性格

自分の生き方のクセと思考パターン

自分の生き方の「クセ」を再確認する

物事は考えよう。同じことでも、見方を少し変えてみれば、感じ方は違ってきます。あなたは、うつ病を招きやすい考え方をしていないか、チェックしておきましょう。

考えと感情は別の物
試験に合格すれば喜び、友人に裏切られれば怒り、大切な物を失えば悲しむといったように、できごとによって、さまざまな感情をもちます。けれども感情は、そのできごと自体から生まれるわけではありません。できごとと感情の間には、そのできごとを「どう考えるか」というステップが入ります。感情は、この思考のしかたによって変わってきます。
感情は自分で調節できる
たとえば、仕事で失敗したとき、「自分の能力が劣っていたから」と考えるのと、「今回は運がなかった」と考えるのでは、生まれる感情にはかなり違いが出てきます。ということは、怒り、悲しみ、不安などのストレスになりやすい感情は、ものの考え方でコントロールできることになります。
自分の考えがただしいとは限らない
だれでも、自分の考えは正しいと思いがちですが、はたしてそうでしょうか。「上司は私の能力を認めていない」と考えても、じつはあなたの能力を伸ばすためにわざと厳しく接しているのかもしれません。または、あなただけでなく、だれに対しても、能力を認めないような言動をしているのかもしれません。
最初の考え方で気分が落ち込んでしまっても、ほかの考え方もあるかもしれないと考え直すことができれば、気分は多少楽になるものです。

考え方を考えるポイント

  1. 自分の考え方が完璧だと思わない
  2. 他の考え方もあると頭に入れておく
  3. 嘘でもいいから試してみる
  4. うまくいったことには事実が含まれている
感情の起こり方
  1. 出来事
  2. それに対する考え方
  3. 感情

考え方の転換

  1. 気分は考え方によって変わりうる
  2. 考え方にはいろいろあり、あなたが一番信じていることが間違っているかもしれない
  3. あなたの気分も本当は違うかもしれない
  4. 他の考え方も試してみると気分も変わるかもしれない。

四角四面の考え方がうつを招く

うつ病になりやすい人の考え方には、特定のパターンがあります。そのパターンから抜け出せないことが、病になりやすい要因になっています。あなたはこの6つのどれかではないでしようか。

柔軟に対処しにくい四角四面の考え方
気分というものは、考え方ひとつで変わるので、考え方を変えれば気分も変わります。
とはいえ、うつ病にかかりやすい人は、このように柔軟に対処しにくい傾向があります。具体的には、以下にあげたような考え方のパターンがあります。この四角四面な考え方が、うつ病を招く原因になります。
  1. 全か無か思考10D点満点か0 点かの、両極端の考え方でものごとをみてしまいます。いわば完全主義なので、たとえば80点といった中庸の評価ガできません。
    満点ではないので、80点は0点と同じだと感じて、気分が落ち込んでしまいます。
    テストならがんばれば満点も取れるでしょう が、 実生活上で完壁なことな、どあまりないので、このような考え方の人は、つねに失敗の連続だと感じてしまいます。
  2. 過激な一般化たった1 度のミスや悪いできごとでも、それがつねに自分の人生に存在する一般的な事象としてとらえてしまう傾向があります。
    たとえば、りっばな仕事を遂行したのに、報告書に1箇所ミスがあり、それを上司に指摘されたとします。そのミスは仕事の成果に影響はなく、上司にも評価されているのに、自分がした仕事全体を否定されたように考えてしまいます。
  3. 肯定的側面の否認よいできごとなのに、喜んだり自信をもたずに、否定してしまう傾向ガあります。
    たとえば、せっかく昇進したのに、同期で役職がないのは私ひとりなので、きっと同情して昇進させてくれたのだろう。
    どうせ肩書だけで、責任ばかり私におしつけるつもりなんじやないか」などと考えてしまいます。それまでコツコツと仕事を積み重ねてきたことについては、考えがおよびません。
  4. すべき表現「○○を絶対にすべき」「○○でなければならない」といった規律を自分でつくってしまいます。あの仕事は明日中に絶対に終わらせなくてはならない、机の上はつねに整理されていなければならないなどと考え、それを実行しようとします。悪いことではないのですが、あまり厳密に考えていると、自分の規律に縛られて疲労し、やがてはかえってやる気がなくなってしまいます。
  5. 心の読み過ぎうつ病になりやすい人は、相手の気持ちを考え、それに合わせようとします。
    けっして悪いことではありませんが、相手の心を読お過程でほかの可能性を無視して、一気にいちばん悪い結論を出してしまいます。
    遠くで何人かが話をしていて、自分が近づいた途端に会話が静かになったとき、それがたまたまであっても、「私の悪口を言っていたに違いないJ と考えるのが、その例です。
  6. レッテル貼り自分には才能がない、自分はだらしがない、自分は怠け者だ、自分は人に嫌われるタイプだなどと、自分自身を否定するようなレツテルを貼ってしまいます。
    自己否定の自己像を、勝手につくってしまうのです。ちょっとしたミスでも、「自分が怠け者だからこうなったJ などと考えます。原因を自分に帰結しやすいため、さほど問題でもないのに、気分が落ち込んでしまいます。

うつを脱却するものの見方を心がける

ものの見方や考え方は、理屈でわかっていてもそう簡単に変えられるわけではありません。思考法を修正する訓練をくり返しおこなっていくことで、うつから脱却していきましょう。

自分の思考パターンを知る
まず、うつに陥りやすい思考法のパターンの意味と名称を覚えます。それにより、そのような考え方になったとき、これは「全か無か思考」だ、これは「すべき表現」だと、自覚できるようにします。
数えて記録する
自覚できるようになったら、実際の生活でうつ的思考パターンがいくつあったか数え、1日の合計数を手帳などに記録します。人には個人差があるので、自分は「心の読みすぎ」が多いなどの特徴がわかれば、それだけに的を絞って数えてもよいでしょう。
ほかの考え方を書き出してみる
数えて記録する作業を1週間ほどおこなったら、いよいよ思考法の修正に入nソます。ここで大切になるのが、ものの見方や考え方には、いろいろあるということです。数えた思考パターンの事例をいくつか取り上げ、あなたの考え以外に、どのような可能性があるのか、理論的に引き出してみましょう。できれば、それをひとつひとつ文章に書き出してみます。
その中から合理的と思われる考えをとりあげて採用してみます。それによって気分や周囲の状況に変化がないか見守っていきます。このような訓練がものの見方を少しずつ変えてくれます。

感情と考えを切り離す練習をする

感情とそのときに浮かんだ考えを、個別に記録する方法もあります。合理的な考えを客観的に引き出していく訓練をしていきます。

感情と考えの2つを記した日記をつける
うつ的思考パターンを覚えたり、合理的な考えを書き出すなどの作業が苦手だったり、苦痛を感じる人もいます。その場合、下のような日記をつける方法があります。日記には、日常の生活でわいてきた感情と、そのときに自然に浮かんできた考え(自動思考) を記録します。少し気分が落ち着いてきたら、合理的な思考を書いてみます。そして最初の考えと比べてみて、その結果、どんな気分になったかも、記録します。このような作業を続けていくことで、少しずつうつ的思考法から脱却していきます。
日付
状況
感情
最初に考えたこと
合理的思考 結果
9/23
いつもと同じ時間に起床できなかった
自信喪失
こんなにだるくてはとても動けない
風邪が治ったばかり あせりが減った
9/25
会社からの電話に不在で出られず
罪悪感
電話から逃げた「電話恐怖症」
逃げたのではなく不在だった。レッテル貼りをしている こちらから電話をする
8/28
大好きなプロ野球がつまらない
落胆
この世にたのしいことなどない
結論の飛躍。ほかに何かあるはず。 大リーグを見たら楽しめた。
11/4
仕事が終わらない
自信喪失
もう以前のように働けない
遅くても着実に進んでいるし、ミスもない 落ち着く

性格を変えるのは難しい

うつの人は自分を責める傾向があります。無理にでも自分自身をほめてあげる習慣を身につけ、自分はダメだと思ってしまうマイナス思考を修正し、自分に自信をつけましょう。

マイナスばかりの考え方を修正する
ものの見方や考え方は、性格に密着したものです。性格を変えられれば簡単なのですが、そうはいきません。なんでもマイナスに考えてしまうというあなたの性格の問題点をできるだけ修正して、自分に自信をもち、誇りをもてるようなことを考えましょう。
自分をほめてあげ自信をつけよう
うつになりやすい人は、つい「自分はダメな人間だ」と卑下してしまうので、自信をつけるためには、見方を変えて、ともかく自分をほめてあげましょう。そうすることで少しずつ、自分のマイナス面よりプラス面が見えてきます。自分は劣っていないと自分自身につねに言い聞かせ、自尊着心を高めていくようにしてください。

うつ病 になりやすい性格

いい人ほど うつ病 になりやすい

うつ病には、その人の性格が深く関わっています。几帳面でまじめ、責任感が強く一生懸命に仕事に励んでしまう人ほどうつ病にかかりやすいのです。

ストレスをためこむ性格が危険
心の病にかかると、自分は心が弱いのではないかと心配になります。しかし、うつ病には、心の強さ、弱さというよりその人の性格が関係しています。
まじめで責任感をもって仕事を一生懸命おこない、人あたりもよく、とてもよい人という評価の人が危険です。
反面、融通がきかず、頭がかたいという欠点もあります。
人の性格はさまざまで一概に言えませんが、一般にこのようなタイプの人はストレスをためこみやすく、うつ病にもなりやすいのです。
うつ病にかかりやすい性格については異論も多い
うつ病になりやすい性格には異論もあります。うつ病になりやすい性格の傾向があるかどうか、これまで何人もの人が研究してきました。
性格の分類がいろいろある中で執着気質とメランコリー親和型がなりやすいという説が有力でした。

長短紙一重の性格傾向

長所
  • まじめ
  • 几帳面
  • しっかりしている
  • 責任感が強い
短所
  • 融通が利かない
  • 頭がかたい
  • 気持ちを切り替えられない
環境気質
(クレッチマーの分類)
執着気質
(下田光造の分類)
メランコリー親和型
(テーレンバッハの分類)
人づき合いがよく、きがよいタイプ。かつては躁うつ病になりやすいとの説もあり。 どちらの性格もほぼ同じで責任感が強く仕事熱心、几帳面で凝り性、人に頼まれると断れないタイプです。

物事の重みづけが下手なタイプ

うつ病になりやすい性格に、すべて几帳面に取り組むという面があります。この点を心理学的にもう一歩、深くとらえてみると、「ものごとの重みづけが下手」という面が関係していることがわかります。

優先順位をつければやり残しても問題ないが
いろいろやるべきことがある場合、自分で優先順位をつけ、大切なこと重要なことから始めればやり残したことがあってもそれほど重要なものではないので、結果的に成功したことになります。
ところが重みづけができないと、物事を片っ端から行ってしまいます。この場合、やり残したことが重要なことなら結果は失敗です。
失敗を補う癖が几帳面さにつながる
重みづけができないことは、生来的な「神経機能の弱点」とえいます。子供の頃からそれによる失敗を重ねてきたため、やがて弱点を補おうとやり残しがないようにすべてを完全に行うようになります。それが几帳面という性格を形成してきたと考えることができます。

  1. 優先順位がつけられないという精神機能の弱点
  2. 重要なことをやり残してしまう
  3. 失敗のイメージが残る
  4. 片っ端からやっていく

感情がいつまでも残るタイプ

失敗をしたとき、くやしい気持ちが長く続いてしまう人は失敗をおそれて慎重になり、ますます几帳面になり、大きなストレスを抱えてうつへとつながりやすくなります。

失敗へのそれから慎重になる
几帳面を形成する、もうひとつの要素に「感情がいつまで残る」ということがあります。
くやしさや悲しさなどの感情が長く尾を引き、気持ちの切り替えがしにくいのです。これはものの考え方というようり、その人の生理機能の問題といえます。
このタイプの人は、失敗するといつまでも悔しい気持ちが残るため、失敗をおそれてどうしても慎重になります。このことが几帳面さにつながっていきます。

  1. 感情が残るという生理機能の弱点
  2. 失敗を恐れて慎重になる
  3. ますます几帳面に
  4. 几帳面さと臆病さの板挟み
几帳面さだけでは乗り切れない
これまで几帳面さでさまざまな困難を乗り切ってきても社会人、家庭人になってストレスが増えるとそうはいかなくなります。
几帳面さで乗り切ろうとがむしゃらになればなるほど、ストレスのプレッシャーは大きくなり、やがてうつ病へと進んでしまいます。