うつ病 治療 のポイント

「何もしない」ことが最良の治療

治療の基本は、休養と服薬です。完全に治るまで時間はある程度必要ですが、焦らずに気長に治療を続けます。うつ病は必ず治ります。

一進一退を繰り返しながら快方に向かう
うつ病だからと、悲観することはありません。この病気は、治療をすれば必ず治ります。
ただし、治療をはじめたからといって1日や2日で治るわけではありません。一気に快方に向かうケースはそれほど多くなくてたいていは一気に快方に向かうケースはそれほど多くなくて、いったんよくなくなったと思っても翌日には悪化したりして一進一退を繰り返します。そうやって次第に治癒に向かっていきます。
焦らずに気長に
少しくらいよくなったからといって勝手に治療をやめてしまわずに医師とよく話し合いながら治療を続けます。
休養と服薬が治療の二本柱
治療の基本は、まず休養をとることです。有給休暇をとったり主婦なら家事をほかの人に頼んで、ゆっくり体を休めます。
こういうと簡単なようですが、うつ病になりやすいタイプの人は、「休むと悪い」「自分がやらなくては」となかなか休養したがらないタイプが多いのです。
「今は休むべき時」と考え、心身の安静をはかりましょう。
薬とは長いつきあいになると覚悟を決める
基本のもうひとつは、薬による治療です。脳のトラブルであるうつ病の治療には薬がとてもよく効きます。長期間になりますが、医師の指示どおりきちんと服用します。

別の病気が原因のうつ

更年期障害のひとつとしてのうつ

心身ともに変化する更年期は、 うつ病 になりやすい時期です。更年期障害についてはこちら
しかし、更年期障害のひとつとしての うつ は、本当のうつ病と症状が似ているため、軽い場合には見逃されてしまうこともあります。

ホルモンの大きな変動が起こる時期
うつ病は女性に多く起こりますが、もっとも発症しやすい時期に40歳代後半から50歳代の更年期があります。
更年期には、体にさまざまな症状があらわれます。そして更年期の精神症状として、うつがあらわれることも少なくありません。この症状は、うつ病の身体症状ととてもよく似ています。
更年期には心の問題も生じやすい
更年期のホルモンバランスの崩れという生理的な変化もうつ病の要因のひとつです。
しかし、更年期には心理的な変化を伴いやすいことも発症に大きく関わっています。
悩みや不安が多い時期
この年代には、閉経を迎え、女性としての衰えや老いを感じたり健康への不安などが頭を占めるようになります。子供は親離れをし、夫は多忙で留守が多く、夫婦関係も冷え込みます。
こうした心理的な要因がストレスとなって生理的問題のうえに重なっていくために、うつ病を発症しやすいのです。
更年期の女性は、うつ症状を自覚することが多いのですが、軽い場合は、たんに更年期障害だろうと見過ごすこともあるので、注意が必要です。

痴呆にうつ病が隠れているケースも

高齢になると、痴呆で痴呆症状とうつの症状が混在することがあります。痴呆だと思ったらうつ病になったり、、痴呆の患者さんにうつ病があらわれることもあります。

高齢者のうつ病にぼけの症状がでることも
高齢になると、物忘れが激しくなり、最近のことが覚えられない、判断力が低下して日常の仕事ができなくなる、動作や日常の仕事ができなくなる、動作や行動が緩慢になるなどの痴呆症状があらわれてくることがあります。
このような症状が出てきたのでお年寄りに特有のぼけだろうと思っていたらじつはうつ病だったというケースもよくあります。高齢者のうつ病には、一時期的にぼけ症ぞゆがあらわれることがあるからです。うつ病の治療をすればぼけ症状も治るため、仮性痴呆といわれています。
痴呆の高齢者がうつ病になることも
一方で、痴呆のお年寄りが、うつ病になることもあります。アルツハイマー棒の3割にうつ病があらわれます。この場合、うつ病の症状はうつ病の治療で治すことが出来ます。
どちらにしても、うつ病の治療が是非必要なので、痴呆状態n隠れた病をきちんと発見しておくことが大切になります。

うつ病と痴呆の比較

うつ病 痴呆
発病前性格 几帳面・まじめ 特定のものはない
誘因 考えられることがある はっきりわからない
進み方 急に進む ゆっくり進む
睡眠傾向 不眠、早朝に目がさめる うとうとすることが多い
日内変動 朝に具合が悪い 夜に具合が悪い
社交性 他人を避けようとする つきあおうとすることが多い

うつ病の原因

環境、性別、ストレスなどが複合的に関係する

うつ病は、たったひとつの原因で起こる病気ではありません。環境や性別、ストレスなどの多様な要素がかさなったときに耐えきれなくなってしまうのです。

遺伝<生活環境
うつ病になる原因は遺伝だと勘違いしている人が多いのですが、もっと重要な原因は別にあります。
たしかに、うつ病になりやすい几帳面な性格をつくってきた素地は親から引き継がれた素質ともいえますし、うつ病発症時の脳の変化が起きやすいのは遺伝的なものと考えることができます。
かといって遺伝的要素のある人が、みんなうつ病になるわけでありませんし、うつ病は「遺伝的」というわけではありません。
ホルモンの関係で女性に発症しやすい
血圧やエネルギーの代謝などを行い、体内の環境を調整しているのが、各種のホルモンです。
ホルモンは、神経系と深くかかわりをもっているためバランスが崩れるとうつ病が発症しやすくなります。
ストレスの影響が大きい
うつ病の発症にもっとも大きな影響を与えるのはストレスです。
ストレスは誰しも感じるものですが、うまく対処できれば何も問題はありません。しかし、対処の仕方がうまくいかないとどんどんストレスが蓄積されてしまいます。

うつ病にかかりやすい人は環境の変化に適応しにくい

うつ病になりやすいhとは、性格的に柔軟性に欠け、環境変化に弱い特徴があります。それも、ストレスを抱えやすい要因になっています。
環境の変化とは、たとえば、

    • 引っ越し
    • リストラ
    • 転勤
    • 昇進など

があります。

うつになったきっかけがわからないことも!

発症の引き金になるのは、大きなストレスです。しかし、うれしいことがストレスの原因になることあるので、なにがきっかけになって発症したのか、発見できないことがあります。

栄転や昇進も本人にとってはプレッシャーに
うつ病は、強いストレス、あるはそれほど強くなくても長く続いたストレスをきっかけとして発症します。
リストラや家族との死別など、悪いことやイヤなことばかりが原因になるとは限りません。周囲の人にとっては喜ばしいことでも本人にはストレスと感じていることもあるのです。
仕事などで、これまで一生懸命に身を粉にしてやってきたことも一段落すると案外、ストレスがかかります。
よいことがストレスになるとは思いいたらない
よくないことなら本人も周囲の人も発症のきっかけがわかります。
しかし、よいことやほっとするようなできごとはストレスになるとは思わないため、引き金になった要因が自分では把握できないことがあります。
むしろ、よいか悪いかということより、今までとなにかが変わることが問題です。うつ病になりやすい性格の人は「環境の変化」が弱点なのです。

よいこともわるいことも環境の変化

  • よいこと栄転や昇進は嬉しいことですが、責任が重くなり、もともと責任感が強いだけに、より緊張を強いられる毎日になります。
  • 悪いことリストラ、上司や部下との軋轢など、仕事上の問題、身内の病気や死亡、親しい人との別れなどが、発症の引き金になります。

うつになるきっかけチェックリスト

  • 仕事上つらいことがある
  • 毎日働き過ぎだと思う
  • 同僚とうまくいっていない
  • 上司が理解してくれない
  • 職業の選択を間違えた
  • 経済的な問題を抱えている
  • 毎日の生活に張り合いがない
  • プライドを傷つけられた
  • 期待していたことが外れた
  • 完璧主義者だと思う
  • 家族に問題を抱えている人がいる
  • 夫婦間がうまくいっていない
  • 離婚したばかり
  • 仕事上で表彰された
  • 期待されていると感じる
  • 責任が重い仕事についた
  • 子供が結婚した
  • 引っ越しをした

これらはほんの一例ですが、最近変わったことがないかどうか自分なりに考えてみましょう。

気持ちの問題ではなく脳のトラブル

うつ病は、たんに心のあり方の問題ではありません。脳の中で感情を調整する物質に変化が起きることが直接の原因です。

セロトニンが低下し情報伝達に支障が起きる
うつ病のきっかけとなるのはストレスですが、発症そのものの原因は脳の中の変化です。
脳を形成するのは、ニューロンと呼ばれる無数の神経細胞です。
この神経細胞と神経細胞の間(シナプス)で情報を伝えているものに「神経伝達物質」と呼ばれるものがあります。感情調整にもこの神経伝達物質が関わっており、セロトニンという神経伝達物質が十分に働いてないとうつ状態になります。
うつ病は、心のあり方という面があると同時に脳の中でのこうした変化による病気です。「脳の風邪」と言われるのもそのためです。

うつのときの情報伝達

  1. セロトニンが減少
  2. 受容体が腫れる
  3. 機能が働かない
  4. ノルアドレナリンの出方にも影響
  5. 感情調節ができない

うつは、ほかの病気や薬によっても発病の原因になることがある

病気になると、心身ともにストレスがかかるため、うつ病の原因となってしまうことがあります。ほかの病気で服用している薬の副作用で起こるうつ病もあります。

身体的な病気がうつ病に関係することもある
身体的な病気が、うつ病の誘因になることもあります。
たとえば、ガンになれば、死を考えたり、孤独感などで精神的な負担が大きくなり、そのことがうつ病に結びついてしまいます。
ガンという重い病態自体が身体的ストレスになってうつ病が併発することもあります。身体的なストレスになるのは、インフルエンザなどの感染症や全身のさまざまな病気に共通しています。
合併症としてうつ病になることもある
直接的にうつ病と関連していると考えられる病気もあります。
たとえば、糖尿病はうつ病と併発しやすくうつ病でも血糖値の異常値があらわれやすくなります。また、全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病でもうつ病が併発しやすくなっています。
薬の副作用によるうつ病にも注意
身体的な病気の治療薬がうつ病の原因になることもあります。薬の作用が脳の神経伝達物質になんらかの影響を与えるためだと考えられています。
よくみられるのが、副腎皮質ホルモンやある種の降圧剤、精神病薬、パーキンソン病の治療薬などです。経口避妊薬もうつ病になりやすい薬です。
このようにうつ病を招く可能性のある薬はたくさんあります。薬を常用している人が、うつ病になった場合、まず薬の副作用かどうかを確認しなければいけません。

うつ病につながりやすい疾患

ガン、インフルエンザ、肝炎、パーキンソン病、消化性潰瘍、アルツハイマー病、消化性潰瘍、過敏性腸症候群、胆道ジスキネジー、脳卒中、糖尿病、全身性エリテマトーデス、慢性腎不全、悪性貧血、アジソン病、慢性腎盂腎炎、本態性高血圧、メニエール病

うつ病につながりやすい薬

副腎皮質ホルモン、レセルピン系降圧剤、インターフェロン

どの病気がどの結果なのか、解明は難しい

  1. 難治性の病気になってしまった結果なのか?
  2. 病気そのものにうつ病がからんでいるのか?
  3. うつ病なのに体の病気のようにみえるのか
コラム 消化器疾患との関係性

胃はストレスの影響を受けやすく、食欲不振や胃痛から潰瘍になってしまうこともあります。
腸も同様でストレスによって自律神経のコントロールができなくなり、動きが過敏になるために下痢や便秘を繰り返します。過敏性腸症候群です。
慢性下痢が続くなら過敏性腸症候群の可能性が大
なかなか治らない消化器疾患にはうつ病が隠れていることがあります。慢性胃炎に抗うつ薬が作用することもあります。