早期・発見・早期治療

うつ病も早期発見、早期治療が大事

治療しないまま放置しておくと、重症化して治療が困難になり、自殺の危険性も高くなります。治療法が確立されているので、症状があったら早期に精神科を受診しましょう。

早期発見・早期治療が大原則
うつ病は、病気の重症化と自殺を防ぐために治療が必要です。
心の問題だからと気力でなんとかしようとするのは大間違いです。この病気は脳の風邪であり、脳にトラブルが起きているのがうつ病です。
そのトラブルを治す薬があるのですから、うつ病と思われる症状があったら早めに受診しましょう。
偏見や誤解をもたずに精神科を受診しよう
受診は、総合病院の精神科か精神科のクリニックがよいでしょう。精神科というといまだに抵抗かのある人が少なくありません。しかし、風邪をひいたら内科に行くのと同様です。

うつ病の前兆

自分でもわかる前兆を見逃さない

うつ病は、一度症状が消失しても、繰り返すことがよくあります。自分の心身の状態に目を向け、症状が再発する前兆を見逃さないように対処しておくことが大切です。

こんな気分はうつの前兆

うつ病のきっかけが自分ではわからないことも多くあります。さしたる原因が思い浮かばなくても気分が落ち込んだときは要注意です。
自分では単なるストレスの蓄積だと思っていてもそれがうつ病の前兆ということも。ストレスがたまりすぎないように注意する

  • 仕事をつい後回しにしている
  • すぐに疲れてしまう
  • ささいなことにイライラする
  • 最近、楽しいことがない
  • 性欲がなくなってきた
うつの症状は再発しやすい
うつ病は、適切な治療をすれば治りやすい病気ですが、再発しやすいのも確かです。
人によっては何回も繰り返してしまうことがあります。うつ病が再発するときは、なんらかの前兆があるはずです。食欲がなくなる、眠れなくなる、話をしたくなくなるなど前兆となる心身の変化はさまざまです。
うつを繰り返している人は前兆が分かる
再発を予防するには、これら前兆となることを早めに発見し、早急に対処しておくことが大切です。
また、何回かうつ症状を繰り返している人ならどのような前兆であるか、だんだんわかってきます。
動けなくなる前に早めの休養を
心身の変調を感じたらともかく休養です。仕事のことなど気にかかることはあるでしょうが、再発すれば仕事どころでなくなる可能性があるのですから心を決めて休暇をとってしまいます。
周囲の人のアドバイスも
本人は心身の不調を感じていなくても家族や周囲の人のほうが敏感に気づくこともあるので、そのときは休養をすすめます。
悩み事は遠慮しないで、誰かに相談し、できるだけ気持ちを軽くしておきます。ただでさえまじめに悩むタイプであることを自覚しておきます。

精神療法

自分に合った療法を根気よく続ける

うつ病の治療は、休養して薬をのめば終わりというものではありません。ストレスがきっかけになっている.ので、さまざまな精神療法をおこない、本人自身に心の問題に気づいてもらいます。

医師と患者が双方で共に考える
精神療法というと特別な療法をイメージするかもしれませんが、基本は医師と十分に話し合うことです。
医師はすぐに役立つようなアドバイスをしたり、生き方を導いてくれるわけではありません。あくまで患者さんにあります。
生活のこと、考え方などを医師に話しておきます。
それによって患者さん自身が自分の心のあり方に気づき、自分に自信をもったり、今後の生活の仕方などを考えて考えていくのです。
すぐに効く方法などはない気長に。
精神療法はさまざまあります。どの方法を用いるかは医師の流儀によりますが、いずれにしても一朝一夕に効果が現れるモノではありません。
各種の精神療法は受け身のものではなく、あくまで患者自身の気づきを助ける手段なのです。

主な精神療法

家族療法
患者本人だけでなく家族もともに受ける
認知療法
うつ病の治療のためにつくられた療法
森田療法
古くからある日本独特の精神療法
音楽療法
音楽を聞いたり演奏したりしてリラックスし心を癒やす
バイオフィードバック
機械を用いてリラックスする訓練
行動療法
行動主義心理学に基づく行動訓練
カウンセリング
カウンセラーと話し合ううちに自分で立ち直らせる
箱庭療法
砂や木、石などを使って箱庭をつくる。
内観療法
自分の心を静かに見つめることで問題点に気づかせる

物理療法

電気を理ようした物理療法も有効な手段

電気などで脳に物理的な刺激を与え、神経伝達物質の状態を改善する治療法があります。抗うつ薬があまり効かない場合などに大変効果を発揮します。

これまでの通電療法が改善されている
かねてから精神科には脳に通電して刺激する治療法がありました。かつては一般にあまりよいイメージをもたれていませんでしたが、現在ではこれまでの手法より安全に改良した、修正型通電療法が確立しています。
効果的で安全な修正型通電療法
修正型通電療法は、抗うつ薬が効きにくく、自殺する可能性の高い方には有効です。以前の修正型通電療法では電気を通すと全身がけいれんを起こすという問題がありました。しかし、修正型通電療法では通電前に筋肉を弛緩させる薬を使用するのでけいれんは起きません
体はけいれんしませんが、脳では電気の刺激でけいれん発作と同じような反応が起きます。それにより、セロトニンの働きが活性化されます。
入院治療
修正型通電療法は、入院し、全身麻酔をかけて行われます。早急な治療が必要なときは週3回以上、それ以外は週1~2回全部で6~10回通電します。

磁気刺激TMS

電気のかわりに磁気を脳に起こる治療法があります。頭部に磁気コイルをのせ、強力な磁気を100回ほど脳に送ります。磁気は皮膚や頭蓋骨を通ると脳内で電流になり、通電療法と同じような効果が得られます。
この治療法のメリットは、危険性がないので、入院せずに外来で行えます。
音や振動も感じることがなく受けられます。健康封建は適用外ですが、欧米では盛んに行われ一定以上の効果を得ています。

光刺激療法

人工的な強い光を2時間くらい当てる治療法です。
うつなどの感情障害や睡眠障害に効果があります。
季節的にうつがあらわれるようなタイプの場合、朝に光を照射すると比較的効果があらわれやすいです。

薬物療法

脳のトラブルには薬が必要

うつ病の治療には、薬物療法が効果的です。効いてくるまでに多少の時間はかかりますが、現在の薬は、効果が高く、安全に使うことができます。

ゆっくりでも高い効果が得られる
薬物療法には、抗うつ薬が中心です。抗うつ薬をためらってしまう
抗うつ薬には、脳の神経伝達物質の異常を調整する作用があり、気分の落ち込みからさまざまな身体症状まで、うつ病であらわれる症状のすべてを改善する効果があります。
ただ、効き方はとてもゆっくりで効果が自覚できるまで2~3週間かかります。
また、症状がよくなってからも長い間、服用を続ける必要があります。
心配しないで服用する
長期使用で一番心配されるのは、副作用ですが、現在主流になっている薬は、副作用や依存症が少なく安全性の高いものです。薬には頼りたくないという人もいますが、正しく使用すれば高い効果が得られるので早期のうちに処方どおり服用しましょう。抗うつ薬以外には、睡眠薬、抗不安薬、気分安定薬などが必要に応じて処方されます。

うつ病治療に使う薬

  • 気分安定薬
    もともとは、躁とうつの波をなくす目的で躁うつ病の治療に使われてきた薬です。最近は、抗うつ薬がなかなか効果をあらわさない場合に、抗うつ薬の効果を増強させる目的で使用されています。
  • 抗不安薬
    不安感やイライラ感、焦燥感などが強い場合に、短期間使用することガあります。ただし、うつの症状を治す効果はありません。
  • 抗うつ薬
    脳の神経伝達物質を調整して、症状を改善する薬で、2週間くらいかかると思ってうつ病の治療には欠かせません。抗うつ薬の歴史は長く、さまざまな種類があります。それぞれ化学構造も薬理作用も違いますが、同じような効果を発揮します。かつては口の渇きや便秘、目のかすみなどの副作用が問題になっていましたが、現在ではその心配は少なくなっています。
  • 睡眠薬
    うつ病の患者さんは、不眠症状が強いことが多いものです。眠れないと体が休まらず、治療がうまく進みません。睡眠薬がないと眠れなくなるのではないかと心配する人もいますが、それよりもまず、初期にしっかりと睡眠薬を使用して、十分に睡眠をとっておくことが大切です。

感情調節のメカニズムに働きかける

うつ状態は、脳内のセロトニンが不足することで起きると考えられています。抗うつ薬は神経細胞間のセロトニンを増やし、感情調節がうまく働くよう作用します。

セロトニン不足がうつ病のメカニズム
うつ病では、感情の調整に働く、セロトニンという神経伝達物質が不足していると言われています。
セロトニンは、神経細胞の末端から放出され、ほかの神経細胞末端にある受容体に受け止められて情報を伝達します。しかし、放出されたセロトニンの一部はもとの神経細胞に再吸収されます。
再とりこみを阻止する
抗うつ薬んは多種あり、作用は多少違います。基本的には、再吸収を阻害するよう働き、セロトニンの量を減らさないようにして症状を改善します。

抗うつ薬の種類と作用、副作用

抗うつ薬には、「三環系、四環系」「SSRI」「SNRI」などがあります。薬の効きかたには個人差があるので効果と副作用を考え合わせながらその人に合った薬が選択されます。

三環系、四環系
三環系はもっとも古くから使用されていた抗うつ薬で、化学構造上3つの環をもっていることからこの名がついています。
その次に開発されたのが、環が4つある四環系です。
どちらもセロトニンとノルアドレナリンのどちか、あるいは両方の働きを強める作用があります。ノルアドレナリンはセロトニンと一緒に働いて、気分の調整をする神経伝達物質です。
三環系は、副作用がでやすいのですが、効果は安定しています。四環系は、副作用が少ないものの、効果面ではやや劣ります。

  • 副作用
    このタイプの薬は、同じ神経伝達アセチルコリンの働きを抑制してしまうため、抗コリン作用とよばれる、
    口の渇き、便秘、排尿困難などの副作用があらわれることがあります。また、起立性低血圧、脈が速くなる、眠気、食欲克進などの副作用があらわれることもあります。
    高齢者では、記憶障害や、自分のいる場所や時間の経過が認識でけんとうしききなくなる、見当識障害が出ることもあります。三環系の抗うつ薬は、これらの副作用が出やすいのですが、四環系は比較的少なくなっています。
SSRI
三環系・四環系と異なり、セロトニンの再吸収だけ強く阻害し、ノルアドレナリンなど他の神経伝達物質の再吸収は、ほとんど阻害しません。そのため副作用が少なく、安全性の高い薬です。

  • 副作用
    抗コリン作用は少ないのですが、まれに違う副作用があらわれることがあります。よくみられるのは、吐き気や下痢などの消化器症状です。性機能障害があらわれる可能性もあります。ただ、これらの副作用は、一〜二週間くらいでおさまるのがふつうです。また、とくに若年層でイライラ感がつのることがあるので、いちおう注意してください。なおS S R I の服用を急にやめると、めまい、イライラ感、気分の悪化、頭痛などの症状が出ることがあります。しかしこうした症状も1~2週間でおさまります。
SNRI
2000年に認可された、最新の抗うつ薬です。セロトニンとノルアドレナリン、両方の再吸収を阻害する働きがあります。SSRI同様、他の神経伝達物質への影響はほとんどありません。うつ症状を改善する作用も強く、SSRIが効きにくい重症の患者さんにも有効です。

  • 副作用
  • 抗コリン作用も消化器症状も、あらわれる可能性は少なくなっています。まれに、めまい、不安感、顔面紅潮、排尿障害があらわれることもあります。

その他の抗うつ薬
以上にあげた薬以外にも、構造や薬理作用がまったく異なる抗うつ薬があります。たとえば、副作用が少なく使いやすいトラゾドン、もともと胃薬として使用されていたスルビリドなどです。これらは効果が多少劣りますが、安全に使える強みがあります。

抗うつ薬と併用する薬

抗うつ薬と併用することで、効果を強める薬があります。たとえばリチウムは、抗うつ薬が効きにくい患者さんに有効であることが知られています。そのほか気分安定薬、甲状腺ホルモン薬、中枢神経刺激薬、抗精神病薬、ドーパミン受容体アゴニストなどが使われます。

治療

「何もしない」ことが最良の治療

治療の基本は、休養と薬です。完全に治るまで時間はある程度必要ですが、焦らずに気長に治療を続けます。うつ病は必ず治ります。

一進一退ヺを繰り返しながら快方に向かう
うつ病だからと、悲観することはありません。この病気は、治療をすれば必ず治ります。
ただし、治療をはじめたからといって1日や2日で治るわけではありません。一気に快方に向かうケースはそれほど多くなくてたいていは一気に快方に向かうケースはそれほど多くなくて、いったんよくなくなったと思っても翌日には悪化したりして一進一退を繰り返します。そうやって次第に治癒に向かっていきます。
焦らずに気長に
少しくらいよくなったからといって勝手に治療をやめてしまわずに医師とよく話し合いながら治療を続けます。
休養と薬が治療の二本柱
治療の基本は、まず休養をとることです。有給休暇をとったり主婦なら家事をほかの人に頼んで、ゆっくり体を休めます。
というと簡単なようですが、うつ病になりやすいタイプの人は、「休むと悪い」「自分がやらなくては」となかなか休養したがらないタイプが多いのです。
「今は休むべき時」と考え、心身の安静をはかりましょう。
薬とは長いつきあいになると覚悟を決める
基本のもうひとつは、薬による治療です。脳のトラブルであるうつ病の治療には薬がとてもよく効きます。長期間になりますが、医師の指示どおりきちんと服用します。

別の病気が原因のうつ

更年期障害のひとつとしてのうつ

心身ともに変化する更年期は、うつ病になりやすい時期です。更年期障害についてはこちら
しかし、更年期障害と症状が似ているため、軽い場合には見逃されてしまうこともあります。

ホルモンの大きな変動が起こる時期
うつ病は女性に多く起こりますが、もっとも発症しやすい時期に40歳代後半から50歳代の更年期があります。
更年期には、体にさまざまな症状があらわれます。これの症状は、うつ病の身体症状ととてもよく似ています。そして更年期の精神症状として、うつがあらわれることも少なくありません。
更年期には心の問題も生じやすい
更年期のホルモンバランスの崩れという生理的な変化もうつ病の要因のひとつです。
しかし、更年期には心理的な変化を伴いやすいことも発症に大きく関わっています。
悩みや不安が多い時期
この年代には、閉経を迎え、女性としての衰えや老いを感じたり健康への不安などが頭を占めるようになります。子供は親離れをし、夫は多忙で留守が多く、夫婦関係も冷え込みます。
こうした心理的な要因がストレスとなって生理的問題のうえに重なっていくために、うつ病を発症しやすいのです。
更年期の女性は、うつ症状を自覚することが多いのですが、軽い場合は、たんに更年期障害だろうと見過ごすこともあるので、注意が必要です。

痴呆にうつ病が隠れているケースも

高齢になると、痴呆で痴呆症状とうつの症状が混在することがあります。痴呆だと思ったらうつ病になったり、、痴呆の患者さんにうつ病があらわれることもあります。

高齢者のうつ病にぼけの症状がでることも
高齢になると、物忘れが激しくなり、最近のことが覚えられない、判断力が低下して日常の仕事ができなくなる、動作や日常の仕事ができなくなる、動作や行動が緩慢になるなどの痴呆症状があらわれてくることがあります。
このような症状が出てきたのでお年寄りに特有のぼけだろうと思っていたらじつはうつ病だったというケースもよくあります。高齢者のうつ病には、一時期的にぼけ症ぞゆがあらわれることがあるからです。うつ病の治療をすればぼけ症状も治るため、仮性痴呆といわれています。
痴呆の高齢者がうつ病になることも
一方で、痴呆のお年寄りが、うつ病になることもあります。アルツハイマー棒の3割にうつ病があらわれます。この場合、うつ病の症状はうつ病の治療で治すことが出来ます。
どちらにしても、うつ病の治療が是非必要なので、痴呆状態n隠れた病をきちんと発見しておくことが大切になります。

うつ病と痴呆の比較

  うつ病 痴呆
発病前性格 几帳面・まじめ 特定のものはない
誘因 考えられることがある はっきりわからない
進み方 急に進む ゆっくり進む
睡眠傾向 不眠、早朝に目がさめる うとうとすることが多い
日内変動 朝に具合が悪い 夜に具合が悪い
社交性 他人を避けようとする つきあおうとすることが多い

うつ病の原因

環境、性別、ストレスなどが複合的に関係する

うつ病は、たったひとつの原因で起こる病気ではありません。環境や性別、ストレスなどの多様な要素がかさなったときに耐えきれなくなってしまうのです。

遺伝<生活環境
うつ病になる原因は遺伝だと勘違いしている人が多いのですが、もっと重要な原因は別にあります。
たしかに、うつ病になりやすい几帳面な性格をつくってきた素地は親から引き継がれた素質ともいえますし、うつ病発症時の脳の変化が起きやすいのは遺伝的なものと考えることができます。
かといって遺伝的要素のある人が、みんなうつ病になるわけでありませんし、うつ病は「遺伝的」というわけではありません。
ホルモンの関係で女性に発症しやすい
血圧やエネルギーの代謝などを行い、体内の環境を調整しているのが、各種のホルモンです。
ホルモンは、神経系と深くかかわりをもっているためバランスが崩れるとうつ病が発症しやすくなります。
ストレスの影響が大きい
うつ病の発症にもっとも大きな影響を与えるのはストレスです。
ストレスは誰しも感じるものですが、うまく対処できれば何も問題はありません。しかし、対処の仕方がうまくいかないとどんどんストレスが蓄積されてしまいます。

うつ病にかかりやすい人は環境の変化に適応しにくい

うつ病になりやすいhとは、性格的に柔軟性に欠け、環境変化に弱い特徴があります。それも、ストレスを抱えやすい要因になっています。
環境の変化とは、たとえば、

  • 引っ越し
  • リストラ
  • 転勤
  • 昇進など
  • があります。

うつになったきっかけがわからないことも!

発症の引き金になるのは、大きなストレスです。しかし、うれしいことがストレスの原因になることあるので、なにがきっかけになって発症したのか、発見できないことがあります。

栄転や昇進も本人にとってはプレッシャーに
うつ病は、強いストレス、あるはそれほど強くなくても長く続いたストレスをきっかけとして発症します。
リストラや家族との死別など、悪いことやイヤなことばかりが原因になるとは限りません。周囲の人にとっては喜ばしいことでも本人にはストレスと感じていることもあるのです。
仕事などで、これまで一生懸命に身を粉にしてやってきたことも一段落すると案外、ストレスがかかります。
よいことがストレスになるとは思いいたらない
よくないことなら本人も周囲の人も発症のきっかけがわかります。
しかし、よいことやほっとするようなできごとはストレスになるとは思わないため、引き金になった要因が自分では把握できないことがあります。
むしろ、よいか悪いかということより、今までとなにかが変わることが問題です。うつ病になりやすい性格の人は「環境の変化」が弱点なのです。

よいこともわるいことも環境の変化

  • よいこと
    栄転や昇進は嬉しいことですが、責任が重くなり、もともと責任感が強いだけに、より緊張を強いられる毎日になります。
  • 悪いこと
    リストラ、上司や部下との軋轢など、仕事上の問題、身内の病気や死亡、親しい人との別れなどが、発症の引き金になります。

うつになるきっかけチェックリスト

  • 仕事上つらいことがある
  • 毎日働き過ぎだと思う
  • 同僚とうまくいっていない
  • 上司が理解してくれない
  • 職業の選択を間違えた
  • 経済的な問題を抱えている
  • 毎日の生活に張り合いがない
  • プライドを傷つけられた
  • 期待していたことが外れた
  • 完璧主義者だと思う
  • 家族に問題を抱えている人がいる
  • 夫婦間がうまくいっていない
  • 離婚したばかり
  • 仕事上で表彰された
  • 期待されていると感じる
  • 責任が重い仕事についた
  • 子供が結婚した
  • 引っ越しをした

これらはほんの一例ですが、最近変わったことがないかどうか自分なりに考えてみましょう。

気持ちの問題ではなく脳のトラブル

うつ病は、たんに心のあり方の問題ではありません。脳の中で感情を調整する物質に変化が起きることが直接の原因です。

セロトニンが低下し情報伝達に支障が起きる
うつ病のきっかけとなるのはストレスですが、発症そのものの原因は脳の中の変化です。
脳を形成するのは、ニューロンと呼ばれる無数の神経細胞です。
この神経細胞と神経細胞の間(シナプス)で情報を伝えているものに「神経伝達物質」と呼ばれるものがあります。感情調整にもこの神経伝達物質が関わっており、セロトニンという神経伝達物質が十分に働いてないとうつ状態になります。
うつ病は、心のあり方という面があると同時に脳の中でのこうした変化による病気です。「脳の風邪」と言われるのもそのためです。

うつのときの情報伝達

  1. セロトニンが減少
  2. 受容体が腫れる
  3. 機能が働かない
  4. ノルアドレナリンの出方にも影響
  5. 感情調節ができない

うつは、ほかの病気や薬によっても発病の原因になることがある

病気になると、心身ともにストレスがかかるため、うつ病の原因となってしまうことがあります。ほかの病気で服用している薬の副作用で起こるうつ病もあります。

身体的な病気がうつ病に関係することもある
身体的な病気が、うつ病の誘因になることもあります。
たとえば、ガンになれば、死を考えたり、孤独感などで精神的な負担が大きくなり、そのことがうつ病に結びついてしまいます。
ガンという重い病態自体が身体的ストレスになってうつ病が併発することもあります。身体的なストレスになるのは、インフルエンザなどの感染症や全身のさまざまな病気に共通しています。
合併症としてうつ病になることもある
直接的にうつ病と関連していると考えられる病気もあります。
たとえば、糖尿病はうつ病と併発しやすくうつ病でも血糖値の異常値があらわれやすくなります。また、全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病でもうつ病が併発しやすくなっています。
薬の副作用によるうつ病にも注意
身体的な病気の治療薬がうつ病の原因になることもあります。薬の作用が脳の神経伝達物質になんらかの影響を与えるためだと考えられています。
よくみられるのが、副腎皮質ホルモンやある種の降圧剤、精神病薬、パーキンソン病の治療薬などです。経口避妊薬もうつ病になりやすい薬です。
このようにうつ病を招く可能性のある薬はたくさんあります。薬を常用している人が、うつ病になった場合、まず薬の副作用かどうかを確認しなければいけません。

うつ病につながりやすい疾患

ガン、インフルエンザ、肝炎、パーキンソン病、消化性潰瘍、アルツハイマー病、消化性潰瘍、過敏性腸症候群、胆道ジスキネジー、脳卒中、糖尿病、全身性エリテマトーデス、慢性腎不全、悪性貧血、アジソン病、慢性腎盂腎炎、本態性高血圧、メニエール病

うつ病につながりやすい薬

副腎皮質ホルモン、レセルピン系降圧剤、インターフェロン

どの病気がどの結果なのか、解明は難しい

  1. 難治性の病気になってしまった結果なのか?
  2. 病気そのものにうつ病がからんでいるのか?
  3. うつ病なのに体の病気のようにみえるのか
コラム 消化器疾患との関係性

胃はストレスの影響を受けやすく、食欲不振や胃痛から潰瘍になってしまうこともあります。
腸も同様でストレスによって自律神経のコントロールができなくなり、動きが過敏になるために下痢や便秘を繰り返します。過敏性腸症候群です。
慢性下痢が続くなら過敏性腸症候群の可能性が大
なかなか治らない消化器疾患にはうつ病が隠れていることがあります。慢性胃炎に抗うつ薬が作用することもあります。

うつ病になりやすい性格

いい人ほどうつ病になりやすい

うつ病には、その人の性格が深く関わっています。几帳面でまじめ、責任感が強く一生懸命に仕事に励んでしまう人ほどうつ病にかかりやすいのです。

ストレスをためこむ性格が危険
心の病にかかると、自分は心が弱いではないかと心配になります。しかし、うつ病には心の強さ、弱さというよりその人の性格が関係しています。
まじめで責任感をもって仕事を一生懸命行い、人あたりもよく、とてもよい人という評価の人が危険です。
反面、融通がきかず、頭がかたいという欠点もあります。
人の性格はさまざまで一概に言えませんが、一般にこのようなタイプの人はストレスをためこみやすくうつ病にもなりやすいのです。
うつ病にかかりやすい性格については異論も多い
うつ病になりやすい性格には異論もあります。うつ病になりやすい性格の傾向があるかどうかこれまで何人もの人が研究してきました。
性格の分類がいろいろあるなかで執着気質とメランコリー親和型がなりやすいという説が有力でした。

長短紙一重の性格傾向

長所
  • まじめ
  • 几帳面
  • しっかりしている
  • 責任感が強い
短所
  • 融通が利かない
  • 頭がかたい
  • 気持ちを切り替えられない
環境気質
(クレッチマーの分類)
執着気質
(下田光造の分類
メランコリー親和型
(テーレンバッハの分類)
人付き合いがよく、きがよいタイプ。かつては躁うつ病になりやすいとの説あり どちらの性格もほぼ同じで責任感が強く仕事熱心、几帳面で凝り性、人に頼まれると断れないタイプです。

物事の重みづけが下手なタイプ

うつ病になりやすい性格に、すべて几帳面に取り組むという面があります。この点を心理学的にもう一歩、深くとらえてみると、「ものごとの重みづけが下手」という面が関係していることがわかります。

優先順位をつければやり残しても問題ないが
いろいろやるべきことがある場合、自分で優先順位をつけ、大切なこと重要なことから始めればやり残したことがあってもそれほど重要なものではないので、結果的に成功したことになります。
ところが重みづけができないと、物事を片っ端から行ってしまいます。この場合、やり残したことが重要なことなら結果は失敗です。
失敗を補う性癖が几帳面さにつながる
重みづけができないことは、生来的な「神経機能の弱点」とえいます。子供の頃からそれによる失敗を重ねてきたため、やがて弱点を補おうとやり残しがないようにすべてを完全に行うようになります。それが几帳面という性格を形成してきたと考えることができます。

  1. 優先順位がつけられないという精神機能の弱点
  2. 重要なことをやり残してしまう
  3. 失敗のイメージが残る
  4. 片っ端からやっていく

感情がいつまでも残るタイプ

失敗をしたとき、くやしい気持ちが長く続いてしまう人は失敗をおそれて慎重になり、ますます几帳面になり、大きなストレスを抱えてうつへとつながりやすくなります。

失敗へのそれから慎重になる
几帳面を形成する、もうひとつの要素に「感情がいつまで残る」ということがあります。
くやしさや悲しさなどの感情が長く尾を引き、気持ちの切り替えがしにくいのです。これはものの考え方というようり、その人の生理機能の問題といえます。
このタイプの人は、失敗するといつまでも悔しい気持ちが残るため、失敗をおそれてどうしても慎重になります。このことが几帳面さにつながっていきます。

  1. 感情が残るという生理機能の弱点
  2. 失敗を恐れて慎重になる
  3. ますます几帳面に
  4. 几帳面さと臆病さの板挟み
几帳面さだけでは乗り切れない
これまで几帳面さでさまざまな困難を乗り切ってきても社会人、・家庭人になってストレスが増えるとそうはいかなくなります。
几帳面さで乗り切ろうとがむしゃらになればなるほど、ストレスのプレッシャーは大きくなり、やがてうつ病へと進んでしまいます。

心の病

うつ病の周辺に心の病

抑うつ感がひどく、うつ病を疑って受診すると、違う病名を告げられることもあります。うつ病に発展するもの、似ているが違うもの、うつ病に関連する心の病気も様々あります。

抑うつ感が強い心の病はたくさんある
うつ病と似たような症状をあらわす心の病は、たくさんあります。いずれも抑うつ感が強く、日常生活に支障をきたすものです。
これらの中には、心身症のようにうつ病とは明確に区別されているものもあります。
うつ病につながるもの合併するものなど多様
心の病にはうつ病にはいるもの、やがてうつ病になる可能性のあるもの、うつ病との区別が議論されているものなど、うつ病と深く関係しているものがあります。
たとえば、気分変調症はうつ病のひとつとして考えられています。マタニティーブルーや引きこもりは、うつ病に発展する可能性があり、慢性疲労症候群は、うつ病と合併しているのではないかとの味方もあります。

うつ病を判断するポイント

日常生活に支障が出るほどの強い抑うつ感が2週間以上続く

メモ 燃え尽き症候群について

症状が似ているもののひとつに「燃え尽き症候群」があります。
見た目はうつ病と似ていますが、心の病ではありません。強い責任感のもと、長期間、大変な緊張感を持続しながら職務にあたったことで、心のエネルギーが燃え尽きてしまうものです。
その結果、感情がなくなり、自分を責め、対人関係ではストレスが生じないよう事務的、機械的になります。薬や酒に逃避してしまうこともあります。
責任感が強くがんばり続ける人は、燃え尽きてしまわないように注意が必要です。

うつ病周辺の心の病

心身症
ストレスなどが原因で、体に明確な病気があらわれるものです。
イライラする、ゆううつになるなどの精神的な症状もあらわれますが、それほど重くなく心の問題に気づかないこともよくあります。
気分変調症(抑うつ神経症)
うつ病のようにはっきりとした気分の落ち込みではなく、なんとなく憂うつで悲観的に考えてしまう状態がだらだらと長く続いてしまいます。
うつ病と違い、日常生活はきちんとできています。うつ病に進展するケースもありますが、自然に治ることもあります。
マタニティーブルー
出産の後に起こる一時的なうつ状態を指します。ホルモンバランスの崩れから起きるもので多くは10日間ほどでよくなりますが、うつ病に移行するケースもあります。
慢性疲労症候群
検査をしても異常がないのに、ひどい疲労感が慢性的に続く状態ですが、気分の落ち込みなどうつ病同様の症状も出ます。発熱やのどの痛みなど、感染症のような症状もあり、心の病ではないとの見方もあります。慢性疲労症候群について
ひきこもり(不登校)
うつ病は子供にも起こります。それによって学校に行けないケースもあります。ただ、子供は症状を明確に伝えられないだけにうつ病か否かの判断は難しくなります。

うつ病以外の心の病

心の病とはまっったく無縁という人はどのくらいいるのでしょう。最近はうつ病が増えているとはいえ、ストレスが多い現代、抑うつや疲労感がどんな心の病に進展するかわかりません。

ノイローゼ

不安神経症
増えている心の病。いきなり理由もなくたまならなく不安にになってきます。パニックを起こすことも。発作的に不安にとらわれる人といつも軽い不安につきまとわれる人がいます。
心気神経症
ささいな不調をみつけ自分が病気だと思い込み、検査や受診を繰り返します。実際には健康で異常が発見されないことが多いのですが、医師の見落としだと悩み医師や病院遍歴を続けます
強迫神経症
手がよごれているような気がして何度も洗わずにはいられないなど、自分でもおかしいと思ってはいます。日常生活に支障が出て疲れ切ってしまってもやめられません。
摂食障害
ダイエットをしているうちに本当に食事がとれなくなったり、逆に大量に食べてしまったり、お腹がすいていないにもかかわらず食事がふつうにとれなくなってしまいます。
ヒステリー2
麻痺やけいれんなどの病気のような症状がでていても検査場は見つかりません。ひどく悩んでいる心の状態がそのような形ででるのです。一般の人が想像するヒステリーとは違います。

精神分裂病

統合失調症
心の病のなかでもっとも患者数が多い。幻想や妄想にとらわれたり、緊張が続くなどの症状。若いときに発病しやすい傾向があります。