかわっていることも多いのです。たとえば精神疾患の場合、遺伝的背景は重要です。

とりわけ躁うつ病(気分障害) の場合、血縁者のなかに同じ症状を持つ人がいる確率が高いと言えます。また、統合失調症(精神分裂病) の親を持つ子どもは、子どもがたとえ親から離れて育てられても、同じく統合失調症(精神分裂病) になる確率が高いと言われています。

次に人格の形成に影響するのは、環境です。子どもはときに控えめに、積極的に、ときに行儀よく、そしてときに粗野にしつけられるのです。たとえば、16歳の男の子がなぜ行儀が悪く、反抗的で、すなおでないのか、彼の親は頭をかしげます。しかし親は一度もしつけをしていなかったのです。

このなかには身体の健康に対する正しい知識も含めてもいいでしょう。大人も子どもも、体が不調だと感情的ストレスに耐える能力が低くなります。普通、心理的な問題にもっとも大きな影響を与えるのはやはりストレスです。ある人が遺伝的要素を持っていて、幼児期の環境も劣悪だったとしても、何らかの急性のストレスが生じなければ、心理的問題はおこらずにすむかもしれません。

遺伝と環境的背景は非常に重要です。これをないがしろにするわけにはいきません。しかし、これらだけを現在の行動の言い訳にするのも誤ったことです。多くの問題は、機能不全な行動ゆえにもたらされたのです。遺伝が要因と強調されるうつは、内因性うつと呼ばれます。これは内側から、生物化学的に、そしてもちろん遺伝的なことが誘因となっているということです。

環境が要因となるものは、神経症性うつと呼ばれます。これは子ども時代の無意識レベルの、未解決の葛藤からおこります。急性のストレスが原因とされるうつは、反応性うつと呼ばれます。つまり圧倒されてしまぅような問題のある状況がうつの原因になっているということです。

うつ患者の特徴

うつの人には、いろいろな共通した人格特徴が見られます。

  1. 心配症で悲観的なものの見方をする
  2. 何をやっても無駄、ダメだと感じる
  3. 自分に無価値感を持っている
  4. 過去にひたる
  5. イライラしている
  6. ものごとに集中できない
  7. 体を動かすことがおっくう
  8. 死の不安がある
  9. ものごとに興味がなくなる
  10. 朝起きるのがいやだ
  11. 食欲減少(普通は減少するが増加もする)
  12. 体重減少(普通は減少するが増加もする)
  13. 疲労感がある
  14. 手足が冷たい
  15. 眠れないことが多い
  16. ときどき睡眠が増える
  17. 朝早く目がさめる
  18. 性欲の減退
  19. 生理不順
  20. 自殺念慮
  21. しよっちゅう泣きたくなる
  22. ユーモアのセンスがなくなる
  23. 緊張性頭痛、動惇、感染症、胃腸障害がある
  24. 熱意が失せる
  25. 自分の体に現実感がない
  26. 他人に意地悪されていると感じる
  27. 人に過剰に期待し、かといって拒否されるのを恐れる。
  28. 人は自分に腹を立てていると(そうでなくとも) 確信する
  29. 他の家族員の怒りの対象となる

甲状腺機能低下症とうつ

甲状腺機能低下症がうつをもたらすことがあります。医師は長年の知識として、甲状腺の薬がうつに効くということを知っています。

低甲状腺症によってひきおこされるうつばかりでなく、他のいくつかのうつも含みます。甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH6)が効くこともあります。

うつは甲状腺に影響を与え、低甲状腺症の発症を促すことがあると、科学者は考えています。心と体は緊密に関係しあっていることはよく知られていますが、どちらが先に発症するかはかならずしも知られてはいません。しかし、感情的、精神的に成熟すれば、身体的な病気の大半は避けられると、私たちは信じています。

低血糖がうつの原因

低血糖は、今日強調されすぎており、低血糖について善かれた本が多く出版されています。疲労、うつ、その他ありとあらゆる病気の原因が低血糖とされてきました。

この考えについては、医学界で疑義を抱く人も多いのです。低血糖は実際に存在し、不安を高じさせ、既存の感情的問題をさらに悪化させますが、不安やうつの大半がそれで説明しきれるものではありません。

うつの原因かもしれない「低血糖症」

生体アミンのアンバランス

脳内アミン(とくにセロトニン、ノルエビネフリン)が神経細胞間のシナプスを行き来している神経伝達物質であることは前述しました。こうした神経伝達物質の減少はうつの一大原因と考えられています。この仮説を支持する土壌には以下のようなものがあります。

  1. ずっと前に、レザピンという薬物が高血圧の治療に用いられており、レザピンを服用していた人の多くがうつになったと報告されました。現在では、レザピンは脳内アミンを枯渇させることが研究室での動物実験などによって明らかになっています。
  2. うつの治療に使われる薬は、脳内アミンレベルを上げることで知られています。脳内アミンが正常レベルに達したとき、明らかにうつの多くが消えます。実験によれば、これらの薬物は過敏で、落ち着きがない状態をひきおこすこと、つまり気分を上げることもわかっています。
  3. 深刻なうつ患者の尿中には、カテコラミン代謝物(生体アミンが小さく分解されてできるもの)が少量しか見られないことがわかっています。
  4. うつには強力な生物学的要因があるという証拠に加え、心身症はうつがあるときにおこると言われています。たとえば、睡眠障害、食欲の増加・減退、性欲減退などが見られます。また、うつは代謝障害などの病気とも関係することもわかっています。これは、うつには生物学的要因があるという仮説を裏づけるものです。
  5. 脳内アミンのうち、アメリカでもっとも注目を浴びているのがセロトニンとノルエビネフリンです。これらアミンの研究から、うつはこうした脳内アミンの枯渇の結果おこるという理論が出てきました。セロトニンが枯渇し、パキシルのようなセロトニンのレベルを上げる薬に効果が見られる場合もあります。トフラニールはおそらくノルエビネプリンとセロトニンの両方のレベルを上げ、パキシル、プロザック、ゾロフトのような抗うつ剤との組み合わせでよく使われます。プロザック、ゾロフトを服用すると、体重が減少する傾向があり、やせすぎる場合は服用を中止しなくてはなりません。

内分泌のアンバランス

うつと内分泌障害に関連があることは以前から知られていましたが、最近の研究の結果、この関係はより明らかになってきました。

脳下垂体はAC H(副腎皮質ホルモン)、成長ホルモン、黄体形成ホルモン、、甲状腺刺激ホルモンなどを分泌しています。

視床下部は放出因子を分泌し、プロラクチこれを受けて脳下垂体が前述したホルモンの放出をひきおこすのです。さらに、視床下部からの放出因子はノルエビネフリンなどの生体アミンによってコントロールされていることが知られています。

もちろん、これはセロトニンと同じくうつの場合に枯渇することが知られている物質です。よって脳内生体アミンに乱れがあれば、うつがおこり、また内分泌異常がおこる可能性があります。これは正しいことが証明されてきています。

またうつの場合、血中コルチゾール( ストレスホルモン)レベルが上がることがわかっています。考えられるのは以下のことです。

コルチゾールレベルが上がると、抗体を作り出すリンパ球(白血球の一つ) が抑えられます。抗体が減少すれば、人はありとあらゆる病気にかかりやすくなります。つまり、ためこまれた怒りはノルエビネフリンを減少させ、これが視床下部からのACTH放出因子を増やし、脳下垂体からのACTHを増加させ、副腎腺からのコルチゾール放出を促し、リンパ球を減らし、抗体を減らし、あらゆる感染症にかかりやすくさせるのです。蓄積された怒りが主要な死因となるのです。

また、黄体形成ホルモン、成長ホルモンのレベルが下がることがあることがわかっています。性衝 動 の低 下 は 、 う つの場 合 によ く お こ る こと が 知 ら れ て いま す 。 これ は 、 性 ホルモンへの内分泌システムの影響によるものかもしれません。甲状腺刺激ホルモン放出因子が投与されると、うつの症状が一時的にやわらぐという興味深い報告もあります。こうしたデータはすべて、うつと、セロトニンやノルエビネフリンなどの脳内アミンの低下、そして内分泌障害の間には関連があるという仮説を支持しています。

電解質の障害とうつの関連

うつ障害には、よく電解質の異常が見られます。たとえば、ナトリウム、カリウムの障害が、うつ、および操の両方の患者に見られます。

この電解質の乱れ(障害) がうつをひきおこしているのか、それともうつの結果としておこつているのかは不明ですが、おそらく後者でしょう。電解質は、うつ要因であるノルエビネフリンなどの神経伝達物質の合成、保存、放出、不活性化に重要な役割をはたしています。

電解質の分布はいくつかの方法によっておこります。たとえば、ナトリウムの分配はコルチゾール、アルドステロンなどのホルモンに影響を受けます。そして、コルチゾールはまたノルエビネフリンなどの生物アミンレベルによって影響を受けます。最初にどちらが影響を与えるのかははっきりとわかっていません。電解質が感情障害とかかわっているという私たちの最終的証拠のひとつは、炭酸リチウムが感情障害の治療に劇的な作用を発揮することでもわかります。この炭酸リチウムのはっきりした電解質代謝への効果はわかっていません。

ウィルス感染を併発する

うつはよくウィルス感染症をともないます。ウィルスによる比較的軽度の呼吸器系感染症を持っている場合でも、気持ちが落ちこむことがあります。

これは身体的、生化学的レベルでのことです。一時的なウィルス性の疾患は、一時的なうつに似た症状をひきおこすことがあります。また前述したように、うつになると、ウィルス性疾患を含めたあらゆる感染症にかかりやすくなります。

 

ストレスはうつを加速させ、複雑化してしまう

ストレスには、たとえば子どもが白血病にかかっていると告知されることから、伴侶の浮気を発見することまで、またあなた個人が極めて緊急なストレスを感じる状況まで、いろいろなことが含まれます。

私たちはこうしたストレスを、直接自分で、あるいは無意識に自分でもたらしているのです。なかには、すべてのストレスは自分の罪と無責任ゆえにもたらされたと考える人もいますが、これは賢い考え方とは言えません。

もし、子どもが白血病で死に行くとわかった親が助言と慰めを求めてきたら、私たちは心の底から、彼女とともに悲しむでしょう。病気や死は彼女の罪の結果などではなく、人が生まれたり恋に落ちたりするのと同じく人生の一部であることを彼女に告げるでしょう。

なぜかと言うと、子どもの死は、親が犯した何らかの罪の裁きに違いないと、誤って考える人がいるからです。

そう考えることは間違いです。一方、週に2回夫に殴られていると言って助けを求めにくる女性に対しては、私たちはもしかしたら彼女は受動攻撃性人格で、無意識的に夫の爆発的行為をひきおこしているのではないかと(もちろん、夫の責任は少しも減らないわけですが) 疑ってみることがあります。

こうしたタイプは、夫は暴力行為におよんだあと、非常に後悔を感じ、その後数週間は妻にやさしくします。その間、妻はまわりの人から自分が何よりもほしい同情を得て、無意識の欲求を満たしているのです。彼女は自分自身の罪悪感を晴らし、すべての男は父親と同じく女を殴るものだということを証明しようとしているのかもしれません。

ほとんどの人は、自分の異性の親とよく似た人と結婚します。その親がどんなにひどい親であったとしてもです。そして、虐待された子どもはしばしば、大人になって虐待の加害者と結婚します。

歴史をくりかえすのです。これは精神科医が毎日のように出くわす状況の一例にすぎません。私たちは、自分で自分の人生をコントロールしていると思っている人間に会いますが、実際には彼らは無意識の動機に支配されるままになっているのです。

普通、人間はストレスの原因を、生きることを耐えがたいものにする何らかの外部環境に求めようとしますが、カウンセラーなら、そのストレスに影響されないために、本人ができることを探すべく、本人の心(無意識の思考、感情)に焦点を当てるでしょう。なかには、専門家のカウンセリングを受けることを好まず、ばかにする人さえいますが、これもまた自分自身の防御のしわざなのです。知識のある聖職者や専門のカウンセラーの援助を得ることは、人生の圧倒されそうなストレスを克服する助けになるのです。

良質のカウンセリングを得て、それを人生にあてはめていくことは、人生の師を得ることと同じです。愛に満ちた洞察力のある友人、牧師、カウンセラー、ときに精神科医らによる問題への直面化を通じて、多くの人々が救われるのです。科学的研究によれば、深刻なうつの85% がストレスによってもたらされることを示しています。さらに自殺を企てる人の環境は、極めてストレスの多い状況であることがわかっています。以下は、うつの原因としてよく見られる大きなストレスをリストアップしたものです。

大切なものの喪失
うつをもたらすもっともよく見られるストレスは、愛する人の死や離婚などの重大な喪失体験です。

うつをもたらすもっともよく見られるストレスは、愛する人の死や離婚などの重大な喪失体験です。

昇進は、新しい役職で頑張らなければならない、しかし自分の能力では無理だと感じるなど、大きな脅威になり、かなり落ちこむ理由になることがあるかもしれないのです。

怒りが自分の内面に向かっている
深刻な喪失には、さまざまな反応がおこります。気づいているいないにかかわらず、何らかの怒りの反応をすることもあります。

この怒りが抑圧されると、うつになるのです。つまり、
重大な喪失を経験した際、それと向き合わなかったり、誤った対応をとるとうつとなるのです。

たとえば、ある人が死んだ人に怒りを抱いていたとします(親、兄弟との死別を体験する子どものほぼ全員が、カウンセリングを必要とします。数年間続くような、そして命日のたびに悪化するようなうつを防ぐためです)。死人に怒りを表すことは、自分にとってとても受け入れがたいことであるため、怒りは内側に向かい、その結果がうつとなるのです。

子どものとき虐待された人もまた、かなりの怒りが内側に渦まいています。そして自分は「くず」で、いじめられて当然だと誤って信じこんでいます。このテーマに関する多くの文献で、うつは内側に向けられた怒りであると記されています。

たいていの場合、怒りはうつの人の顔の表情、声、ジェスチャーなどに明らかに表れます。相当な怒りを持っているのですが、普通その怒りに気づきません。かえってそのことを指摘する精神科医に向かって腹を立てたり、感情的に否認したりします。もし自分自身をビデオで見ることができさえすれば、自分の強烈な怒りを認めることでしょう。本人はまた防御的であることも否認するでしょう。この怒りとどう対処するかは、後ほど。

自己イメージが傷つけられる
うつを加速させる出来事として、「自己イメージの傷つき」があります。離婚した人の多くは自分が拒絶されたと感じ、自己イメージが傷ついています。外部状況に直撃された結果、自己概念が低下するのですが、これはまた内側からもおこり得ます。

たとえば、私たちが罪を犯すと、良心が痛み、自己イメージは自動的に低くなります。この状態は、その罪が神と自分自身によって許されるまで続きます。ある患者の例ですが、その患者は2ヶ月間うつ状態が続いていると訴えました。

私たちは「この2ヶ月間、何をなさってきましたか? それがうつの原因だとも考えられませんか? 」と尋ねました。するとその患者は驚いたふうに、「実は愛人と関係を持っていたんですが、それとうつとが関係あるとは知りませんでした」と言うのです。その後、彼は愛人との交際をやめ、また自分自身をも許すと、うつは消えたのです。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)
PTSD(心的外傷後ストレス障害)という言葉は、重大なストレスを受けて、非常に不安、うつ状態になっている状態を表すときに用いられます。私たちはみな、ときに深刻な問題を経験し、不安にかられたり、落ちこんだりします。しかし普通私たちは問題に対処でき、それがぅっに発展する前に何とか対処できるのです。しかし、深刻なストレスは、悪夢、パニック障害、うつにつながります。
偽りの罪悪感を持つ
前述したように、強迫神経症の人は自分に厳しく、批判的です。心配性で偽りの罪悪感に陥りやすく、しまいにはこの心配と偽りの罪悪感が自分に向かうようになります。ある意味で、彼は自分に歯向かっているのです。不健康にも良心は自分に歯向かい、やがて弱体化して、うつがもたらされます。
真の罪悪感を持つ
真の罪悪感はうつの原因になりえます。うつをひきおこすに至った真の罪悪感は、道徳的、倫理的あるいは宗教上の罪を犯した人の正常な反応です。事実、罪を犯して、真の罪悪感にかられない人は、回復が困難です。正常に反応する人たちが、罪と真の罪悪感のためにうつを患うのです。
誤った見方
患者の多くに共通して見られるうつをひきおこす原因は、誤った物の見方です。私たちは豊かな社会に生き、多くのかたよった情報や誘惑にさらされています。そのため、容易に誤った見方におちいってしまうのです。

ここでまとめましょう。多くの人々は、ストレスがおこつて疲労回復するまで何年もうつと対処し、戦い続けます。

うつが結果としておこった場合、その誘因となっているストレス(それが何であれ) はつねに、抑圧された怒りによるものです。積み重なったた怒りは、うつの大半に見られます。大半のストレスは、自分自身の極めて微妙な、無意識の、自己破壊的態度、感情、行動パターンによってもたらされます。

しかし人生には、たとえば愛する人を失うとか、自分自身の死と向き合うなど、私たちが村処しなければならない十分すぎるストレスがあります。ストレス誘因に、もし私たちが責任もって対処すれば、うつをひきおこすことはありません。くりかえしますが、幸福は選びとるものなのです。