うつの克服

人生はどうしたら幸福になるのだろう?

ある父母には愛する子どもがいました。親は子どもにたくさんの愛情と暖かさを見せ、とても深く、強く接してきました。

子どもの将来の助けになると思ったことをすべて、子に教えました。必要なときには怒って、しつけました。巣立ちのときが来ると、その親は複雑な感情愛情、希望、自信(そして心配も) の入り混じった感情を禁じ得ません。

こうした感情を持って、私たちはこのページに集約したいと思っています。

このページをごらんになっている方を個人的には知らないにしても、愛情を感じており、みなさんに幸福を選択する生き方をしていただきたいと願っています。

そして、みなさんがそうできると、自信を持って断言できます。しかしながら、親が愛する子どもの巣立ちのときに心配の入り混じった気持ちで最後の注意をするのと同じように、心配も禁じ得ません。

ここでは、あなたが幸福への道を歩むために生かしてほしい、少しばかりのアドバイスをリストアップしてみました。

自分で自分に話しかける方法を変える

私たちはみんな毎日、「自分に話しかける」ことをします。肯定的に、あるいは否定的、批判的に話します。もし、頻繁に自分を批判していれば、自分に恨みを持ち、うつになるのは当然です。

自分を責めるのはやめましょう。肯定的なことがらに目を向けてください。過去の失敗に居座るのでなく、なしとげたことに日を向けてみましょう。

自分が自分を無意識に批判しているのと同じように、あなたは人のことも批判しているでしょうか? 自分はそうした厳しい見方が必要だと思っているかもしれませんが、そうではありません。そこから抜け出ることです!自分の手首に輪ゴムをはめておいて、自分を責めている自分を発見するたびに輪ゴムをはじいてください。

自分の感情を理解する。しかし行動に焦点をおく

セラピストはよく人の感情と行動に関して、極端になりがちです。あるセラピストは感情に重きをおく一方で、別のセラピストは行動、または考え方を重視します。私たちはこれらのすべてを直視しなくてはならないと考えます。

まず感情は大切であり、向き合わなくてはなりません。感情への洞察を持ち、感情と向き合ぅことは大切です。

幼児期の出来事が、現在私たちがどのように感じているかにいかに影響を与えているかを理解することは大切です。

感情や問題を自分の愛する人たちと分かち合う自由があることは大切です。よって感情は極めて大切なのです。まとめますと、私たちは感情を理解しなくてはなりません。感情について話し合う友人が必要であり、こうした感情に向き合う必要があります。

しかし、その時点で私たちは感情を超えて、行動に焦点を当てる必要があります。感情は理解されなければなりませんが、それに人生を支配させてはなりません。なぜなら感情は気ままで変わりやすいからです。

彼のように、満ちては引くのです。生き方を定着させるもっと安定した基盤は行動です。行動を健全な論理と固い確信に基づかせるべきです。

具体的行動プランに焦点をおく

うつを克服するには、「自分の行動を変えなくちゃ」と自分に言い聞かせるだけではダメです。その行動を変えるための、具体的な行動プランが必要です。

私たちがどう感じるかを決めるのは、日々の小さなことがらなのです。

たとえば、朝起きる時間、朝一番の伴侶への言葉、朝食を食べるか食べないか、自分を勇気づけるためのスローガンがあるかどうか、仕事で手一杯の状態かそうでないか、社交づきあいを十分に保っているかどうか、いい食事をしているかどうか、定期的に運動をしているかどうか、こうしたことがらが私たちの感情の動きを規定しているのです。

あまりに単純に思われるかもしれませんが、実に多くの人が毎日行なう、たとえば10のことがらから成る具体的な行動プランを無理にでもたてることで、うつを改善させています。1~2ヶ月の練ったスケジュールをこなしたあとは、明らかな改善がまちがいなく見られます。自殺を考えていた患者のケースを見てみましょう。

救急室でどうしたのか、何を悩んでいるのかと聞かれた彼は、その朝起きると気分が落ちこんでいて、落ちこんでいるから仕事に出なかったと答えました。すると仕事を休んだことに村してさらに気分が落ちこみ、テレビを見始めるとメロドラマをやっていて、そのドラマに納得しながら見ていると、ますます憂うつになってきたのです(もっと落ちこまなかったのが逆に不思議です! )。

自分でまずいと思うことをしていたかどうか(うつにつながった原因の可能性) と聞かれると、彼はうつをさらに深めることになったあることをしていたと言いました。その後、行動を変える助けが与えられると、彼は顔つきが明るくなりました。

私たちが毎日している、こうした小さなことがらが感じ方を決定するのです。では、非常に重いうつ状態のある主婦のケースを見てみましょう。毎日の日課を聞かれると、彼女は朝気分が落ちこんで起き上がりたくないので、いつも遅くまでベッドに入っていると言います。

するともちろん遅くまで寝ていることにうしろめたさを覚えます。夫の朝食を作らず、作らなくてはと思いながらもできないことをうしろめたく感じていました。彼女の日課を変える具体的なプランを作ってみることで、うつを克服することができるようになりました。

そのリストには次のようなことが含まれていました。

  1. 気分がどうであれ、7日のうち3日は朝早く起きる
  2. 社交づきあいを増やす
  3. しなくてはならない、そしてやればいい気分になれる家事をする

行動を変え、さまざまな感情を表現することで、彼女はうつを克服することができました。

ある状況に関してうつに陥っている人には、私たちはまずゆっくり落ち着いて座り、うつを克服するための他の方法をあれこれリストアップしてみるよう薦めます。このプランをこなす決意を固めてもらい、実行に移します。数週間たってもプランがうまくいかない場合は、新たなプラン作りを薦め、別の選択肢を探るように言います。

しかしうつをひきおこすことは避けなくてはなりません。多くの人が、うつをひきおこしている特定の問題に直面すると、他に選択肢はないかのように「やってみるべきことは他にない」と思ってしまいます。しかし、落ち着いて座り、あらゆる選択肢を(ばかげた選択肢ですらも) リストにしてみると、実にいろんなことがらが出てくるのに驚くことが多いのです。すべてリストにあがるまで選択肢の評価はしないことで、創造性のプロセスがさえぎられずに続きます。

ときにばかげた選択肢のひとつが実際はもっとも実用的で、役に立つことがわかったりすることもあります。

うつの場合、具体的なうつ克服のためのプランを立てるべきです。このプランを実行する決意をし、数週間、毎日このプランにとりくみます。そうすればたいていは改善が見られるようになります。

新しい興味、行動を見つける。

うつの人はよく決まりきった方法にのみおちいっているものです。新しい興味の対象、行動を見つけることが大切です。妻をデートに連れ出す、あるいは単に帰宅の道順を変えてみる、新しい友達を作る、何か運動をするなど。うつの人には、新しい興味、行動範囲を広げることが役立ちます。この結果は即座には得られないかもしれませんが、普通は数週間の間に気分が改善してきます。

祈ることでエネルギーを取り入れる。

祈りはうつの人が使えるとても大きな資源なので、ここで少しくりかえしましょう。祈りを通じて、超自然の強さを取り入れ、呼びかけることができます。

祈りは肯定思考以上のもの、暗示や精神科医らが呼ぶところの魔法的思考以上のものです。私たちが神に対して抱いている確信は、願い求めるなら、神はそれを聞き入れて下さるということです。神は私たちがうつ状態でいることを望んではいません。私たちがうつからの回復のエネルギーを持たないのは、求めないからです。

私たちが宇宙に属していることを思い出す。

宇宙がいかに大きいかを考えると、これは驚くべきことです。光のスピードで数百、数千億の銀河のひとつである天の川だけを通過しても、通過し終わるまでに十万歳になっているのです。これは人間の理解を超えるものです。私たちがこうした巨大な宇宙に属していることを考えることが、うつを克服する助けになることは明らかです。

友情を育てる。

深刻なうつにおちいっている人は、話ができる友人は1人もいないと思っています。彼らには、ありのままの自分を受け入れてくれる人がいないことがあります。拒否を強烈に恐れるのです。友情を育てるだけで、うつを克服する大きな助けになり得ます。

ソロモンは「2人は1人にまさる。彼らはその労苦によって良い報いを得るからである。すなわち彼らが倒れるときには、その1人がその友を助けおこす。しかし1人であって、倒れたとき、これを助けおこす者のない者はわざわいである」と言っています。

人生の戦いのなかで、私たちは友人が必要だということです。この節では「もし倒れたとき」という言葉を使っていますが、1人なら、もし倒れたら、の問題ではなく、いつ倒れるかの問題となります。

ダビデは「私は右のほうに目を注いで見まわしたが、私に心をとめる者は1人もありません。私には避けどころがなく、私をかえりみる人はありません」と言っています。私たちは頼れる、私たちの魂を見てくれて、心を見せることができる、そして自分が受け入れられると知っている友人が必要です。

1人でいることはうつをひきおこし、またすでにあるうつを強化します。第二次世界大戦中、もっとも効果的な刑罰を見つける実験をした国があります。それは独房に入れることだったのです。独房のなかで数日すごしたあとは、

たいていの人間はすべてを自白します。水が十分にない人は水について幻想を抱き、独房に入れられる人は人について幻想を抱くのです。私たちは人が必要であり、友人が必要です。これはうつを克服するうえで大きな部分を占めます。友人とは暖かく、懸念し、気づかい、問題をいかに克服したかを心を開いて分かち合ってくれる人です。敏感で、愛に満ち、受け入れてくれる人です。人のために自分を与える人です。友とは私たちが傷ついたときに真に気づかう人です。

人が傷ついているとき、心から気づかい、愛し、祈ることは真の勇気づけとなることでしょう。友人がじっくり話を聞いてくれ、サポートと導きを与えてくれたときに、うつからの大きな解放を経験する人は多いのです。うつで苦しんでいる本人が友情を育てることは困難です。人がそれほどまでに自分のことを気づかっていることが理解できないからです。そして、あまり親しくなると、拒否されるのではと恐れています。

この心の枠組みを克服できて、友情を育てていくことができれば、この考えはあたっていないこと、さらにこうした友情がうつを克服する助けになることがわかるでしょう。うつの人は人と親しくなるのが恐いために、防御のメカニズムを使って、人を遠ざけておくようにすることがあります。

こうした防御には普通、大きく分けて4タイプあります。それは、否認、置き換え、とり入れ、そして投影です。まずは否認です。人へのニーズ、つまり自分自身の依存のニーズを否認してしまうのです。

たとえば、こうしたニーズを、人を助けることでかくそうとする場合があります。表面的な友人はたくさんいても、本当に親しい人は一人もいません。否認を使って、人と本当に親しくなることを避けているのです。

次に、うつの人は自分の依存のニーズを否認するにつれ、またこうした依存のニーズが満たされないため、自分が不安で怒りがあることをも否認します。そして不安を体に置き換え、こかいようの置き換えによって胃潰瘍などの身体の問題を抱えるようになります。

3番目に、うつの人は「とり入れ」という防御を使い、自分がしていないことで自分を責めたりします。現実的には自分のコントロールのおよばないところの出来事の責任を感じたりします。たとえばあるクライアントは、自分の上司が若い女性と情事を重ねているのを見て罪悪感を感じたと言います。この種の防御は、その起源を自分が重要だと感じるニーズにたどることができると言われています。

うつの人にもしそれほど罪状と、その責任があるなら、自分で感じているほどに自分は無価値な存在ではありません。うつの人は、人から距離をおくためにとり入れと投影を組み合わせて使います。投影は多くの点でとり入れの逆になります。投影者は自分の非や感情を人に映すのです。

もしうつの人が人と親しくなりたくなければ(拒否される恐れのため)、その感情を人に投影して、相手は自分と近づきたくないんだと思うのです。相手は自分に対してよそよそしいと思いこむかもしれません。

うつの人はこうした4つの防御を、コミュニケーションをかなり歪曲し、人を近づけないために用います。

フェローシップ(仲間)のなかで成長する。

うつの人は、引きこもり、1人になりたいのです。しかし、引きこもって、1人でいることは、うつを悪化させる最悪のことです。

だれl人完壁な人はいないことを知る。

うつの人は、だれ1人とて完壁な人はいないこと、だれもがときにミスを犯し、罪を行なうことを知る必要があります。

うつの人は自分に極端に厳しく、自分を許そうとせず、非現実的な期待を自分に課します。自分がミスを犯すのを許さない、厳しい主人なのです。私たちはだれも完壁な人はいないこと、だれもが罪を犯すこと、ミスを犯すことを知る必要があります。

さらに、ミスから何かを学び、役に立たせることができることを理解する必要があります。だれも完璧な人はいないことを知ると同時に、自分への期待も低くしなくてはなりません。

アサーティブネスに焦点をおく。

うつの人の大半はアサーティブではない、すなわち率直ではありません。攻撃的になり、人を平気でふみにじり、不必要に傷つけるのは間違っています。

しかし、受動的自分の意見を言うべきときに言わないで、感情を内向させ、苦々しくなるなのもまた間違っています。うつの人は受動的になりがちです。人に土足でふみにじらせ、いやな思いをして、落ちこむのです。

うつの人は長い間受動的で、怒りをどんどんためこみ、ついに逆の極端な何らかの攻撃的行動で爆発させるのです。健全なバランスを保つためにはアサーティブであることが大切です。アサーティブであることとは、愛をもって、うまく自分がどう感じているかを告げることです。アサーティブであるためには、とくにそれが自分に関連することである場合、人の責任にしないことです。

一般に、受動的すぎるうつの人はもっとアサーティブになる努力をしなくてはなりません。

依存の二- ズと向き合う。

うつの人には、何かに依存したいという依存のニーズが多くあります。でもそれらを健全な方法で対処する術を知りません。人に近づいて、そうして依存のニーズを満たすべきなのですが、拒否されるのではないかという恐れが大きいため、人に近づかず、すると依存のニーズはいっそう増大するわけです。

この依存のニーズを、まったく逆の極端(独立すること) で満たそうとしたり、「超人」になって人助けをしようとするかもしれません。彼らはなんとだれも必要でないばかりか、すべてを助けることができるのです! もちろん、これは自分のニーズを否定して、人助けをすることで補おうとする防御メカニズムです。

しかし、彼らの根底にあるうつという基本的問題は、まだそのままであり、生き方を複雑にさせます。こうした依存のニーズを、自分からあえて人に近づく努力をすることで学ばなくてはなりません。そのためには、生き方のパターンをいくつか変えなくてはならないかもしれません。

たとえば、自分が人に拒否されるのではないかという恐れから人を拒否するパターンをやめることです。単に人をもはや拒否しないようにすることで、人に近づけるのです。なかには、人を近づけないために太っている人がいます。彼らは体重を落としても大丈夫なこと、人に近づけることを学ぶ必要があります。

飲酒問題に向き合う必要があるかもしれませまひん。人を近づけないためにアルコールを乱用し、脳を麻痔させて、人に傷つけられないようにしている人もいます。健全な方法で近づくことが可能なこと、いつも傷つくぼかりではないことを学ぶ必要があります。

自分は超人だと思うようになった犠牲のパターンを変える必要があるかもしれません。超人は一時的な助けにはなっても、依存のニーズはますます満たされなくなるので、うつが悪化するだけです。このパターンを変えなくてはなりません。ただし、このパターンの人はもはや人助けをやめるべきだと言っているのではありません。そうではなく、自分がしていることを認識し、より良いバランスをとりなさいということです。

拒否されることの恐れを認識する。

うつの人はごく不健全なサイクルにとらわれてしまうことがあります。内面に過剰なニーズ、子どものときに満たされなかった依存の(甘えの) ニーズが多くあり、それらは今なお存在しており、人に関心を向けてもらうことを切望します。

しかし甘えの欲求が多い一方で、ちょうど親が彼のニーズにそえなかったように、人もどうせそれにはそえないだろうと一歩ひいて期待することも学んでいます。

そして彼らは怒り、敵意を持ち、いろいろ要求してみて相手がどこで背を向けるか愛情のテストをするようになります。その間、内心、ずっと拒否されることを期待しているのです。自分が拒否されるように仕向けていくわけですから、しまいには拒否されることになります。

これが人に近づく恐れを増長させることになり、人を避けるようになります。さらに、人に近づかない結果、依存のニーズはますます大きくなり、怒りは増し、その悪循環が続きます。自分が拒否しなければ拒否されると無意識で恐れるあまり、近くの人たちを拒否するのです。

行動を変えることで、拒否される恐れと向き合う。

うつに加えて前述のサイクルにいる人は、自分の行動を変えることでこのパターンを変えることができます。彼らは人に近づけるということ、いつも失望させる人ばかりではないことを学ばなくてはなりません。

人の愛情テストをするかわりに、もっと現実的な期待を人にすることを、そしてあえて人に近づくこと、人を拒否するのをやめることを学ばなくてはなりません。投影の防御テクl二ノクに注意しなくてはなりません。簡単に言うと、行動のパターンを変えることで、拒否のサイクルを破らなくてはなりません。

怒りを認識する。

うつの人は怒りを持っていることが多いのですが、しかし大半がそれを認識していません。よく拳を握りしめ、顔をしかめて、なおかつ自分は怒ってはいないと言うのはよくあることです。

うつの人は怒りを認識し、認めることができ、それに関する洞察を得ていくにつれて、うHつが改善していきます。ただし、怒りを認識するだけでは十分ではありません。それと向き合わなくてはならないのです。この怒りと向き合う方法は、すでに説明しました。

内省に注意を払う。

洞察は人がうつを克服する助けになりますが、一方、健全な洞察の度を越して内省まで進むと、非常に危険です。

うつの人はそもそも過剰に内省的なのですから、とくに注意すべきです。私たちは患者に、内省の時間はセラピーのセッション中だけにするよう、または親友と話しているときに限るよう薦めています。

すべてを理解しょうとして何時間も内省にふけることは避けるように言います。彼らは過剰に批判的で自分に厳しいためです。もし自分にとらわれて、内省的であるのをやめられない場合は、少なくとも自分の問題を考える時間を1日のなかで別に設定して、それ以外の時間には考えないようにするよう指導しています。

もしそれを1日中、毎日考えていると、エネルギーを使いはたして、うつは悪化するでしょう。内省がうつの人によくないひとつの理由は、彼らの内省の多くが客観性を欠くからです。彼らは過剰に悲観的で、ネガティブ思考のため、自己評価、状況評価が現実離れしていることがばっとう多いのです。うつの人が内省的になりそうなら、何か別のことに没頭して、できるかぎり内省をやめることが必要です。

神のようなふるまいをやめる。

前述したように、うつとは自分で自分に背を向けた状態です。怒りを自分に向け、自分が罰を受けるべきだと感じているのです。みじめで落ちこんでいるときに、自分が当然あるべき姿になっていると信じているのであり、ある意味で、彼は神を演じているのです。

神に過去の罪を許してくれるよう、正当な罰を決めてもらうよう求めなくてはなりません。もしかしたら、神はそれ以上の罰を与えないことにするかもしれないのです。もしそれが神の望みであるなら、神の意思に従って、自分を責めるのをやめることを学ばなくてはなりません。

仕返しをするのをやめる。

うつの人の多くがうつを用いて人を操作し、仕返しをしようとします。うつは人を苦しませ、操作するための強力な道具となりうるのです。うつはたまった怒りを解き放つ手段です。よって、うつを使って自分の怒りをやわらげ、人と互角に向き合おうとするのです。

またうつを、人の関心をひくための方法として使ったりもします。恨みを晴らすにはもっと健全な方法を探さなくてはなりません。人の関心をひくには、他にたくさんの生産的、健全な方法があります。そもそも自分が他人の関心を必要としていることを、認識していないかもしれません。

うつの責任を受け入れる。

うつの人の多くは、うつの責任を受け入れればうつが改善し始めます。自分の生命の責任を自分でとることで、良くなっていくのです。

人が「このうつからどうしても抜け出ることができない」と言うとき、実際意味しているのは、「うつから抜け出る気はない」ということなのです。

それには無意識の理由が多々あります。うつで人の関心をひいたり、人を操作しているかもしれないし、それを使って自分や他人を罰しているかもしれません。

あるいは頑張って何かをしたり、より生産的になることができないことの言い訳にうつを使ったりもします。あるいは単に希望を失ったのかもしれません。

健全な対処術を選ぶ。

多くの人が、不健全な方法で日々のストレスに村処し続け、うつを再強化しています。たとえば、怒りを内在化させ続けたり、また心配するといったおきまりのパターンのために、心のエネルギーすべてを使いはたしてしまったりします。

あるいは単にそれに慣れっこになっていて、なじみのある対処術であるためにうつのパターンを使い続けるのかもしれません。そのような場合は、新しい、健全な対処術を見つけることでうつに対処できるようになります。

前述したように、運動は敵意のエネルギーを取り出して、生産的な健全な方向に向けるためのいい方法です。私たちは毎日、何らかの社交づきあいが必要です。

自分のことばかりでなく、他人のことを考えることも大切です。関心を自分からそらして、人に向けることは健康なことです。

実際、それによって、自分の問題がより客観的に見られるようになります。私たちは自分が直面する自分の問題、課題に向き合う必要がありますが、それだけにとらわれてがんじがらめになってはいけません。そうではなく、人を助けることに焦点を当ててみると、それが結局は自分の問題と向き合う助けとなるのです。

希望があることを認識する。

希望があることを認識させる手助けをすることは、うつの治療に高い成功率を得ています。だれでもうつを克服できるのです。

その最初の必要なステップは、単に本人に希望があることを認識させるだけであることが多いのです。最近、ある男性が、自分は20年うつを患ってきたこと、その間少なくとも6人のセラピストにかかったと私たちに言いました。

私たちが彼に絶対に希望があること、うつは克服できることを告げると、彼は「自分が治るなんて私に言った人は、これまでであなたがはじめてですよ! 」と叫び声をあげました。ひと月もしないうちに、彼は20年来はじめて楽になったのです。希望は絶対にあるのです。

罪の罠を避ける。

人がうつにおちいる理由のひとつは、彼らが罪を犯しているからです。多くのうつとグリーフは、罪ある行為にかかわらないことで防ぐことができます。

たとえば、女性の多くの後悔のひとつに、中絶をしたことがあげられます。婚外交渉など、不適切な性的関係もまた大変なグリーフを残します。

さらに、罪はうつをひきおこすだけではなく、うつになると人は心の痛みをやわらげようとして、さらなる罪を犯したりすることがよくあります。しかし結果はさらなる落ちこみを招くことになるのです。

罪悪感の罠を避ける。

うつの人は、多くの罪悪感を抱いています。罪悪感が真の罪悪感なら、それをどこか安全な場で告白するか、または人との関係においては、つねに良心に責められることのないようにつとめるだけでよいのです。

しかし、強迫性人格の多くの人が強烈な偽りの罪悪感を感じています。自分の性格を洞察するだけで、この罪悪感の多くが消えるでしょう。

環境操作する。

内からのストレスと村処することを学ぶことで、また環境操作をすることでうつから立ち直れるようになります。ストレスの新しい対処術を教えるのに多くの時間をかける一方で、私たちはまた外部ストレスを変え、取り除くのにどうしたらいいかを教えます。

おそらく、うつはひとつには働きすぎによってもたらされているため、労働時間をけずるなど、外的要素を操作することで外部ストレスを軽減することができます。また罪悪感をもたすような行為ゆえにうつが出てきている場合は、その行為をやめることで外的ストレスをやわらげることができます。自分が経験している外的ストレスの量を操作するのに、個人ができることは実に多くあり、それによってうつが相当に軽くなります。

過剰に反応しない。

多くののうつ患者は、ストレスの状況が出てくると非常に強く反応します。過剰に攻撃的になつて、他の人を攻撃したりします。そしてそれをあとで悔やんだりします。自分の反応をコントロールすることを学び、反応するかわりに正しく適切に対応することを学ぶと、自分のこと、状況の村処の仕方について自信が持てるようになります。

自尊心を高める。

うつの人は、非常に自尊心が低いことが多く、これを高めなければいけません。キリストは、自分自身を愛するように隣人を愛せよと言いました。これは健全な自己イメージを持つべきことを意味しています。

もし自分のことが低くしか見られなければ、私たちは自分のことばかりで手一杯で、人には何もしてあげられないでしょう。

プライドと自己価値とはちがうものです。自分の劣等感が強いほどに、偽りのプライドでごまかそうとして、人に対して「人よりまし」の態度をとるようになります。これは自分の力量不足感をカバーするものです。どうやって適切なレベルに自己イメージを高めることができるのでしょうか?

まず第一に、他の人たちとの関係において成長すること。そして第二に、現実的目標を定めて、それらに向かって励むことです。自己イメージを高める第一の方法は、他者との関係をうまく保つようにすることです。自己イメージを高めるために、人に過剰に頼ることは健全ではありません。

しかし私たちの大半が、人とつきあって、人から得るフィードバックに注意を払うことで、ある程度まで自分がどういう状態かを感知できます。人との関係が親密になるほどに、自己イメージも高まります。私たちはだれでも、少なくともだれか一人の人間から愛されることが必要です。これは基本的で、自己イメージにとってもっとも大切なことです。事実、そうした愛がないことが、多くの感情的問題の中心的課題になっているのです。自己イメージを高める第二の方法は、目標を設定し、それらを達成することです。現実的目標を立てて、それを達成すれば、自分の気持ちもよくなり、自己価値感が得られます。

心理的、身体的レベルでうつに対処する。

これらのレベルは、それぞれいくつかのカテゴリーに分かれています。特定の問題、カテゴリーを理解することで、問題に対処できるでしょう。

1 心理的問題

A.心理生理学的問題(潰瘍、大腸炎、高血圧など)
  1. クライアントに問題の心理学的側面について助言する。
  2. 問題の身体的側面については、治療プランを立ててもらうよう、医師を紹介する。
  3. 必要なら他の心理的側面に関して、他の専門家といっしょにとりくむ。
B.人格傾向と人格障害
  1. テキスト人格の特徴を見極め、それによってカウンセリングのアプローチを変える。たとえば、ヒステリー性の人とうつ患者を同じようにはアプローチしない。
  2. クライアントが自分の問題、生活歴、感情を話すときは、共感を持って聞く。
  3. クライアントに人格の強さと潜在的な弱さについて説明する。
  4. クライアントが問題解決のための具体的行動プランを作る手伝いをする。
  5. 必要なら、心理学、精神医学のトレーニングを受けている他の専門家といっしょにとりくむこと。
C.神経症
  1. 神経症のタイプを見極め、それに応じてアプローチする。
  2. 問題、過去のこと、感情を打ち明けるクライアントの話を、共感を持って聞く。
  3. 本人がしていること、本人におこっていることを説明する。洞察力が得られるよう手伝いをする。
  4. 問題と向き合うための具体的行動プランを作る手助けをする。
  5. 必要なら、心理学、精神医学のバックグラウンドのある他の専門家といっしょにとりくむ。これは自殺、あるいは殺人を犯す恐れのある場合は必要となるかもしれない。またカウンセラーが自分の手に負えないことを認識した場合も、これが必要となる。もし心理テストが必要なら、心理士に紹介する。もちろん両者ともがクライアントにセラピーを行なえる。
D.精神病
    1. 他の専門家(地元の医師、精神科医、心理士ら) といっしょにとりくむ。
    2. 精神病の場合、脳内化学物質に異変がおこつているので、投薬が必要。よって精神科医に紹介するべき。

2.身体の問題

当然、身体的問題は地元の医師、精神科医に紹介する必要があるが、心理的要因もある可能性があるため、カウンセラーは医師とチームでとりくみたいと願うかもしれない。以下の問題にはとりわけ注意を要する
  1. 運動過剰
  2. 高血糖・低血糖
  3. 甲状腺の問題
  4. 加齢による脳の器質的症候群
  5. 生物化学的うつ

笑うことを学ぶ。

もっと多くのユーモアを生活にとりいれ、もっと笑うことを学ぶにつれ、患者の症状は改善していきます。リラックスするのに笑いにまさるものはありません。だれも完璧な人はいないことを学び、自分の自他への完全主義的期待について笑えるようになれば、多くの人が快方に向かいます。

うつとは何でしょう?

何がうつをもたらすのでしょう?

どうすれば防げるのでしょう?

すでにつらい状態の場合、どうやったら克服できるのでしょう?

幸福は本当に選びとるものなのか、それとも自分は状況の被害者でしょうか?

もし私が幸福を選んだなら、幸福を手に入れるためにはどの道を歩むべきでしょうか?

答えは実に多岐に渡り、簡単な答えはありません。ためこまれた怒りは大半のうつの根っこの一大要因であるにもかかわらず、すべてのうつの原因はひとつではありません。

これ! というひとつの解決方法はありませんが、解決は非常に複雑だとしても、解決できるのです。おそらく将来には新しい、速効性のある解決法が見つかるかもしれません。しかし今でも、実践することで、うつは100% 治療可能です。事実、うつは(数週間、数ヶ月) 100% 治療することが可能なのです。

幸福は、ゆっくりしたプロセスの中で手に入れることができます。幸福は選びとることができるのです。あなたがそれを選ぶのです!

不安感に襲われたとき、どう対処すればいいか?

不安は多くの人をつまずかせます。しかも私たちはみな、ときに不安を覚えます。不安はうつをともなうことがよくあり、そわそわ感、どきどき、ひどい気おくれ、心細さ、緊張感、落ち着きのなさ、心配などの特徴があります。不安な人はよく不幸、危険、悲運を予期します。

不安の症状

不安な人は過剰に警戒し、イライラ、そわそわし、依存的です。おしゃべりになったり、入眠困難になることもあります。入眠困難になると眠ろうとベッドに入ってもなかなか眠れず、30分~60分以上眠れない場合があります。

集中力が欠如し、記憶力も働きません。不安にかられるあまり、動きがとれないかもしれません。

また、不安な人は過剰な発汗、筋肉のはり、緊張、頭痛、声の震え、大きなため息、腹部の痛み、吐き気、下痢、胃のあたりが落ち着かない感じ、高血圧、動悸、失神、頻尿、冷感症などが見られます。

不安は精神科領域で扱う問題の原因の大半となっています。これは神経症、精神病、精神生理学的問題の原因です。

それほど危険でも脅威でもない場面や事柄に村して、恐れる理由がないと知りつつ激しく恐れ、これを避けようとします。

自分が許されがたい罪を犯したと思っている人の真の原因となっています。心理学も、不安が正常、異常の両方でおこることがあることを指摘しています。

心理学者は長い間、人が何らかの不安があるときのほうが効率的かつ生産性が高いと言っています。しかし不安が強烈になると、効率もそれにしたがって低下します。強烈な不安は健康ではありません。新約聖書には、「不安」と訳されるギリシャ語が25回ほど出てきます。これは普通、否定形のなかで使われますが、しかし、ときには肯定的にも(現実的懸念) 使われます。

不安の原因

不安には多くの原因があります。そのひとつとして無意識の内的な精神的葛藤があげられます。つまり、不安は普通、自分の思考、感情、動機の真実を見つめることへの恐れからおこるものです。

ときとして私たちの心は、現実を押しこめようとします。私たちの心の緊張が、まさに不安なのです。それは(不安な親から) 例を学んだことによるものかもしれないし、子ども時代の葛藤に根を発する、または現在の問題によるものかもしれません。不安であることに不安なのかもしれません。あるいは劣等感、貧困、病気への恐れなどから来ているのかもしれません。

多くの人は、幼児期に不安をかりたてる経験をしています。悪い経験に満ちた、極めてストレスの多い幼児期をすごすと、あとで相当不安に苦しむことになります。この不安の多くは、それが表れてきたときに対処されずに、無意識に押しこめられています。ペンフィールドという脳神経外科医が、脳の機能は高音質のハイファイテープレコーダーやCD のようであることを発見したことを述べました。

脳はまるで記憶装置のあるコンピューターのように機能するのです。脳のあるエリアを電極で触ると、本人はときに何か特定の出来事を思い出したり、またそうした出来事に付随している感情を思い出したり、またとくに具体的な出来事を思い出すわけでもないのに、高揚、うつなどの感情を思い出したりします。

この実験結果からペンフィールドは、特定の記憶や感情は記録され、蓄積され、またそれらはそれが実際起こったときと同じく鮮明に再演されうると結論したのです。これらは現在のストレスによって出てきます。現在、不安をひきおこされるような状況、経験に出会うと、幼児期からの不安にかりたてられます。

それは子ども時代の感情であって、特定の出来事は思い出せないことが多いのです。抑圧された感情が現在の状況にも同じようにあてはまることは実際にはないのですが、そのように過去と現在を重ね合わせてしまうのです。

すると、私たちがなぜ現在の状況に過剰反応してしまうかがよく説明できます。私たちは現在の状況に反応しているのみならず、また同時に子ども時代の抑圧された感情にも反応しているのです。すると現在の状況からの不安は、部分的、無意識に抑圧され、強迫的心配や恐怖症にも貢献しているのかもしれません。

そしてそれが内在化されるとうつになるのです。本人が不安であることに対して不安を感じることによって、または本人が持っている特定の恐怖症や強迫観念に関する不安が出てくれば、あるいはうつ状態であることに対して不安が出てくれば、さらなる不安が生じてくる可能性があります。

不安を少なくするための( 聖書が教える )行動パターン

不安を克服するための方法が重要となります。

1.肯定的な考えについて黙想する
心配症の人によく私たちは「心配するのはよして、リラックスしよう。不安はリラックスのための合図だ。さあ、リラックスしよう」と言って指導しています。そしてこれを何度もくりかえしてもらいます。不安は普通、よりいっそうの不安が募る合図なのですが、しかしこうし0た単純な行動修正によって、脳は不安をリラックスのための合図とするよう条件づけることが16できます。
2.神の意にかなう行為に焦点を当てる
不安な人に私たちはよく言います。罪を避けること、小さいフェローシップ(仲間)の集まりに参加すること。
3.満足できることに専念する
自分の満足感を大切にします。
4.貧困の恐れを取り除く
貧困は不安を招く原因になります。神は私たちが必要とするすべてのものを提供すると約束しています(私たちがほしいものすべてでなく)。
5.神の恩寵が自分とともにあることを知る
神のめぐみ・いつくしみを信じます。
6.音楽を聞く
音楽はリラックスに欠かせません。
7.適度な運動をする
理想的には1回20分、週に3回。適切な運動については医師と相談します。活発な運動は血中にエンドルフィンを放出し、幸福感を増し、エネルギッシュにしてくれます。
8.十分な睡眠をとる
大半の人は一晩8時間の睡眠を必要とします。眠れない場合はこちら
9.不安をおこす問題と向き合うために自分でできることをする
いろいろな方法を変えてみて、解決方法を探り、試みます。
10.話すことで開放される
少なくとも週に1回は自分の欲求不満について親しい人に話しましょう。
11.適切なレクレーションをする
できれば週に2~3回おこないます。脳にも体にもいい影響を与えます。
12.その日1日だけを十分に生きる
おそらく私たちが不安に思っている、あるいは心配している98% のことは、実際にはおこらないでしょう。今日1日を生きる術は、しだいに学びとり、うまくできるようになります。
13.先のことを考える
最悪の場合、何がおこりうるか考える。するとそれもそれほどは悪くないことがわかります。
14.先延ばしにいいことはない
ものごとを先のばしにしない。そうするほどに不安が増すのです。

抗うつ薬と入院が必要なケース 入院治療のメリット・デメリット

抗うつ薬は使うべきでしょうか? 答える人にもっよるのですが、NOと答える人もいます。

必要な状況では抗うつ剤は使っても、薬だけに頼らないほうがよいと答えます。ペニシリンが発見されたときも、多くの人がその効果を信じようとしなかったために亡くなりました。

私たちも、過去数年の間にガンの手術を拒否したために亡くなった人たちを数人知っています。有名大学の学生自治会会長が、州議会にレアトリル(杏などの核から製する制ガン剤)を合法化するように一人説得しているうちに、1977年、ガンで亡くなりました。多くの奇跡を神がおこしたからといって、神が奇跡をおこして病気を治すか、まったくそれはあり得ないかのどちらかだとする主張をそれで正当化できるでしょうか?

誇大妄想的人格でもなければ、超自然治癒は強要できません。今日、たしかに神はまれに、ある人々に超自然の治癒を与えますが、大半の人々は医療技術、投薬による常識の応用によって治るのです。

糖尿病患者で、インスリン注射が毎日必要な人はそうすべきでしょうか? それとも自分がいかに勇敢で極めて秀でていることを証明するために、インスリンを拒否して、2日のうちに昏睡状態におちいって死んでしまうべきでしょうか?

はっきり言えることは、もし自分がいかに勇敢で、秀でていることを証明したいのなら、そうやって死ぬのもいいでしょうが、しかし、私たちは生きるほうを選ぶということです。

神は私たちに与えられた常識を使うことも、また期待しておられるのだと信じます。うつよりも幸福を選ぶのです。

さて、抗うつ薬は使うべきでしょうか? ある状況下ではもちろんです。患者がうつ状態で、不眠や自殺願望を訴えてやってくると、3つの方法で治療します。

ひとつは処方薬なしで毎週の面接治療を続けることで、これだとうつは平均して6~12ヶ月で(もし最初の2ヶ月の、睡眠障害やひどい感情的な痛みを患っているときに自殺しなければ) 治ります。

もうひとつは、毎週の精神療法とあわせて抗うつ薬を出すことです。この場合だと、おそらく3~6ヶ月でうつがなくなるでしょう。

抗うつ薬を出してから最初の10日でよく眠れるようになり、また感情の改善が見られるようになり、自殺のリスクは低くなります。

3番目の方法は、入院型のプログラム。総合病院の精神科に入院していただき、毎日精神療法と投薬を続ければ1週間以内で楽になり、うつも3~6週間でなくなり、そのあと外来ベースで1~2か月の精神療法を続けるだけで良くなります。もし患者が4人の子持ちで、何ヶ月もうつのせいでつらい思いをしているのだとしたら、どのやり方が一番良いでしょうか?

自殺が現実味を増しているときに、子どもを父親なし(母親なし) にすることによって、感情的な深い傷を残す可能性を前にして、どの選択がもっとも適切でしょうか?

私たちなら、もしうつ本人が自殺のリスクがあるか、現実から逃れる(精神病的うつ) 危険カがあれば、入院はほぼ必須だと考えます。人命の賭けをする必要はありません。あまりにうつがひどく、生活上の支障がおきている場合、しかし自殺や現実から逃れる危険がない場合は、投薬しながらの外来精神療法がベストでしょう。

薬は使わなかったとあとで自慢するためにどうして3~6ヶ月もさらにうつを引きずる必要がありましょうか?

軽度のうつなら、薬は高価ですし、口が渇く、車の運転時に反応が鈍るなど、軽度の一時的副作用がありますので、投薬はしないほうがいいでしょう。

入院治療のメリット・デメリット

深刻なうつの場合の入院の利点は、以下のようにまとめることができます。

  1. 患者は集中的精神療法が受けられる。
  2. すぐに投薬調整が行なえる。
  3. ストレスの環境から安全な環境へ逃れられる。
  4. 病院の自殺防止システムにより保護される。
  5. 和やかな、サポートしあう、雰囲気がある。
  6. 改善していく他のうつの患者たちと知り合えることが勇気づけになる。
  7. うつの症状、感情的つらさがみるみるうちに改善する。
  8. 訓練された精神科看護師、他のスタッフらが精神科医のカウンセリングなどをサポートし、患者が自らについて洞察を得ることの助けになる。
  9. 看護師が患者の行動パターンを毎日観察しており、この情報を精神科医に伝え、患者が洞察を得るのに役立つ。
  10. 入院は(長期的には)長引く通院よりも安上がりである。普通保険でカバーされるからである。また患者は、比較的容易に職場復帰できる。

入院の短所には以下のようなものがあります。

  1. 依存性の強い人のなかには、精神科医のいる病院に入院して、うつのふりをしていることで、さまざまな責任から逃れようとする者がいる。
  2. 精神科への入院に村して、社会的不名誉がついてまわることがある。昇給や求職を困難にすることがある。
  3. 患者が入院して3~6週間後に退院すると、本人はうつを克服して楽になり、生きることに熱意を持っているような態度になるが、周囲の人たちは最初、本人を傷つけてはいけないと恐れて入院体験を聞くことをはばかる。これを本人は、個人的な拒否ととらえてしまう。
  4. 保険がなければ入院は非常に高価で、1994年の統計では平均1日1000ドル程度かかる。保険があっても、医療費の負担額は高い。

うつの処方薬

インシュリンのショック療法(訳者注‥インシュリンを皮下または筋肉内に注射し、意図的に低血糖性昏睡を生じさせる治療法。妄想や興奮に効果があるとされていたが、近年は向精神薬療法が一般的)や、電気ショック療法(ECT 、ESTとも呼ばれる)(訳者注‥頭部に通電させ、脳機能を改善させる治療法。

うつや妄想に効果があると言われる)を使用することはありません。健康への悪影響の可能性があるし、多くの場合、これらはほんの一時的な軽減にしかならないためです。ショックセラピーは現在のうつを治すこともありますが、

しかし本人がまたうつにならないためにはどうしたらいいかを教えはしません。精神科医のなかには、抗うつ剤をいやがる自殺願望のある患者、改善が見られない患者にショック療法を使う人もいます。

普通はこれに外来の精神療法でフォローします。私たちはまた依存性のある処方薬も使いません。三環系抗うつ薬は依存性がありません。これらは毎日就寝時、150mg、普通6ヶ月、投薬します。

その後は、セロトニンレベルが平常化すれば、抗うつ剤の服用をやめても服用していたときと同じように楽になります。近年ではトフラニール、エラヴィル、シネカンなどよりもっと効果的な薬が出ていますが、私たちはあるタイプのうつには新薬といっしょにこれらの古い薬も使います。

古い抗うつ剤と同様に、これらにも依存性はありません。リウマチ、偏頭痛、繊維筋痛、腰痛、その他の内科の病気などの慢性的な痛みには、私たちはシネカンとパキシル、あるいはゾロフト、エフレクソール、プロザックなどをあわせて使います。なぜならこれらの薬は慢性の痛みをよりやわらげ、耐えられるレベルにしてくれる痛みの限界値を上げてくれるからです。

プロザックやゾロフトを使うと大半の人が週に一ポンドから数ポンド、体重が減ります。患者がやせすぎるようだったらこれらの投薬をやめなくてはいけません。