うつの正体

別の病気が原因のうつ

更年期障害のひとつとしてのうつ

心身ともに変化する更年期は、 うつ病 になりやすい時期です。更年期障害についてはこちら
しかし、更年期障害のひとつとしての うつ は、本当のうつ病と症状が似ているため、軽い場合には見逃されてしまうこともあります。

ホルモンの大きな変動が起こる時期
うつ病は女性に多く起こりますが、もっとも発症しやすい時期に40歳代後半から50歳代の更年期があります。
更年期には、体にさまざまな症状があらわれます。そして更年期の精神症状として、うつがあらわれることも少なくありません。この症状は、うつ病の身体症状ととてもよく似ています。
更年期には心の問題も生じやすい
更年期のホルモンバランスの崩れという生理的な変化もうつ病の要因のひとつです。
しかし、更年期には心理的な変化を伴いやすいことも発症に大きく関わっています。
悩みや不安が多い時期
この年代には、閉経を迎え、女性としての衰えや老いを感じたり健康への不安などが頭を占めるようになります。子供は親離れをし、夫は多忙で留守が多く、夫婦関係も冷え込みます。
こうした心理的な要因がストレスとなって生理的問題のうえに重なっていくために、うつ病を発症しやすいのです。
更年期の女性は、うつ症状を自覚することが多いのですが、軽い場合は、たんに更年期障害だろうと見過ごすこともあるので、注意が必要です。

痴呆にうつ病が隠れているケースも

高齢になると、痴呆で痴呆症状とうつの症状が混在することがあります。痴呆だと思ったらうつ病になったり、、痴呆の患者さんにうつ病があらわれることもあります。

高齢者のうつ病にぼけの症状がでることも
高齢になると、物忘れが激しくなり、最近のことが覚えられない、判断力が低下して日常の仕事ができなくなる、動作や日常の仕事ができなくなる、動作や行動が緩慢になるなどの痴呆症状があらわれてくることがあります。
このような症状が出てきたのでお年寄りに特有のぼけだろうと思っていたらじつはうつ病だったというケースもよくあります。高齢者のうつ病には、一時期的にぼけ症ぞゆがあらわれることがあるからです。うつ病の治療をすればぼけ症状も治るため、仮性痴呆といわれています。
痴呆の高齢者がうつ病になることも
一方で、痴呆のお年寄りが、うつ病になることもあります。アルツハイマー棒の3割にうつ病があらわれます。この場合、うつ病の症状はうつ病の治療で治すことが出来ます。
どちらにしても、うつ病の治療が是非必要なので、痴呆状態n隠れた病をきちんと発見しておくことが大切になります。

うつ病と痴呆の比較

うつ病 痴呆
発病前性格 几帳面・まじめ 特定のものはない
誘因 考えられることがある はっきりわからない
進み方 急に進む ゆっくり進む
睡眠傾向 不眠、早朝に目がさめる うとうとすることが多い
日内変動 朝に具合が悪い 夜に具合が悪い
社交性 他人を避けようとする つきあおうとすることが多い

うつ病の原因

環境、性別、ストレスなどが複合的に関係する

うつ病は、たったひとつの原因で起こる病気ではありません。環境や性別、ストレスなどの多様な要素がかさなったときに耐えきれなくなってしまうのです。

遺伝<生活環境
うつ病になる原因は遺伝だと勘違いしている人が多いのですが、もっと重要な原因は別にあります。
たしかに、うつ病になりやすい几帳面な性格をつくってきた素地は親から引き継がれた素質ともいえますし、うつ病発症時の脳の変化が起きやすいのは遺伝的なものと考えることができます。
かといって遺伝的要素のある人が、みんなうつ病になるわけでありませんし、うつ病は「遺伝的」というわけではありません。
ホルモンの関係で女性に発症しやすい
血圧やエネルギーの代謝などを行い、体内の環境を調整しているのが、各種のホルモンです。
ホルモンは、神経系と深くかかわりをもっているためバランスが崩れるとうつ病が発症しやすくなります。
ストレスの影響が大きい
うつ病の発症にもっとも大きな影響を与えるのはストレスです。
ストレスは誰しも感じるものですが、うまく対処できれば何も問題はありません。しかし、対処の仕方がうまくいかないとどんどんストレスが蓄積されてしまいます。

うつ病にかかりやすい人は環境の変化に適応しにくい

うつ病になりやすいhとは、性格的に柔軟性に欠け、環境変化に弱い特徴があります。それも、ストレスを抱えやすい要因になっています。
環境の変化とは、たとえば、

    • 引っ越し
    • リストラ
    • 転勤
    • 昇進など

があります。

うつになったきっかけがわからないことも!

発症の引き金になるのは、大きなストレスです。しかし、うれしいことがストレスの原因になることあるので、なにがきっかけになって発症したのか、発見できないことがあります。

栄転や昇進も本人にとってはプレッシャーに
うつ病は、強いストレス、あるはそれほど強くなくても長く続いたストレスをきっかけとして発症します。
リストラや家族との死別など、悪いことやイヤなことばかりが原因になるとは限りません。周囲の人にとっては喜ばしいことでも本人にはストレスと感じていることもあるのです。
仕事などで、これまで一生懸命に身を粉にしてやってきたことも一段落すると案外、ストレスがかかります。
よいことがストレスになるとは思いいたらない
よくないことなら本人も周囲の人も発症のきっかけがわかります。
しかし、よいことやほっとするようなできごとはストレスになるとは思わないため、引き金になった要因が自分では把握できないことがあります。
むしろ、よいか悪いかということより、今までとなにかが変わることが問題です。うつ病になりやすい性格の人は「環境の変化」が弱点なのです。

よいこともわるいことも環境の変化

  • よいこと栄転や昇進は嬉しいことですが、責任が重くなり、もともと責任感が強いだけに、より緊張を強いられる毎日になります。
  • 悪いことリストラ、上司や部下との軋轢など、仕事上の問題、身内の病気や死亡、親しい人との別れなどが、発症の引き金になります。

うつになるきっかけチェックリスト

  • 仕事上つらいことがある
  • 毎日働き過ぎだと思う
  • 同僚とうまくいっていない
  • 上司が理解してくれない
  • 職業の選択を間違えた
  • 経済的な問題を抱えている
  • 毎日の生活に張り合いがない
  • プライドを傷つけられた
  • 期待していたことが外れた
  • 完璧主義者だと思う
  • 家族に問題を抱えている人がいる
  • 夫婦間がうまくいっていない
  • 離婚したばかり
  • 仕事上で表彰された
  • 期待されていると感じる
  • 責任が重い仕事についた
  • 子供が結婚した
  • 引っ越しをした

これらはほんの一例ですが、最近変わったことがないかどうか自分なりに考えてみましょう。

気持ちの問題ではなく脳のトラブル

うつ病は、たんに心のあり方の問題ではありません。脳の中で感情を調整する物質に変化が起きることが直接の原因です。

セロトニンが低下し情報伝達に支障が起きる
うつ病のきっかけとなるのはストレスですが、発症そのものの原因は脳の中の変化です。
脳を形成するのは、ニューロンと呼ばれる無数の神経細胞です。
この神経細胞と神経細胞の間(シナプス)で情報を伝えているものに「神経伝達物質」と呼ばれるものがあります。感情調整にもこの神経伝達物質が関わっており、セロトニンという神経伝達物質が十分に働いてないとうつ状態になります。
うつ病は、心のあり方という面があると同時に脳の中でのこうした変化による病気です。「脳の風邪」と言われるのもそのためです。

うつのときの情報伝達

  1. セロトニンが減少
  2. 受容体が腫れる
  3. 機能が働かない
  4. ノルアドレナリンの出方にも影響
  5. 感情調節ができない

うつは、ほかの病気や薬によっても発病の原因になることがある

病気になると、心身ともにストレスがかかるため、うつ病の原因となってしまうことがあります。ほかの病気で服用している薬の副作用で起こるうつ病もあります。

身体的な病気がうつ病に関係することもある
身体的な病気が、うつ病の誘因になることもあります。
たとえば、ガンになれば、死を考えたり、孤独感などで精神的な負担が大きくなり、そのことがうつ病に結びついてしまいます。
ガンという重い病態自体が身体的ストレスになってうつ病が併発することもあります。身体的なストレスになるのは、インフルエンザなどの感染症や全身のさまざまな病気に共通しています。
合併症としてうつ病になることもある
直接的にうつ病と関連していると考えられる病気もあります。
たとえば、糖尿病はうつ病と併発しやすくうつ病でも血糖値の異常値があらわれやすくなります。また、全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病でもうつ病が併発しやすくなっています。
薬の副作用によるうつ病にも注意
身体的な病気の治療薬がうつ病の原因になることもあります。薬の作用が脳の神経伝達物質になんらかの影響を与えるためだと考えられています。
よくみられるのが、副腎皮質ホルモンやある種の降圧剤、精神病薬、パーキンソン病の治療薬などです。経口避妊薬もうつ病になりやすい薬です。
このようにうつ病を招く可能性のある薬はたくさんあります。薬を常用している人が、うつ病になった場合、まず薬の副作用かどうかを確認しなければいけません。

うつ病につながりやすい疾患

ガン、インフルエンザ、肝炎、パーキンソン病、消化性潰瘍、アルツハイマー病、消化性潰瘍、過敏性腸症候群、胆道ジスキネジー、脳卒中、糖尿病、全身性エリテマトーデス、慢性腎不全、悪性貧血、アジソン病、慢性腎盂腎炎、本態性高血圧、メニエール病

うつ病につながりやすい薬

副腎皮質ホルモン、レセルピン系降圧剤、インターフェロン

どの病気がどの結果なのか、解明は難しい

  1. 難治性の病気になってしまった結果なのか?
  2. 病気そのものにうつ病がからんでいるのか?
  3. うつ病なのに体の病気のようにみえるのか
コラム 消化器疾患との関係性

胃はストレスの影響を受けやすく、食欲不振や胃痛から潰瘍になってしまうこともあります。
腸も同様でストレスによって自律神経のコントロールができなくなり、動きが過敏になるために下痢や便秘を繰り返します。過敏性腸症候群です。
慢性下痢が続くなら過敏性腸症候群の可能性が大
なかなか治らない消化器疾患にはうつ病が隠れていることがあります。慢性胃炎に抗うつ薬が作用することもあります。

うつ病 に似た 心の病

うつ病の周辺に心の病

抑うつ感がひどく、うつ病を疑って受診すると、違う病名を告げられることもあります。うつ病に発展するもの、似ているが違うもの、うつ病に関連する心の病気も様々あります。

抑うつ感が強い心の病はたくさんある
うつ病と似たような症状をあらわす心の病は、たくさんあります。いずれも抑うつ感が強く、日常生活に支障をきたすものです。
これらの中には、心身症のようにうつ病とは明確に区別されているものもあります。
うつ病につながるもの合併するものなど多様
心の病にはうつ病にはいるもの、やがてうつ病になる可能性のあるもの、うつ病との区別が議論されているものなど、うつ病と深く関係しているものがあります。
たとえば、気分変調症はうつ病のひとつとして考えられています。マタニティーブルーや引きこもりは、うつ病に発展する可能性があり、慢性疲労症候群は、うつ病と合併しているのではないかとの味方もあります。

うつ病を判断するポイント

日常生活に支障が出るほどの強い抑うつ感が2週間以上続く

メモ 燃え尽き症候群について

症状が似ているもののひとつに「燃え尽き症候群」があります。
見た目はうつ病と似ていますが、心の病ではありません。強い責任感のもと、長期間、大変な緊張感を持続しながら職務にあたったことで、心のエネルギーが燃え尽きてしまうものです。
その結果、感情がなくなり、自分を責め、対人関係ではストレスが生じないよう事務的、機械的になります。薬や酒に逃避してしまうこともあります。
責任感が強くがんばり続ける人は、燃え尽きてしまわないように注意が必要です。

うつ病周辺の心の病

心身症
ストレスなどが原因で、体に明確な病気があらわれるものです。
イライラする、ゆううつになるなどの精神的な症状もあらわれますが、それほど重くなく心の問題に気づかないこともよくあります。
気分変調症(抑うつ神経症)
うつ病のようにはっきりとした気分の落ち込みではなく、なんとなく憂うつで悲観的に考えてしまう状態がだらだらと長く続いてしまいます。
うつ病と違い、日常生活はきちんとできています。うつ病に進展するケースもありますが、自然に治ることもあります。
マタニティーブルー
出産の後に起こる一時的なうつ状態を指します。ホルモンバランスの崩れから起きるもので多くは10日間ほどでよくなりますが、うつ病に移行するケースもあります。
慢性疲労症候群
検査をしても異常がないのに、ひどい疲労感が慢性的に続く状態ですが、気分の落ち込みなどうつ病同様の症状も出ます。発熱やのどの痛みなど、感染症のような症状もあり、心の病ではないとの見方もあります。慢性疲労症候群について
ひきこもり(不登校)
うつ病は子供にも起こります。それによって学校に行けないケースもあります。ただ、子供は症状を明確に伝えられないだけにうつ病か否かの判断は難しくなります。

うつ病以外の心の病

心の病とはまっったく無縁という人はどのくらいいるのでしょう。最近はうつ病が増えているとはいえ、ストレスが多い現代、抑うつや疲労感がどんな心の病に進展するかわかりません。

ノイローゼ

不安神経症
増えている心の病。いきなり理由もなくたまならなく不安にになってきます。パニックを起こすことも。発作的に不安にとらわれる人といつも軽い不安につきまとわれる人がいます。
心気神経症
ささいな不調をみつけ自分が病気だと思い込み、検査や受診を繰り返します。実際には健康で異常が発見されないことが多いのですが、医師の見落としだと悩み医師や病院遍歴を続けます
強迫神経症
手がよごれているような気がして何度も洗わずにはいられないなど、自分でもおかしいと思ってはいます。日常生活に支障が出て疲れ切ってしまってもやめられません。
摂食障害
ダイエットをしているうちに本当に食事がとれなくなったり、逆に大量に食べてしまったり、お腹がすいていないにもかかわらず食事がふつうにとれなくなってしまいます。
ヒステリー2
麻痺やけいれんなどの病気のような症状がでていても検査場は見つかりません。ひどく悩んでいる心の状態がそのような形ででるのです。一般の人が想像するヒステリーとは違います。

精神分裂病

統合失調症
心の病のなかでもっとも患者数が多い。幻想や妄想にとらわれたり、緊張が続くなどの症状。若いときに発病しやすい傾向があります。