自分の生き方のクセと思考パターン

自分の生き方の「クセ」を再確認する

物事は考えよう。同じことでも、見方を少し変えてみれば、感じ方は違ってきます。あなたは、うつ病を招きやすい考え方をしていないか、チェックしておきましょう。

考えと感情は別の物
試験に合格すれば喜び、友人に裏切られれば怒り、大切な物を失えば悲しむといったように、できごとによって、さまざまな感情をもちます。けれども感情は、そのできごと自体から生まれるわけではありません。できごとと感情の間には、そのできごとを「どう考えるか」というステップが入ります。感情は、この思考のしかたによって変わってきます。
感情は自分で調節できる
たとえば、仕事で失敗したとき、「自分の能力が劣っていたから」と考えるのと、「今回は運がなかった」と考えるのでは、生まれる感情にはかなり違いが出てきます。ということは、怒り、悲しみ、不安などのストレスになりやすい感情は、ものの考え方でコントロールできることになります。
自分の考えがただしいとは限らない
だれでも、自分の考えは正しいと思いがちですが、はたしてそうでしょうか。「上司は私の能力を認めていない」と考えても、じつはあなたの能力を伸ばすためにわざと厳しく接しているのかもしれません。または、あなただけでなく、だれに対しても、能力を認めないような言動をしているのかもしれません。
最初の考え方で気分が落ち込んでしまっても、ほかの考え方もあるかもしれないと考え直すことができれば、気分は多少楽になるものです。

考え方を考えるポイント

  1. 自分の考え方が完璧だと思わない
  2. 他の考え方もあると頭に入れておく
  3. 嘘でもいいから試してみる
  4. うまくいったことには事実が含まれている
感情の起こり方
  1. 出来事
  2. それに対する考え方
  3. 感情

考え方の転換

  1. 気分は考え方によって変わりうる
  2. 考え方にはいろいろあり、あなたが一番信じていることが間違っているかもしれない
  3. あなたの気分も本当は違うかもしれない
  4. 他の考え方も試してみると気分も変わるかもしれない。

四角四面の考え方がうつを招く

うつ病になりやすい人の考え方には、特定のパターンがあります。そのパターンから抜け出せないことが、病になりやすい要因になっています。あなたはこの6つのどれかではないでしようか。

柔軟に対処しにくい四角四面の考え方
気分というものは、考え方ひとつで変わるので、考え方を変えれば気分も変わります。
とはいえ、うつ病にかかりやすい人は、このように柔軟に対処しにくい傾向があります。具体的には、以下にあげたような考え方のパターンがあります。この四角四面な考え方が、うつ病を招く原因になります。
  1. 全か無か思考
    10D点満点か0 点かの、両極端の考え方でものごとをみてしまいます。いわば完全主義なので、たとえば80点といった中庸の評価ガできません。
    満点ではないので、80点は0点と同じだと感じて、気分が落ち込んでしまいます。
    テストならがんばれば満点も取れるでしょう が、 実生活上で完壁なことな、どあまりないので、このような考え方の人は、つねに失敗の連続だと感じてしまいます。
  2. 過激な一般化
    たった1 度のミスや悪いできごとでも、それがつねに自分の人生に存在する一般的な事象としてとらえてしまう傾向があります。
    たとえば、りっばな仕事を遂行したのに、報告書に1箇所ミスがあり、それを上司に指摘されたとします。そのミスは仕事の成果に影響はなく、上司にも評価されているのに、自分がした仕事全体を否定されたように考えてしまいます。
  3. 肯定的側面の否認
    よいできごとなのに、喜んだり自信をもたずに、否定してしまう傾向ガあります。
    たとえば、せっかく昇進したのに、同期で役職がないのは私ひとりなので、きっと同情して昇進させてくれたのだろう。
    どうせ肩書だけで、責任ばかり私におしつけるつもりなんじやないか」などと考えてしまいます。それまでコツコツと仕事を積み重ねてきたことについては、考えがおよびません。
  4. すべき表現
    「○○を絶対にすべき」「○○でなければならない」といった規律を自分でつくってしまいます。あの仕事は明日中に絶対に終わらせなくてはならない、机の上はつねに整理されていなければならないなどと考え、それを実行しようとします。悪いことではないのですが、あまり厳密に考えていると、自分の規律に縛られて疲労し、やがてはかえってやる気がなくなってしまいます。
  5. 心の読み過ぎ
    うつ病になりやすい人は、相手の気持ちを考え、それに合わせようとします。
    けっして悪いことではありませんが、相手の心を読お過程でほかの可能性を無視して、一気にいちばん悪い結論を出してしまいます。
    遠くで何人かが話をしていて、自分が近づいた途端に会話が静かになったとき、それがたまたまであっても、「私の悪口を言っていたに違いないJ と考えるのが、その例です。
  6. レッテル貼り
    自分には才能がない、自分はだらしがない、自分は怠け者だ、自分は人に嫌われるタイプだなどと、自分自身を否定するようなレツテルを貼ってしまいます。
    自己否定の自己像を、勝手につくってしまうのです。ちょっとしたミスでも、「自分が怠け者だからこうなったJ などと考えます。原因を自分に帰結しやすいため、さほど問題でもないのに、気分が落ち込んでしまいます。

うつを脱却するものの見方を心がける

ものの見方や考え方は、理屈でわかっていてもそう簡単に変えられるわけではありません。思考法を修正する訓練をくり返しおこなっていくことで、うつから脱却していきましょう。

自分の思考パターンを知る
まず、うつに陥りやすい思考法のパターンの意味と名称を覚えます。それにより、そのような考え方になったとき、これは「全か無か思考」だ、これは「すべき表現」だと、自覚できるようにします。
数えて記録する
自覚できるようになったら、実際の生活でうつ的思考パターンがいくつあったか数え、1日の合計数を手帳などに記録します。人には個人差があるので、自分は「心の読みすぎ」が多いなどの特徴がわかれば、それだけに的を絞って数えてもよいでしょう。
ほかの考え方を書き出してみる
数えて記録する作業を1週間ほどおこなったら、いよいよ思考法の修正に入nソます。ここで大切になるのが、ものの見方や考え方には、いろいろあるということです。数えた思考パターンの事例をいくつか取り上げ、あなたの考え以外に、どのような可能性があるのか、理論的に引き出してみましょう。できれば、それをひとつひとつ文章に書き出してみます。
その中から合理的と思われる考えをとりあげて採用してみます。それによって気分や周囲の状況に変化がないか見守っていきます。このような訓練がものの見方を少しずつ変えてくれます。

感情と考えを切り離す練習をする

感情とそのときに浮かんだ考えを、個別に記録する方法もあります。合理的な考えを客観的に引き出していく訓練をしていきます。

感情と考えの2つを記した日記をつける
うつ的思考パターンを覚えたり、合理的な考えを書き出すなどの作業が苦手だったり、苦痛を感じる人もいます。その場合、下のような日記をつける方法があります。日記には、日常の生活でわいてきた感情と、そのときに自然に浮かんできた考え(自動思考) を記録します。少し気分が落ち着いてきたら、合理的な思考を書いてみます。そして最初の考えと比べてみて、その結果、どんな気分になったかも、記録します。このような作業を続けていくことで、少しずつうつ的思考法から脱却していきます。
日付
状況
感情
最初に考えたこと
合理的思考 結果
9/23
いつもと同じ時間に起床できなかった
自信喪失
こんなにだるくてはとても動けない
風邪が治ったばかり あせりが減った
9/25
会社からの電話に不在で出られず
罪悪感
電話から逃げた「電話恐怖症」
逃げたのではなく不在だった。レッテル貼りをしている こちらから電話をする
8/28
大好きなプロ野球がつまらない
落胆
この世にたのしいことなどない
結論の飛躍。ほかに何かあるはず。 大リーグを見たら楽しめた。
11/4
仕事が終わらない
自信喪失
もう以前のように働けない
遅くても着実に進んでいるし、ミスもない 落ち着く

性格を変えるのは難しい

うつの人は自分を責める傾向があります。無理にでも自分自身をほめてあげる習慣を身につけ、自分はダメだと思ってしまうマイナス思考を修正し、自分に自信をつけましょう。

マイナスばかりの考え方を修正する
ものの見方や考え方は、性格に密着したものです。性格を変えられれば簡単なのですが、そうはいきません。なんでもマイナスに考えてしまうというあなたの性格の問題点をできるだけ修正して、自分に自信をもち、誇りをもてるようなことを考えましょう。
自分をほめてあげ自信をつけよう
うつになりやすい人は、つい「自分はダメな人間だ」と卑下してしまうので、自信をつけるためには、見方を変えて、ともかく自分をほめてあげましょう。そうすることで少しずつ、自分のマイナス面よりプラス面が見えてきます。自分は劣っていないと自分自身につねに言い聞かせ、自尊着心を高めていくようにしてください。

職場について

働き盛りの人は仕事の悩みが尽きない

リストラやいじめ、過重勤務など、職場には多くのストレスが渦巻いています。責任ある働き盛りでは、仕事のストレスを抱えきれず、うつ病にかかるケースが多くなっています。大きなプロジェクトを任されてそれがきっかけでうつ病になってしまうケースもあります。

責任ある年代の悩みは深い
40~50歳の働き盛りは、とくに注意が必要です。責任ある立場にあるこの年代のストレスの多くは、仕事関係にあります。リストラや将来への不安、あるいはリストラを言いわたすつらさを抱え、年功序列から実力主義になり、企業の要求はますます強くなっています。
世の中の流れや経済の行方がみえないまま、目の前に仕事が積まれていくぼかり。家族をかえりみる余裕もなく、家庭での居場所もやすらぎも、うすらぎがちです。
戦場でのケアが必要
このような状況で、うつ痛が激増しているにもかかわらず、心のケアはなおざりになっています。仕事が原因のうつ病と自殺を少しで滝なくすためには、職場でのサポート体制が欠かせません。

年代別男性の悩みベスト5

25~34歳
  1. 仕事上のこと
  2. 収入・家計・借金
  3. 家族以外との人間関係
  4. 自由な時間
  5. テキスト
  6. 自分の健康・病気

35~44歳
  1. 仕事上のこと
  2. 収入・家計・借金
  3. 自分の健康・病気
  4. 家族以外との人間関係
  5. 将来・老後の収入
45~54歳
  1. 仕事上のこと
  2. 自分の健康・病気
  3. 収入・家計・借金
  4. 将来・老後の介護
  5. 家族以外との人間関係

仕事をなまけているわけではない

職場でのサポートは、うつ病についての知識をもつことからはじまります。そして同僚や部下の様子の変化をいち早くキャッチできるようにしたいものです。

うつ病について知っておこう
職場でのサポートの第一は、上司も同僚もすべての人が、うつ病というものがあることを、きちんと認識しておくことです。うつ病は早期発見・早期治療が重要ですが、リラックスできる家庭よりむしろ、無理してがんばってしまう職場で症状は出やすいものです。

たとえば、これまでの仕事ぶりと比べ、仕事のスピードが遅くなる、ミスが増える、休みや遅刻が多くなるなどの変化があったら、怠けているなどと思わず、まずうつ病を疑ったほうがよいでしょう。イライラしがちで、人間関係でのトラブルが多くなるのも、病気のサインといえます。

悩みを聞いてあげて受診をすすめる
様子の変化に気づいたら、上司や仲のよい同僚が、ゆっくりと本人の話を聞いてあげましょう。悩みが解決できるようなことなら、その助力をしてあげます。
ただし、「自分が治してあげる」と張り切りすぎるのはよくありません。あくまで病気なので、専門的な治療が必要です。

まずは休暇をとることを提言し、家族とも連絡をとり、受診をすすめます。症状が回復してくると、本人は早期の職場復帰を望みますが、半日勤務から始めるなど、できるだけゆっくりと復帰させるよう、職場の人が配慮してあげる必要があります。

職業上の特性

  1. 過重労働
  2. 役割があいまい
  3. 役割の葛藤
  4. 自分のペーズでできない
  5. よい評価が得られにくい
コラム 会社の責任

過労の末に自殺を選ぶビジネスマン。会社の責任を問う裁判ではかつて、自殺は本人の責任との考え方を示すことガほとんどでした。しかし近年、会社に責任があるとの判例が増えています。自殺に追い込むまで過重労働させたり、うつ病への対策を講じないことは、会社の責任だと認識されるようになってきました。

上司と部下のためのチェックリスト

自分ではいい上司と思っていてもじつは部下は思った以上に苦労しているかもしれません。あるいは、だらだらしている部下だと思っていてもじつはうつの前兆かもしれません。

部下のストレスになる上司
  1. 感情の起伏が大きく、気分でカミナリを落とす
  2. 自分が常に正しいと考え、自分のやり方をおしつける
  3. 規則一点ばりで融通がきかない
  4. 好き嫌いが激しく、えこひいきと弱いものいじめをする
  5. 形勢が不利になると、さっさと責任転嫁する
  6. ささいな内容まで自分が首をつっこまないと気がすまない
  7. 物欲、金銭欲、地位欲が高い
  8. 経験の枠内でしかものごとを考えない
  9. 顔色をみながらみえすいたゴマをする
  10. 陰で他人の悪口を言う
  11. ささいなことまで仕切りたがる
最近の部下の様子
  1. 欠勤が増えてきた
  2. 会議での発言が減る
  3. 残業が増えた
  4. 簡単なことでも決められない
  5. 仕事の能率が落ちた
  6. 遅刻するようになった
  7. イライラしているようだ
  8. 風邪をひきやすくなった
  9. 死にたい!やめたいともらすことがある
  10. 目を合わせないようにする

うつ病患者さんに対してのコミュニケーション しほしいこと、してほしくないこと

まずは相手の言うことを受け止める

うつ病の患者さんは多くの悩みを抱えています。周囲の人がまずできるのは相手を責めたり意見をさしはまず、心の問題を真摯に聞いてあげることです。

話を聞くときの心掛け

周囲の人の役割は、まず話を聞くことから始める。

  1. 流れの中でとらえる
    うつ病の人は今、現在しかみていません。今は悪くても将来も同様ではないことを伝える。
  2. 正しい知識を持つ
    結果的に相手に役立つアドバイスが出来る
  3. ペー-酢にのらない
    真摯に話を聞くことと、相手に感情移入することは別。むしろ客観的に冷静に聞く。
  4. 拒否しない
    相手の言うことを拒否せず、つじつまが合わないようなこともいったんは受け止める。
  5. 決めつけない
    それは○○だ!○○すべき!と決めつけるとまじめな性格の人だけに負担になることもあります。
周囲の人も病気について勉強し、正しい知識を身につける
うつ病の患者さんは、心身に不快感があるため、ささいなことでも不機嫌になったり、人を攻撃したり、感情的な言動をすることがあります。また治りかけには、元気にはなっても、もうひとつ行動を起こしにくいことがあります。
このようなとき、まともに反応して口争いになったり、「仕事を怠けているだけなのではないか」と、誤解して責めてしまう場合もあります。周囲の人は、病気についての正しい知識をもち、できるだけ的確な対応をして、本人の心理的負担を軽減してあげましょう。
悩みを真摯に受け止める
患者さんは、日ごろからストレスになっていた事柄をはじめ、病気への不安、気力の出ない自分へのあせりなど、さまざまな悩みを抱えています。周囲の人は、その心の内を聞いてあげてください。悩みは、人に話すだけで、ずいぶん心が軽くなるものです。
相手が話すように仕向ける
話を聞くときは、問いたださず、自分から話しやすい雰囲気をつくるようにします。ときに妄想を抱いていることもありますが、否定せずに聞いてあげます。

敬遠されても手をさしのべる

話しかけたり世話をされるのをいやがる態度をみせても、じつは周囲の人たちが手をさしのべてくれるのを待っています。関わりを避けずに働きかけてください。

うつの方は、孤独感が強い

うつ病の方は、周囲があれこれ心配して話しかけても、ささいなことで怒ったり、返事をしないことがあります。周囲の人は、腫れ物にさわるように、接触を避けてしまうことがあります。しかし本人は、かまわれるのがいやなわけでは、けっしてありません。
実際には、孤独感におそわれています。たとえ拒絶の反応をみせても、内心では、家族や親しい人からの接触を待っています。そのことを知っておき、つねに温かく見守っていることを、言葉や態度で示してあげてください。

励ましは逆効果のこともある

うつ病の方の悩みを聞いたり、落ち込んだ状況をみていると、どうしても「がんばって」と励ましたくなるものです。けれど本人は、がんばりたいのにがんばれないのであり、そんな自分を責めて苦しんでいます。人から励まされると、よけいに自分を追いつめてしまいます。また、気力が落ち込んでいるときは、散歩やスポーツをむりにすすめるのもやめまt よう。

言って欲しくないこと・してほしくないこと
  • がんばれと言わないで
  • 同情しないでほしい
  • 何をやっているだと責めないで
  • なにかするように励まさないで
  • 原因は何かとといつめないで
言って欲しいこと・してほしいこと
  • 普段どおりに接してほしい
  • 寛容な態度をとってほしい
  • 静かに見守ってほしい

早期・発見・早期治療

うつ病も早期発見、早期治療が大事

治療しないまま放置しておくと、重症化して治療が困難になり、自殺の危険性も高くなります。治療法が確立されているので、症状があったら早期に精神科を受診しましょう。

早期発見・早期治療が大原則
うつ病は、病気の重症化と自殺を防ぐために治療が必要です。
心の問題だからと気力でなんとかしようとするのは大間違いです。この病気は脳の風邪であり、脳にトラブルが起きているのがうつ病です。
そのトラブルを治す薬があるのですから、うつ病と思われる症状があったら早めに受診しましょう。
偏見や誤解をもたずに精神科を受診しよう
受診は、総合病院の精神科か精神科のクリニックがよいでしょう。精神科というといまだに抵抗かのある人が少なくありません。しかし、風邪をひいたら内科に行くのと同様です。

こんな様子ならうつ病を疑ってみる

うつ病の回復や再発予防には、周囲の人のサポートも必要です。病気のサインは、本人よりむしろ周囲の人のほうが先に気づくことも多いので、まず周囲から受診をすすめてあげる必要があります。

苦しくてもまわりに助けてを求めることが多い
症状が軽いうちは、本人は心身の変化を感じないことがあります。
また、変調を自覚しても周囲の迷惑をかけたくないと思い、あまり助けを求めません。
しかし、周囲の目には、口数が少なくなってイライラしている。仕事の能率が落ちたり、ミスが増えたりして弱きな言動が増えたりします。明かにいつも違うとわかります。
理論的に説得するのがよ方法
本人に聞いても、「大丈夫」というでしょうかが、うつ病の疑いがあることやきちんと治療すれば治ることを説明し、休養や受診をすすめます。
うつ病になりやすい人はまじめなのできちんと説明すれば聞いてくれます。
自殺という最悪の事態を防げるかどうかは周囲がいかに早く気づくかにかかっています。

「コラム」ほほえみうつ病

うつ病なのに、顔はいつもにこにこしている場合があります。これを「ほほえみうつ病」と呼ぶことがあります。ほんとうはとても苦しんでいるのですが、必死に努力してほほえんでいるのです。
これも、うつ病になりやすい人の性格からといえます。周囲に気を遣い、なんでもまじめに一生懸命やってしまうのです。

こんな様子に注意

  • だらしない印象になってきた。うつになると入浴や身だしなみに気を使わない
  • 絶対におもしろいはずのことでもつまらなそうにしていて笑顔にならない
  • いつもきちんとやっていたことができなくなり、ぼーっとしている。
  • じっとしていられなくて不機嫌な顔で同じところをうろうろしている。

うつ病の前兆

自分でもわかる前兆を見逃さない

うつ病は、一度症状が消失しても、繰り返すことがよくあります。自分の心身の状態に目を向け、症状が再発する前兆を見逃さないように対処しておくことが大切です。

こんな気分はうつの前兆

うつ病のきっかけが自分ではわからないことも多くあります。さしたる原因が思い浮かばなくても気分が落ち込んだときは要注意です。
自分では単なるストレスの蓄積だと思っていてもそれがうつ病の前兆ということも。ストレスがたまりすぎないように注意する

  • 仕事をつい後回しにしている
  • すぐに疲れてしまう
  • ささいなことにイライラする
  • 最近、楽しいことがない
  • 性欲がなくなってきた
うつの症状は再発しやすい
うつ病は、適切な治療をすれば治りやすい病気ですが、再発しやすいのも確かです。
人によっては何回も繰り返してしまうことがあります。うつ病が再発するときは、なんらかの前兆があるはずです。食欲がなくなる、眠れなくなる、話をしたくなくなるなど前兆となる心身の変化はさまざまです。
うつを繰り返している人は前兆が分かる
再発を予防するには、これら前兆となることを早めに発見し、早急に対処しておくことが大切です。
また、何回かうつ症状を繰り返している人ならどのような前兆であるか、だんだんわかってきます。
動けなくなる前に早めの休養を
心身の変調を感じたらともかく休養です。仕事のことなど気にかかることはあるでしょうが、再発すれば仕事どころでなくなる可能性があるのですから心を決めて休暇をとってしまいます。
周囲の人のアドバイスも
本人は心身の不調を感じていなくても家族や周囲の人のほうが敏感に気づくこともあるので、そのときは休養をすすめます。
悩み事は遠慮しないで、誰かに相談し、できるだけ気持ちを軽くしておきます。ただでさえまじめに悩むタイプであることを自覚しておきます。

精神療法

自分に合った療法を根気よく続ける

うつ病の治療は、休養して薬をのめば終わりというものではありません。ストレスがきっかけになっている.ので、さまざまな精神療法をおこない、本人自身に心の問題に気づいてもらいます。

医師と患者が双方で共に考える
精神療法というと特別な療法をイメージするかもしれませんが、基本は医師と十分に話し合うことです。
医師はすぐに役立つようなアドバイスをしたり、生き方を導いてくれるわけではありません。あくまで患者さんにあります。
生活のこと、考え方などを医師に話しておきます。
それによって患者さん自身が自分の心のあり方に気づき、自分に自信をもったり、今後の生活の仕方などを考えて考えていくのです。
すぐに効く方法などはない気長に。
精神療法はさまざまあります。どの方法を用いるかは医師の流儀によりますが、いずれにしても一朝一夕に効果が現れるモノではありません。
各種の精神療法は受け身のものではなく、あくまで患者自身の気づきを助ける手段なのです。

主な精神療法

家族療法
患者本人だけでなく家族もともに受ける
認知療法
うつ病の治療のためにつくられた療法
森田療法
古くからある日本独特の精神療法
音楽療法
音楽を聞いたり演奏したりしてリラックスし心を癒やす
バイオフィードバック
機械を用いてリラックスする訓練
行動療法
行動主義心理学に基づく行動訓練
カウンセリング
カウンセラーと話し合ううちに自分で立ち直らせる
箱庭療法
砂や木、石などを使って箱庭をつくる。
内観療法
自分の心を静かに見つめることで問題点に気づかせる

物理療法

電気を理ようした物理療法も有効な手段

電気などで脳に物理的な刺激を与え、神経伝達物質の状態を改善する治療法があります。抗うつ薬があまり効かない場合などに大変効果を発揮します。

これまでの通電療法が改善されている
かねてから精神科には脳に通電して刺激する治療法がありました。かつては一般にあまりよいイメージをもたれていませんでしたが、現在ではこれまでの手法より安全に改良した、修正型通電療法が確立しています。
効果的で安全な修正型通電療法
修正型通電療法は、抗うつ薬が効きにくく、自殺する可能性の高い方には有効です。以前の修正型通電療法では電気を通すと全身がけいれんを起こすという問題がありました。しかし、修正型通電療法では通電前に筋肉を弛緩させる薬を使用するのでけいれんは起きません
体はけいれんしませんが、脳では電気の刺激でけいれん発作と同じような反応が起きます。それにより、セロトニンの働きが活性化されます。
入院治療
修正型通電療法は、入院し、全身麻酔をかけて行われます。早急な治療が必要なときは週3回以上、それ以外は週1~2回全部で6~10回通電します。

磁気刺激TMS

電気のかわりに磁気を脳に起こる治療法があります。頭部に磁気コイルをのせ、強力な磁気を100回ほど脳に送ります。磁気は皮膚や頭蓋骨を通ると脳内で電流になり、通電療法と同じような効果が得られます。
この治療法のメリットは、危険性がないので、入院せずに外来で行えます。
音や振動も感じることがなく受けられます。健康封建は適用外ですが、欧米では盛んに行われ一定以上の効果を得ています。

光刺激療法

人工的な強い光を2時間くらい当てる治療法です。
うつなどの感情障害や睡眠障害に効果があります。
季節的にうつがあらわれるようなタイプの場合、朝に光を照射すると比較的効果があらわれやすいです。

薬物療法

脳のトラブルには薬が必要

うつ病の治療には、薬物療法が効果的です。効いてくるまでに多少の時間はかかりますが、現在の薬は、効果が高く、安全に使うことができます。

ゆっくりでも高い効果が得られる
薬物療法には、抗うつ薬が中心です。抗うつ薬をためらってしまう
抗うつ薬には、脳の神経伝達物質の異常を調整する作用があり、気分の落ち込みからさまざまな身体症状まで、うつ病であらわれる症状のすべてを改善する効果があります。
ただ、効き方はとてもゆっくりで効果が自覚できるまで2~3週間かかります。
また、症状がよくなってからも長い間、服用を続ける必要があります。
心配しないで服用する
長期使用で一番心配されるのは、副作用ですが、現在主流になっている薬は、副作用や依存症が少なく安全性の高いものです。薬には頼りたくないという人もいますが、正しく使用すれば高い効果が得られるので早期のうちに処方どおり服用しましょう。抗うつ薬以外には、睡眠薬、抗不安薬、気分安定薬などが必要に応じて処方されます。

うつ病治療に使う薬

  • 気分安定薬
    もともとは、躁とうつの波をなくす目的で躁うつ病の治療に使われてきた薬です。最近は、抗うつ薬がなかなか効果をあらわさない場合に、抗うつ薬の効果を増強させる目的で使用されています。
  • 抗不安薬
    不安感やイライラ感、焦燥感などが強い場合に、短期間使用することガあります。ただし、うつの症状を治す効果はありません。
  • 抗うつ薬
    脳の神経伝達物質を調整して、症状を改善する薬で、2週間くらいかかると思ってうつ病の治療には欠かせません。抗うつ薬の歴史は長く、さまざまな種類があります。それぞれ化学構造も薬理作用も違いますが、同じような効果を発揮します。かつては口の渇きや便秘、目のかすみなどの副作用が問題になっていましたが、現在ではその心配は少なくなっています。
  • 睡眠薬
    うつ病の患者さんは、不眠症状が強いことが多いものです。眠れないと体が休まらず、治療がうまく進みません。睡眠薬がないと眠れなくなるのではないかと心配する人もいますが、それよりもまず、初期にしっかりと睡眠薬を使用して、十分に睡眠をとっておくことが大切です。

感情調節のメカニズムに働きかける

うつ状態は、脳内のセロトニンが不足することで起きると考えられています。抗うつ薬は神経細胞間のセロトニンを増やし、感情調節がうまく働くよう作用します。

セロトニン不足がうつ病のメカニズム
うつ病では、感情の調整に働く、セロトニンという神経伝達物質が不足していると言われています。
セロトニンは、神経細胞の末端から放出され、ほかの神経細胞末端にある受容体に受け止められて情報を伝達します。しかし、放出されたセロトニンの一部はもとの神経細胞に再吸収されます。
再とりこみを阻止する
抗うつ薬んは多種あり、作用は多少違います。基本的には、再吸収を阻害するよう働き、セロトニンの量を減らさないようにして症状を改善します。

抗うつ薬の種類と作用、副作用

抗うつ薬には、「三環系、四環系」「SSRI」「SNRI」などがあります。薬の効きかたには個人差があるので効果と副作用を考え合わせながらその人に合った薬が選択されます。

三環系、四環系
三環系はもっとも古くから使用されていた抗うつ薬で、化学構造上3つの環をもっていることからこの名がついています。
その次に開発されたのが、環が4つある四環系です。
どちらもセロトニンとノルアドレナリンのどちか、あるいは両方の働きを強める作用があります。ノルアドレナリンはセロトニンと一緒に働いて、気分の調整をする神経伝達物質です。
三環系は、副作用がでやすいのですが、効果は安定しています。四環系は、副作用が少ないものの、効果面ではやや劣ります。

  • 副作用
    このタイプの薬は、同じ神経伝達アセチルコリンの働きを抑制してしまうため、抗コリン作用とよばれる、
    口の渇き、便秘、排尿困難などの副作用があらわれることがあります。また、起立性低血圧、脈が速くなる、眠気、食欲克進などの副作用があらわれることもあります。
    高齢者では、記憶障害や、自分のいる場所や時間の経過が認識でけんとうしききなくなる、見当識障害が出ることもあります。三環系の抗うつ薬は、これらの副作用が出やすいのですが、四環系は比較的少なくなっています。
SSRI
三環系・四環系と異なり、セロトニンの再吸収だけ強く阻害し、ノルアドレナリンなど他の神経伝達物質の再吸収は、ほとんど阻害しません。そのため副作用が少なく、安全性の高い薬です。

  • 副作用
    抗コリン作用は少ないのですが、まれに違う副作用があらわれることがあります。よくみられるのは、吐き気や下痢などの消化器症状です。性機能障害があらわれる可能性もあります。ただ、これらの副作用は、一〜二週間くらいでおさまるのがふつうです。また、とくに若年層でイライラ感がつのることがあるので、いちおう注意してください。なおS S R I の服用を急にやめると、めまい、イライラ感、気分の悪化、頭痛などの症状が出ることがあります。しかしこうした症状も1~2週間でおさまります。
SNRI
2000年に認可された、最新の抗うつ薬です。セロトニンとノルアドレナリン、両方の再吸収を阻害する働きがあります。SSRI同様、他の神経伝達物質への影響はほとんどありません。うつ症状を改善する作用も強く、SSRIが効きにくい重症の患者さんにも有効です。

  • 副作用
  • 抗コリン作用も消化器症状も、あらわれる可能性は少なくなっています。まれに、めまい、不安感、顔面紅潮、排尿障害があらわれることもあります。

その他の抗うつ薬
以上にあげた薬以外にも、構造や薬理作用がまったく異なる抗うつ薬があります。たとえば、副作用が少なく使いやすいトラゾドン、もともと胃薬として使用されていたスルビリドなどです。これらは効果が多少劣りますが、安全に使える強みがあります。

抗うつ薬と併用する薬

抗うつ薬と併用することで、効果を強める薬があります。たとえばリチウムは、抗うつ薬が効きにくい患者さんに有効であることが知られています。そのほか気分安定薬、甲状腺ホルモン薬、中枢神経刺激薬、抗精神病薬、ドーパミン受容体アゴニストなどが使われます。

治療

「何もしない」ことが最良の治療

治療の基本は、休養と薬です。完全に治るまで時間はある程度必要ですが、焦らずに気長に治療を続けます。うつ病は必ず治ります。

一進一退ヺを繰り返しながら快方に向かう
うつ病だからと、悲観することはありません。この病気は、治療をすれば必ず治ります。
ただし、治療をはじめたからといって1日や2日で治るわけではありません。一気に快方に向かうケースはそれほど多くなくてたいていは一気に快方に向かうケースはそれほど多くなくて、いったんよくなくなったと思っても翌日には悪化したりして一進一退を繰り返します。そうやって次第に治癒に向かっていきます。
焦らずに気長に
少しくらいよくなったからといって勝手に治療をやめてしまわずに医師とよく話し合いながら治療を続けます。
休養と薬が治療の二本柱
治療の基本は、まず休養をとることです。有給休暇をとったり主婦なら家事をほかの人に頼んで、ゆっくり体を休めます。
というと簡単なようですが、うつ病になりやすいタイプの人は、「休むと悪い」「自分がやらなくては」となかなか休養したがらないタイプが多いのです。
「今は休むべき時」と考え、心身の安静をはかりましょう。
薬とは長いつきあいになると覚悟を決める
基本のもうひとつは、薬による治療です。脳のトラブルであるうつ病の治療には薬がとてもよく効きます。長期間になりますが、医師の指示どおりきちんと服用します。

別の病気が原因のうつ

更年期障害のひとつとしてのうつ

心身ともに変化する更年期は、うつ病になりやすい時期です。更年期障害についてはこちら
しかし、更年期障害と症状が似ているため、軽い場合には見逃されてしまうこともあります。

ホルモンの大きな変動が起こる時期
うつ病は女性に多く起こりますが、もっとも発症しやすい時期に40歳代後半から50歳代の更年期があります。
更年期には、体にさまざまな症状があらわれます。これの症状は、うつ病の身体症状ととてもよく似ています。そして更年期の精神症状として、うつがあらわれることも少なくありません。
更年期には心の問題も生じやすい
更年期のホルモンバランスの崩れという生理的な変化もうつ病の要因のひとつです。
しかし、更年期には心理的な変化を伴いやすいことも発症に大きく関わっています。
悩みや不安が多い時期
この年代には、閉経を迎え、女性としての衰えや老いを感じたり健康への不安などが頭を占めるようになります。子供は親離れをし、夫は多忙で留守が多く、夫婦関係も冷え込みます。
こうした心理的な要因がストレスとなって生理的問題のうえに重なっていくために、うつ病を発症しやすいのです。
更年期の女性は、うつ症状を自覚することが多いのですが、軽い場合は、たんに更年期障害だろうと見過ごすこともあるので、注意が必要です。

痴呆にうつ病が隠れているケースも

高齢になると、痴呆で痴呆症状とうつの症状が混在することがあります。痴呆だと思ったらうつ病になったり、、痴呆の患者さんにうつ病があらわれることもあります。

高齢者のうつ病にぼけの症状がでることも
高齢になると、物忘れが激しくなり、最近のことが覚えられない、判断力が低下して日常の仕事ができなくなる、動作や日常の仕事ができなくなる、動作や行動が緩慢になるなどの痴呆症状があらわれてくることがあります。
このような症状が出てきたのでお年寄りに特有のぼけだろうと思っていたらじつはうつ病だったというケースもよくあります。高齢者のうつ病には、一時期的にぼけ症ぞゆがあらわれることがあるからです。うつ病の治療をすればぼけ症状も治るため、仮性痴呆といわれています。
痴呆の高齢者がうつ病になることも
一方で、痴呆のお年寄りが、うつ病になることもあります。アルツハイマー棒の3割にうつ病があらわれます。この場合、うつ病の症状はうつ病の治療で治すことが出来ます。
どちらにしても、うつ病の治療が是非必要なので、痴呆状態n隠れた病をきちんと発見しておくことが大切になります。

うつ病と痴呆の比較

  うつ病 痴呆
発病前性格 几帳面・まじめ 特定のものはない
誘因 考えられることがある はっきりわからない
進み方 急に進む ゆっくり進む
睡眠傾向 不眠、早朝に目がさめる うとうとすることが多い
日内変動 朝に具合が悪い 夜に具合が悪い
社交性 他人を避けようとする つきあおうとすることが多い