「いい子」に育てられた人はうつになりやすい

あらゆる人格タイプのうち、他のどのタイプよりもうつにかかりやすいタイプがひとつあります。それはいわゆる「いい子」たちです。

自分を犠牲にして、頑張りすぎることが多く、まじめでそしてかなり宗教的なタイプです。精神科医はこのタイプを強迫性人格と呼びます。

一般的には、完全主義者、A型人格、仕事中毒、献身的召使などと呼ぶことがあります。

テストを行なった医者の90% 、聖職者の75% がこの強迫性人格の多くの要素を備えていました。弁護士、ミュージシャン、エンジニア、建築家、歯科医、コンピュータープログラマー、その他の専門職も強迫的傾向を強く持っています。

これはおそらく医師、歯科医、ミュージシャンがもっとも自殺率が高いことの原因と言えるでしょう。さらに宣教師もまたよくこのカテゴリーに入ります。

この結果に、多くの人は驚くでしょう。勤勉でなくわがままで、あまり社会や人のために役に立つとは考えられない人があふれる世の中で、社会で献身的につくしている人たちに一番うつや自殺の傾向が多く見られるとはどういうことなのでしょう?

人間の深い「無意識のダイナミクス(力動)」を研究した人は、うつは自分で選択しているものであることを認識しています。

自殺もしかり。そして幸福も自分で選んだ結果なのです。うつにおちいるこうした献身的な人たちは、私たちと同じく個人的な欲求と戦っているのですが、完全主義者の個人的な欲求は微妙でずっとわかりにくいのです。

彼らは週に80~100時間、人のために働き、しかしそのために、自分の妻や子どもたちをなおざりにしています。自分の感情は押しこめて、コンピューター化されたロボットのように働いています。

愛や共感で人を手助けしようとしているように見えますが、実は自分の不安さを無意識に埋め合わせようとしているのであり、また世に認められたいという強い願望と完壁でなければならぬという欲求を満たす手段としてひたすら働いているのです。彼らは自己批判的であり、内部の深いところでは劣等感を感じ、本当の自分がいないと感じています。

こうした人たちは、中年になって怒りが出てきます。神には、あまりに多くを期待されすぎているとして、また家族、同僚にも同じ理由から怒りを持ちます。子どもたちからは反抗的な態度をとられ、そして自分自身が完壁でないことに対しても、怒りに圧倒されるようになります。そして深刻なうつになります。

真実への洞察が欠如しているために、彼らはかなりつらい痛みと絶望感を抱え、気弱になると自殺を図ったりします。本書が、こうした問題に対して貢献できればと願い、祈るものです。

うつは貴重な時間を無駄にします。自殺はあとに残された人にとてつもない影響を与えます。本章では、いかに完全主義(強迫性人格) が子ども時代に養われたものかを示す貴重な研究を分かち合いたいと思います。

そして多くの完全主義的仕事中毒者らの無意識レベルにある心のダイナミクスについてふれたいと思います。

まず、もしあなたが妊娠中の女性で、完全主義の子どもを産みたいとしたら、以下のようにすればいいでしょう。

精神疾患の診断・統計マニュアルによれば、強迫性人格は「過剰に厳格で、生真面目、過剰に良心的、義務感が強く、なかなかリラックスできない」人の診断名です。もしこれが進行すると、状況は次のようになります。本人が止めることのできない考え、欲求などがひつきりなしにおそってきて、コントロールが効かない。本人は突拍子もないと思いながらも、ある特定の言葉、考えなどが反復して止められない。行動面では、単純なある動きから、手を洗うことがやめられないなどまでさまざかんすいまな様相を呈する。

患者がこの強迫行動を完遂できないとき、または自分ではコントロールでけねんきないことを懸念している場合に、不安とイライラが見られるようになる。

強迫的な子どもが育つ13のポイント

  1. いつも口先だけ、話ばかりで、実際に体では動かずに、けっして子どもの言うことに耳を傾けない。
  2. 子どもに完全なエチケットとマナーを期待する。ミスを許さない。
  3. 内向的で、他人と健全にやりとりをする姿を子どもに見せない。
  4. まわりの人に極めて批判的。牧師など聖職者、近所の人たち、夫、そして何よりもその子ども本人に対して。
  5. 実にいやみな人間として振舞う。
  6. 夫、子どもを支配する。
  7. 他の子どもよりもつねにすぐれていることを要求する。
  8. 自分自身ではこれといった信仰を持たず、子どものおじいちゃん、おばあちゃんの信仰をあれこれ批判する。
  9. 子どもに父親を尊敬するように言って、実際は夫をないがしろにする。
  10. 子どもに12ヶ月めで完全におむつがとれることを期待する。
  11. 将来のための貯金と称して、常識を越えた守銭奴になる。
  12. 法律の基本方針ではなく、条文そのものの遵守を強調する。規則をごく厳格にし、例外をけっして認めない。
  13. 子どもの性的関心を恥ずかしいことだと決めつける。

強迫的になる子どもの親は、どうやらこうしたルールに従っているようです。しかし、ある程度の強迫性は人生で有益であり、これによって勤勉になったり、良心的で道徳的な行動をとることが可能になるという側面もあります。

私たちがテストを行なった医師と医学生の大半は、いくつかの強迫性人格を示しています。まじめに取り組まなければ、医学部や開業医の厳しい要求をくぐり抜けることはできないのです。また、多くの神学生、牧師も極めて強迫性人格的です。使徒パウロにも何らかの健全な強迫怪人格傾向があったようですが、不健全なものは克服しなくてはいけなかったことでしょう。しかし親が前述の13のリストを用いて子どもを育てたなら、強迫性人格はコントロールできなくなってきます。

完全主義者の内的心理

前述の方法にすべて従って、過剰に不安で完全主義的な子どもを育てたとします。その子が大きくなって結婚し、大学を主席で卒業しようとしています。

この子をは完全主義 として、大人になった彼の無意識の心理を探るとしましょう。

まず、何をするにも完全主義です。過剰に責任感が強く、良心的で、働き者です。リラックスできず、自分自身やまた自分に近い人たちに厳しく接します。自分に厳しいため、また良心があまりに強いために、落ちこみやすくなります。

これまで一生懸命頑張ってきたのに、けっして十分やったとは思えません。何事にも精魂を使いはたしてしまう傾向があります。経済的には成功していますが、内側でもっと頑張れと自分に言い聞かせているので、けっして満足しません。

また、冷たい人に見えます。事実だけが大切で、感情には無関心の傾向があります。彼には、感情はわからないのです。また、彼にとって感情は事実よりコントロールが難しいのです。そして、は自分自身、自分の考え、そして近くの人々を支配・コントロールしたいという強烈な欲求があります。

このため、彼は事実を重んじ、感情を避けるために無理をしてでもものごとを理性化します。これは不快な感情だけでなく、ほんのりとした暖かい感情についても同じです。なぜなら暖かい感情もまた彼にはコントロールしがたいからです。コントロールできない感情は、ただ不安感を増してしまうので、そうなると今度は感情を感じないよう感情を避けるのです。

つまり、厳格なコントロールを維持することで、自分が内奥で感じる感情を抑えておくのです。こうした不安感を抑えきれないときに、うつがおこります。いつも人のいいなりで、従順です。でも彼を引っ張っているのは怒りなのです。

そして従順と反抗がときに衝突します。この怒りを感じないですむとき、今度は強烈な恐れが出てくるのです。これは権威への恐れで、この恐れが即座に従順さにひき戻すのです。

この恐れは、子どものころに母親に怒りをぶつけて拒絶をくらったことを想起させます。そして、この恐れが、まじめで、良心的で、いい人といった彼の傾向をもたらすのです。

これらは、外見的体裁は良いとしても、健全な源から出ているのではありません。彼の自己肯定感は、条件つきでのみ親に受け入れられたことがベースになっています。条件つきの受容は、彼に幼児期の体験を想起させます。できて当然と期待され、その期待を達成したときにのみ、愛情が与えられるものと思ったのです。

こうしたダイナミクス(力動) がジ極端な完全主義者にし、けっして自分自身に満足せず、つねに内側から自分に攻撃をしかけることになり、よって深刻なうつがおこりやすくなるのです。

大人になると、神も含めた他者との関係に不安感をおぼえます。親から受けた愛情は条件つきだったため、神に対しても同じように見てしまうのです。信仰に疑問を感じることがよくあり、また自分が救われることに疑いを抱いています。

自分が神に拒否されるのでは、という深い不安感と恐れをコントロールします。でも、実はは秘密裏に主を求めているのです。なぜなら、神は無条件では自分を受け入れるはずがないと感じているからです。

自分自身や妻に批判的で、この批判的な性格が彼らに影響を与えます。この自分の批判的性質ばかりか、強烈な怒りによっては内奥から裂かれています。ほんの少しを見るだけで、彼がいかに怒っているかがわかります。それは顔の表情や動き、固い姿勢に現れているのです。こうした強迫的な人が普通考えるのは、自分の将来についてです。

いつも未来の目標に向かって計画を立て、頑張っています。けっして現状に満足しません。つねに自分にいろんなことを課していきます。人は逆のタイプの人とひき合う傾向があるので、妻はおそらく彼と反対の性格なのでしょう。妻はヒステリックでさらに激しく現在の感情に左右されます。

うつが進むにつれ、彼の思考は未来から過去へとシフトしていきます。そして、過去のミスや失敗を大いに気を病むようになります。

自分を防御するのに使う手がいくつかあります。そのひとつが「孤立」で、自分の気持ちと感情を孤立させます。彼はまず自分の感情にほとんど気づいていません。葬儀のときですらこの孤立を用います。取り乱すことなく落ち着いた装いで葬式をやりすごし、しかし内側では深くひき裂かれているので、のちにうつがおこります。

もうひとつの防御メカニズムは、「帳消し」です。罪悪感でいっぱいで、犯したミスをもとに戻せないものかと思っています。この罪悪感を帳消しにしようとする(取り消そうとする) 自分の内側の動機に彼は普段気づいていません。

無意識に使う別の防御は、本当にしたいことのまったく「逆をする」ことで、衝動、感情を守るのです。

たとえば、自分が抑圧している性的欲望を打ち消すために、ふしだらな性行為を一掃するキャンペーンの先頭に立ったりします。あるいは女性といちゃつきたい自分自身の願望を妻に投影して、妻が他の男といちゃついていると不当に責めたりするかもしれません。

こうした防御行為によって、とりあえずはうつにならずにすんでいます。自分の怒り、恐れ、罪悪感、罪深い欲望に気づくと圧倒されてしまうので、こうして自分をあざむくのです。本当に必要なのは、精神療法など、人の助けを借りて変わり始めることなのです。

そして、自分自身の真実に責任もって対処することを学ぶことなのです。まだほかにもたくさんの無意識の行動をしているでしょう。彼の不安をコントロールし、人との親密な関係は感情をかきたてますが、感情は彼にとってはまったくコントロールしにくいものなのです。

おもに3つの懸念事項を抱えています。それは、時間、ほこり、そしてお金です。子どものころ、いつも母親に時間を守るよう言われていました。寝るときも、トイレに行くときも、いつも母親に時間にルーズにならないよう言われ続けていました。こうした幼児期の体験は深く刻みこまれ、大人になるまで持ち越されているので、いまだにいつも時間を気にします。

またお金のことも気になります。お金は地位とパワーをもたらしてくれるからです。さらに、頭の中では、ほこりは自分が無意識に抑圧している罪深さを象徴するので、非常に気になるのです。

だから、妻には家を隅から隅まできれいに掃除をするよう要求します。罪悪感をかなり感じるときは、何度も手を洗います。しかし、なぜ自分がこのような行動をするのか気づいていません。不安や無力感、絶望を感じています。ことさら彼は、不確実な世の中で不安を感じます。こうした不安定感はコントロールできないので、道にコントロールをしたいという過剰な要求を増大させます。

この不確実な世で自分の不安感をコントロールするために、偽りの全能感を身につけ、極めて自信たっぷりにふるまい、実際そうであるかのように自分や同僚たちをうまく納得させます。また知的に何でも知っていたいという強い欲求を持っています。

すべてのものごとをコントロールできると感じていたいのです。しかし、自信たっぷりの見かけとはうらはらに、意思決定がなかなかできません。間違った選択をしてしまったら大変だからです。すべてに関して真実がほしいのです。それには神学の分野も入ります。神学的に、少しでもはっきりしないことがあると、うつが押し寄せます。彼がよくいろいろな哲学論議にふけるのは、責任逃れの方法なのです。

たとえば、彼は良き父、良き夫とは何かということを語ることができても、実際そうなることは避けるのです。普通非常に時間に正確で、秩序正しく、こぎれいで、良心的な人間ですが、ときにまったく逆の性質を表すことがあります。

たとえば、無精ひげをはやし、良心を欠いて、無責任で、時間に遅れてきたりする人間を演じたりします。

前述したように、完全主義は健全な動機によるものではなく、権力への恐れによるものです。そして非完全主義者の性格は、従順でなくてはならないことに対する反抗的な怒りによるものなのです。

かならずといっていいほど、いつも感情より事実を強調します。彼は頭で感じよう としているのです。感情を避けるために、理性のレベルで人と話そうとします。いつも頑固です。親に対して頑固だった幼年時代に、この性質を学びました。

以上をまとめると、内面からつき動かされているのです。不安をコントロールするために、彼は多くの防御策をめぐらすのですが、その他多くの強迫性人格の例にもれず、最後にうつが現れます。大いに心配し、彼の厳格なライフスタイルがもはや彼の強烈な内なる衝動に十分処理できなくなったときに、うつがおこってきます。内面のダイナミクスをよく検討すると、以下のような多くの強迫傾向が見つかることでしょう。なかには有益な資質もあり、それは彼が一流の専門職に就くのに役立ちます。しかしその他の資質は不健康で、たいていは彼をうつにして終わります。

強迫性人格(男性、女性)の特徴

  1. 完全主義
  2. きれい好きできちんとしている
  3. 責任感が強い
  4. 細部にこだわる
  5. いい仕事をするが、働きすぎる
  6. リラックスできない
  7. かんしゃく持ち、怒りつぼい
  8. こだわりが強い
  9. 思考の硬直
  10. 柔軟性がない
  11. 感情ではなく事実に興味がある
  12. 冷たい感じがする
  13. 外見は安定しているように見える
  14. (ときに) 反権威主義
  15. 従順と反抗のはぎまで悩んでいる
  16. いつも何かに憤りを感じている
  17. ときに反村の気質を示す:良心的/ なげやりな態度、秩序正しい/ だらしないない
  18. おもに3つのことが気にかかる ほこり(いつもきれいにしている)、時間(いつも時間を守る)、お金(安心感が必要)
  19. 自分や周囲の人々をコントロールするパワー願望がある
  20. 強烈な競争心
  21. 感情を他人に見せない
  22. 論理的
  23. 魔術的思考(自分は現実よりもパワーがあると考える) を持つ
  24. 喜びをあと回しにする(無意識の罪悪感)
  25. 性生活はマンネリ化
  26. 甘えの関係を欲する
  27. しかし同時に依存的関係を恐れる
  28. 無力感を持っている
  29. ものごとを決心できない
  30. 些細なことが気にかかる
  31. 怒りをかくす
  32. 緊張して握手をする
  33. 端に意志が固い
  34. 自分の誤りを認めようとしない
  35. 他人との衝突を避ける
  36. 極度の倹約家
  37. 質素で規律正しい
  38. 粘り強く頼りになる
  39. すべてを知っている時のみいい気分になる
  40. すべてのことに究極的真実を求める
  41. 見かけは強く、しっかりしていて、断固と頼りになりそうに見えるが、実はなかなかものごとが決められず、不安で、ためらいがち
  42. 完壁であることを装う
  43. 問違いを指摘されるのが怖い
  44. 確実さを期すためにドアのロックを何度もチェックする
  45. 恋愛では相手の感情はコントロールできないため、恋愛関係に注意深い
  46. 怒りは人との距離をおくので、暖かい気持ちよりは容易に表現できる
  47. 強烈な集中を要する作業が得意
  48. 親は強迫的で、献身を強要した
  49. 親は最低限の愛情しか注がなかった
  50. 子どものとき、条件つきで受け入れられた
  51. すべては白か黒かという画一的な思考方法をする
  52. 社会の不確実性を克服するために、超人間的業績を達成しょうと頑張る
  53. 自分の決心がつかないところが大嫌い
  54. 極端な反応をする傾向がある
  55. 自分の限界を認めることは、情けないと思っている
  56. 儀式好き
  57. 結婚になかなか踏み切れない
  58. 問題を先送りする
  59. 死について考えるのを避けようとする
  60. 自分はめったに人をほめないのに、相手からは最大限の賛辞を求める
  61. 結婚生活で家事を分担しないで自分の最低限の持ち場だけをやる
  62. 結婚ではほとんどのことを相手にかわって考えてあげる
  63. セックスは自発的でない
  64. ものごとの整理が大好き
  65. 慢性的にいつも心配ばかりする

しめくくりとして、罪悪感について少しふれるべきかと思います。罪悪感は蓄積された怒りの一形態であり、よくうつの原因となります。

罪悪感は自分への怒りです。完全主義者は罪を犯したときに「真の罪悪感」を抱くだけでなく、「偽りの罪悪感」も持っています。そしてこの本物と偽りの罪悪感では大きな違いがあります。

フロイドは、すべての罪悪感は偽りの罪悪感であり、罪悪感自体がつねに悪いことだと考えていたようです。多くの精神科医は、罪悪感はつねに不健全だというフロイドの考えに賛成していました。

しかし医師や専門家は反対の意見です。真の罪悪感とは、自分が神の道徳律を犯したという「内なる不快な気づき」です。これはひとつには信仰によって、また自分自身の良心によってもたらされます。

この良心がフロイドのいうところの超自我です。私たちの良心は、親から教えられたことや、親が実践していたこと、教会が教えたこと、教会の信者たち、友人、教師の意見など、多くの環境の影響によって形成されます。

もし聖書を勉強したなら、聖書の教えによっても私たちの良心は形成されます。しかし、私たちの良心はよく間違います。未熟な良心を持った人のなかには、間違ったことをしてもそれが間違いだと気づかない人がいます。

その場合、良心にさいなまれることはありえません。それとは対照的に、すべては罪だと教わった人は過剰に発達した良心を持ち、神が間違っていると認めないものに対しても、良心がとがめられるでしょう。これが誤った罪悪感、つまり神や神の言葉がまったく非難しないものに対して罪悪感を持つことです。

真の罪悪感は貴重です。神が人間に罪悪感を与えたため、人は罪悪感によって自らの行ないを悔い改めることができるのです。間違ったことでなく正しいことをしたときに、私たちは神との親交を深めて、自分のことがもっと好きになるでしょう。間違ったことをすることは私たちの自己評価を下げることです。

正しいことをすれば、自己評価は大いに上がります。精神科医としての私たちの経験では、患者が罪悪感があると言った場合、実際その罪悪感は真の罪悪感であることが普通です。

彼らは罪を犯したから罪悪感を感じるのです。そして彼らがした悪いことを正しさえすれば、落ちこみも直せます。しかし信者の多くが、聖書がまったく非難していないことに罪悪感を感じると訴えます。

たとえば、誘惑を感じたといっては罪悪感を感じるのです。しかし、誘惑されるのは罪ではありません。その誘惑に居座ってそれに負けるのが罪なのです。

偽りの罪悪感のルーツを子ども時代に求めています。偽りの罪悪感の原因は、子ども時代の育てられ方にある。過剰に厳格な期待が親から課されると、過剰に厳格な超自我、良心だけが育つ。たとえば、過剰な非難、中傷、審判、文句ばかりを親に言われて育つ子どもは、自分がその期待にそえない場合、適切な期待が何なのかを知わいきょくらずに歪曲された思考を持つに至り、結果として子どもの罪悪感を高めることになる。愛情ときちんとした説明をもって与えられる適切で正当な罰は、罪悪感を取り除く。ほとんど励ましてあげたり、ほめたり、お祝いの言葉を言わない親もいる。

けっして子どもの行動に満足できないのだ。子どもが学校、遊び、スポーツなどでいかによい成績を出しても、もっとできるはずだと親は満足しません。このような親に育てられた子どもは、自分の自己肯定感がいかにダメージを受けているかを知らず、完壁以外はすべて失敗だと感じて育ちます。どんなに頑張っても、できるかぎり最大限のことをしても、罪悪感と劣等感を持ってしまうのです。

そして大人になっても神経症や偽りの罪悪感、低い自尊心、不安感に苦しみ、やることなすことすべてに、自分はダメだと悲観的な見方をするようになります。これが自分を責め、内側に向けられた怒りとなります。

この無価値感ゆえに自分で自分に罰を与えようとします。この怒りと敵意むくの混じった内的懲罰の報いが、かならずうつをもたらすのです。

また、心身症や不適切な行動などをひきおこしたりもします。

「偽りの罪悪感」に対する治療は、なぜ本人が罪悪感を持つようになつたかを理解し、自分の真の姿を評価することです。また罪悪感を抱く本人には、自分自身を非難する権利はなく、神のみがそうする権利があること、そして信仰を持つ人は審判と非難を神のみに委ねるべきであることを理解する必要があります。

そして現実的に到達可能な新たな目標を設定し、他の人と比較しないことが大切です。神が自分に期待していることと、自分の現在とを比較すべきです。神は私たちや私たちの子どもたちに、この世で完壁さを期待してはいません。私たちができるかぎり神の意思を求めることを望んでいるのです。

「正しいものは信仰によって生きるものである」と、また「人は信仰によって正当化される」と言っています。そして彼は、自分を救うための良い行ないよりも、おんちょう神の恩寵のほうを信頼するようになったのです。

心が痛みつけられて疲弊する原因

ためこまれた怒りがほぼすべてのうつの根ではあっても、心の痛みに苦しむケースは他にもあります。

たとえば孤独のつらさは、たとえその孤独な人がうつにはならなかったとしても、かなり深刻でしょう。心の痛みには3つのおもな原因があります。

自己肯定感の欠如

ひとつは自己肯定感の欠如、すなわち自尊心が低いことです。たとえば、親は第一子に多大な期待をかける傾向があり、そのためか長子は職業の面では成功していることが多いのですが、本人はそのことを少しも楽しんでいないことが多いのです。

しかも、長子も末っ子も自尊心が低いということが多々あり得ます。たとえば末っ子は、親離れされることがいやでたまらない母親によって甘やかされ、過保護になります。

このような末っ子は10代に少し反抗的になる傾向があります。そしてアルコールや薬物を乱用することで、仲間(ピアグループ)に合わせようとします。

もはや母親には手や口を出してほしくないので、今度は母親のかわりに考えてくれる役割を仲間に求めるのです。自分で考えるのは怖く、自分より自立しているように見える他の10代の子どもたちよりも自分は劣っていると感じ、自尊心が低くなります。しかし自尊心の低さをカバーするために、自分がかなわないと感じるしっかりしている10代の子どもたらを小ばかにしたりします。

自分の低い自尊心は実につらい重荷であり、この怒りが自分に向けられるとうつになります。うつは母を失う新生児から、体が弱って気弱になっている百歳の老人まで、あらゆる年代の人をおそいます。

過剰に厳しい親もまた、子どもの自尊心が低くなる要因になります。子どもは、親は正しく、自分が完壁でないのは自分のせいだと思ってしまうのです。10代、そして大人になると、この誤った罪悪感は怒りが内に向いてうつが出てくるまで大きくなります。

冷たくつき放す母親、受身的であったり、あるいは普段ほとんど家にいない父親を持つ子どももまた自分の正常な依存したいという欲求が満たされなかったために自尊心が低く、うつになりやすいと言えます。

たとえばほとんど身体的刺激を与えられない新生児は、たとえ十分な栄養を与えられていても、衰弱したり死亡したりする場合もあります。たとえそうならなくても、新生児が親との親密な関係を獲得する試みに失敗すると、あきらめて、ひきこもるようになります。

そして、親密になることに恐れを抱き、のちに友人からも何度も拒否されるような状況に身を置くようになります。新生児、幼児期のときに親密になることを恐れるように学んだために、友人に自分を拒否してもらったほうが、彼らを自分の選択で遠ざけているのだという事実に気づくよりも痛みが少なくてすむのです。

このような、友人のいない内向的性格は、自己評価も低く、うつにかかりやすくなります。フロイドの過去の心的外傷や生物学的要因を重視する立場と対照的に、劣等感を重視した) は、「劣等感」という言葉を作った人です。

彼と彼の支持者らはうつの原因の理解に大きく貢献していますが、自己評価の欠如が、人間の感情的痛みの主たる原因であることは疑いもありません。

2.他者との親密さの欠如

2番目の原因は、他者との親密さの欠如、孤独感です。神は人間が互いを必要とし合うように我々を作りました。親密な友情を築くことは、その報酬とともにかならずや何らかのトラブルもともないます。

人間は基本的にわがままであり、親密な友人でさえもたまには、互いに気に障り合うものです。でもたまに友人と衝突することは、一貫した絶え間ない孤独の痛みよりはるかにましです。

孤独はうつと同じように、私たちが自分で選択した結果なのです。要するに、私たちがいつのまにか選びとってしまっているのです。孤独を味わう人は、「必要な努力をしない」ことを選んでいるのです。

彼らの心は親密になることに対する恐れに支配されてしまっており、本当は孤独を味わわなくてもいいことにまったく気づいていません。この症候群を持つ人は表面的な友人を作ることで孤独感を補おうとしますが、もっとも深い感情を分かち合う親密な友人は一人もいません。

孤独な人の多くは、他人は自分と近づきになりたくないのだと思っています。しかし現実には、彼らが自分で、他者と親密になることを拒否しているのです。でも自分自身の無責任さに気づきたくないために、人を責めるのです。この防御メカニズムは「投影」と呼ばれます。

なぜなら彼らは自分自身の拒否行為を他人に、まるで写真スライドのプロジュクターが、スライドそのものをスクリーンに写すかのように、他人に投影するからです。

他者との親密さの欠如こそが、感情的痛みの原因であることを見出しました。孤独はうつとは同義語ではないにしても、たしかに人をうつに陥れる要因になります。

孤独な人は自分を拒否すると思っている人(実際はしていなくても) に恨みをためこむか、または「拒否される人間」である自分を恨めしく思っています。もしかしたら配偶者や唯一の親友との死別を体験して、神に対して相当の恨みを抱いているかもしれません。そうして鬱積された恨みはすべて、うつをひきおこす原因になるのです。

3.神との親密さの欠如

感情的痛みの3つめの原因は、神との親密さの欠如です。人間はだれでも、内面の深い部分で神との関係を持つことでしか満たすことのできない空虚さを持っています。

キリストの使徒パウロは、神が自然の美しさを使って人間に創造主との関係に気づかせようとしていると言っています。あらゆる宗教的背景を持っていますが、しかし2~3回セッションをすると、ほとんどの患者がそれぞれの患者の言葉で、たとえば自分自身の罪深い状況や、清浄になりたい願望など、何らかの宗教的な問題を持ち出します。心の痛みには主として3つの原因があります。

  1. 自己肯定感の欠如
  2. 他者との親密さの欠如
  3. 神との親密さの欠如

こうした痛みの原因のいずれかにとらわれてしまうと、恨みの感情を蓄積することになり、そして結局はうつにつながっていきます。こうした原因によって育てられた痛みをいかに癒すかが大事なポイントです。

幼少期にうつの根が植えつけられる

うつの根は実に深いのです! 40歳代ではじめてうつになる人は、おそらく4歳のときにうつの何らかの根が植えつけられたと考えられます。

うつに関する本や記事の著者のなかには(とくに専門家でない人は)、うつの進行は1、2、3とお決まりのコースをたどるかのように書いている人がいます。

たとえば単純な「うつ的人格」の特徴をあげることですら一筋縄ではいかないのであり、誤った試みなのです。

精神科の研究では、最低10のおもな人格タイプ、それに数百の多様な人格タイプ、行動パターンの組み合わせをあげています。その中に、とくにうつにおちいりやすいタイプというのはありますが、どのタイプもうつにおちいる可能性はあるのです。

人間の脳はまるでコンピューターのようです。数百の人格形成に関する研究をまとめて、大人の行動パターンの約85% は6歳までに探く刻みこまれることを示しています。

この大切な人生最初の6年で、子どもは親の行動パターン、とくに同性の親の行動パターンをコピーするのです。子どもは自動的に親がしたことを学びます。

親が怒りを抑圧すると、その子どもも怒りを抑圧する傾向を身につけます。親が同情を得るのに病気、うつを使ったならば、たぶんその子どももそうするでしょう。この極めて大切な時期に、親は親なりの理想に従い、普通は子どものためになるという良い動機を持っているのですが、しかしまずいやり方で子どもを型にはめていきます。親は子どものいろいろな行動パターンを意識的、または無意識にほめたり罰を与えたりします。

たとえば2~3歳児は普通、怒りの感情が何であるかを知っています。腹が立てば、自分が怒っていることを知っており、適切に、あるいは不適切にそれを表現するのです。

たとえば私たちの子どもが私たちに対して怒りを感じている場合、それを子どもが物を蹴飛ばすことで表現したなら、私たちは子どものお尻を軽くたたきます。それは「しつけ」の範囲に入るでしょう。

しかしながら多くの親が、子どもが適切な方法で怒りの感情を表現しようとしていたとしても、やめさせようとします。

さらに、正常な怒りの感情を適切に表現する子どもに罰を与えたりする親もいるのです。子どものとき、父親に対して「お父さん、いま私はお父さんのこと、すごく怒ってるんだけど、話を聞いてくれる? 」と言ったことがはたしてあったでしょうか?

おそらく怒りを伝えようとすると、拒否や罰を受けたために、怒りを恐れるようになってしまっているでしょう。そうなると、まあ、どうでもいいや、と怒りをごまかすように学習してしまいます。そして怒りを抑圧すると、かわりに犬を蹴ったり、兄弟ゲンカをするようになります。

その子が35年後、昇進の機会を逃したとします。もちろん正常な怒りを経験しますが、そういう感情は抑圧するよう3歳のときに学んでいるので、怒りに気づきません。

無意識に上司のことを幾晩も恨みます。次第にセロトニンとノルエピネフリンが脳内アミンから枯渇していき、不眠、倦怠感、食欲低下、その他多くのうつの症状が出てきます。

それをかかりつけの医者に訴えると、医者はあなたがうつを患っており、怒りを抑圧していると告げます。まったくその通りなのに、あなたは「私が? 怒ってるって? 3歳以来怒ったことなんてないのに! 」と反発を感じます。

そして精神科医に紹介される段になると本当に怒って、しかしこの怒りを今度は「フラストレーション」と名づけるのです。あるいは、医者に低血糖だ、甲状腺機能障害だと言ってもらぅのに結構なお金を払っているのに、実はうつだなんて、とんでもない奴だと思うのです。

ひと月たち、さらに症状がひどくなります。もう3人の専門家のところに行ったのにこれといって悪いところが見つからない、医者はどれもこれもヤプ医者だと決めつけます。極めつけに、どこかのエクソシスト(祈祷師) を見つけて、自分が聞きたいことを言ってもらうのです。

すると数日はほっとしますが、症状は続きます。自殺を考えるほどにまでなってしまっても、それがなぜかはわかりません。そして、自分の感情に直面するのを避ける大半の人の例にもれず、大半の人が伴侶のせいにしたり、「離婚」という今日のアメリカであふれている方法で「解決」したりします。

最後の手段として、プライドを飲みこんで精神科へ行きます。そして抗うつ剤を出され、毎週の精神療法に通います。そこで自分の怒りにふれ、それを口に出し、解消していきます。

3~6か月後には、抗うつ剤をやめ、薬なしでも気分がよくなります。こうして自分の怒りに気づき、どう処理すればよいかを学んでいくのです。

これは3歳のときにすでに知っていたことなのに、抑圧するよう親に教えられたからなのです。あなたはもしかすると、すべての怒りは罪であると教える教会に通って育ったかもしれません。

実に多くの人がそう教わり、信者の多くがそう信じています。神が「怒ることがあっても、罪を犯してはならない」 と言っているにもかかわらずです。聖書はまた、怒りのまま日が暮れるようではいけない、と教えてもいます。就寝時間を越えて恨みを持ち越してはいけないのです。もしすべてのクリスチャンが聖書の教えを守り、怒りつつも、就寝までに適切な方法で恨みを取り除いていたなら、遺伝的素因がないかぎり、あるいは自分でも気づいていない大量の抑圧された怒りがないかぎりは、うつにおちいる人は1人もいなくなるはずです。

もちろん、怒りはあやまちであることもあるし、おうおうにして未熟さの結果でもあります。おそらく怒るべきか否かよりももっと大切なことは(もしすでに怒っている場合)、その怒りをどう処理するかです。

行動パターンの大半を学習する人生最初の6年間で、私たちの多くが感情を誤って処理するよう学んでしまいます。しかし神は、私たちのコンピューターである脳の誤ったプログラミングを変える意志と、それを行なうに必要な力を私たちに与えています。

うつの根の大半が、自分自身に向けられた怒り、あるいは罪悪感、または他人に向けられた行き場のない怒りや恨みです。こうした恨みは普通、無意識( つまり気づいていない) のものです。

なぜなら、それを自分で認めることは恥であり、怖いと思っているからです。そして恨みをときに数か月、数年も持ち越すことによる責任から逃れるために、私たちはうつの症状の原因を求めます。数年ごとに社会ではうつに関する新しい説明が話題を呼び、それは大半の人々に受け入れられていきます。

過去によく使われた説明は、ホルモン障害、低血糖、アレルギー、内耳障害、そしてごく最近では伴侶選びのミス(その場合、離婚がうつの治療となる) などがあります。これらの正否は別として、うつの根が深いことは疑いもありません。

遺伝子に原因が潜んでいる?

病気に関して(うつも)何事も「ダメな遺伝子」のせいにする人たちにはうんざりしています。

今日、実際に多くの人々は、アルコール依存症や同性愛などをわら「遺伝子のせい」にしています。いわゆる科学者たちは、データをねじ曲げてでも藁をつかもうとしているかのような感があります。

しかし、遺伝子は、私たちの知的、感情的可能性に大きな影響を与えていますが、大人の知恵と幸福は遺伝子によって運命づけられるものではありません。

うつの多くは、自分自身の取り返しのつかない行為、無責任な怒りと罪悪感の出し方の結末です。それは、自分で意図的にそうする人もいる反面、たいていの場合、知らずにそうしている人が多いのです。

責任を持って自分の感情や問題に向き合い、幸福を選ぶ行動に移してほしいと願うからです。しかし、多くの人は自分の責任、とくにつらい感情や問題に直面するのをとても嫌います。

自分のつらさを自分自身の問題として取り組むよりは、ダメな親、相棒、社会の不遇、あるいは低血糖いわゆる「悪い遺伝子」のせいにしたほうがはるかに楽なのです。

たとえば、人より容易に酔っ払う傾向の遺伝子を持っているとしても、その人に酒を飲ませて酔っ払わせるのはまさか遺伝子ではありません。

また、アンドロゲン(男性ホルモンの一種) が人より少ないことがあったとしても、だからといって遺伝子がその人を同性愛に向けるのではないのです。遺伝子レベルで同性愛になるべくプログラムされている人はだれ一人いません。

遺伝子は、脳内のセロトニンの枯渇によって、ストレス下でうつになる傾向を示唆しますが(ある人は脳内ドーパミン活性が変更していることによって同様のストレス下でも精神病が発症しやすくなる)、遺伝子が私たち自身や人に対して恨みを抱くように強制するわけではありません。

神は、計画の一部として、私たちにある強さ、弱さを備えられたのです。旧約聖書ので、ダビデは「あなたがわが内臓を造り、わが母の胎内で私を組み立てられました。私はあなたをほめたたえます。あなたは恐るべき、くすしき方だからです」と祈っています。

神は「彼らをわが栄光のために創造し、これを造り、これを仕立てた」と言っています。なぜ神は私たちを完全に造らなかったのか、それはわかりませんが、私たちが正しい決断ができるような知恵、愛、正義の神を私たちは信じています。

神がもっと人情を持たないからといって、神に怒りを向けるのは横柄で、尊大なことなのです。私たちは職業柄、自分が神より賢く、親切であると信じている多くの人たちに出会います。神があやまちを犯すと思っているのです。

人間は現在の痛みしか見ていませんが、神は永遠の喜びを見ているのです。人間はうつのつらさを強調しますが、神は責任を持って人間がうつに向き合い、成熟し、成長するのをお喜びになるのです。

ここで、もっと学術的にうつの遺伝子に関するデータを知りたい方のために、以下をまとめてみました。

  1. これまでの科学的研究によると、女性は明らかに男性よりうつになりやすい。文化的要因もまた考慮しなくてはならないが、この性差素因は遺伝子レベルにあるらしい。
  2. 研究によれぼ、うつの人の血縁関係者はうつになる確率が高い。親、兄弟、子どものリスクが一般の人以上であることは、すべての感情障害について言える。
  3. うつの遺伝子素因理論を多くの科学者が受け入れるような影響を与えた、双子の研究について。38組の双子を対象に行なわれた研究では、一致率(片方がうつならもう一方もうつになる率) は、一卵性双生児では57% 、しかし二卵性双生児では29% のみであることがわかった。また別の研究によれば、別々に育てられた一卵性双生児で67% 、いっしょに育てられた場合、76% の一致率を示している。
  4. 遺伝のモード(優性遺伝か劣性遺伝か、常染色体か性染色体か、単一遺伝子か複数遺伝子かなど) は現在深く研究されている。ある研究は、Ⅹ染色体の遺伝子のひとつが、うつ(双極型) の素因の可能性があることを示唆している。
  5. 双極感情障害は比較的まれな障害で、大半のうつとは対照的に、ほとんどが遺伝性である。操うつの人は、普通の気分から重いうつの範囲まで気分の上下が見られる。こうした気分の上下の要因は、ときに環境的ストレスとは無関係のように見える。よって操うつにおいては遺伝の要素が大きく考慮される。操状態はリチウムでうまく治療することが可能。うつ状態は抗うつ剤の処方によって治療する。タグレトールもまた遺伝的気分の上下を抑えるのによく効く。これらの新しい処方薬は、うつの気分の上下とともに操状態の上下にも効き、脳の活動をより正常化させる。なお、操うつ患者の親の一致率は36~45% 、兄弟では20~25% 。だが躁うつ患者の一卵性双生児の一致率は、研究によって66~96%と幅が見られる。

深い悲しみに遭遇すると「うつ」になるのか?

人はだれでも、愛する人の死、大好きなペットの死、事業の失敗、婚約者からの婚約破棄、受験の不合格、車の事故で腕や脚を失う、不治の病にかかっていることを知る等々、大きな喪失や悲嘆を味わいます。いや重大な喪失を経験すると、それが癒されるまでに次に説明するようなグリーフ(深い悲しみ)の5段階を全部通ります。グリーフ反応はうつとは違いますが、グリーフの第2、または第3投階にあまり長くつまずいていると、うつになる場合もあります。

第一段階「現実を否認」
自分の身におこつていることを信じないことで、これは通常長くは続きません。

症例

5歳の女の子、ジェーンは、お父さんが大好きでした。ある夜、ジェーンと添い曝している間にお父さんは心臓発作をおこして、救急車で病院に運ばれました。ジェーンには「かならず戻るから」と言って出かけたお父さんでしたが、病院で死亡しました。そのことを聞かされたジェーンは数年間にもわたってその事実を否認し、父親の死後もクローゼットやベッドの下を探そうとしました。10代になってもジェーンは、ときに父親が部屋に入ってきて、やさしい言葉をかける妄想を抱いていました。彼女は否認の段階にひたりきっていたのです。そこから抜け出すためには、二年間(十四歳から十六歳)毎週の精神療法が必要でした。

第二段階「怒りがでてくる」
大きな喪失を経験するときに私たちにおこる反応の第二段階は、「自分以外のだれかに対する怒り」です。
たとえば、死別した人のせいではまったくないにしても、死んだその人に怒りを感じたりします。これは、親の死や離婚を経験した子どもにはかならずおこる、正常な人間の反応です。この段階では、こんなことを許した神に対する何らかの怒りを含みます。しかし、神への怒りは抑えてしまうため、普通気がつかないことが多いのです。
第三段階「怒りの対象が自分に向かってくる」

重大な喪失が受け入れられ、神、その他の人たちへの怒りが出たあとは、かなりの罪悪感を感じるようになります。この段階では、何でも自分のせいだと考える傾向があります。「あと知恵」はつねに「見通し」より良く、「ああすればこの喪失はおこらなかっただろうに」という思いを禁じ得ないのです。

怒り、恨みをすべて内側に向けます。神に自分のあやまちを告白して、完壁な見通しを持ち得なかった自分を許すのではなく、自分自身を恨みに思い、自己批判的な考えで、自分を糾弾し始めるのです。たいていの人はこの投階をすばやく通過( 1~2週間のうちに) して、第四段階に進みます。この怒りが内側に向かった状態に長くとどまると、グリーフはうつに姿を変え、セラピーでも数ヶ月かかるようになってしまいます。セラピーなしでは、うつのまま一生を送る人もいます。

症例

婦人は牧師の妻で、うつ、不安、自殺願望を訴えてセラピーにやってきました。血圧は上がるばかりで、危険な状態にまで達しています。彼女の父親は、彼女が精神科の援助を受けると決める一年前に亡くなっています。セラピーで、彼女は1年前の父の死のグリーフの第三段階でずっとつまずいていることがわかりました。父親に「さよなら」も「アイラブユー」も言わなかったことが罪悪感になっていたのです。

またあることで父親に腹を立てていたこともあり、死人に恨みを持っている自分をうしろめたく思っていたのです。私たちは人が死ぬと、その人の悪いことは忘れ、死人に怒りを持つという考えそのものがおぞましいとする傾向があります。彼女の内向した怒りは彼女をうつにしていたばかりか、心臓発作で死ぬ危険があるほどまでに血圧を上げていました。

彼女の精神科医は、ゲシュタルトセラピーよって開発された精神療法の方法。分析や解釈などをせず、「今ここで」の出会いを重視する。

よく用いられる技法に、2つの椅子を用いたチェア・テクニックがある。ゲシュタルトとはドイツ語で「全体性を持った形態」の意) のテクニックを使って彼女の亡くなった父親になり、彼女の中にとどまっているいろいろな感情や考えを全部吐き出すように援助しました。彼女は最初、自分自身の感情が恐いために拒否していましたが、精神科医はとうとう説得に成功しました。

はじめは大変でしたが、いったん始まると彼女の喪失感や愛情、怒り、罪悪感がたくさんの涙とともにどっと出てきました。20分後、彼女は1年間ためこんでいた全部の感情を出し切りました。1週間のうちに彼女のうつは晴れて、血圧も正常に戻り、現在もその状態を維持しています。

第四段階「真の悲しみが訪れる」
これはもっとも大切な段階で、かつ必要不可欠です。重大な喪失、逆転を体験する場合はつねに、男女ともにしっかり泣くことが大切です。私たちの文化は男性に、そしてある女性に、ストイックに感情を抑え、泣かないことで(葬式ですらも) いかに強いかを見せることを強いています。
父親の死に際して泣くのは、弱いからでしょうか? イエスキリストが、友人ラザルスの死を嘆いたのは、弱かったからでしょうか? もちろんそうではありません。重大な喪失に際して泣くのは、人間的、かつ神の目にかなっています。
深い悲しみを表出しないで蓄積してしまうと、うつになって、長年それを引きずることになります。思いきり泣いてしまえばよいのです! そうすれば、早く第五段階に移ることができます。
第五段階「癒されて意欲と喜びを取り戻す」
第五段階は、喪失という現実の否認、外側と内側に向けられた怒り、真のグリーフがなされたあとにもたらされる段階です。ここでまた、人生に立ち向かう意欲と喜びを再び取り戻します。
第一から第四までの段階が終われば、自動的におこる段階なのです。人間はだれでも、大きな喪失を経験したあと、五段階全部を通ります。友人との死別などの重大な喪失では、成熟した大人でも仝プロセスを超えるのに3~6週間かかります。こうした仝五段階のプロセスを知っているからといって、グリーフがおきないのではありません。
しかし、知っていればこの五段階をより早く、恐れも少なく過ごせるでしょう。だれでも人間はときに喪失による一時的な悲嘆の反応を経験するでしょう。もちろん人口の1% に見られる遺伝的な要素の強いうつの場合は除きますが。他の99% の人にとっては、結局のところ幸福は自分が選ぶものなのです!

うつから自殺に至るケース 自殺前に見られる危険信号も

ぅつは自殺の最大の原因です。自殺はアメリカ人の死因の10位を占め、年間2万4千人の自殺者がいます。20分に一人が自殺を図り、10回に1回は死に至ります。

世界中で、自殺は増加の一途をたどっており、年間50万件が報告されています。自殺は人間だけにみられるものです。動物は他の動物を殺しますが、自分を殺すことはしません。人間だけが自殺をするのです。しかし「自殺をする」という人の言葉のすべてが本気だとはかぎりません。

症例1

ある女性が、うつを訴え、自殺したいと言ったために入院措置がとられまそちした。ところがその翌日、彼女はもううつは感じないと言ったのです。彼女の言動は、心理的評価の際に特徴的でした。

通常のうつの症状とは少し異なり、彼女は演技的で、少し誘惑的な身だしなみをし、これといった罪悪感もないようです。感情的で、興奮しやすく、ナイーブで、感受性も強い、といった彼女の行動パターンは、ヒステリー性人格障害の典型的な特徴です。

女性はうつではなく、ヒステリー性人格障害でした。このようなケースのご多分にもれず、彼女はうつを訴えたのです。そして、彼女の自殺したいという言葉はただの脅しだけでした。こうしたヒステリー性障害の人は、自殺をすると言っては人を操作しようとします。さらに話を聞いてみると、彼女は夫を操作しようとしていたようです。

自殺をほのめかす人の大半が操作的な性質のものであっても、まわりの人は真剣に受けとめなくてはなりません。自殺をすると脅かしている人は決して自殺しないというのではなく、事実、その1割は最終的に自殺を図るのです。

自殺をする人の大半が、だれかにそのことをほのめかしています。自殺は、離婚した人、連れ合いに先立たれた人、そして社会的、経済的に高いクラスの人、また独身の大人の男性に多く見られます。女性は男性と比べて5倍ほど自殺を図る数が多いのですが、しかし実際に死亡してしまうのは男性のほうが2倍も多いのです。

この理由は、男性のほうがより確実な自殺の方法を選ぶのと、人を操作するために自殺を用いることが女性ほど多くないからです。

何かの宗教を信仰している人でも自殺をします。大学生では、自殺は事故死に次いで、第2の死因となつています。3分に1回、だれかが自殺を図り、20分に1回、だれかが亡くなり3ます。自殺をする人には共通する特徴、経験が見られます。次にあげる10の症状が危険信号です。

自殺前に見られる危険信号(大事なサイン)

  1. 強烈な絶望感を感じている人。
  2. うつに見られるような、強烈な感情の痛みを持つ人。
  3. 45歳を過ぎた単身の白人男性。
  4. 自殺を企でたことがある人、あるいは人に自殺をほのめかしたことがある人(自殺をする人の10人のうち8人ははっきりした警告を出している)。
  5. 深刻な健康問題を抱えている人。
  6. 何らかの重要な喪失(配偶者との死別、失業などを経験していること。
  7. 具体的に自殺の計画を立てている人。プロセスは、自殺の考えがよぎり、自殺を真剣に考えるようになり、実際に実行する。
  8. 慢性的な自己破壊行為(アルコールや薬物の乱用など) をする人。
  9. 強烈な達成のニーズがある人。
  10. 過去半年の間にショックな出来事に遭遇した人。

自殺は非常に破壊的な行為です。その理由は、まず、

  1. 自殺を図る人の多くが、ものごとを現実的に見ることができずにいること。もし状況の真実が見えれば、あるいは問題は一時的なものであり、解決可能なものであることが理解できれば、自殺を選ぶことはないでしょう。セラピーを2ヶ月続けると、自殺思考が強かった患者は「自殺を考えていたなんて」と驚きます。
  2. 自殺のあとに残された子どもたち、親戚たち、友人たちへの影響が極めて大きいこと。子どもは親の自殺を自分のせいにします。また子どももまた親の例にならって、人生をあきらめ、自分が大人になって困難な状況に陥ったときに自殺を図ろうとしたりします。
  3. 自殺は他殺が罪であるように罪であるということなんじ「汝、殺すなかれ」という言葉は自他ともの命にあてはまります。自殺はけっして神の意志ではないのです!

うつになるとあらわれる症状

うつは存在のすべて身体、感情、スピリチェアリティに影響をおよぼす病気です。うつの感情的な痛みは、骨折による身体的な痛みよりもはるかに深刻です。

骨折などとは違って、うつの痛みは徐々にゆっくりとやってきて、ずっと長くとどまることが多いのです。現在多くの男女が、身体的な病気よりもうつの症状を多く患っています。そのうつの症状は、臨床的に見て大きく5つに分かれます。それは、悲しい感情、つらい思考、身体的諸症状、不安、そして妄想的思考です。

うつ病になりやすい性格というのもあります。

1 .悲しい感情につきまとわれる

うつの第一のは、悲しい感情です。うつを患っている人はふさぎこんだ顔つきで、落ちこんで見えます。また、泣きたい気分になりがちで、実際よく泣きます。

視線は下を向いて悲しそうです。口元は下がり、額はしわを寄せています。疲れて、がっかりしたように見え、顔つきは緊迫した感じがあります。

さらに、うつが進行すると、しだいに身だしなみに興味を示さなくなります。男性はひげを剃らなくそなり、女性は化粧をしなくなります。深刻なうつの人はよく他人からは、だらしなく見えます。うつを笑顔でかくそうとしてもわかってしまいます。事実、うつの人の多くが「ニコニコうつ」として知られる状況(内面の悲しい感情をかくすために不適当に笑顔を見せる) を持っています。

2.つらい思考に襲われる

うつ第二の症状は、痛みをともなうつらい思考です。骨折すると身体的な痛みを感じるのと同じく、うつの人は感情的な痛みを経験します。ひどい身体的な痛みと感情的な痛みの両方を経験した人の多くが、心の痛みのほうが体の痛みよりもはるかに苦しいと訴えています。

心の痛みより、骨折の痛みのほうがましだというのです!うつの人は何度もくりかえして内省的に過去のあやまちに関して自分を責めます。自分に非がない場合でも、うしろめたさを感じ、自分のせいだと感じてしまうのです。

過去のうまくいかなかったことも、それが事実であれ、想像のことであれ、あらゆる事柄を過剰に心配します。自己否定感にとらわれているのです。問題がささいなことでしかなくても、あたかも大間題であるかのように評価し、それが全部自分の責任だとして自分を責めます(ある人はまった逆に、自己憐憫にふけるあまり、すべての問題を人のせいにします)。

また、自分が大切だとは考えず、知性、スピリチェアリティなどの点で、自分は劣っていると感じています。自分は無力で、無価値、希望がないと考えています(事実、うつの人の75% は自分はけっして治らないと感じています)。

多くの場合、まわりの人たちからはサポートがなく、空虚で孤独だと感じています。しかし、人からの愛情、確認の言葉がほしいのに、深く根づいた敵意がそれを得ることを挫折させます。

最近、あるいはずっと過去のことで、自分の思うようにいかなかったことに対する後悔でいっぱいです。不幸で悲観的、怒りつぼく、疑い深くなっています。

あらゆる体験が心の痛みと結びついています。人に受け入れられないことを予期し、(多くの場合、事実とはかなりかけ離れて) 拒否され、嫌われていると感じています。

自分自身と自分の思考にとらわれすぎているために、注意力、集中力、記憶力に問題が生じます。不安にとらわれ、困惑し、未来は暗く、エネルギーもあまりなく、何をやっても無駄だと思ってしまいます。これまで述べたように、こうしたつらい痛みをともなう思考は罪悪感が中心になっています。

これは本当の罪悪感の場合もありますが、うつ患者の場合は擬似罪悪感が大きな問考えています。罪悪感を感じなくてもいいのに、ささいなミスや間違いにも罪悪感を感じます。

普通は、間違いを犯したあと、少しの間、罪悪感を感じるだけなのです。私たちは罪悪感がどんなにつらいか知っています。ですから、このような罪悪感にずっとさいなまれ続けたらどうなるかを想像してみれば、うつ本人がどう感じているかが少しはわかるでしょう。

本人は逃れられない罪悪感を抱えているのです。うつの人のつらさは、個人のコントロールのおよばない行動や出来事の責任を取るところからきています。これは、人に一目置かれたいというニーズに根を発するものかもしれません。

うつの人は圧倒的な力量不足を感じており、自分は価値のない、箸にも棒にもかからないダメな人間だと思いこんでいます。

でもそれは本人も認めたくないのです。多くのことに責任を持ち、多くのことが自分にかかっているとなれば、自分をゼロと感じなくてすみます。そうやって圧倒的な責任感が、本人が無価値であると感じないですむよう、無意識レベルで本人を守っているのです。

責任がパワー感をもたらしてくれます。内部の本当の姿である力量不足感、無力感から、反応として全能感をもたらしてくれるのです。

うつの人はモチベーションに問題があることが特徴です。つまり動機が欠如しているのです。以前かかわっていたような行動にも興味を持てなくなります。

人を避けるようになり、1人にしてほしいと願うようになります。ユーモアのセンスも失われ、なかなか決心がつかなく2 2なります。そしてしだいに自殺のことばかりが頭を占めるようになるのです。
3.うつにともなう身体的症状
うつの三番目の特徴は、体の症状で、医師らはこれを「うつの生理学的随伴症状」ととらえています。

うつの状態にある間、神経系統で脳内アミン、とくにセロトニンにかかわる生化学的変化がおきます。人間の脳は、車がガソリンで走るのと同じく、セロトニンで機能しますが、こうした脳内物質の変化が、さまざまな身体的結果をもたらすのです。
セロトニン不足による不眠はセロトアルファで補う

まず、体の動きが減り、睡眠が影響を受けます。入眠障害や早朝覚醒があり、するとまた寝つけなくなることがよく見られます。最初では、睡眠が短くなるより、眠りすぎることが多いでしょう。食欲も変化し、過食かまったく食べなくなり、それによる体重の減少、または増加が見られます。下痢、普通は便秘がより多く見られます。

女性では、生理が何ヶ月も止まったり、不順になったりします。セックスへの興味が薄れるケースもよく見られます。本人は緊張からくる頭痛、頭部の張りつめた感じを訴えます。

体の動きが緩慢になるにつれて、姿勢が前かがみになり、茫然自失の状態になります。胃腸障害も見られ、代謝率も下がります。口が渇いたり、心拍数が増えて、動悸が激しくなったりします。

こうした身体的変化に本人が驚いて、心気症(体の病気に対する過剰な懸念) になり、多くガンや低血糖、栄養障害だといこんだりします。実際、人は面子を守るためには、何らかかっとうの病気を持っているほうがましなのです。

心理的葛藤があると認めることは弱さであり、それは避けたいのです。低血糖だと信じて病院を受診する百数人の患者のうち、実際に低血糖の疑いがあると確認されるのはほんの一人にすぎません。

4.不安と興奮が高まる

四つ目のおもな症状は、不安感と興奮です。不安とうつは普通いっしょにおこります。そして、不安のため、普段よりイライラしやすくなります。またうつがひどくなると、興奮も高まります。うつの人は緊張して、じつと座っていることができません。多くがパニック状態「極端な不安感の発作」になり、心拍数が上がり、心臓発作がおきているのかと思われる人もいます。

5.妄想的思考が浮かぶ

深刻なうつにおこりうる五つ目の症状は、妄想的思考です。妄想を抱いている人は、明らかに現実との接点を欠いています。妄想には、自分は迫害されているとか、自分は神から特別の才能や洞察力を与えられたと考えるなど、誇大妄想的思いこみがあります。

実際にはない声こえる幻聴や、人には見えないものを見る幻視もあります。こうした症状のすぐあとに治療を受ければ、普通は思考も正常に戻り、正常に暮らせます。こうした場合、1~2ヶ月の入院が必要でしょう。

入院中は、毎日の精神療法、向精神薬、抗うつ剤、勇気づけがなされます。しかしなかには、残念ながら精神病になる人もいます。通常のうつとは、その程度や性質において、とても異なります。

まとめとして、うつは複雑でつらい障害であり、心、体、スピリチェアリティすべてに影響します。現実の痛みを回避するために、完全に現実との接点を失うところまで進んだりと、さまざまな程度の症状が見られます。

大半のうつは精神異常の段階まではいきませんが、悲しみ、つらい思考、身体的症状、不安(または興奮)をともないます。もしこれらの症状のために本人が生理的、社会的に何か悪影響を受けるようなら、うつと言えます。

きちんとした専門の精神療法に積極的に取り組めば、治ります。もし、悲しみ、つらい感情、精神運動抑制(体の動きが緩慢になり、しかもそわそわする) とともに相当の不安がともなう場合は、興奮性のうつですが、これもまた完全に治ります。しかし、これ.に加えて妄想や幻視、幻聴があれば、精神病的うつと言えます。

精神病性のうつも、早期に発見されれば、かなり治療は難しいですが、普通は治ります。なかには悪化して、一生精神障害を患う場合もあります。ただし、近年の医学の進歩により、統合失調症(精神分裂病)患者も、処方薬を服用することで、健康な生き方に戻ることができるようになってきました。

あなたはうつにかかっているか

次の質問の答えの大半が「はい」の場合は、うつの確率が非常に高いので、症状が悪化しないうちに専門家のアドバイスを受けてください。

  • 一年前と比べて、よく泣きたくなる気分になる。
  • 気分が滅入って悲しい。
  • 希望がなく、ほとんどいつも無力感にとらわれている。
  • やる気、動機(モチベーション)がほとんどなくなってしまった。
  • かつては楽しめたものへの興味が失せてしまった。
  • 生きることは価値がないという考えがよく浮かぶ。
  • 睡眠パターンが最近変わって、極端に多く、あるいは少なくなった。
  • 食欲がなくなっている。
  • 頻繁にイライラする。
  • よくそわそわした感じになる。
  • エネルギーがなかなか湧いてこない。
  • 朝は1日のうちでも一番気分が滅入る。
  • よく過去のことを思い巡らしている。
  • 鏡に映った自分は悲しそうだ。
  • 自己否定感を持ってしまう。
  • 過去のことを気にしすぎる。
  • 一年前より多くの身体症状(頭痛、胃の痛み、便秘、動悸など)がある。
  • かつてのように仕事がうまくできていないと、まわりの人は気づいていると思う。

もう少し客観的にうつの自己診断を行いたい方はこちら。

誰でもどんな人でもうつになる可能性がある

ある患者さんの例です。待合室に、一度も見かけたことのない若い女性がいました。診察室に呼び入れ、「どうしましたか」と聞くと、彼女は突如として涙をこぼし、いかに落ちこんでいるかを話し始めました。

うつと悲しみと絶望でどうにもならないと彼女は言うのです。つらい彼女にとって、受診は最後の手段であるかのようでした。この若い女性は、アメリカの一番の健康上の問題「うつ」を患っていました。

医師が診るうつの患者の数は、その他の心の問題を抱える人たちを全部合わせた数よりも多いのです。大半のアメリカ人は一生のある時期、深刻なうつを患います。

そして現在、アメリカ人の20人に1人がうつという診断を受けているのです。もちろんもっと多くの人がうつ状態にありますが、治療や援助を受けていません。ある推定によれば、アメリカの18歳から74四歳の人口のうち、2千万人がうつ状態だと言われています。うつは自殺のおもな原因であり、事実、うつを患った人の一五% が自殺を図ると言われています。

うつは今日アメリカの死因の10番目にあげられ、大学生の間では死因の2番目にあがっています。

うつは男性よりも女性に2倍多く見られ、また経済的にクラスが高い人々には3倍多く見られます。

たしかにお金で幸福は買えないことを、この数字ははっきりと証明しています! うつは普通40代、50代で発症しますが、幼児期から高齢者までストレスが多い時期にはいつでもおこり得ます

うつはあいまいな言葉です。一般の人たちはちょつとした気分の浮き沈みから、精神病までを含めてこの言葉を使っています。

私たちはみなこの中のどこかに入るわけで、うつの程度と幸福感は1日のうちでも時間により、また日により、ある程度行き来します。

いわゆる「臨床的なうつ」に陥っている人、つまりうつ症状ゆえに生理機能上の症候が現れている人たちを治療します。

うつは旧約聖書の時代から語られてきました。聖書にはヨブ、モーゼ、エリヤ、ダビデ、ジェレミアなどのうつ的な症状が記録されています。

最初にこの症状が記録されて以来、その状態は現在までずっと変わっていません。さて、ではどんな人がうつを患うのでしょう?実は、人生のある時期、ほとんどだれもがうつを経験します。

しかし、深刻なうつを患っている人でも、何とかつらさから抜け出る道、希望はあるはずです。

うつは普通、正しい治療と援助によって治ります。深刻なうつの経験者にも、今後はそれを回避できるという希望が必要です。

生理的理由によっておこるうつでさえも、治るまではいかなくても、大半は正しい処方薬とカウンセリングでコントロールできます。

現在つらい痛みを経験している人が楽になれるよう、そしてまただれもが人生でかならず直面する試練やストレスにも、できるだけその痛みが軽くあってほしいとい願っています。

幸福は、私たちが正しい道を選びさえすれば、手に入れることができるのです。

激務で欝病になり不眠に、脳マッサージ整体で改善

仕事が忙しく欝病に

数年前、ある日突然、会社へ出勤できなくなりました。「いつものように身支度を整えたのですが、どうしても玄開から外へ出ることができなかったのです。

結局、その日は欠勤してしまいました。その日から続けて会社を3日休み、家族のすすめもあって心療内科を受診しました。「診断は気分障害。つまりウツ病ということです。休職することになりましたが、仕事がとても厳しい会社で同僚も次々に体調を崩すため、私が休職願いを出しても上司が驚かなかったくらいでした。

実は、青木さんの欝病の兆候は、この半年前から現れていました。中でも、最も日立っていたのが不眠でした。寝つきが悪いのに加え、眠っても夜中に目が覚めてしまい、朝まで眠れなくなってしまうのです。

心療内科では睡眠導入剤を処方してもらい、寝つきだけはよくなりましたが、やはり早朝に目が覚めてしまいました。仕事や趣味にも意欲がわかず、ウツウツとした日々を送っていました。

家族のためにも復職したいと思っていました。そんなとき、知人からすすめられたのが脳マッサージ整体でした。「最初は、背中をそらすなどの運動で不眠やウツ病が治るのかと半信半疑でした。

でも、症状が少しでもらくになればと思い、毎日寝るまえに行うようにしたのです」初めて脳マッサージ整体を行ったとき、「背中がほぐれて気持ちがいい」と感じましたが、翌朝に熟睡感はなく、気分も変わりませんでした。

ところが3日後、朝起きるといつもよりも部屋が明るく感じ、生まれ変わったかのようにやりたいことがいくつも浮かんできたといいます。

そして、脳マッサージ整体を始めて2ヶ月後には、不眠がすっかり改善したのです。「脳マッサージ整体をするとスッと眠りに落ちるようになり、朝まで日が覚めません。睡眠導入剤も、飲まなくてすむようになりました。
その後も脳マッサージ整体を続けた青木さんは、休職4カ月後に会社に復職しました。同じ部署の同僚が2人休職し、復職できずに退職していくのを見て、脳マッサージ整体の効果を改めて実感したといいます。

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家族がうつ病になったときの家族の感情

パニック・ショック期
家族が「うつ病」になることは、家族を含めて周囲の人々にとって、非常にショッキングなことです。「うつ病」という病名を医師から出口げられ、パニック状態あるいはショック状態に陥り、どうしてよいのか分からなくなってしまいます。
うつ病についてよく理解しているはずの精神科医療に従事する人であっても、家族や肉親がうつ病という病名が告げられることに対しては受け入れがたい気持ちになるものです。
否認・怒りの時期
家族のパニック状態あるいはショック状態が過ぎると、次に「現実を否定する気持ち」や「怒りの気持ち」がふつふつと湧いてきます。この時期は「周囲への攻撃的な反応」や「自分を責める」ような反応があります。

うつ病患者さんの配偶者の場合、「本人に負担をかけすぎたのではないか」という自責の念が生じたり、「周囲からどう思われるだろう」「なぜ私がそのような目にあうのか」という気持ちになります。

うつ病患者さんの病前性格として、真面目、几帳面、頑張り屋、責任感が強いということがあり、家族にとってはそれまで理想的な「よい夫」であり「良妻賢母」である場合が多いです。

そのため突然のうつ病でパートナーの性格や行動がん変わってしまうことほ、なかなか受け入れがたいものです。憂うつで無気力ですべて否定的なパートナーと、一緒に過ごすこともつらく、病人だと分かっていても、うつ状態の相手を責めてしまったり、とげとげしい言い方をしてしまいがちです。

うつ病患者さんの両親や兄弟などの肉親にしてみれば、「うつ病」という医師の告知は、受け入れがたくどうしてよいのか分からなくなるものですから、つい配偶者である妻や夫を責める発言をしてしまいがちです。そのようなことがあると、一番理解してくれるほずの両親(舅姑)や兄弟でさえも味方ではなくなり、家族自身も、周囲に対し「敵意」や「拒否」の反応が生まれてしまいます。

パートナーがうつ病になったのは、遺伝や家系の問題ではないのか? 親の育て方が問題だったのではないのか? など疑心暗鬼になりがちです。

このようにうつ病は本人のみならず、周囲の人間関係まで破壊してしまう病気なのです。ですから周囲の反応がきっかけとなり、離婚するカップルも少なくありません。離婿や別居、嫁姑など家族間の対立は、うつ病の症状を悪化させ、家族を失う喪失感や孤独感、将来への不安感や対処能力のなさに絶望し「自殺」という最悪な結果を生むことさえあります。

それを防ぐためにも、うつ病というマイナスエネルギーに満ちたブラックホールに家族が巻き込まれないように気をつけましょう。また、この時期に家族が「怒り」を感じるのはごく自然な反応です。憂うつで無気力ですべて否定的なパートナーに対し、あなた自身寂しくもあり、怒りの感情を抱いてしまうため、うつ病だと頭では理解し分かっているつもりでも、うつ病のパートナーに優しく接することはとてもむずかしいことです。

自分の気持ちに反してまで、無理に優しくすることはありません。優しくできない時期は「温かな無関心」でよいのです。しかし、うつ病のパートナーに対し、あなた自身の「怒り」をストレートにぶつけたりしないことが大切です。「怒りの感情」をストレートにぶつけると、うつ病のパートナーはただでさえ神経過敏な状態にあるため、冷静で建設的な話し合いほまず不可能となります。

相手を言葉で攻撃したり侮辱するのではなく、自分のフラストレーションを穏やかに表現するよう努めましょう。たとえばあなたの帰宅が遅くなり、夕食の準備が遅れたことでうつ病のパートナーが不機嫌になってしまった場合は、「いつもごろごろ寝てばかりで私が働いて疲れているのに何て言い草なの、あなたって最低! 」と言うのを一呼吸こらえて「あなたの態度で私は傷ついたわ。私の気持ちもわかってもらいたかった。とても悲しい」と言い換えることが大切です。

うつ状態でふさぎこみ、否定的な態度や悲観的な考えしかない相手と一緒に過ごすと、こっちまで気分が悪くなり、その人の側にいるのが嫌になるものです。

しかし、うつ状態にある患者さんほ小さな子どものように甘えて家族を離さなかったり、過干渉になると不機嫌になるのに、ひとりの孤独な時間を嫌がります。家族は見えない鋳で束縛された状態で、自由に外出もできず、家族自身の日常生活を犠牲にして、相手に尽くすことになってしまいがちです。

風邪のように短期間で治る病気であれば、そのようなこともあまり苦痛ではないのですが、うつ病は一週間程度の短期間で症状がよくなる病気でほありません。数ヶ月〜数年単位の長期戦でのぞまなければいけない病気なのです。

孤立化・抑うつ期
先の見えない不安感から家族自身が抑うつになり、悲哀や自尊心の低下から「自分ほ情けない。悲しくて涙が止まらない」という気持ちになりがちです。この時期ほ、「誰とも話したくない」「現実生活を考えると苦しくて駄目」という孤立化や苦悶の反応があります。内への反応となるため、自責感などの自分自身への攻撃性が出やすい時期です。
無関心・無力感・虚脱期
うつ状態が続くと、家族自身が疲れ果てエネルギーが枯渇し、無力感や無気力から「もぅどうでもいい。疲れた」という虚脱感を感じてしまいます。時に何も感じない感情の平坦化が起こります。周囲の援助が必要な時期なのですが、本人も家族もエネルギーが枯渇した状態なので、援助を求める気力さえないのが現実です。

自殺や無理心中が起こるのもこの時期です。そのような事態を避けるためにもうつ病になったら早めに医療機関を受診し、家族自身も相談できる相手や場所を見つけておくことがポイントとなります。

この時期には、無理に感情を押し殺すことなく自分の混沌としたネガティブな感情や悲しみを発散できる場所と自分の時間を持つことが大切です。うつ病の患者さんは主治医のもとで相談できますが、家族の気持ちを理解し支えてくれる精神科医やカウンセラーが少ないのが現実です。

家族会・患者会などでは、毎月、ご家族だけが集まる時間を用意しています。家族メンバーも、この時間だけは、様々な感情をストレートに出すことができます。怒りの感情ややりきれない悲しさなどを思い切り表現し、涙を流してもらいます。

安心できる場所でネガティブな感情を発散すると、家族自身のストレスが発散されうつ病の患者さんに優しく接するエネルギーが湧いてきます。専門家のカウンセリングや心理教育だけでなく、同じ境遇の仲間から温かく支えてもらい、一緒に学ぶことがうつ病の患者さんや家族自身の回復にほ必要なのです。

日本全国に「家族会」と呼ばれる「精神障害者家族会連合会」があります。まだ「統合失調症」のご家族が中心ではありますが、同じ立場の仲間から温かく支えてもらうことが、家族であるあなた自身の回復につながります。

「受容」の時期

このつらい時期を乗り越えると「受容」の時期になります。発想の転換ができ、新しい希望が持てるようになります。この時期になったら、家族の方も学べることはすべて学びましょう。

うつ病という敵を知ることが「うつ」攻略には不可欠です。うつ柄について学ぶことは、車の運転や整備技術を身に付けることに似ています。「うつ病」は症状によっては、本人が感情や症状をコントロールしがたいこともありますから、ファミリカーというより「F1カー」やレース仕様の特別車に似ています。誰もが簡単に乗りこなせるものではないので、家族は上手にうつ病を乗りこなす運転テクニックと、ピットで整備する技術の両方を身に付けることが大切です。

回復期の患者さんは、つい頑張りすぎて無理をしてしまいがちです。まるで1分1秒を争うレーサーのようにエネルギーが枯渇しそうになっても無理に走ろうとします。そのような時に家族がピットクルー(調整役)として、患者さんが頑張って無理に動き回りエンジン故障や脱輪事故が起こらないよう、相手をよく観察し小さな体調の変化をつかみ、微調整を行います。

いつピット・インさせて、休養やエネルギー補給を行うのか、状態の見極めを担うのが家族の役割です。ある意味で、医者の役割は、自動車修理工場のようなものです。車が走るための修理はできますが、実際の場面で、テストランなどをし、試しながら微調整する能力はありません。ぅっ病が回復し、職場復帰する段階になると、医療が中心ではなく、職場や家庭での調整が中心になります。ついドライバー(患者さん)にばかり気を取られてしまいますが、家族というピットクルーがいてはじめて動くものです。

現実的な期待を持つ

現実的な期待を持つようにしましょう。残念なことにうつ病がすぐに治るような夢の新薬は開発されていません。回復までにはある程度の「時間」がかかります。「あわてず、あせらず、あきらめず」という気持ちでのぞみましょう。

長期戦にのぞむのですから、自分の生活のすべてを犠牲にするのではなく、自分の日常生活をできるだけ守るようにしましょう。短時間でも自分だけの時間を持つことで「気持ちのゆとり」が生まれます。

個人的攻撃として受け取らない

また、うつ状態の患者さんの言葉を個人的攻撃として受け取らないことが大切です。うつ病の患者さんの中には、外では「良い人」で通っている方が、家庭内では、性格が豹変し、家族に対して暴力的であったり攻撃的である場合が少なくありません。

病気になると、「いらいら感」や「やりきれない感情」を家族にぶつけてくるので、家族が相手の言葉や態度に傷ついてしまいがちです。気分障害という病気は、時として理性や感情のコントロールがうまく働かないことがあるのです。

本人がしているのではなく、病気の症状がそのようなことをしているのだと考えましょう。「本人を憎まず、病気を憎む」というとらえかたが肝心です。このようなストレスがたまったときは、自分へのご褒美も必要です。患者会などでは、ストレスポイントがある程度になったら「自分へのご褒美」を勧めています。

回復の方法を学ぷ

病気は必ず克服できると信じて回復の方法を学びましょう。病気の本人は、回復について否定的であり、悲観的なことを口にします。

家族がその言葉に巻き込まれることなく、「回復」を信じて前に進むことや「うつは回復できる」と繰り返し声を出すことが本人自身の力になります。日本では古来より言葉に霊がこもるといことだまう「言霊」信仰があります。「悪いことを言えば悪くなっていき、よいことを言えばよくなっていく」という考えです。私は、当事者グループや家族グループで回復者の方の発言を聞いていると、その「言霊」という言葉のパワーを感じることがあります。できるだけポジティブに考え、言葉にしましょう。

「病気であること」を理解する

うつ病の患者さんが持つ否定的な感情や、なまけているように見える態度は、頑張って支えている家族の感情を連なですることもあります。外見はどこが悪いのか分からない病気だけに、回復が遅いと家族のストレスがたまります。「怠けているわけではなく、病気がさせている症状であり、

まず第一は、ゆっくり休ませること」が治療の基本です。治療にほ半年から一年の期間が必要となりますので、「うつ病という病気である」という認識を持って接することが大切です。

「一進一退」を理解する

うつ病の回復は、一直線に回復するのではなく波状に回復します。よくなっ
たと思った矢先に無理をして、うつ状態に戻ることがよくあるので、この回復期の揺れを「自分のうつは治らない」と悲観してしまうことがよくあります。

回復期は、雨上がりの野球グランドに似ています。表面は乾いているように見えても、中はグチャグチャの不安定な状態です。そのような状態の時に、ストレスなどの負荷をかけると、足もとが不安定なため、捻挫などの怪我をしてしまいます。表面だけでなく、内側まですっかり乾燥し、しつかりとした足場の野球グランドで安心してプレイできるよう待つ時間も必要なのです。治療中の「一進一退」があることをよく理解しておきましょう。そしてそのことで一喜一憂しないようにしましょう。

大事な決定はしないこと

また、責任感の強いうつ病の人は、「周囲に迷惑をかけるから」といって「退職」や「離婿」などを口にします。うつの時期には、悲観的なことしか考えられないので、大事な決定ほ先延ばしや棚上げにしましょう。

どんなにつらくても自殺だけはしない

うつ病になると「消えてなくなりたい」「生きているのがつらい」「死ぬことばかり考える」などの「希死念慮」が起こります。「死にたい」と言われると家族は動揺し否定してしまいがちですが、そうしたSOSのサインを受け止め、本人の苦しみに共感を示すことが大切です。

あなたに死を打ち明けているのには意味があります。誰にでも打ち明けるのではないのです。手をつないで話を聴いたり、肩を抱いて体を接するようにして不安な気持ちを汲み取ってあげましょう。

また、睡眠不足が続いている、焦燥感がある、不自然な行動が目立つ場合は、急いで主治医に相談しましょう。

緊急の場合は、精神科の夜間救急を利用することもできます。心筋梗塞などの心臓発作で命の危機状態のときには、誰も受診を躊跨しません。しかし、うつ病で希死念慮があり精神的に危機的な状況になっているのになぜ受診をしないのでしょうか?

かけがえのない命を守ることは大切なことです。手遅れにならないよう、家族は自殺のサインを見逃さないようにしましょう。

家族が燃え尽きないために

自分の限界を知ることが大切です。自分だけで問題を抱え込まず、できないことは周囲の人に援助を求めましょう。

スーパーバイザーを持つことほ家族の助けになります。自分の感情を表現し、自分の人生を楽しむようにしましょう。うつ病の患者さんの前では感情を押し殺して過ごしがちですが、自分の感情を生き生きと表現し、自分の人生を楽しめる場所や時間を持ちましょう。

また、職場や家庭以外の人間関係を築くことで様々なしがらみから離れて楽になれます。完壁な妻(母)や夫(父)を目指すのではなく、ありのままの自分でよいと思うことも大切です。

うつ病患者さんは、「伝統・権威・道徳・世間などの既成の価値規範が優勢な生活環境で育ち、周囲の期待に沿うように生きてきた」人が多いといわれています。その価値観がくずれたときに「うつ状態」になってしまいます。

今まで一家の大黒柱として家族を支えていたパートナーが、自信を喪失し、依存的になったり、不満・いらだち・甘えなど様々な症状を呈することもあります。

家族は、過度の期待をせず、患者そのものを受け入れる姿勢が必要となります。また、今の自分を否定することなくありのままの自分でよいと思い受け入れることが大切です。また、あなた自身のセルフケアを心がけるようにしましょう。

最後に「家族会」で、ともに回復を目指す仲間を見つけましょう。家族会での出会いや学びは、家族であるあなただけでなく、うつ病の患者さんの回復にとても役立ちます。あなたがうつ病の正しい知識を身に付け、あなた自身が変わることでうつ病のために傷ついてしまった家族関係を修復するきっかけになるほずです。