うつの正体

仮面うつ病

心の不調が体の症状としてあらわれる

心だけでなく体にもさまざまな症状があらわれます。身体症状は、早朝にあらわれやすく、そのかげにうつ病が隠れていることもあるので、体の不調にも注意が必要です。

身体症状からうつ病が発見されることも
うつ病の患者さんは、精神的な問題だけでなく、必ずといっていいほど身体的な症状も訴えます。
精神的な変化より前に、身体症状があらわれることも多々あります。
体にあらわれるシアンは多用です。具体的な症状は次のとおりです。

  • 頭が痛い
  • 不眠
  • めまい
  • 耳鳴り
  • 首や肩のこり
  • 味覚異常
  • 口が渇く
  • のどの不快感
  • 動悸・息切れ
  • 吐き気・嘔吐
  • 関節の痛み・しびれ
  • 呼吸が苦しい
  • 胸部圧迫感
  • 食欲不振
  • 腹痛
  • 胃部不快感
  • 便秘・下痢
  • 腰や背中の痛み
  • 頻尿・排尿困難
  • 性欲減退
  • 疲労・脱力感・倦怠感
  • 冷え
  • 体重減少
身体症状だけの仮面うつ病
身体的な症状が前面に出て、精神的な症状があまり感じられないこともあります。このような場合、心の病ではく、体の病気だと考えてしまいがちです。本来はうつ病なのにしれが身体症状に隠れているケースを「仮面うつ病」といいます。

体の不調としてあらわれる

体にあらわれる症状は、つねに一定したものではなく、苦しい場所があちこち変わることが多くなっています。また、それぞれの症状は、多くの場合、なんとなく重い、なんとなく痛いといった漠然とした不快感です。

体のSOSはうつ病と診断されにくい

身体的な症状がめだつと、だれでも体の疲労かな?と思ってしまいます。専門外の医師だと身体的症状に隠れた仮面うつ病を見過ごし、違う病気だと診断してしまうことがあります。

うつ病が発見されないケースの例

  1. 受診
  2. 問診で見当がつかない
  3. 検査
  4. 異常なし
  5. わずかな症状に着目
  6. 誤診

誤診されやすい病気は

    • 低血糖症
    • 不眠症
    • 心臓神経症
    • 狭心症
    • 胃下垂
    • 便秘症
    • 脳腫瘍
    • 脳動脈硬化症
    • メニエール症候群
    • 更年期障害
    • インポテンス
    • 神経性膀胱炎

など

身体症状が前面に出た仮面うつ病
身体的な病気にみえるうつ病を「仮面うつ病」といいます。
うつ病の方が仮面のように無症状だからこう呼ばれると思っている人も多いのですが、これは全く異なります。
本当はうつ病なのに身体的な病気のような仮面をかぶっていてわかりづらいという意味です。
内科を受診して誤診されてしまうケースも
本人は、うつ病と気づいていないので体の病気だと心配し、内科や自分の症状にあった診療科を受診しがちです。
しかし、本来はうつ病なので、さまざまな検査を行っても異常は発見できません。
このようなとき、心の病に詳しい医師ならうつ病の可能性をかんがえるのですが、そうでない場合は、あらわれている症状だけで判断するので結果、誤診となってしまうのです。
異常がないからうつ病だともいえない
内科的な検査の結果、異常が発見されない場合、うつ病を疑って治療してみると、身体的な症状がうそのように消える場合もあります。そのことで仮面うつ病だったということがわかることが多いのです。
ただ、検査で異常がないからといって早計にうつ病だと判断できるわけではありません。専門的な診断が必要なのです。

うつ病の経過

ある日、突然始まり悪化していく

軽い落ち込みや体調不良から始まり、やがて症状が悪化していきます。自然によくなることが多いのですが、再発しやすいのも特徴のひとつです。

心身の症状が同時にあらわれる
うつ症状は、比較的突然にあらわれます。気持ちが落ち込むなど精神症状のほか、不眠などの身体的な不調がほとんど同時に発生します。
最初は、どの症状も軽いのですが、やがて次第に重くなっていきます。気分も体も重く行動を起こすのが億劫になっている自分を自覚するようになります。すると、考えがどんどん悲観的になり、やがて死を考えるようになります。
再発しやすい
こういった状態は、時間に経過するごとに自然に治ることが多いのですが、1度はよくなっても症状を繰り返すのが特徴です。人によっては、年に何回も繰り返します。

発病と快復期がはっきりわかる

何をしても楽しく感じられなくなったり、興味がもてなくなったらうつ病の発症に要注意です。その後、気分の落ち込みが激しくなり、本格的なうつ状態になります。

経過には共通のパターンがある
うつ病の発症から回復までの経過にはある程度共通したパターンがあります。
多くの場合、生活の中で楽しさを感じられなくなったり、ものごとに興味がもてなくなるといった前ぶれの症状のようなものからはじまります。
やがて悪化して、気分の落ち込みが激しくなり、発症がはっきりとしてきます。その回復期になると、ものごとを楽しめる感覚が戻ってきます。回復期に入った入った時点も比較的はっきりわかります。
1日のうつにも気分の変動がある
症状は、1日の間でも強弱の変化がみられます。たいていは起きがけから午前中にかけて症状が重く、午後になると、気分が晴れてきます。人によっては夕方からの気分が優れない場合もあります。

気分の推移

  1. 退屈感、不快感、ものごとに興味がもてない・楽しめない・劣等感などを覚えます。気力が低下し、生活がだらしくなくなります。不眠、口の渇き、手足のしびれなど身体的な症状もみられます。
  2. 気分の落ち込みが激しくなり、刺激に対して無感動になりぼんやりsます。自分は無価値な人間だと感じ、自分を強く責めます。身体的症状も強くなり、簡単な仕事しかできなくなります。
  3. もっとも重症の時期で、行動を起こせなくなり、人に援助を求めることもできなくなります。精神的苦痛が激しく、強い自殺願望を抱きますが、行動を起こせない状況なので危険性はそれほど高くありません。
  4. 回復の兆しが出てきル時期です。症状は2の段階に似ていますが、気分の変動が激しいのが特徴です。
    回復期とはいえ、行動を起こす気力が出てくるため、自殺を実行してしまう危険性も同時にあります。
  5. ものごとへの興味が戻り、治りたいという希望を抱くようになります。気分が優れているときには、自信もできてます。
    身体症状も軽くなってきますが、疲れやすいので本格的な社会生活はまだです。

いきなり元気いっぱいで強気になる人も

うつと正反対の状態に、気分が異常に高揚する躁があります。うつと躁は別物というわけではなく、うつと躁が交じることも多く、普通のうつ病と単純に区別することはできません。

うつとは正反対の症状があらわれることも
うつ病の方の経過をみていると、うつとは正反対の躁状態をあらわすことが少なくありません。
躁状態になると、気力が充満し、やる気まんまんで活発に行動し、考えることも自信たっぷりで怒りっぽくなって人を責めます。
食欲も性欲も亢進します。
うつと比べるとよい状態のような印象を受けますが、社会的活動が活発になりすぎて周囲の人とトラブルが起きやすくうつほどではありませんが、本人は苦しみます。
躁うつ病との区別は難しい
以前は、うつ症状だけでなく繰り返すものを単極性うつ病、うつ症状と躁症状が交じったものを双極性うつ病(躁うつ病)として区別していました。
ただ、躁うつ病かどうかは実際に躁の症状がでてくるまでわからないのが現状です。単極性と思われても今はまだ躁状態があらわれないだけかもしれません。
そのようなことから最近では、単極性、双極性という区別はしない方向です。
躁の交じるうつ病については、まだ多々議論があります。

躁は心の病に見えにくい

躁はうつと違い、社会活動は十分にできるので、異常を感じにくいという特徴があります。うつでは、沈んでいる自分の心を敏感に感じますが、気分が過剰に高揚している躁では心の変化に気づきにくいのです。
周囲の人も言動が激しくなったのは、「性格が変わってしまった」「ストレスでイライラしている」と見過ごしてしまうケースが多くあります。

うつの発病

本人がうつ病に気づいていないこともある

不況、リストラなど、ストレスの種はつきず、現代人はうつ病にかかりやすい環境におかれています。しかし、うつ病とわからずに受診しないままひとりで悩んでいる人も多いのが最近の特徴です。

うつで悩む人が増加中
様々なストレスがあふれる昨今、うつ状態に悩む人が増えています。WHO(世界保健機関)の推定データをもとにすると、20人に1人くらいはうつ病を経験している計算になります。
うつ病の最大の問題は、自殺に走る点ですが、厚生労働省のデータによると、自殺者も急増しており、その60%がうつ病が原因とも言われています。
自分がうつ病とわかっていない人が多い
病的なうつ状態なのに、自分が病気だと考える人は実際には少ないのが現状です。うつ病で悩んでいても過労からくる一時期的なものだろうと思ったり、軽いノイローゼだろうと、本人も周囲もつい見逃しがちです。
うつ病を自覚し、きちんと受診する人は症状に悩む人のほんの一握りだろうと推測されています。