うつが起こる仕組みの解明

では、うつの心理的、生理的メカニズムについてざっとまとめたいと思います。不健全な家族パターン、とくに人生最初の六年が、その後の人生でその人がうつにおちいるかどうかの重要な鍵となります。

そのおもな原因のひとつは、幼いときに、怒りをうまく建設的に表現するかわりに、怒りを抑圧することを教えられることです。それほど重要ではありませんが、遺伝という要因も考えられます。

強迫的人格(完全主義的)演技性人格のダイナミクスについては、前にふれました。これらの要因のすべてがうつの土壌となり、そこヘストレスが加わるのです。

一時的にグリーフ反応はあってもうつにおちいることなく乗り切ることができるでしょう。しかし幼児期の環境(もしかして遺伝も) 要因を持っており、怒りを抑圧することを学んだ人は、うつをひきおこすまで肥大してしまうのです。そして前述した生理的症状などが出てきます。

学習によるパターン化

うつは学習によってパターン化します。親がうつだと子どもも同様に、うつのライフスタイルを発達させるようになります。

生き方として、ストレスの対処法として、うつを学習するのです。うつの家族は、次世代にもこのうつのライフスタイルをひき継がせます。子どもたちの人格も、親に似てきます。

脳には気分を司る大脳辺縁系と呼ばれる部位があり、上機嫌、意気消沈、安定した気分などをコントロールします。脳内アミンは神経細胞間のシナプスを行き来する神経伝達物質です。こかつこうした伝達物質( ノルエビネプリン、セロトニン) の枯渇がうつの一大要因であると考えられています。

ためこまれた怒りはこうしたアミンの枯渇をもたらし、その結果、神経系が正しく機能せず、不眠、疲労感、食欲の変化、動惇などがおこります。子ども時代を、否定的で、慢性的にうつ状態の親とすごした子どもも、同じような態度を学習します。

よって、彼らは普通の人以上の怒りを持ち、脳内アミンはほとんどいつも枯渇しているようになります。ぜひとも私たちの子どもを、うつのライフスタイルのなかで育てないようにしましょう。

他人を操作するためにうつになる人

ときには、うつは人に対処する手段となります。実際、うつは人を操作し、自分の思い通りにするためのパワフルな手段となりえるのです。伴侶を操作するためにうつを使う人もいます。子どもは感情を分かち合うよう奨励されるべきですが、悲しいふりをして人を操作するやり方に、あまり左右されないようにしましょう。

自分で自分を罰する人

うつは、自分で自分に歯向かう病です。ですからうつを感じ、みじめになると、それで当然だと思ってしまうのです。そして、自分で自分を罰してしまうのです。もし罰を受けるべき行為をしたとしても、それは神が与えるものであって、自分でもたらすものではないことを知る必要があります。神は何とか彼に教えをさとそうと思うかもしれませんが、それは神がすることであって、自分ですることではないのです。

つら い思考 が エスカ レート す る人

うつになると、どんどんつらい思考に向かっていきます。希望はますますなくなり、無価値感、罪悪感を強めていきます。自己批判が強くなり、自己評価も低くなります。

そしてうつに2なると、全般的につらい思考パターンが現れてきます。不適当な思考はより不適当な思考を生10むという循環を招くというわけです。この思考を変えることはできるのでしょうか?

カウンセリングを受けている人は、自分にこく言い聞かせるメッセージを変えることでずいぶん気分が楽になっています。自分をそんなに酷し便せず、批判的にならないことが大切だと感じています。

うつの人は、20人からほめられても、たった1人に批判されると、20人からほめられたことを忘れてしまいます。これを逆にして、人からの肯定的な評価を重要視するようにし、それほど大切でない、たまにしか出ない否定的な意見ばかりに気を集中させないことが大切です。

うつになって得た報酬に味をしめる人

子どもは子ども時代にどんな報酬を与えられ、しつけを受けたかによって反応の仕方を学びます。

たとえば、うつになると学校を休むことが許されて、余分に関心をかけてもらえることを学んだ子どもは、うつをライフスタイルとするようになります。うつに不適当な報酬が与えられたので、それが強化されたのです。

夢をみないとうつになる

うつの最大原因のひとつが、ありふれた疲労です。身体的、精神的に頑張りすぎると、うつがおこります。

よく学生が徹夜して勉強したり、幾晩も連続で5~6時間の睡眠ですませようとしたりします。催眠のニーズを無視するのは危険です。私たちの体は平均して8時間の睡眠を必要とするのです。

健康を保つには、夢をみる時間も必要です。大人はみな寝ている間、90分につき約20分は夢をみています。

しかし、途中で起きることがないかぎり、その夢を覚えてはいません。3晩夢をみなければ(睡眠は十分でも)、大半の人がうつになり、また妄想的になるでしょう。では、どの脳内物質が人に夢をみせるのでしょうか?

最近の研究では、ノルエビネフリンとセロトニンが夢の開始、維持を司ることがわかっています。夢では、現在の無意識の衝突がすべて象徴化されます。どの夢にも象徴的な意味があります。幸福を選ぶのなら、健全な睡眠パターンを選ばなくてはなりません。睡眠、夢は健康と命を保つのに必要なのです。

思春期のうつ

成人は、うつになると行動でわかります。しかし思春期の子がうつになっても典型的なうつの現れ方をしません。

そのかわり、嘘をついたり、不法薬物に手を出したり、性的にまずい行動をしたりします。ある10代の女子の例を見てみましょう。

彼女は最近まで極めて健康な子でした。娘がうつにかかっていると知らされた母親は、娘に性的行動や薬物の乱用に制限を設けるようにと言われました。娘はセラピーを受け、抗うつ剤を服用すると、数週間のうちに、以前のような健康な子に戻りました。

数多くの思春期の子が同じょうなことで治療を受けています。しかしこの治療は、甘やかされて、小さいころから好き放題してきた子にはうまくいきません。親が離婚したあと、子どもがうつにおちいることはよくあります。

子どももまたうつを行動化します。10代のうつ、自殺はアメリカで過去40年の間に300% の増加を見せています。これは家族崩壊のためです。親の離婚に関する子どもの怒りを話し合い、そして親を許すことができれば、子どもは良くなります。また、父親の死後、グレたり薬物に手を出したりする子は、父の死について、感情を話し合うことができ次第、改善されていきます。

産碍期のうつ

女性が出産後(とくに第1子の) にうつになることはよくあることです。この産後のうつは、とくに出産に関する複雑な感情を抑圧している母親にもっとも多く見られます。

複雑な気持ちを持つことは正常です。赤ん坊を産んで、一生親となることは大変な責任です。しかし、赤ちゃんを産むことの恐れが母親にとって受け入れがたい場合、そしてこの感情を抑圧すると、うつがおこります。こうした恐れを素直に認めて、夫や友人に話をするほうがはるかに簡単ですし重要です。母親がこうした感情を話し合うことができれば普通、うつは消えますが、抗うつ剤を必要とする場合もあります。ただし、抗うつ剤は、妊娠中、授乳中は普通は避けるべきです。

中年期のうつ

中年期にうつがおこることはよくあります。自分で設定した目標にけっして到達できないと感じている強迫的な人には、とくに顕著に見られます。これに気づいた彼らは自分自身に非常に腹を立て、うつになります。それとは逆に、目標を達してうつにおちいる人もいます。

目標に達しても不安定に感じているからです。彼らのつらさは外的要因でなく、自分とつき合って生きなくてはならないところから来ています。彼らはよくうつになって、つらさを罪のない伴侶やだれかのせいにします。

中年期には多くの喪失がおこり得ます。たとえば研究によると、中年女性の最大の恐れは、美貌が衰えるということです。その次の恐怖感は、伴侶に先立たれ、1人になってしまうのではないかという恐れです。こうした恐れのほかに、女性は子どもが家を離れて独り立ちしていくこと、子離れもあります。

また、以前はあった夫からの関心がなくなるという喪失に反応しても、うつになるのです。閉経にともなうホルモンの変化によって、うつになる場合もあります。データははっきりしませんが、女性によってはエストロゲンなどのホルモン療法が有効な場合もあります。

男性も中年期にうつになり、これを不適切な性的行動で表すことがあります。自分がまだ若いことを確認するように、若い女性にひかれたりします。これは深刻な不安定さ(自分が老いていくのではないと信じこもうとしている) のためです。

中年期のうつは性的行動に現れることが多く、または飲酒量が増える、体重増加、さらに前述したうつの諸症状として現れることもあるでしょう。

加齢とうつ

高齢化すると、個人の人格が際立ってきます。そしてこれまでもずっとうつの症状があった人は、加齢とともにいっそううつの症状がひどくなります。村照的に、人生を肯定的にとらえ、ありのままの自分に自己評価を感じている人は、成長し続けるために加齢とともにいっそう満ち足りて、賢くなっていきます。

基本的ニーズ(自己評価、他者との親密さ) は以前にもまして満たされることでしょう。一方、年をとると、脳細胞の一部が減少していくために差恥心が減っていき、罪悪感が増えることが問題となります。

老人はまた、孤独になるためにうつになることがあります。伴侶を失って、落ちこむこともよく見られます。この場合、同性の友人たちが大きな支えになります。

仕返しの手段としてうつになる

多くの人が、仕返しのための手段として、うつ、怒りを吐き出します。こうしてある程度の怒りは出せますが、しかし他者もみじめにしてしまいます。慢性的なうつの伴侶と暮らすことは相当に刑罰的ですが、これはその人の無意識の仕返しの場合があります。こうした患者には、私たちはほかの方法で伴侶に接する方法はないか考えてもらいます。そして怒りと向き合い、伴侶を許し、それによってうつを晴らすようにと薦めます。

人の関心をひくためにうつになる

うつを、人の関心をひくための手段として使う人がいます。これはすでにふれたようにうつで人を操作するのと同じです。

実際、うつは最初は人の関心を集めますが、しかし本人に舞い戻ってきて、やぶへびの結果に終わります。本人と向き合おうとする家族や友人がイライラするようになって、いっそうのトラブルをひきおこします。関心をひくためのうつは、伴侶や友人の喪失につながることが多く、さらなる深刻なうつにおちいることになります。

仮面うつ

1950年代に一般に知られたのが、この「仮面うつ」です。これは、病理学的には何の根拠も持たないように見える体の不調をいいます。

この状況には抗うつ剤が効果的です。前述したように、自分には何ら感情の衝突はないとして自分をごまかすために、感情の衝突を身体の衝突にすりかえます。これは面子を保つ防御メカニズムです。こうした人の多くが、筋肉痛、咬合不全、慢性疲労感、内耳障害、多発性硬化症などの不安を訴えますが、根拠が見られません。

生活の変化は想像以上のストレスとなり、うつを招く

自分がなぜうつなのか理解できないある若い男性です。しかし、よく話を聞いてみると、彼は前の年に多くの変化を経験していたのです。

実際、彼が経験した人生の変化を、「変化適応ストレスチャート」で加算してみると、なんと400以上になりました。研究者は、人生の変化のポイントが年間で合計200以上の場合、精神障害の深刻な増加につながると言っています。

また、ストレスをおこすひとつの原因に、喪失のひとつである引越しがあります。何度も引越しをさせられる子どもは、うつになることがよくあります。

もっともストレスをおこす変化は、配偶者、親、その他の親しい親戚との死別です。そして、死亡率は死別の1年目にぐんと高くなります。しかし、私たちが全米中の治療した数千件のケースでは、愛する配偶者の死よりも離婚のほうがより高いストレスとなっているようです。

子どもにとっては、親の死がもっともつらいものです。明らかなうつになったり、してはいけないことをしたり、未練がましい行為などでそれが示されます。子どもが不安定であれば私たちはほかの方法で伴侶に接する方法はないか考えてもらいます。そして怒りと向き合い、
伴侶を許し、それによってうつを晴らすようにと薦めます。

うつを多角的に見る

精神疾患は、普通ひとつの要因のみでおこるのではなく、いくつかの要因がかかわっていることも多いのです。たとえば精神疾患の場合、遺伝的背景は重要です。

とりわけ躁うつ病(気分障害) の場合、血縁者のなかに同じ症状を持つ人がいる確率が高いと言えます。また、統合失調症(精神分裂病) の親を持つ子どもは、子どもがたとえ親から離れて育てられても、同じく統合失調症(精神分裂病) になる確率が高いと言われています。

次に人格の形成に影響するのは、環境です。子どもはときに控えめに、積極的に、ときに行儀よく、そしてときに粗野にしつけられるのです。たとえば、16歳の男の子がなぜ行儀が悪く、反抗的で、すなおでないのか、彼の親は頭をかしげます。しかし親は一度もしつけをしていなかったのです。

このなかには身体の健康に対する正しい知識も含めてもいいでしょう。大人も子どもも、体が不調だと感情的ストレスに耐える能力が低くなります。普通、心理的な問題にもっとも大きな影響を与えるのはやはりストレスです。ある人が遺伝的要素を持っていて、幼児期の環境も劣悪だったとしても、何らかの急性のストレスが生じなければ、心理的問題はおこらずにすむかもしれません。

遺伝と環境的背景は非常に重要です。これをないがしろにするわけにはいきません。しかし、これらだけを現在の行動の言い訳にするのも誤ったことです。多くの問題は、機能不全な行動ゆえにもたらされたのです。遺伝が要因と強調されるうつは、内因性うつと呼ばれます。これは内側から、生物化学的に、そしてもちろん遺伝的なことが誘因となっているということです。

環境が要因となるものは、神経症性うつと呼ばれます。これは子ども時代の無意識レベルの、未解決の葛藤からおこります。急性のストレスが原因とされるうつは、反応性うつと呼ばれます。つまり圧倒されてしまぅような問題のある状況がうつの原因になっているということです。

うつ患者の特徴

うつの人には、いろいろな共通した人格特徴が見られます。

  1. 心配症で悲観的なものの見方をする
  2. 何をやっても無駄、ダメだと感じる
  3. 自分に無価値感を持っている
  4. 過去にひたる
  5. イライラしている
  6. ものごとに集中できない
  7. 体を動かすことがおっくう
  8. 死の不安がある
  9. ものごとに興味がなくなる
  10. 朝起きるのがいやだ
  11. 食欲減少(普通は減少するが増加もする)
  12. 体重減少(普通は減少するが増加もする)
  13. 疲労感がある
  14. 手足が冷たい
  15. 眠れないことが多い
  16. ときどき睡眠が増える
  17. 朝早く目がさめる
  18. 性欲の減退
  19. 生理不順
  20. 自殺念慮
  21. しよっちゅう泣きたくなる
  22. ユーモアのセンスがなくなる
  23. 緊張性頭痛、動惇、感染症、胃腸障害がある
  24. 熱意が失せる
  25. 自分の体に現実感がない
  26. 他人に意地悪されていると感じる
  27. 人に過剰に期待し、かといって拒否されるのを恐れる。
  28. 人は自分に腹を立てていると(そうでなくとも) 確信する
  29. 他の家族員の怒りの対象となる

甲状腺機能低下症とうつ

甲状腺機能低下症がうつをもたらすことがあります。医師は長年の知識として、甲状腺の薬がうつに効くということを知っています。

低甲状腺症によってひきおこされるうつばかりでなく、他のいくつかのうつも含みます。甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH6)が効くこともあります。

うつは甲状腺に影響を与え、低甲状腺症の発症を促すことがあると、科学者は考えています。心と体は緊密に関係しあっていることはよく知られていますが、どちらが先に発症するかはかならずしも知られてはいません。しかし、感情的、精神的に成熟すれば、身体的な病気の大半は避けられると、私たちは信じています。

低血糖がうつの原因

低血糖は、今日強調されすぎており、低血糖について善かれた本が多く出版されています。疲労、うつ、その他ありとあらゆる病気の原因が低血糖とされてきました。

この考えについては、医学界で疑義を抱く人も多いのです。低血糖は実際に存在し、不安を高じさせ、既存の感情的問題をさらに悪化させますが、不安やうつの大半がそれで説明しきれるものではありません。

うつの原因かもしれない「低血糖症」

生体アミンのアンバランス

脳内アミン(とくにセロトニン、ノルエビネフリン)が神経細胞間のシナプスを行き来している神経伝達物質であることは前述しました。こうした神経伝達物質の減少はうつの一大原因と考えられています。この仮説を支持する土壌には以下のようなものがあります。

  1. ずっと前に、レザピンという薬物が高血圧の治療に用いられており、レザピンを服用していた人の多くがうつになったと報告されました。現在では、レザピンは脳内アミンを枯渇させることが研究室での動物実験などによって明らかになっています。
  2. うつの治療に使われる薬は、脳内アミンレベルを上げることで知られています。脳内アミンが正常レベルに達したとき、明らかにうつの多くが消えます。実験によれば、これらの薬物は過敏で、落ち着きがない状態をひきおこすこと、つまり気分を上げることもわかっています。
  3. 深刻なうつ患者の尿中には、カテコラミン代謝物(生体アミンが小さく分解されてできるもの)が少量しか見られないことがわかっています。
  4. うつには強力な生物学的要因があるという証拠に加え、心身症はうつがあるときにおこると言われています。たとえば、睡眠障害、食欲の増加・減退、性欲減退などが見られます。また、うつは代謝障害などの病気とも関係することもわかっています。これは、うつには生物学的要因があるという仮説を裏づけるものです。
  5. 脳内アミンのうち、アメリカでもっとも注目を浴びているのがセロトニンとノルエビネフリンです。これらアミンの研究から、うつはこうした脳内アミンの枯渇の結果おこるという理論が出てきました。セロトニンが枯渇し、パキシルのようなセロトニンのレベルを上げる薬に効果が見られる場合もあります。トフラニールはおそらくノルエビネプリンとセロトニンの両方のレベルを上げ、パキシル、プロザック、ゾロフトのような抗うつ剤との組み合わせでよく使われます。プロザック、ゾロフトを服用すると、体重が減少する傾向があり、やせすぎる場合は服用を中止しなくてはなりません。

内分泌のアンバランス

うつと内分泌障害に関連があることは以前から知られていましたが、最近の研究の結果、この関係はより明らかになってきました。

脳下垂体はAC H(副腎皮質ホルモン)、成長ホルモン、黄体形成ホルモン、、甲状腺刺激ホルモンなどを分泌しています。

視床下部は放出因子を分泌し、プロラクチこれを受けて脳下垂体が前述したホルモンの放出をひきおこすのです。さらに、視床下部からの放出因子はノルエビネフリンなどの生体アミンによってコントロールされていることが知られています。

もちろん、これはセロトニンと同じくうつの場合に枯渇することが知られている物質です。よって脳内生体アミンに乱れがあれば、うつがおこり、また内分泌異常がおこる可能性があります。これは正しいことが証明されてきています。

またうつの場合、血中コルチゾール( ストレスホルモン)レベルが上がることがわかっています。考えられるのは以下のことです。

コルチゾールレベルが上がると、抗体を作り出すリンパ球(白血球の一つ) が抑えられます。抗体が減少すれば、人はありとあらゆる病気にかかりやすくなります。つまり、ためこまれた怒りはノルエビネフリンを減少させ、これが視床下部からのACTH放出因子を増やし、脳下垂体からのACTHを増加させ、副腎腺からのコルチゾール放出を促し、リンパ球を減らし、抗体を減らし、あらゆる感染症にかかりやすくさせるのです。蓄積された怒りが主要な死因となるのです。

また、黄体形成ホルモン、成長ホルモンのレベルが下がることがあることがわかっています。性衝 動 の低 下 は 、 う つの場 合 によ く お こ る こと が 知 ら れ て いま す 。 これ は 、 性 ホルモンへの内分泌システムの影響によるものかもしれません。甲状腺刺激ホルモン放出因子が投与されると、うつの症状が一時的にやわらぐという興味深い報告もあります。こうしたデータはすべて、うつと、セロトニンやノルエビネフリンなどの脳内アミンの低下、そして内分泌障害の間には関連があるという仮説を支持しています。

電解質の障害とうつの関連

うつ障害には、よく電解質の異常が見られます。たとえば、ナトリウム、カリウムの障害が、うつ、および操の両方の患者に見られます。

この電解質の乱れ(障害) がうつをひきおこしているのか、それともうつの結果としておこつているのかは不明ですが、おそらく後者でしょう。電解質は、うつ要因であるノルエビネフリンなどの神経伝達物質の合成、保存、放出、不活性化に重要な役割をはたしています。

電解質の分布はいくつかの方法によっておこります。たとえば、ナトリウムの分配はコルチゾール、アルドステロンなどのホルモンに影響を受けます。そして、コルチゾールはまたノルエビネフリンなどの生物アミンレベルによって影響を受けます。最初にどちらが影響を与えるのかははっきりとわかっていません。電解質が感情障害とかかわっているという私たちの最終的証拠のひとつは、炭酸リチウムが感情障害の治療に劇的な作用を発揮することでもわかります。この炭酸リチウムのはっきりした電解質代謝への効果はわかっていません。

ウィルス感染を併発する

うつはよくウィルス感染症をともないます。ウィルスによる比較的軽度の呼吸器系感染症を持っている場合でも、気持ちが落ちこむことがあります。

これは身体的、生化学的レベルでのことです。一時的なウィルス性の疾患は、一時的なうつに似た症状をひきおこすことがあります。また前述したように、うつになると、ウィルス性疾患を含めたあらゆる感染症にかかりやすくなります。

 

ストレスはうつを加速させ、複雑化してしまう

ストレスには、たとえば子どもが白血病にかかっていると告知されることから、伴侶の浮気を発見することまで、またあなた個人が極めて緊急なストレスを感じる状況まで、いろいろなことが含まれます。

私たちはこうしたストレスを、直接自分で、あるいは無意識に自分でもたらしているのです。なかには、すべてのストレスは自分の罪と無責任ゆえにもたらされたと考える人もいますが、これは賢い考え方とは言えません。

もし、子どもが白血病で死に行くとわかった親が助言と慰めを求めてきたら、私たちは心の底から、彼女とともに悲しむでしょう。病気や死は彼女の罪の結果などではなく、人が生まれたり恋に落ちたりするのと同じく人生の一部であることを彼女に告げるでしょう。

なぜかと言うと、子どもの死は、親が犯した何らかの罪の裁きに違いないと、誤って考える人がいるからです。

そう考えることは間違いです。一方、週に2回夫に殴られていると言って助けを求めにくる女性に対しては、私たちはもしかしたら彼女は受動攻撃性人格で、無意識的に夫の爆発的行為をひきおこしているのではないかと(もちろん、夫の責任は少しも減らないわけですが) 疑ってみることがあります。

こうしたタイプは、夫は暴力行為におよんだあと、非常に後悔を感じ、その後数週間は妻にやさしくします。その間、妻はまわりの人から自分が何よりもほしい同情を得て、無意識の欲求を満たしているのです。彼女は自分自身の罪悪感を晴らし、すべての男は父親と同じく女を殴るものだということを証明しようとしているのかもしれません。

ほとんどの人は、自分の異性の親とよく似た人と結婚します。その親がどんなにひどい親であったとしてもです。そして、虐待された子どもはしばしば、大人になって虐待の加害者と結婚します。

歴史をくりかえすのです。これは精神科医が毎日のように出くわす状況の一例にすぎません。私たちは、自分で自分の人生をコントロールしていると思っている人間に会いますが、実際には彼らは無意識の動機に支配されるままになっているのです。

普通、人間はストレスの原因を、生きることを耐えがたいものにする何らかの外部環境に求めようとしますが、カウンセラーなら、そのストレスに影響されないために、本人ができることを探すべく、本人の心(無意識の思考、感情)に焦点を当てるでしょう。なかには、専門家のカウンセリングを受けることを好まず、ばかにする人さえいますが、これもまた自分自身の防御のしわざなのです。知識のある聖職者や専門のカウンセラーの援助を得ることは、人生の圧倒されそうなストレスを克服する助けになるのです。

良質のカウンセリングを得て、それを人生にあてはめていくことは、人生の師を得ることと同じです。愛に満ちた洞察力のある友人、牧師、カウンセラー、ときに精神科医らによる問題への直面化を通じて、多くの人々が救われるのです。科学的研究によれば、深刻なうつの85% がストレスによってもたらされることを示しています。さらに自殺を企てる人の環境は、極めてストレスの多い状況であることがわかっています。以下は、うつの原因としてよく見られる大きなストレスをリストアップしたものです。

大切なものの喪失
うつをもたらすもっともよく見られるストレスは、愛する人の死や離婚などの重大な喪失体験です。

うつをもたらすもっともよく見られるストレスは、愛する人の死や離婚などの重大な喪失体験です。

昇進は、新しい役職で頑張らなければならない、しかし自分の能力では無理だと感じるなど、大きな脅威になり、かなり落ちこむ理由になることがあるかもしれないのです。

怒りが自分の内面に向かっている
深刻な喪失には、さまざまな反応がおこります。気づいているいないにかかわらず、何らかの怒りの反応をすることもあります。

この怒りが抑圧されると、うつになるのです。つまり、
重大な喪失を経験した際、それと向き合わなかったり、誤った対応をとるとうつとなるのです。

たとえば、ある人が死んだ人に怒りを抱いていたとします(親、兄弟との死別を体験する子どものほぼ全員が、カウンセリングを必要とします。数年間続くような、そして命日のたびに悪化するようなうつを防ぐためです)。死人に怒りを表すことは、自分にとってとても受け入れがたいことであるため、怒りは内側に向かい、その結果がうつとなるのです。

子どものとき虐待された人もまた、かなりの怒りが内側に渦まいています。そして自分は「くず」で、いじめられて当然だと誤って信じこんでいます。このテーマに関する多くの文献で、うつは内側に向けられた怒りであると記されています。

たいていの場合、怒りはうつの人の顔の表情、声、ジェスチャーなどに明らかに表れます。相当な怒りを持っているのですが、普通その怒りに気づきません。かえってそのことを指摘する精神科医に向かって腹を立てたり、感情的に否認したりします。もし自分自身をビデオで見ることができさえすれば、自分の強烈な怒りを認めることでしょう。本人はまた防御的であることも否認するでしょう。この怒りとどう対処するかは、後ほど。

自己イメージが傷つけられる
うつを加速させる出来事として、「自己イメージの傷つき」があります。離婚した人の多くは自分が拒絶されたと感じ、自己イメージが傷ついています。外部状況に直撃された結果、自己概念が低下するのですが、これはまた内側からもおこり得ます。

たとえば、私たちが罪を犯すと、良心が痛み、自己イメージは自動的に低くなります。この状態は、その罪が神と自分自身によって許されるまで続きます。ある患者の例ですが、その患者は2ヶ月間うつ状態が続いていると訴えました。

私たちは「この2ヶ月間、何をなさってきましたか? それがうつの原因だとも考えられませんか? 」と尋ねました。するとその患者は驚いたふうに、「実は愛人と関係を持っていたんですが、それとうつとが関係あるとは知りませんでした」と言うのです。その後、彼は愛人との交際をやめ、また自分自身をも許すと、うつは消えたのです。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)
PTSD(心的外傷後ストレス障害)という言葉は、重大なストレスを受けて、非常に不安、うつ状態になっている状態を表すときに用いられます。私たちはみな、ときに深刻な問題を経験し、不安にかられたり、落ちこんだりします。しかし普通私たちは問題に対処でき、それがぅっに発展する前に何とか対処できるのです。しかし、深刻なストレスは、悪夢、パニック障害、うつにつながります。
偽りの罪悪感を持つ
前述したように、強迫神経症の人は自分に厳しく、批判的です。心配性で偽りの罪悪感に陥りやすく、しまいにはこの心配と偽りの罪悪感が自分に向かうようになります。ある意味で、彼は自分に歯向かっているのです。不健康にも良心は自分に歯向かい、やがて弱体化して、うつがもたらされます。
真の罪悪感を持つ
真の罪悪感はうつの原因になりえます。うつをひきおこすに至った真の罪悪感は、道徳的、倫理的あるいは宗教上の罪を犯した人の正常な反応です。事実、罪を犯して、真の罪悪感にかられない人は、回復が困難です。正常に反応する人たちが、罪と真の罪悪感のためにうつを患うのです。
誤った見方
患者の多くに共通して見られるうつをひきおこす原因は、誤った物の見方です。私たちは豊かな社会に生き、多くのかたよった情報や誘惑にさらされています。そのため、容易に誤った見方におちいってしまうのです。

ここでまとめましょう。多くの人々は、ストレスがおこつて疲労回復するまで何年もうつと対処し、戦い続けます。

うつが結果としておこった場合、その誘因となっているストレス(それが何であれ) はつねに、抑圧された怒りによるものです。積み重なったた怒りは、うつの大半に見られます。大半のストレスは、自分自身の極めて微妙な、無意識の、自己破壊的態度、感情、行動パターンによってもたらされます。

しかし人生には、たとえば愛する人を失うとか、自分自身の死と向き合うなど、私たちが村処しなければならない十分すぎるストレスがあります。ストレス誘因に、もし私たちが責任もって対処すれば、うつをひきおこすことはありません。くりかえしますが、幸福は選びとるものなのです。

うつを感じている場合

強迫性人格(完全主義) についてふれましたが、それとはほぼ逆の人格障害があります。

これは「演技性人格障害」と呼ばれるものです。演技性人格障害の男性、女性は非常に感情的で、外交的、ドラマティック、衝動的、純真、そして非常に誘惑的です。彼らはルックスもよく、社会的にかなりのカリスマ性を持っています。

強迫性人格が男性に多く見られるのに対し、演技性人格障害のほうは女性に多く見られます。完全主義者はだれよりもうつになりやすいのですが、演技性人格障害の人はうつの演技をします。演技性人格障害の女性はとくにうつを訴えます。

しかしよく診察してみると、彼女らがうつに関する最新のすぐれた本でも読んでいないかぎり、真のうつを患っていると診断されることはごくまれです。

こうしたケースを「演技的うつ」と呼ぶことがあります。演技性人格障害の人(男女ともに) も他の人格障害のタイプと同じく、ときにうつになります。しかし彼らは、子どものころからずっとうつのふりをするか、あるいは人を操作するために一時的にうつになるのです。人の関心を向けたいとき、権威ある人(普通、親、友人、伴侶など) の言いなりになりたくないときにそうするのです。

完全主義者の場合、深刻に自殺願望を訴えるときには本人を保護するために入院させます。しかし演技性人格障害の人が自殺したいと言っても、私たちは普通、「それもひとつの選択肢ですね。でも、あなたが怒っていることを他にどんな方法で表せるでしょうね? 」と言います。そして夫に対して過激に行動してみせるかわりに、夫にその感情を告げるなどの他の選択肢をいくつか話し合います。

すると、数分間のうちに自殺をほのめかすようなうつ状態は解決するのです。自殺を何回も「試みた」演技性人格障害の患者は数多くいます。ある方は自殺を17回「試み」ました。しかしこうした患者のうち、実際死亡してしまう人はごくわずかです。

このタイプの患者が実際に自殺をする状況についての報告を読んだことがありますが、普通、死に至ってしまうのは事故の場合が多いようです。

たとえば、ある演技性人格障害の女性が夫に腹を立てているとします。夕方5時に薬物の多量服用をすれば、5:30には夫が帰宅して彼女を見つけ、病院の救急室に担ぎこまれるという筋書きを立てます。しかし夫の帰宅途中に車のタイヤがパンクして、家に着くと6:30を回っており、妻は死んで発見されるわけです。彼女はまったく死ぬ気はなかったのです。

こうして衝動的に、「事故」で自殺したことになるのです。私たちはもちろん、演技性人格障害の患者であれ、すべての自殺するという脅迫を深刻に受けとめます。というのも、事故死という可能性もあり、自殺をほのめかす人の1割が実際に死亡しているからです。ですから、私たちは演技性人格障害の患者の自殺の脅しを現実的に受けとめ、そうすることで患者は脅しの手を使わずに、怒りを別の方法で表現することを学ぶことができるようになるのです。

強迫性人格の場合と同じく、演技性人格障害の根は、子ども時代にさかのぼります。もし女の赤ちゃんを演技性人格障害を持つ女性に育てたいと思うなら、母親は次の12のルールに従えばいいのです。

  1. いつも母親に意思決定を頼るように仕向け、自分で考えなくていいようにする。
  2. 彼女を甘やかし、つねにいいなりになる。とくにふくれっ面をしたり、泣いたりしたときは折れる。
  3. けっして夫の性的ニーズを満たさない。暖かさと愛情を求めて、夫は妻のかわりに娘に過剰な愛情を注ぐようになる。
  4. 娘が自分を否認するテクニックを学べるよう、たくさん嘘をつく。
  5. つねに性格ではなく、ルックスをほめる。あちこちに鏡をおいて、始終自分にうっとりさせる(これは演技性人格障害を作るのに一番大切なルール)。
  6. 彼女が家出したときは(おそらく彼女は頻繁にそうするだろう)、かならず彼女のあとを追い、最初から彼女の言うようにしなかったことを謝る。
  7. 彼女が悲しそうで、24錠のアスピリン、睡眠薬などを飲みこんで自殺のまねを装うときは、彼女の言うことを最初から聞き入れなくて悪かったとかならず伝える。これは簡単である。なぜなら彼女は母親やボーイフレンドが近くにいて彼女を救ってくれる状況がなければそもそも多量服用をしないから。
  8. 映画スターになるよう彼女に薦める。それまでに彼女は十分にドラマティックで、演技はかなり自然に身についているだろう。
  9. 離婚、再婚を2~3回くりかえし、男はみなクズだと教える(しかし彼女はそれでも男と暮らすはず)。
  10. 誘惑的な衣服を着るよう薦める。しかし、実際はあまり薦める必要はないだろう。なぜなら彼女は父親を喜ばせるために自然とそうしているだろうし、父親は娘の性格でなくルックスのよさを賞賛し続けるだろうから。
  11. 娘がデートから帰るのが2時間遅れたら、夫といっしょになって娘をしかる。そして好奇心いっぱいの笑いを浮かべて、興味をくすぐる詳細を聞き出して楽しむ。しかし娘のアドベンチャーを自分がどんなに楽しんでいるかは、たとえ娘は知っていても、気づかせないようつとめる。
  12. 具合が悪いふりをする彼女につくしてあげる。そうすれば彼女は自分の本当の感情に向き合うかわりに病気になって、医者から医者を渡り歩き、しかし何も悪いところは見つからず、こうしたいばった男性の医者たちにますます腹を立てるようになる(だが、助言を求めて何千ドルも使い続けるだろう)。

世界中で精神科の聖書とされている「精神科診断マニュアル」によれば、演技性人格障害の人は、「興奮性、感情の不安定、過剰反応、自己の演劇化に特徴づけられています。この自己の演劇化はつねに関心を呼ぶためのもので、患者はその意図に気づいているいないにかかわらず、誘惑的であることが多いのです。こうした人格はいつも未熟、自己中心的で、うぬぼれが強く、普通人に依存する」となっています。

演技性人格はまた、私たちが受動攻撃性人格と呼ぶ性格傾向(これには「妨害癖、ふくれっ面、ものをぐずぐず先のばしにする、わざと非能率的にものごとを処理する、頑固」などが含まれる) よりも高い率で見られます。

これらは敵意をむき出しにすることなく、依存している人に仕返しをする方法です。私たちの大半がときにはこうした方法のどれかをとったことがあるものですが、真の演技性人格を持った人は、つねにこのようにふるまいます。

ここで2つの短いケーススタディを出しましょう。ひとつは、数年間の治療に通った女性(ジェーン)の演技性人格のケースです。

ジェーンについては、すでにグリーフ(深い悲しみ) を否認しています。彼女は14歳のとき、何度も家出をくりかえして、薬物に手を出し、奇妙な行動をして、総合病院の精神科に入院しました。

たとえば、学校のトイレでかみそりを使って自分の背中を切り、教室にかけこんで、女性の先生(彼女が好意を寄せていた)に切られたと告げるのです。自分に注意を向けてもらうためならほとんど何でもするのです。彼女が病棟のジュースの乗ったカートに向かって話しかけているのを見たとき、完全に精神症状が出現したのかと思いました。しかしあとでわかったことには、それも、人に注意を向けてもらうための演技だったのです。

彼女は病院での集中的な6週間の精神療法ののち、2年間外来で週1回の精神療法を続けました。その間、半日ほどいなくなったことが1回、薬の多量服用が6回ほどありました。これは、すべて母親を操作するためです。ときどきマリファナを吸い、100回もかんしゃくをおこしました。

それでもそのすべてが以前と比べると劇的に改善しているのです。彼女は16歳で少女のための小さな施設に入ったのですが、そのころまでに彼女はだいぶん成熟していました。最初患者としてやってきた14歳のときの彼女は、IQテストは135という高得点であったにもかかわらず、心理的成熟度は3歳だったのです。

16歳で彼女はやっと10~12歳くらいのふるまいができるようになりました。親は、子どもの健康な成長に必要なものを提供できない状態を14~16年も続けてきたあとで、精神科医に数週間で自分たちのミスを全部治療できるだろうと期待するのです。

ことはそう簡単ではありません。 私たちにできることは、親が子どもの課題をのりきる方法のいくつかを探しだす手伝いをするだけです。ジェーンの人生最初の6年間をみてわかったことは、母親が上流階級の出身で、父親は経済的に成功していても、心理的にはとても弱く未熟、といった環境で育ったことです。

家庭では母方の祖母が支配的で、この彼女もまたビジネスの成功者でした。母親は夫をけっして性的に満足させたことはありませんでした)。それで父親は関心をすべて娘に向けました。そして彼は、妻や娘以外の他の兄弟たちを完全に無視しました。

いかにが愛らしいかを何度も何度もほめたたえました。しつけたるものはまったく考えにおよびませんでした。

ほしがるものは何でも与えました。父と母は別々の寝室で、娘は毎晩父といっしょに寝ました。就学前には少なくとも一度、母方の祖父に性的いたずらを受けています。

この祖父もかなり老いており、支配的な妻からけっして性的満足を得ていませんでした。

5歳のとき、彼女と父親がいっしょにべッドで寝ていると、突然父親が心臓発作をおこしました。救急車が呼ばれ、寝室から彼が出て行くときに、「心配しないで、、戻って来るからね」と言ったのです。

しかし父親は病院で息を引き取り、それを信じょうとしませんでした。数ヶ月、彼女はクローゼットやドアのうしろを探し続けました。父親は娘の命そのものだったのです。

彼女は想像力をたくましくして、日に何回も父の名を呼び、父が彼女に話しかけるために部屋に入ってくるのを想像しました。

16歳になってようやくそうするのをやめましたが、それでもたまにそうしているようなふしがあります。強大な否認のテクニックを用いて、ときに彼女は実際そこに父親がいると信じるのです。.

自分がこんなに父のことを必要としているのに、彼女をおいていった父を責めました。もし彼がまだ生きていて、まるで妻のようにふるまい続けたなら、状況は現実よりはるかにひどくなっていたことでしょう。

しかし彼女は父を愛するのと同時に嫌悪していました。彼女は男性一般に対して苦々しい態度をとるようになり、また、大人になるにつれてますます誘惑的な行動をとるようになりました。彼女はまさに演技的人格をフルに発達させました。

2年間定期的にセラピストに会うようになって、彼女は彼女の誘惑、操作に引っかからない、そのかわりに真の愛を率直に示す年上の男性を信頼し、見分けられるようになってきました。

セラピーを受けている間、彼女は信仰をもって成長しようとしましたが、やがて父を操作したのと同じ方法で、神を自分の都合のいいように理解しょうとしている自分を発見しました。ほとんどの人と同じように、彼女は、神は父親みたいなものだと思い、神の全知性、無限力、真の愛と完壁な正義を受け入れるのに困難を覚えたのです。

母親に、家でどう彼女を扱うかに関して話をもちかけましたが、関節炎と心臓病を患った母親は、適切な方法でをしつけることができずは近くの町の小さな施設に住むようになったのです。そこで彼女はうまくやっているとのことです。前述したように、演技性人格障害を患うのは女性ばかりではありません。前に紹介したリストを息子に当てはめれば、容易に息子を演技性人格に育てることができますし、実際多くの男性の演技性人格者がいます。すぐに思いあたる方もいるでしょう。

演技性人格障害の患者は、意識的、無意識的に異性を誘惑し、相手をおとしめてその相手もまた他の男(女)と同じく無価値であることを示そうとします。

売春をする多くの女性が演技性人格であると言う人もいます。多くの演技性人格障害の女性は、性的に自分をおとしめてくれるいい男を求め、そしてまわりの人間には「彼にそそのかされた」と言いふらし、彼の評判を傷つけるのです。

演技性人格の女性の内的心理

過剰に感情的な(演技性人格の)大人の女性の心理構造をさらによく理解するために、かりにMという女性に登場してもらって、彼女の思考、感情を探ってみましょう。Mは社交的で、人好きのする成人女性で、現在2度日の結婚生活を送っています。

最初の結婚は17歳のときのことでした。相手は「ドンファン」タイプでカリスマ的なすごいハンサムで、しかし依存的な男性でした。彼女は、セックスが妊娠につながるということを「うっかりして」忘れてしまったために、結果として彼と結婚することにしたのでした。

実際は、私たちの意見では、彼女は無意識に彼女の父を罰するために妊娠したかったのです。彼女と最初の夫との間では最初からケンカが絶えませんでした。そして両者ともに、カウンセリングに通うことで衝突を解決しようとするほどの責任感は持ち合わせておらず、結局「性格の不一致」のせいにして離婚しました。

これはよく見られる理由づけです(実際には「性格の不一致」たるものはなく、ただやる気のない人間が二人いるだけです。いかなる人格タイプの二人でも、いいカウンセリングを受け、プライドを飲みこみさえすえば、幸せな結婚生活をおくることができます。

ただし両者ともに、何らかの責任ある変化をもたらす意欲がなくてはいけません)。マリリンは離婚後、1人でいる自由さに耐えられずに、すぐに経済的に安定した、自信たっぷりの年上の男性と結婚します。彼女は、彼が相当な強迫性人格であることや、彼の安定感、自信がうわべだけのものであることを理解していませんでした。

また、彼女にとって彼は、対等なパートナー同士であるというよりも、父親代わりだったことにも気づいていませんでした。さて、このMの思考プロセスの内奥まで入りこむ旅を進めていくにつれ、私たちはものごとがより鮮明に見え始めるでしょう。

たとえば、Mは感情的で、興奮しやすく、ときに気落ちしているように見えますが、人好きのする、とてもさわやかな人格のときもあります。彼女は社交的でもあり、パーティの華です。人々は彼女の華やかさにひかれて周囲に集まります。彼女は本当にカリスマ性があり、人々は彼女といるのが楽しみです。

彼女はときに芝居がかっていて、魅力的な身体をしており、人の関心をとりわけ必要としています。彼女は活発で、言葉使いは演劇的かつ表現力たっぷりです。心の奥底では自分自身を愛していないにもかかわらず、人を落ち着かせる能力を持っています。

また、彼女は表面的には感情豊かに見えますが、深層レベルでは人に近づくのが苦手で、理論より感情に重きをおきます。彼女はつねに現在に生きており、未来や過去にはこだわりを持ちません。でも夫はむしろ未来に生きており、将来の目標プラン設定に忙しいのです。

Mの社交上の友人は、彼女が相当に見栄っ張りで自己中心的なことに気づきません。ようばう男性のなかに入ると、彼女は自分が心から欲する「関心」を得るために、美しい容貌を使い、彼女に近づく男性と身体的な「親密な関係」を持とうとします。とくに夫が出張でいないときなどは、他の男たちとよくセックスをします。男性の注目を得るのが大好きで、男たちを操作するためにセックスを利用するのです。

しかし彼女は劣等感を感じており、美しいにもかかわらず、自分の容姿が好きではありません。彼女の人の関心をひく能力に満足できず、自分がいっぱしの人間であることを証明しようとします。夫が彼女を甘やかさないと、彼女はアスピリンやバリウムを多量服用したりしますが、致死量までは飲みません。夫に罪悪感を持たせるに十分な量だけを飲むのです。彼女はドレスやしぐさで巧妙に誘惑し、自分が望む関心を得ようとします。

彼女は拒絶を強烈に恐れているのです。彼女は異性としょつちゅう衝突します。異性をときに過小評価し、またあるときは過大評価します。父親と多くの衝突があり、けっして折り合いをつけていなかったからです。彼女は、子どものころ、うまく操作すれば父親をコントロールできることを学んだことを覚えています。

しかし父親もまた、ときに予測不可能な行動をする男性で、彼女はこれを父親に拒否されたとあいむじゅん感じています。これがのちに男性に拒否される恐れとなり、同時に男性への相矛盾する感情を抱かせることになります。父親やその他の男性への強力な怒りがたまっているため、彼女は夫とのセックスでは冷感症ですが、他の男たちとなら、ある程度セックスを楽しめます。

社会的には、彼女はとても暖かく魅力的な印象を与えますが、感情の起伏が激しく、ものごとを理性的、論理的に見つめる力が欠如しているため、生活はとても不安定です。感情は大切ですが、感情は気まぐれで移り気なのです。

Mは相当感情的であるにもかかわらず、多くの深い感情を抑圧しています。とてもオープンに見えるので、新しい友人はずっと以前からの知り合いのような気持ちになりますが、表面的な関係以上のものを築くことは難しいのです。つまり彼女の知り合いは、彼女と知り合って1時間しかたっていない人程度にしか彼女のことを知らないのです。

Mは、落ち着いた自信たっぷりげのうわべの印象を作り出しますが、不安定感を感じひんばんています。そして療繁に退屈さを味わいます。また、夫はいつも時間に正確ですが、彼女はたいてい時間にルーズです。

これは夫を罰するために彼女が無意識にすることです。そして、彼はすべてを詳細に計画しますが、彼女は詳細はどうでもいいのです。夫は実にきちんと道義をわきまえた人ですが、マリリンは非常に衝動的で印象やカンに頼ります。

一方、アート、音楽にとてもクリエイティブで、鮮やかな生き生きした創造力を持っています。夫はお金に関しても非常に厳しいのですが、マリリンはかなりの浪費家です。

Mはまた、男性と張り合おうという敵対心を持っており、性的にも男を負かそうという気持ちを持っています。セックスを通じて男を魅了し、コントロールします。そして、彼女は権力のある父親的な人物を選びます。男は彼女の容貌ゆえに、ステータスシンボルとして彼女を見ます。

また、彼女は母親的な人物でもあり、男の甘えのニーズを満たします。Mの幻想は、愛と人の関心をめぐつてふくらみます。一方で強迫性人格の夫は、パワー獲得を追い求めています。

子どものとき、Mは病気になって人の関心を得ることができました。また子どものころ、自分の要求を認めさせるには芝居がかったやり方が効果的だったのを覚えています。

また彼女は、過剰に母親に甘えることを学びました。これは彼女の成熟を妨げることとなり、それしっとでいっそう彼女は、特権は男に与えられていると感じ、男性に対して競争心と嫉妬を抱いたのです。幼いころは父親と非常に親密だったのですが、そのうちに父親との衝突が始まり、思春期あたりになると相当の拒否感を感じました。十代のMは人に評価され、認められようと必死でした。他の美人の女性たちとの関係がまずくなったのは、彼女たちが男性の関心をめぐってライバルになるからです。

演技性人格の特徴

ところで、私たちはみな男女とも、ある程度の演技性性質を持っています。私たちの経験から言えば、その傾向が強いほどに、以下の傾向が多く見られるでしょう。

  1. 外交的でいっしょにいて楽しいと言われる
  2. 演技的なふるまいが多い
  3. 不安定ですぐ興奮する
  4. 見栄っ張りで自己中心的
  5. 依存心が強い
  6. 自殺をほのめかす(薬の多量服用をするなど)
  7. 行動も誘惑的(自分では気づかない、わかりにくい方法で誘惑をする)
  8. 異性に対して相反する二面性を持つ
  9. あまりものごとを深く考えない(感情に頼りすぎる)
  10. 異性の関心を何よりも求めるにもかかわらず、無意識に異性への怒り(憎しみ)を持っている。
  11. 他人の関心をひく行為をする
  12. 父親的存在を探し求めている
  13. 父親への深い、苦々しい思いを抱いている
  14. 外見は魅力的ではきはきしている
  15. やたら大げさにものを言う
  16. とてもオープンで、多くのことをすぐに人にしゃべる
  17. すぐに知り合いになり、長いつきあいのような気分になる
  18. しかし深い親密さはめったに築かれない
  19. すぐれた想像力を持っている
  20. 相手を自分の世界観にひきこむような話術を持っている
  21. 表現豊かで落ち着いた印象を与える
  22. 時間にルーズで詳細なプランニングが苦手
  23. とっさのひらめき、カン、印象に頼り、信念を持たない
  24. わくわくする、インスピレーションを与えるような仕事が好き
  25. 他の素敵な女性に敵意や競争心を持っている
  26. 男よりパワーを持ちたいと願っている
  27. 自分は病気だと思うことで感情的問題に直面するのを避けることがある
  28. 人から愛と関心を受けることをつねに求めている
  29. 拒否されることに対しての恐れが強い
  30. 十代のころは、おてんばの時期が長かった
  31. 父親は魅力的で支配欲求が強かった
  32. 幼いころ(5歳以下)は父親と非常に仲がよかった

 

「いい子」に育てられた人はうつになりやすい

あらゆる人格タイプのうち、他のどのタイプよりもうつにかかりやすいタイプがひとつあります。それはいわゆる「いい子」たちです。

自分を犠牲にして、頑張りすぎることが多く、まじめでそしてかなり宗教的なタイプです。精神科医はこのタイプを強迫性人格と呼びます。

一般的には、完全主義者、A型人格、仕事中毒、献身的召使などと呼ぶことがあります。

テストを行なった医者の90% 、聖職者の75% がこの強迫性人格の多くの要素を備えていました。弁護士、ミュージシャン、エンジニア、建築家、歯科医、コンピュータープログラマー、その他の専門職も強迫的傾向を強く持っています。

これはおそらく医師、歯科医、ミュージシャンがもっとも自殺率が高いことの原因と言えるでしょう。さらに宣教師もまたよくこのカテゴリーに入ります。

この結果に、多くの人は驚くでしょう。勤勉でなくわがままで、あまり社会や人のために役に立つとは考えられない人があふれる世の中で、社会で献身的につくしている人たちに一番うつや自殺の傾向が多く見られるとはどういうことなのでしょう?

人間の深い「無意識のダイナミクス(力動)」を研究した人は、うつは自分で選択しているものであることを認識しています。

自殺もしかり。そして幸福も自分で選んだ結果なのです。うつにおちいるこうした献身的な人たちは、私たちと同じく個人的な欲求と戦っているのですが、完全主義者の個人的な欲求は微妙でずっとわかりにくいのです。

彼らは週に80~100時間、人のために働き、しかしそのために、自分の妻や子どもたちをなおざりにしています。自分の感情は押しこめて、コンピューター化されたロボットのように働いています。

愛や共感で人を手助けしようとしているように見えますが、実は自分の不安さを無意識に埋め合わせようとしているのであり、また世に認められたいという強い願望と完壁でなければならぬという欲求を満たす手段としてひたすら働いているのです。彼らは自己批判的であり、内部の深いところでは劣等感を感じ、本当の自分がいないと感じています。

こうした人たちは、中年になって怒りが出てきます。神には、あまりに多くを期待されすぎているとして、また家族、同僚にも同じ理由から怒りを持ちます。子どもたちからは反抗的な態度をとられ、そして自分自身が完壁でないことに対しても、怒りに圧倒されるようになります。そして深刻なうつになります。

真実への洞察が欠如しているために、彼らはかなりつらい痛みと絶望感を抱え、気弱になると自殺を図ったりします。本書が、こうした問題に対して貢献できればと願い、祈るものです。

うつは貴重な時間を無駄にします。自殺はあとに残された人にとてつもない影響を与えます。本章では、いかに完全主義(強迫性人格) が子ども時代に養われたものかを示す貴重な研究を分かち合いたいと思います。

そして多くの完全主義的仕事中毒者らの無意識レベルにある心のダイナミクスについてふれたいと思います。

まず、もしあなたが妊娠中の女性で、完全主義の子どもを産みたいとしたら、以下のようにすればいいでしょう。

精神疾患の診断・統計マニュアルによれば、強迫性人格は「過剰に厳格で、生真面目、過剰に良心的、義務感が強く、なかなかリラックスできない」人の診断名です。もしこれが進行すると、状況は次のようになります。本人が止めることのできない考え、欲求などがひつきりなしにおそってきて、コントロールが効かない。本人は突拍子もないと思いながらも、ある特定の言葉、考えなどが反復して止められない。行動面では、単純なある動きから、手を洗うことがやめられないなどまでさまざかんすいまな様相を呈する。

患者がこの強迫行動を完遂できないとき、または自分ではコントロールでけねんきないことを懸念している場合に、不安とイライラが見られるようになる。

強迫的な子どもが育つ13のポイント

  1. いつも口先だけ、話ばかりで、実際に体では動かずに、けっして子どもの言うことに耳を傾けない。
  2. 子どもに完全なエチケットとマナーを期待する。ミスを許さない。
  3. 内向的で、他人と健全にやりとりをする姿を子どもに見せない。
  4. まわりの人に極めて批判的。牧師など聖職者、近所の人たち、夫、そして何よりもその子ども本人に対して。
  5. 実にいやみな人間として振舞う。
  6. 夫、子どもを支配する。
  7. 他の子どもよりもつねにすぐれていることを要求する。
  8. 自分自身ではこれといった信仰を持たず、子どものおじいちゃん、おばあちゃんの信仰をあれこれ批判する。
  9. 子どもに父親を尊敬するように言って、実際は夫をないがしろにする。
  10. 子どもに12ヶ月めで完全におむつがとれることを期待する。
  11. 将来のための貯金と称して、常識を越えた守銭奴になる。
  12. 法律の基本方針ではなく、条文そのものの遵守を強調する。規則をごく厳格にし、例外をけっして認めない。
  13. 子どもの性的関心を恥ずかしいことだと決めつける。

強迫的になる子どもの親は、どうやらこうしたルールに従っているようです。しかし、ある程度の強迫性は人生で有益であり、これによって勤勉になったり、良心的で道徳的な行動をとることが可能になるという側面もあります。

私たちがテストを行なった医師と医学生の大半は、いくつかの強迫性人格を示しています。まじめに取り組まなければ、医学部や開業医の厳しい要求をくぐり抜けることはできないのです。また、多くの神学生、牧師も極めて強迫性人格的です。使徒パウロにも何らかの健全な強迫怪人格傾向があったようですが、不健全なものは克服しなくてはいけなかったことでしょう。しかし親が前述の13のリストを用いて子どもを育てたなら、強迫性人格はコントロールできなくなってきます。

完全主義者の内的心理

前述の方法にすべて従って、過剰に不安で完全主義的な子どもを育てたとします。その子が大きくなって結婚し、大学を主席で卒業しようとしています。

この子をは完全主義 として、大人になった彼の無意識の心理を探るとしましょう。

まず、何をするにも完全主義です。過剰に責任感が強く、良心的で、働き者です。リラックスできず、自分自身やまた自分に近い人たちに厳しく接します。自分に厳しいため、また良心があまりに強いために、落ちこみやすくなります。

これまで一生懸命頑張ってきたのに、けっして十分やったとは思えません。何事にも精魂を使いはたしてしまう傾向があります。経済的には成功していますが、内側でもっと頑張れと自分に言い聞かせているので、けっして満足しません。

また、冷たい人に見えます。事実だけが大切で、感情には無関心の傾向があります。彼には、感情はわからないのです。また、彼にとって感情は事実よりコントロールが難しいのです。そして、は自分自身、自分の考え、そして近くの人々を支配・コントロールしたいという強烈な欲求があります。

このため、彼は事実を重んじ、感情を避けるために無理をしてでもものごとを理性化します。これは不快な感情だけでなく、ほんのりとした暖かい感情についても同じです。なぜなら暖かい感情もまた彼にはコントロールしがたいからです。コントロールできない感情は、ただ不安感を増してしまうので、そうなると今度は感情を感じないよう感情を避けるのです。

つまり、厳格なコントロールを維持することで、自分が内奥で感じる感情を抑えておくのです。こうした不安感を抑えきれないときに、うつがおこります。いつも人のいいなりで、従順です。でも彼を引っ張っているのは怒りなのです。

そして従順と反抗がときに衝突します。この怒りを感じないですむとき、今度は強烈な恐れが出てくるのです。これは権威への恐れで、この恐れが即座に従順さにひき戻すのです。

この恐れは、子どものころに母親に怒りをぶつけて拒絶をくらったことを想起させます。そして、この恐れが、まじめで、良心的で、いい人といった彼の傾向をもたらすのです。

これらは、外見的体裁は良いとしても、健全な源から出ているのではありません。彼の自己肯定感は、条件つきでのみ親に受け入れられたことがベースになっています。条件つきの受容は、彼に幼児期の体験を想起させます。できて当然と期待され、その期待を達成したときにのみ、愛情が与えられるものと思ったのです。

こうしたダイナミクス(力動) がジ極端な完全主義者にし、けっして自分自身に満足せず、つねに内側から自分に攻撃をしかけることになり、よって深刻なうつがおこりやすくなるのです。

大人になると、神も含めた他者との関係に不安感をおぼえます。親から受けた愛情は条件つきだったため、神に対しても同じように見てしまうのです。信仰に疑問を感じることがよくあり、また自分が救われることに疑いを抱いています。

自分が神に拒否されるのでは、という深い不安感と恐れをコントロールします。でも、実はは秘密裏に主を求めているのです。なぜなら、神は無条件では自分を受け入れるはずがないと感じているからです。

自分自身や妻に批判的で、この批判的な性格が彼らに影響を与えます。この自分の批判的性質ばかりか、強烈な怒りによっては内奥から裂かれています。ほんの少しを見るだけで、彼がいかに怒っているかがわかります。それは顔の表情や動き、固い姿勢に現れているのです。こうした強迫的な人が普通考えるのは、自分の将来についてです。

いつも未来の目標に向かって計画を立て、頑張っています。けっして現状に満足しません。つねに自分にいろんなことを課していきます。人は逆のタイプの人とひき合う傾向があるので、妻はおそらく彼と反対の性格なのでしょう。妻はヒステリックでさらに激しく現在の感情に左右されます。

うつが進むにつれ、彼の思考は未来から過去へとシフトしていきます。そして、過去のミスや失敗を大いに気を病むようになります。

自分を防御するのに使う手がいくつかあります。そのひとつが「孤立」で、自分の気持ちと感情を孤立させます。彼はまず自分の感情にほとんど気づいていません。葬儀のときですらこの孤立を用います。取り乱すことなく落ち着いた装いで葬式をやりすごし、しかし内側では深くひき裂かれているので、のちにうつがおこります。

もうひとつの防御メカニズムは、「帳消し」です。罪悪感でいっぱいで、犯したミスをもとに戻せないものかと思っています。この罪悪感を帳消しにしようとする(取り消そうとする) 自分の内側の動機に彼は普段気づいていません。

無意識に使う別の防御は、本当にしたいことのまったく「逆をする」ことで、衝動、感情を守るのです。

たとえば、自分が抑圧している性的欲望を打ち消すために、ふしだらな性行為を一掃するキャンペーンの先頭に立ったりします。あるいは女性といちゃつきたい自分自身の願望を妻に投影して、妻が他の男といちゃついていると不当に責めたりするかもしれません。

こうした防御行為によって、とりあえずはうつにならずにすんでいます。自分の怒り、恐れ、罪悪感、罪深い欲望に気づくと圧倒されてしまうので、こうして自分をあざむくのです。本当に必要なのは、精神療法など、人の助けを借りて変わり始めることなのです。

そして、自分自身の真実に責任もって対処することを学ぶことなのです。まだほかにもたくさんの無意識の行動をしているでしょう。彼の不安をコントロールし、人との親密な関係は感情をかきたてますが、感情は彼にとってはまったくコントロールしにくいものなのです。

おもに3つの懸念事項を抱えています。それは、時間、ほこり、そしてお金です。子どものころ、いつも母親に時間を守るよう言われていました。寝るときも、トイレに行くときも、いつも母親に時間にルーズにならないよう言われ続けていました。こうした幼児期の体験は深く刻みこまれ、大人になるまで持ち越されているので、いまだにいつも時間を気にします。

またお金のことも気になります。お金は地位とパワーをもたらしてくれるからです。さらに、頭の中では、ほこりは自分が無意識に抑圧している罪深さを象徴するので、非常に気になるのです。

だから、妻には家を隅から隅まできれいに掃除をするよう要求します。罪悪感をかなり感じるときは、何度も手を洗います。しかし、なぜ自分がこのような行動をするのか気づいていません。不安や無力感、絶望を感じています。ことさら彼は、不確実な世の中で不安を感じます。こうした不安定感はコントロールできないので、道にコントロールをしたいという過剰な要求を増大させます。

この不確実な世で自分の不安感をコントロールするために、偽りの全能感を身につけ、極めて自信たっぷりにふるまい、実際そうであるかのように自分や同僚たちをうまく納得させます。また知的に何でも知っていたいという強い欲求を持っています。

すべてのものごとをコントロールできると感じていたいのです。しかし、自信たっぷりの見かけとはうらはらに、意思決定がなかなかできません。間違った選択をしてしまったら大変だからです。すべてに関して真実がほしいのです。それには神学の分野も入ります。神学的に、少しでもはっきりしないことがあると、うつが押し寄せます。彼がよくいろいろな哲学論議にふけるのは、責任逃れの方法なのです。

たとえば、彼は良き父、良き夫とは何かということを語ることができても、実際そうなることは避けるのです。普通非常に時間に正確で、秩序正しく、こぎれいで、良心的な人間ですが、ときにまったく逆の性質を表すことがあります。

たとえば、無精ひげをはやし、良心を欠いて、無責任で、時間に遅れてきたりする人間を演じたりします。

前述したように、完全主義は健全な動機によるものではなく、権力への恐れによるものです。そして非完全主義者の性格は、従順でなくてはならないことに対する反抗的な怒りによるものなのです。

かならずといっていいほど、いつも感情より事実を強調します。彼は頭で感じよう としているのです。感情を避けるために、理性のレベルで人と話そうとします。いつも頑固です。親に対して頑固だった幼年時代に、この性質を学びました。

以上をまとめると、内面からつき動かされているのです。不安をコントロールするために、彼は多くの防御策をめぐらすのですが、その他多くの強迫性人格の例にもれず、最後にうつが現れます。大いに心配し、彼の厳格なライフスタイルがもはや彼の強烈な内なる衝動に十分処理できなくなったときに、うつがおこってきます。内面のダイナミクスをよく検討すると、以下のような多くの強迫傾向が見つかることでしょう。なかには有益な資質もあり、それは彼が一流の専門職に就くのに役立ちます。しかしその他の資質は不健康で、たいていは彼をうつにして終わります。

強迫性人格(男性、女性)の特徴

  1. 完全主義
  2. きれい好きできちんとしている
  3. 責任感が強い
  4. 細部にこだわる
  5. いい仕事をするが、働きすぎる
  6. リラックスできない
  7. かんしゃく持ち、怒りつぼい
  8. こだわりが強い
  9. 思考の硬直
  10. 柔軟性がない
  11. 感情ではなく事実に興味がある
  12. 冷たい感じがする
  13. 外見は安定しているように見える
  14. (ときに) 反権威主義
  15. 従順と反抗のはぎまで悩んでいる
  16. いつも何かに憤りを感じている
  17. ときに反村の気質を示す:良心的/ なげやりな態度、秩序正しい/ だらしないない
  18. おもに3つのことが気にかかる ほこり(いつもきれいにしている)、時間(いつも時間を守る)、お金(安心感が必要)
  19. 自分や周囲の人々をコントロールするパワー願望がある
  20. 強烈な競争心
  21. 感情を他人に見せない
  22. 論理的
  23. 魔術的思考(自分は現実よりもパワーがあると考える) を持つ
  24. 喜びをあと回しにする(無意識の罪悪感)
  25. 性生活はマンネリ化
  26. 甘えの関係を欲する
  27. しかし同時に依存的関係を恐れる
  28. 無力感を持っている
  29. ものごとを決心できない
  30. 些細なことが気にかかる
  31. 怒りをかくす
  32. 緊張して握手をする
  33. 端に意志が固い
  34. 自分の誤りを認めようとしない
  35. 他人との衝突を避ける
  36. 極度の倹約家
  37. 質素で規律正しい
  38. 粘り強く頼りになる
  39. すべてを知っている時のみいい気分になる
  40. すべてのことに究極的真実を求める
  41. 見かけは強く、しっかりしていて、断固と頼りになりそうに見えるが、実はなかなかものごとが決められず、不安で、ためらいがち
  42. 完壁であることを装う
  43. 問違いを指摘されるのが怖い
  44. 確実さを期すためにドアのロックを何度もチェックする
  45. 恋愛では相手の感情はコントロールできないため、恋愛関係に注意深い
  46. 怒りは人との距離をおくので、暖かい気持ちよりは容易に表現できる
  47. 強烈な集中を要する作業が得意
  48. 親は強迫的で、献身を強要した
  49. 親は最低限の愛情しか注がなかった
  50. 子どものとき、条件つきで受け入れられた
  51. すべては白か黒かという画一的な思考方法をする
  52. 社会の不確実性を克服するために、超人間的業績を達成しょうと頑張る
  53. 自分の決心がつかないところが大嫌い
  54. 極端な反応をする傾向がある
  55. 自分の限界を認めることは、情けないと思っている
  56. 儀式好き
  57. 結婚になかなか踏み切れない
  58. 問題を先送りする
  59. 死について考えるのを避けようとする
  60. 自分はめったに人をほめないのに、相手からは最大限の賛辞を求める
  61. 結婚生活で家事を分担しないで自分の最低限の持ち場だけをやる
  62. 結婚ではほとんどのことを相手にかわって考えてあげる
  63. セックスは自発的でない
  64. ものごとの整理が大好き
  65. 慢性的にいつも心配ばかりする

しめくくりとして、罪悪感について少しふれるべきかと思います。罪悪感は蓄積された怒りの一形態であり、よくうつの原因となります。

罪悪感は自分への怒りです。完全主義者は罪を犯したときに「真の罪悪感」を抱くだけでなく、「偽りの罪悪感」も持っています。そしてこの本物と偽りの罪悪感では大きな違いがあります。

フロイドは、すべての罪悪感は偽りの罪悪感であり、罪悪感自体がつねに悪いことだと考えていたようです。多くの精神科医は、罪悪感はつねに不健全だというフロイドの考えに賛成していました。

しかし医師や専門家は反対の意見です。真の罪悪感とは、自分が神の道徳律を犯したという「内なる不快な気づき」です。これはひとつには信仰によって、また自分自身の良心によってもたらされます。

この良心がフロイドのいうところの超自我です。私たちの良心は、親から教えられたことや、親が実践していたこと、教会が教えたこと、教会の信者たち、友人、教師の意見など、多くの環境の影響によって形成されます。

もし聖書を勉強したなら、聖書の教えによっても私たちの良心は形成されます。しかし、私たちの良心はよく間違います。未熟な良心を持った人のなかには、間違ったことをしてもそれが間違いだと気づかない人がいます。

その場合、良心にさいなまれることはありえません。それとは対照的に、すべては罪だと教わった人は過剰に発達した良心を持ち、神が間違っていると認めないものに対しても、良心がとがめられるでしょう。これが誤った罪悪感、つまり神や神の言葉がまったく非難しないものに対して罪悪感を持つことです。

真の罪悪感は貴重です。神が人間に罪悪感を与えたため、人は罪悪感によって自らの行ないを悔い改めることができるのです。間違ったことでなく正しいことをしたときに、私たちは神との親交を深めて、自分のことがもっと好きになるでしょう。間違ったことをすることは私たちの自己評価を下げることです。

正しいことをすれば、自己評価は大いに上がります。精神科医としての私たちの経験では、患者が罪悪感があると言った場合、実際その罪悪感は真の罪悪感であることが普通です。

彼らは罪を犯したから罪悪感を感じるのです。そして彼らがした悪いことを正しさえすれば、落ちこみも直せます。しかし信者の多くが、聖書がまったく非難していないことに罪悪感を感じると訴えます。

たとえば、誘惑を感じたといっては罪悪感を感じるのです。しかし、誘惑されるのは罪ではありません。その誘惑に居座ってそれに負けるのが罪なのです。

偽りの罪悪感のルーツを子ども時代に求めています。偽りの罪悪感の原因は、子ども時代の育てられ方にある。過剰に厳格な期待が親から課されると、過剰に厳格な超自我、良心だけが育つ。たとえば、過剰な非難、中傷、審判、文句ばかりを親に言われて育つ子どもは、自分がその期待にそえない場合、適切な期待が何なのかを知わいきょくらずに歪曲された思考を持つに至り、結果として子どもの罪悪感を高めることになる。愛情ときちんとした説明をもって与えられる適切で正当な罰は、罪悪感を取り除く。ほとんど励ましてあげたり、ほめたり、お祝いの言葉を言わない親もいる。

けっして子どもの行動に満足できないのだ。子どもが学校、遊び、スポーツなどでいかによい成績を出しても、もっとできるはずだと親は満足しません。このような親に育てられた子どもは、自分の自己肯定感がいかにダメージを受けているかを知らず、完壁以外はすべて失敗だと感じて育ちます。どんなに頑張っても、できるかぎり最大限のことをしても、罪悪感と劣等感を持ってしまうのです。

そして大人になっても神経症や偽りの罪悪感、低い自尊心、不安感に苦しみ、やることなすことすべてに、自分はダメだと悲観的な見方をするようになります。これが自分を責め、内側に向けられた怒りとなります。

この無価値感ゆえに自分で自分に罰を与えようとします。この怒りと敵意むくの混じった内的懲罰の報いが、かならずうつをもたらすのです。

また、心身症や不適切な行動などをひきおこしたりもします。

「偽りの罪悪感」に対する治療は、なぜ本人が罪悪感を持つようになつたかを理解し、自分の真の姿を評価することです。また罪悪感を抱く本人には、自分自身を非難する権利はなく、神のみがそうする権利があること、そして信仰を持つ人は審判と非難を神のみに委ねるべきであることを理解する必要があります。

そして現実的に到達可能な新たな目標を設定し、他の人と比較しないことが大切です。神が自分に期待していることと、自分の現在とを比較すべきです。神は私たちや私たちの子どもたちに、この世で完壁さを期待してはいません。私たちができるかぎり神の意思を求めることを望んでいるのです。

「正しいものは信仰によって生きるものである」と、また「人は信仰によって正当化される」と言っています。そして彼は、自分を救うための良い行ないよりも、おんちょう神の恩寵のほうを信頼するようになったのです。

心が痛みつけられて疲弊する原因

ためこまれた怒りがほぼすべてのうつの根ではあっても、心の痛みに苦しむケースは他にもあります。

たとえば孤独のつらさは、たとえその孤独な人がうつにはならなかったとしても、かなり深刻でしょう。心の痛みには3つのおもな原因があります。

自己肯定感の欠如

ひとつは自己肯定感の欠如、すなわち自尊心が低いことです。たとえば、親は第一子に多大な期待をかける傾向があり、そのためか長子は職業の面では成功していることが多いのですが、本人はそのことを少しも楽しんでいないことが多いのです。

しかも、長子も末っ子も自尊心が低いということが多々あり得ます。たとえば末っ子は、親離れされることがいやでたまらない母親によって甘やかされ、過保護になります。

このような末っ子は10代に少し反抗的になる傾向があります。そしてアルコールや薬物を乱用することで、仲間(ピアグループ)に合わせようとします。

もはや母親には手や口を出してほしくないので、今度は母親のかわりに考えてくれる役割を仲間に求めるのです。自分で考えるのは怖く、自分より自立しているように見える他の10代の子どもたちよりも自分は劣っていると感じ、自尊心が低くなります。しかし自尊心の低さをカバーするために、自分がかなわないと感じるしっかりしている10代の子どもたらを小ばかにしたりします。

自分の低い自尊心は実につらい重荷であり、この怒りが自分に向けられるとうつになります。うつは母を失う新生児から、体が弱って気弱になっている百歳の老人まで、あらゆる年代の人をおそいます。

過剰に厳しい親もまた、子どもの自尊心が低くなる要因になります。子どもは、親は正しく、自分が完壁でないのは自分のせいだと思ってしまうのです。10代、そして大人になると、この誤った罪悪感は怒りが内に向いてうつが出てくるまで大きくなります。

冷たくつき放す母親、受身的であったり、あるいは普段ほとんど家にいない父親を持つ子どももまた自分の正常な依存したいという欲求が満たされなかったために自尊心が低く、うつになりやすいと言えます。

たとえばほとんど身体的刺激を与えられない新生児は、たとえ十分な栄養を与えられていても、衰弱したり死亡したりする場合もあります。たとえそうならなくても、新生児が親との親密な関係を獲得する試みに失敗すると、あきらめて、ひきこもるようになります。

そして、親密になることに恐れを抱き、のちに友人からも何度も拒否されるような状況に身を置くようになります。新生児、幼児期のときに親密になることを恐れるように学んだために、友人に自分を拒否してもらったほうが、彼らを自分の選択で遠ざけているのだという事実に気づくよりも痛みが少なくてすむのです。

このような、友人のいない内向的性格は、自己評価も低く、うつにかかりやすくなります。フロイドの過去の心的外傷や生物学的要因を重視する立場と対照的に、劣等感を重視した) は、「劣等感」という言葉を作った人です。

彼と彼の支持者らはうつの原因の理解に大きく貢献していますが、自己評価の欠如が、人間の感情的痛みの主たる原因であることは疑いもありません。

2.他者との親密さの欠如

2番目の原因は、他者との親密さの欠如、孤独感です。神は人間が互いを必要とし合うように我々を作りました。親密な友情を築くことは、その報酬とともにかならずや何らかのトラブルもともないます。

人間は基本的にわがままであり、親密な友人でさえもたまには、互いに気に障り合うものです。でもたまに友人と衝突することは、一貫した絶え間ない孤独の痛みよりはるかにましです。

孤独はうつと同じように、私たちが自分で選択した結果なのです。要するに、私たちがいつのまにか選びとってしまっているのです。孤独を味わう人は、「必要な努力をしない」ことを選んでいるのです。

彼らの心は親密になることに対する恐れに支配されてしまっており、本当は孤独を味わわなくてもいいことにまったく気づいていません。この症候群を持つ人は表面的な友人を作ることで孤独感を補おうとしますが、もっとも深い感情を分かち合う親密な友人は一人もいません。

孤独な人の多くは、他人は自分と近づきになりたくないのだと思っています。しかし現実には、彼らが自分で、他者と親密になることを拒否しているのです。でも自分自身の無責任さに気づきたくないために、人を責めるのです。この防御メカニズムは「投影」と呼ばれます。

なぜなら彼らは自分自身の拒否行為を他人に、まるで写真スライドのプロジュクターが、スライドそのものをスクリーンに写すかのように、他人に投影するからです。

他者との親密さの欠如こそが、感情的痛みの原因であることを見出しました。孤独はうつとは同義語ではないにしても、たしかに人をうつに陥れる要因になります。

孤独な人は自分を拒否すると思っている人(実際はしていなくても) に恨みをためこむか、または「拒否される人間」である自分を恨めしく思っています。もしかしたら配偶者や唯一の親友との死別を体験して、神に対して相当の恨みを抱いているかもしれません。そうして鬱積された恨みはすべて、うつをひきおこす原因になるのです。

3.神との親密さの欠如

感情的痛みの3つめの原因は、神との親密さの欠如です。人間はだれでも、内面の深い部分で神との関係を持つことでしか満たすことのできない空虚さを持っています。

キリストの使徒パウロは、神が自然の美しさを使って人間に創造主との関係に気づかせようとしていると言っています。あらゆる宗教的背景を持っていますが、しかし2~3回セッションをすると、ほとんどの患者がそれぞれの患者の言葉で、たとえば自分自身の罪深い状況や、清浄になりたい願望など、何らかの宗教的な問題を持ち出します。心の痛みには主として3つの原因があります。

  1. 自己肯定感の欠如
  2. 他者との親密さの欠如
  3. 神との親密さの欠如

こうした痛みの原因のいずれかにとらわれてしまうと、恨みの感情を蓄積することになり、そして結局はうつにつながっていきます。こうした原因によって育てられた痛みをいかに癒すかが大事なポイントです。

幼少期にうつの根が植えつけられる

うつの根は実に深いのです! 40歳代ではじめてうつになる人は、おそらく4歳のときにうつの何らかの根が植えつけられたと考えられます。

うつに関する本や記事の著者のなかには(とくに専門家でない人は)、うつの進行は1、2、3とお決まりのコースをたどるかのように書いている人がいます。

たとえば単純な「うつ的人格」の特徴をあげることですら一筋縄ではいかないのであり、誤った試みなのです。

精神科の研究では、最低10のおもな人格タイプ、それに数百の多様な人格タイプ、行動パターンの組み合わせをあげています。その中に、とくにうつにおちいりやすいタイプというのはありますが、どのタイプもうつにおちいる可能性はあるのです。

人間の脳はまるでコンピューターのようです。数百の人格形成に関する研究をまとめて、大人の行動パターンの約85% は6歳までに探く刻みこまれることを示しています。

この大切な人生最初の6年で、子どもは親の行動パターン、とくに同性の親の行動パターンをコピーするのです。子どもは自動的に親がしたことを学びます。

親が怒りを抑圧すると、その子どもも怒りを抑圧する傾向を身につけます。親が同情を得るのに病気、うつを使ったならば、たぶんその子どももそうするでしょう。この極めて大切な時期に、親は親なりの理想に従い、普通は子どものためになるという良い動機を持っているのですが、しかしまずいやり方で子どもを型にはめていきます。親は子どものいろいろな行動パターンを意識的、または無意識にほめたり罰を与えたりします。

たとえば2~3歳児は普通、怒りの感情が何であるかを知っています。腹が立てば、自分が怒っていることを知っており、適切に、あるいは不適切にそれを表現するのです。

たとえば私たちの子どもが私たちに対して怒りを感じている場合、それを子どもが物を蹴飛ばすことで表現したなら、私たちは子どものお尻を軽くたたきます。それは「しつけ」の範囲に入るでしょう。

しかしながら多くの親が、子どもが適切な方法で怒りの感情を表現しようとしていたとしても、やめさせようとします。

さらに、正常な怒りの感情を適切に表現する子どもに罰を与えたりする親もいるのです。子どものとき、父親に対して「お父さん、いま私はお父さんのこと、すごく怒ってるんだけど、話を聞いてくれる? 」と言ったことがはたしてあったでしょうか?

おそらく怒りを伝えようとすると、拒否や罰を受けたために、怒りを恐れるようになってしまっているでしょう。そうなると、まあ、どうでもいいや、と怒りをごまかすように学習してしまいます。そして怒りを抑圧すると、かわりに犬を蹴ったり、兄弟ゲンカをするようになります。

その子が35年後、昇進の機会を逃したとします。もちろん正常な怒りを経験しますが、そういう感情は抑圧するよう3歳のときに学んでいるので、怒りに気づきません。

無意識に上司のことを幾晩も恨みます。次第にセロトニンとノルエピネフリンが脳内アミンから枯渇していき、不眠、倦怠感、食欲低下、その他多くのうつの症状が出てきます。

それをかかりつけの医者に訴えると、医者はあなたがうつを患っており、怒りを抑圧していると告げます。まったくその通りなのに、あなたは「私が? 怒ってるって? 3歳以来怒ったことなんてないのに! 」と反発を感じます。

そして精神科医に紹介される段になると本当に怒って、しかしこの怒りを今度は「フラストレーション」と名づけるのです。あるいは、医者に低血糖だ、甲状腺機能障害だと言ってもらぅのに結構なお金を払っているのに、実はうつだなんて、とんでもない奴だと思うのです。

ひと月たち、さらに症状がひどくなります。もう3人の専門家のところに行ったのにこれといって悪いところが見つからない、医者はどれもこれもヤプ医者だと決めつけます。極めつけに、どこかのエクソシスト(祈祷師) を見つけて、自分が聞きたいことを言ってもらうのです。

すると数日はほっとしますが、症状は続きます。自殺を考えるほどにまでなってしまっても、それがなぜかはわかりません。そして、自分の感情に直面するのを避ける大半の人の例にもれず、大半の人が伴侶のせいにしたり、「離婚」という今日のアメリカであふれている方法で「解決」したりします。

最後の手段として、プライドを飲みこんで精神科へ行きます。そして抗うつ剤を出され、毎週の精神療法に通います。そこで自分の怒りにふれ、それを口に出し、解消していきます。

3~6か月後には、抗うつ剤をやめ、薬なしでも気分がよくなります。こうして自分の怒りに気づき、どう処理すればよいかを学んでいくのです。

これは3歳のときにすでに知っていたことなのに、抑圧するよう親に教えられたからなのです。あなたはもしかすると、すべての怒りは罪であると教える教会に通って育ったかもしれません。

実に多くの人がそう教わり、信者の多くがそう信じています。神が「怒ることがあっても、罪を犯してはならない」 と言っているにもかかわらずです。聖書はまた、怒りのまま日が暮れるようではいけない、と教えてもいます。就寝時間を越えて恨みを持ち越してはいけないのです。もしすべてのクリスチャンが聖書の教えを守り、怒りつつも、就寝までに適切な方法で恨みを取り除いていたなら、遺伝的素因がないかぎり、あるいは自分でも気づいていない大量の抑圧された怒りがないかぎりは、うつにおちいる人は1人もいなくなるはずです。

もちろん、怒りはあやまちであることもあるし、おうおうにして未熟さの結果でもあります。おそらく怒るべきか否かよりももっと大切なことは(もしすでに怒っている場合)、その怒りをどう処理するかです。

行動パターンの大半を学習する人生最初の6年間で、私たちの多くが感情を誤って処理するよう学んでしまいます。しかし神は、私たちのコンピューターである脳の誤ったプログラミングを変える意志と、それを行なうに必要な力を私たちに与えています。

うつの根の大半が、自分自身に向けられた怒り、あるいは罪悪感、または他人に向けられた行き場のない怒りや恨みです。こうした恨みは普通、無意識( つまり気づいていない) のものです。

なぜなら、それを自分で認めることは恥であり、怖いと思っているからです。そして恨みをときに数か月、数年も持ち越すことによる責任から逃れるために、私たちはうつの症状の原因を求めます。数年ごとに社会ではうつに関する新しい説明が話題を呼び、それは大半の人々に受け入れられていきます。

過去によく使われた説明は、ホルモン障害、低血糖、アレルギー、内耳障害、そしてごく最近では伴侶選びのミス(その場合、離婚がうつの治療となる) などがあります。これらの正否は別として、うつの根が深いことは疑いもありません。

遺伝子に原因が潜んでいる?

病気に関して(うつも)何事も「ダメな遺伝子」のせいにする人たちにはうんざりしています。

今日、実際に多くの人々は、アルコール依存症や同性愛などをわら「遺伝子のせい」にしています。いわゆる科学者たちは、データをねじ曲げてでも藁をつかもうとしているかのような感があります。

しかし、遺伝子は、私たちの知的、感情的可能性に大きな影響を与えていますが、大人の知恵と幸福は遺伝子によって運命づけられるものではありません。

うつの多くは、自分自身の取り返しのつかない行為、無責任な怒りと罪悪感の出し方の結末です。それは、自分で意図的にそうする人もいる反面、たいていの場合、知らずにそうしている人が多いのです。

責任を持って自分の感情や問題に向き合い、幸福を選ぶ行動に移してほしいと願うからです。しかし、多くの人は自分の責任、とくにつらい感情や問題に直面するのをとても嫌います。

自分のつらさを自分自身の問題として取り組むよりは、ダメな親、相棒、社会の不遇、あるいは低血糖いわゆる「悪い遺伝子」のせいにしたほうがはるかに楽なのです。

たとえば、人より容易に酔っ払う傾向の遺伝子を持っているとしても、その人に酒を飲ませて酔っ払わせるのはまさか遺伝子ではありません。

また、アンドロゲン(男性ホルモンの一種) が人より少ないことがあったとしても、だからといって遺伝子がその人を同性愛に向けるのではないのです。遺伝子レベルで同性愛になるべくプログラムされている人はだれ一人いません。

遺伝子は、脳内のセロトニンの枯渇によって、ストレス下でうつになる傾向を示唆しますが(ある人は脳内ドーパミン活性が変更していることによって同様のストレス下でも精神病が発症しやすくなる)、遺伝子が私たち自身や人に対して恨みを抱くように強制するわけではありません。

神は、計画の一部として、私たちにある強さ、弱さを備えられたのです。旧約聖書ので、ダビデは「あなたがわが内臓を造り、わが母の胎内で私を組み立てられました。私はあなたをほめたたえます。あなたは恐るべき、くすしき方だからです」と祈っています。

神は「彼らをわが栄光のために創造し、これを造り、これを仕立てた」と言っています。なぜ神は私たちを完全に造らなかったのか、それはわかりませんが、私たちが正しい決断ができるような知恵、愛、正義の神を私たちは信じています。

神がもっと人情を持たないからといって、神に怒りを向けるのは横柄で、尊大なことなのです。私たちは職業柄、自分が神より賢く、親切であると信じている多くの人たちに出会います。神があやまちを犯すと思っているのです。

人間は現在の痛みしか見ていませんが、神は永遠の喜びを見ているのです。人間はうつのつらさを強調しますが、神は責任を持って人間がうつに向き合い、成熟し、成長するのをお喜びになるのです。

ここで、もっと学術的にうつの遺伝子に関するデータを知りたい方のために、以下をまとめてみました。

  1. これまでの科学的研究によると、女性は明らかに男性よりうつになりやすい。文化的要因もまた考慮しなくてはならないが、この性差素因は遺伝子レベルにあるらしい。
  2. 研究によれぼ、うつの人の血縁関係者はうつになる確率が高い。親、兄弟、子どものリスクが一般の人以上であることは、すべての感情障害について言える。
  3. うつの遺伝子素因理論を多くの科学者が受け入れるような影響を与えた、双子の研究について。38組の双子を対象に行なわれた研究では、一致率(片方がうつならもう一方もうつになる率) は、一卵性双生児では57% 、しかし二卵性双生児では29% のみであることがわかった。また別の研究によれば、別々に育てられた一卵性双生児で67% 、いっしょに育てられた場合、76% の一致率を示している。
  4. 遺伝のモード(優性遺伝か劣性遺伝か、常染色体か性染色体か、単一遺伝子か複数遺伝子かなど) は現在深く研究されている。ある研究は、Ⅹ染色体の遺伝子のひとつが、うつ(双極型) の素因の可能性があることを示唆している。
  5. 双極感情障害は比較的まれな障害で、大半のうつとは対照的に、ほとんどが遺伝性である。操うつの人は、普通の気分から重いうつの範囲まで気分の上下が見られる。こうした気分の上下の要因は、ときに環境的ストレスとは無関係のように見える。よって操うつにおいては遺伝の要素が大きく考慮される。操状態はリチウムでうまく治療することが可能。うつ状態は抗うつ剤の処方によって治療する。タグレトールもまた遺伝的気分の上下を抑えるのによく効く。これらの新しい処方薬は、うつの気分の上下とともに操状態の上下にも効き、脳の活動をより正常化させる。なお、操うつ患者の親の一致率は36~45% 、兄弟では20~25% 。だが躁うつ患者の一卵性双生児の一致率は、研究によって66~96%と幅が見られる。

深い悲しみに遭遇すると「うつ」になるのか?

人はだれでも、愛する人の死、大好きなペットの死、事業の失敗、婚約者からの婚約破棄、受験の不合格、車の事故で腕や脚を失う、不治の病にかかっていることを知る等々、大きな喪失や悲嘆を味わいます。いや重大な喪失を経験すると、それが癒されるまでに次に説明するようなグリーフ(深い悲しみ)の5段階を全部通ります。グリーフ反応はうつとは違いますが、グリーフの第2、または第3投階にあまり長くつまずいていると、うつになる場合もあります。

第一段階「現実を否認」
自分の身におこつていることを信じないことで、これは通常長くは続きません。

症例

5歳の女の子、ジェーンは、お父さんが大好きでした。ある夜、ジェーンと添い曝している間にお父さんは心臓発作をおこして、救急車で病院に運ばれました。ジェーンには「かならず戻るから」と言って出かけたお父さんでしたが、病院で死亡しました。そのことを聞かされたジェーンは数年間にもわたってその事実を否認し、父親の死後もクローゼットやベッドの下を探そうとしました。10代になってもジェーンは、ときに父親が部屋に入ってきて、やさしい言葉をかける妄想を抱いていました。彼女は否認の段階にひたりきっていたのです。そこから抜け出すためには、二年間(十四歳から十六歳)毎週の精神療法が必要でした。

第二段階「怒りがでてくる」
大きな喪失を経験するときに私たちにおこる反応の第二段階は、「自分以外のだれかに対する怒り」です。
たとえば、死別した人のせいではまったくないにしても、死んだその人に怒りを感じたりします。これは、親の死や離婚を経験した子どもにはかならずおこる、正常な人間の反応です。この段階では、こんなことを許した神に対する何らかの怒りを含みます。しかし、神への怒りは抑えてしまうため、普通気がつかないことが多いのです。
第三段階「怒りの対象が自分に向かってくる」

重大な喪失が受け入れられ、神、その他の人たちへの怒りが出たあとは、かなりの罪悪感を感じるようになります。この段階では、何でも自分のせいだと考える傾向があります。「あと知恵」はつねに「見通し」より良く、「ああすればこの喪失はおこらなかっただろうに」という思いを禁じ得ないのです。

怒り、恨みをすべて内側に向けます。神に自分のあやまちを告白して、完壁な見通しを持ち得なかった自分を許すのではなく、自分自身を恨みに思い、自己批判的な考えで、自分を糾弾し始めるのです。たいていの人はこの投階をすばやく通過( 1~2週間のうちに) して、第四段階に進みます。この怒りが内側に向かった状態に長くとどまると、グリーフはうつに姿を変え、セラピーでも数ヶ月かかるようになってしまいます。セラピーなしでは、うつのまま一生を送る人もいます。

症例

婦人は牧師の妻で、うつ、不安、自殺願望を訴えてセラピーにやってきました。血圧は上がるばかりで、危険な状態にまで達しています。彼女の父親は、彼女が精神科の援助を受けると決める一年前に亡くなっています。セラピーで、彼女は1年前の父の死のグリーフの第三段階でずっとつまずいていることがわかりました。父親に「さよなら」も「アイラブユー」も言わなかったことが罪悪感になっていたのです。

またあることで父親に腹を立てていたこともあり、死人に恨みを持っている自分をうしろめたく思っていたのです。私たちは人が死ぬと、その人の悪いことは忘れ、死人に怒りを持つという考えそのものがおぞましいとする傾向があります。彼女の内向した怒りは彼女をうつにしていたばかりか、心臓発作で死ぬ危険があるほどまでに血圧を上げていました。

彼女の精神科医は、ゲシュタルトセラピーよって開発された精神療法の方法。分析や解釈などをせず、「今ここで」の出会いを重視する。

よく用いられる技法に、2つの椅子を用いたチェア・テクニックがある。ゲシュタルトとはドイツ語で「全体性を持った形態」の意) のテクニックを使って彼女の亡くなった父親になり、彼女の中にとどまっているいろいろな感情や考えを全部吐き出すように援助しました。彼女は最初、自分自身の感情が恐いために拒否していましたが、精神科医はとうとう説得に成功しました。

はじめは大変でしたが、いったん始まると彼女の喪失感や愛情、怒り、罪悪感がたくさんの涙とともにどっと出てきました。20分後、彼女は1年間ためこんでいた全部の感情を出し切りました。1週間のうちに彼女のうつは晴れて、血圧も正常に戻り、現在もその状態を維持しています。

第四段階「真の悲しみが訪れる」
これはもっとも大切な段階で、かつ必要不可欠です。重大な喪失、逆転を体験する場合はつねに、男女ともにしっかり泣くことが大切です。私たちの文化は男性に、そしてある女性に、ストイックに感情を抑え、泣かないことで(葬式ですらも) いかに強いかを見せることを強いています。
父親の死に際して泣くのは、弱いからでしょうか? イエスキリストが、友人ラザルスの死を嘆いたのは、弱かったからでしょうか? もちろんそうではありません。重大な喪失に際して泣くのは、人間的、かつ神の目にかなっています。
深い悲しみを表出しないで蓄積してしまうと、うつになって、長年それを引きずることになります。思いきり泣いてしまえばよいのです! そうすれば、早く第五段階に移ることができます。
第五段階「癒されて意欲と喜びを取り戻す」
第五段階は、喪失という現実の否認、外側と内側に向けられた怒り、真のグリーフがなされたあとにもたらされる段階です。ここでまた、人生に立ち向かう意欲と喜びを再び取り戻します。
第一から第四までの段階が終われば、自動的におこる段階なのです。人間はだれでも、大きな喪失を経験したあと、五段階全部を通ります。友人との死別などの重大な喪失では、成熟した大人でも仝プロセスを超えるのに3~6週間かかります。こうした仝五段階のプロセスを知っているからといって、グリーフがおきないのではありません。
しかし、知っていればこの五段階をより早く、恐れも少なく過ごせるでしょう。だれでも人間はときに喪失による一時的な悲嘆の反応を経験するでしょう。もちろん人口の1% に見られる遺伝的な要素の強いうつの場合は除きますが。他の99% の人にとっては、結局のところ幸福は自分が選ぶものなのです!

うつから自殺に至るケース 自殺前に見られる危険信号も

ぅつは自殺の最大の原因です。自殺はアメリカ人の死因の10位を占め、年間2万4千人の自殺者がいます。20分に一人が自殺を図り、10回に1回は死に至ります。

世界中で、自殺は増加の一途をたどっており、年間50万件が報告されています。自殺は人間だけにみられるものです。動物は他の動物を殺しますが、自分を殺すことはしません。人間だけが自殺をするのです。しかし「自殺をする」という人の言葉のすべてが本気だとはかぎりません。

症例1

ある女性が、うつを訴え、自殺したいと言ったために入院措置がとられまそちした。ところがその翌日、彼女はもううつは感じないと言ったのです。彼女の言動は、心理的評価の際に特徴的でした。

通常のうつの症状とは少し異なり、彼女は演技的で、少し誘惑的な身だしなみをし、これといった罪悪感もないようです。感情的で、興奮しやすく、ナイーブで、感受性も強い、といった彼女の行動パターンは、ヒステリー性人格障害の典型的な特徴です。

女性はうつではなく、ヒステリー性人格障害でした。このようなケースのご多分にもれず、彼女はうつを訴えたのです。そして、彼女の自殺したいという言葉はただの脅しだけでした。こうしたヒステリー性障害の人は、自殺をすると言っては人を操作しようとします。さらに話を聞いてみると、彼女は夫を操作しようとしていたようです。

自殺をほのめかす人の大半が操作的な性質のものであっても、まわりの人は真剣に受けとめなくてはなりません。自殺をすると脅かしている人は決して自殺しないというのではなく、事実、その1割は最終的に自殺を図るのです。

自殺をする人の大半が、だれかにそのことをほのめかしています。自殺は、離婚した人、連れ合いに先立たれた人、そして社会的、経済的に高いクラスの人、また独身の大人の男性に多く見られます。女性は男性と比べて5倍ほど自殺を図る数が多いのですが、しかし実際に死亡してしまうのは男性のほうが2倍も多いのです。

この理由は、男性のほうがより確実な自殺の方法を選ぶのと、人を操作するために自殺を用いることが女性ほど多くないからです。

何かの宗教を信仰している人でも自殺をします。大学生では、自殺は事故死に次いで、第2の死因となつています。3分に1回、だれかが自殺を図り、20分に1回、だれかが亡くなり3ます。自殺をする人には共通する特徴、経験が見られます。次にあげる10の症状が危険信号です。

自殺前に見られる危険信号(大事なサイン)

  1. 強烈な絶望感を感じている人。
  2. うつに見られるような、強烈な感情の痛みを持つ人。
  3. 45歳を過ぎた単身の白人男性。
  4. 自殺を企でたことがある人、あるいは人に自殺をほのめかしたことがある人(自殺をする人の10人のうち8人ははっきりした警告を出している)。
  5. 深刻な健康問題を抱えている人。
  6. 何らかの重要な喪失(配偶者との死別、失業などを経験していること。
  7. 具体的に自殺の計画を立てている人。プロセスは、自殺の考えがよぎり、自殺を真剣に考えるようになり、実際に実行する。
  8. 慢性的な自己破壊行為(アルコールや薬物の乱用など) をする人。
  9. 強烈な達成のニーズがある人。
  10. 過去半年の間にショックな出来事に遭遇した人。

自殺は非常に破壊的な行為です。その理由は、まず、

  1. 自殺を図る人の多くが、ものごとを現実的に見ることができずにいること。もし状況の真実が見えれば、あるいは問題は一時的なものであり、解決可能なものであることが理解できれば、自殺を選ぶことはないでしょう。セラピーを2ヶ月続けると、自殺思考が強かった患者は「自殺を考えていたなんて」と驚きます。
  2. 自殺のあとに残された子どもたち、親戚たち、友人たちへの影響が極めて大きいこと。子どもは親の自殺を自分のせいにします。また子どももまた親の例にならって、人生をあきらめ、自分が大人になって困難な状況に陥ったときに自殺を図ろうとしたりします。
  3. 自殺は他殺が罪であるように罪であるということなんじ「汝、殺すなかれ」という言葉は自他ともの命にあてはまります。自殺はけっして神の意志ではないのです!

うつになるとあらわれる症状

うつは存在のすべて身体、感情、スピリチェアリティに影響をおよぼす病気です。うつの感情的な痛みは、骨折による身体的な痛みよりもはるかに深刻です。

骨折などとは違って、うつの痛みは徐々にゆっくりとやってきて、ずっと長くとどまることが多いのです。現在多くの男女が、身体的な病気よりもうつの症状を多く患っています。そのうつの症状は、臨床的に見て大きく5つに分かれます。それは、悲しい感情、つらい思考、身体的諸症状、不安、そして妄想的思考です。

うつ病になりやすい性格というのもあります。

1 .悲しい感情につきまとわれる

うつの第一のは、悲しい感情です。うつを患っている人はふさぎこんだ顔つきで、落ちこんで見えます。また、泣きたい気分になりがちで、実際よく泣きます。

視線は下を向いて悲しそうです。口元は下がり、額はしわを寄せています。疲れて、がっかりしたように見え、顔つきは緊迫した感じがあります。

さらに、うつが進行すると、しだいに身だしなみに興味を示さなくなります。男性はひげを剃らなくそなり、女性は化粧をしなくなります。深刻なうつの人はよく他人からは、だらしなく見えます。うつを笑顔でかくそうとしてもわかってしまいます。事実、うつの人の多くが「ニコニコうつ」として知られる状況(内面の悲しい感情をかくすために不適当に笑顔を見せる) を持っています。

2.つらい思考に襲われる

うつ第二の症状は、痛みをともなうつらい思考です。骨折すると身体的な痛みを感じるのと同じく、うつの人は感情的な痛みを経験します。ひどい身体的な痛みと感情的な痛みの両方を経験した人の多くが、心の痛みのほうが体の痛みよりもはるかに苦しいと訴えています。

心の痛みより、骨折の痛みのほうがましだというのです!うつの人は何度もくりかえして内省的に過去のあやまちに関して自分を責めます。自分に非がない場合でも、うしろめたさを感じ、自分のせいだと感じてしまうのです。

過去のうまくいかなかったことも、それが事実であれ、想像のことであれ、あらゆる事柄を過剰に心配します。自己否定感にとらわれているのです。問題がささいなことでしかなくても、あたかも大間題であるかのように評価し、それが全部自分の責任だとして自分を責めます(ある人はまった逆に、自己憐憫にふけるあまり、すべての問題を人のせいにします)。

また、自分が大切だとは考えず、知性、スピリチェアリティなどの点で、自分は劣っていると感じています。自分は無力で、無価値、希望がないと考えています(事実、うつの人の75% は自分はけっして治らないと感じています)。

多くの場合、まわりの人たちからはサポートがなく、空虚で孤独だと感じています。しかし、人からの愛情、確認の言葉がほしいのに、深く根づいた敵意がそれを得ることを挫折させます。

最近、あるいはずっと過去のことで、自分の思うようにいかなかったことに対する後悔でいっぱいです。不幸で悲観的、怒りつぼく、疑い深くなっています。

あらゆる体験が心の痛みと結びついています。人に受け入れられないことを予期し、(多くの場合、事実とはかなりかけ離れて) 拒否され、嫌われていると感じています。

自分自身と自分の思考にとらわれすぎているために、注意力、集中力、記憶力に問題が生じます。不安にとらわれ、困惑し、未来は暗く、エネルギーもあまりなく、何をやっても無駄だと思ってしまいます。これまで述べたように、こうしたつらい痛みをともなう思考は罪悪感が中心になっています。

これは本当の罪悪感の場合もありますが、うつ患者の場合は擬似罪悪感が大きな問考えています。罪悪感を感じなくてもいいのに、ささいなミスや間違いにも罪悪感を感じます。

普通は、間違いを犯したあと、少しの間、罪悪感を感じるだけなのです。私たちは罪悪感がどんなにつらいか知っています。ですから、このような罪悪感にずっとさいなまれ続けたらどうなるかを想像してみれば、うつ本人がどう感じているかが少しはわかるでしょう。

本人は逃れられない罪悪感を抱えているのです。うつの人のつらさは、個人のコントロールのおよばない行動や出来事の責任を取るところからきています。これは、人に一目置かれたいというニーズに根を発するものかもしれません。

うつの人は圧倒的な力量不足を感じており、自分は価値のない、箸にも棒にもかからないダメな人間だと思いこんでいます。

でもそれは本人も認めたくないのです。多くのことに責任を持ち、多くのことが自分にかかっているとなれば、自分をゼロと感じなくてすみます。そうやって圧倒的な責任感が、本人が無価値であると感じないですむよう、無意識レベルで本人を守っているのです。

責任がパワー感をもたらしてくれます。内部の本当の姿である力量不足感、無力感から、反応として全能感をもたらしてくれるのです。

うつの人はモチベーションに問題があることが特徴です。つまり動機が欠如しているのです。以前かかわっていたような行動にも興味を持てなくなります。

人を避けるようになり、1人にしてほしいと願うようになります。ユーモアのセンスも失われ、なかなか決心がつかなく2 2なります。そしてしだいに自殺のことばかりが頭を占めるようになるのです。
3.うつにともなう身体的症状
うつの三番目の特徴は、体の症状で、医師らはこれを「うつの生理学的随伴症状」ととらえています。

うつの状態にある間、神経系統で脳内アミン、とくにセロトニンにかかわる生化学的変化がおきます。人間の脳は、車がガソリンで走るのと同じく、セロトニンで機能しますが、こうした脳内物質の変化が、さまざまな身体的結果をもたらすのです。
セロトニン不足による不眠はセロトアルファで補う

まず、体の動きが減り、睡眠が影響を受けます。入眠障害や早朝覚醒があり、するとまた寝つけなくなることがよく見られます。最初では、睡眠が短くなるより、眠りすぎることが多いでしょう。食欲も変化し、過食かまったく食べなくなり、それによる体重の減少、または増加が見られます。下痢、普通は便秘がより多く見られます。

女性では、生理が何ヶ月も止まったり、不順になったりします。セックスへの興味が薄れるケースもよく見られます。本人は緊張からくる頭痛、頭部の張りつめた感じを訴えます。

体の動きが緩慢になるにつれて、姿勢が前かがみになり、茫然自失の状態になります。胃腸障害も見られ、代謝率も下がります。口が渇いたり、心拍数が増えて、動悸が激しくなったりします。

こうした身体的変化に本人が驚いて、心気症(体の病気に対する過剰な懸念) になり、多くガンや低血糖、栄養障害だといこんだりします。実際、人は面子を守るためには、何らかかっとうの病気を持っているほうがましなのです。

心理的葛藤があると認めることは弱さであり、それは避けたいのです。低血糖だと信じて病院を受診する百数人の患者のうち、実際に低血糖の疑いがあると確認されるのはほんの一人にすぎません。

4.不安と興奮が高まる

四つ目のおもな症状は、不安感と興奮です。不安とうつは普通いっしょにおこります。そして、不安のため、普段よりイライラしやすくなります。またうつがひどくなると、興奮も高まります。うつの人は緊張して、じつと座っていることができません。多くがパニック状態「極端な不安感の発作」になり、心拍数が上がり、心臓発作がおきているのかと思われる人もいます。

5.妄想的思考が浮かぶ

深刻なうつにおこりうる五つ目の症状は、妄想的思考です。妄想を抱いている人は、明らかに現実との接点を欠いています。妄想には、自分は迫害されているとか、自分は神から特別の才能や洞察力を与えられたと考えるなど、誇大妄想的思いこみがあります。

実際にはない声こえる幻聴や、人には見えないものを見る幻視もあります。こうした症状のすぐあとに治療を受ければ、普通は思考も正常に戻り、正常に暮らせます。こうした場合、1~2ヶ月の入院が必要でしょう。

入院中は、毎日の精神療法、向精神薬、抗うつ剤、勇気づけがなされます。しかしなかには、残念ながら精神病になる人もいます。通常のうつとは、その程度や性質において、とても異なります。

まとめとして、うつは複雑でつらい障害であり、心、体、スピリチェアリティすべてに影響します。現実の痛みを回避するために、完全に現実との接点を失うところまで進んだりと、さまざまな程度の症状が見られます。

大半のうつは精神異常の段階まではいきませんが、悲しみ、つらい思考、身体的症状、不安(または興奮)をともないます。もしこれらの症状のために本人が生理的、社会的に何か悪影響を受けるようなら、うつと言えます。

きちんとした専門の精神療法に積極的に取り組めば、治ります。もし、悲しみ、つらい感情、精神運動抑制(体の動きが緩慢になり、しかもそわそわする) とともに相当の不安がともなう場合は、興奮性のうつですが、これもまた完全に治ります。しかし、これ.に加えて妄想や幻視、幻聴があれば、精神病的うつと言えます。

精神病性のうつも、早期に発見されれば、かなり治療は難しいですが、普通は治ります。なかには悪化して、一生精神障害を患う場合もあります。ただし、近年の医学の進歩により、統合失調症(精神分裂病)患者も、処方薬を服用することで、健康な生き方に戻ることができるようになってきました。

あなたはうつにかかっているか

次の質問の答えの大半が「はい」の場合は、うつの確率が非常に高いので、症状が悪化しないうちに専門家のアドバイスを受けてください。

  • 一年前と比べて、よく泣きたくなる気分になる。
  • 気分が滅入って悲しい。
  • 希望がなく、ほとんどいつも無力感にとらわれている。
  • やる気、動機(モチベーション)がほとんどなくなってしまった。
  • かつては楽しめたものへの興味が失せてしまった。
  • 生きることは価値がないという考えがよく浮かぶ。
  • 睡眠パターンが最近変わって、極端に多く、あるいは少なくなった。
  • 食欲がなくなっている。
  • 頻繁にイライラする。
  • よくそわそわした感じになる。
  • エネルギーがなかなか湧いてこない。
  • 朝は1日のうちでも一番気分が滅入る。
  • よく過去のことを思い巡らしている。
  • 鏡に映った自分は悲しそうだ。
  • 自己否定感を持ってしまう。
  • 過去のことを気にしすぎる。
  • 一年前より多くの身体症状(頭痛、胃の痛み、便秘、動悸など)がある。
  • かつてのように仕事がうまくできていないと、まわりの人は気づいていると思う。

もう少し客観的にうつの自己診断を行いたい方はこちら。