肥満は感染する、腸内細菌が体質、性格までも左右する

腸内細菌が減少すると記憶力が低下する

腸内で腸内細菌が形作る環境を、腸内フローラと呼びます。善玉菌も悪玉菌も含めた、腸細菌叢の別称です。そして、実は「肥満は感染する」ですが、それには、腸内フローラが、大きく関係しています。

眉に唾をつけたかたも多いでしょうが、ほんとうの話なのです。肥満が感染するという論文が、2010年、アメリカの有名な科学誌「サイエンス」に掲載されました。

実験は、次のようにして行われました。腸の中に細菌を持たない無菌マウスと、肥満しているマウスとをいっしょに飼います。すると、太っているマウスの腸内細菌が、無菌マウスの腸のなかに感染し、著しい肥満になつてしまうのです。つまり、肥満したマウスの腸内フローラがコピーされたようなもの。文字どおり、肥満は、腸内細菌を介して、感染するのです。

ヒトの場合でも、やせた人の腸に棲んでいる腸内細菌と、太っている人の腸に棲んでいる腸内細菌では違いがあります。もしかすると、太った家系の人は、生まれるときに家族から腸内細菌を感染させられているかもしれません。つまり、肥満になるかならないかは、腸内フローラが決めている可能性が高いのです。そのほかにも、腸内細菌が問与している新たな事実が知られるようになってきました。

例えば、自閉症は、腸内フローラが関係していると判明しています。腸内フローラに問題がある母親マウスが産んだ子は、自閉症になります。ところが、この自閉症のマウスに、プロパイオテイクスを与えると、自閉症の症状が改善すると報告されているのです。

また、ラットを拘束して動けなくさせると、ラットにストレスがかかり、ストレスホルモンが分泌されます。ところが、ラットに前もってプロバイオティクスを与えておくと、ストレスホルモンが分泌されにくくなります。つまり、乳酸菌をとっていると、ストレスに対する耐性が生まれるのです。

近年、「キレる」子供の問題がしばしばクローズアップされますが、腸内環境が整うと、キレやすい性格が緩和される可能性が出てきました。脳の発達にも、腸内細菌がかかわっていることがわかってきました。BDNF(脳由神経栄養因子)という物質があります。脳の海馬などに存在し、神経細胞を活性化し、その増殖を促す物質です。記憶力とも関係が深いとされています。実験的にマウスの腸内細菌をなくしてしまうと、このBDNFが発現しなくなります。また、脳の海馬の近くに、人間の情動をつかさどる、扁桃体という部位があります。腸内細菌がないと、扁桃体でもBDNFが発現しなくなってしまいます。

つまり、腸内細菌が不足すると、記憶力が低下したり、無感動や無感惜になつたりする恐れがあるのです。

多品目の食品の摂取で腸内細菌の種類が増加

腸内細菌と肥満は大いに関係があります。例えば、肥満の患者さんの腸内細菌を調べると、腸内フローラが非常に乱れていることがわかります。

腸内細菌は、もともと種類が豊富で、多種多様な菌が存在しているはずです。ところが、肥満の人の腸内細菌は、実に種類が少なく、特定の悪玉菌が非常に多く見受けられます。

腸内フローラが乱れていると、メタボになりやすくなるのです。そこで、そのような場合に効果的な具体策をご紹介しましょう。

まず、ヨーグルトやキムチ、納豆などの発酵食品を食べることです。そして、できるだけ多品目の食品を食べましょう。

多品目の食品を摂取すると、その種類の豊富さに合わせて、腸内細菌の種類もふえるとされています。以前、「30品目の食品を食べよう」とさかんに提唱されたことがありましたが、腸内細菌の種類をふやすという意味では、それは的を射た提案なのです。

さらに、腸内環境は、加齢とともに変化します。若いうちは小腸の吸収力が強いため、摂取された食物は、大腸に達するころには、栄養をしぼり取られた残りカスになります。

しかし、年齢を重ねると、小腸の吸収力が低下するため、まだ栄養分が残っている消化物が大腸に届くのです。すると、腸内細菌が、異常に発酵してしまいます。

こうして悪玉菌がふえた状態が続くと、メタボになり、さらに動脈硬化、心筋梗塞、大腸ガンといった病気へつながっていくのです。

病気を予防する意味でも、若いころと同じような食生活を送ることは勧められません。より少なく食べて、大腸に栄養の残った消化物が届かないようにすることが大事です。

腸内フローラのフローラとは、花を意味します。食事を改善し、いろいろな食品を食べながら、食事の全体量をへらす。これが、美しい腸内フローラを生み出す秘訣なのです。

生きた乳酸菌が腸までしっかり届く!さらにパワーアップした『乳酸菌革命』

忙しい現代人の腸は高速で老化がすすんでいる!ゆっくり規則的に食べることで若返りが可能

腸は全身の老化と密接に関連する司令塔の働きをしている

私たちの体は、加齢により老化していきます。しかし、体の中の臓器がそれぞれ同じペースで老いていくかというと、決してそうではありません。実は、老化のペペースメーカーとして機能するのが「腸」なのです。

最近、p16というたんばくの発現をマウスで長期問観察した研究が報告されました。p16は、ガンの抑制遺伝子で、これが発現すると、細胞が老化してきた目安になるのです。その結果、p16が最も早く発現したのが、腸と腎臓でした。
臓器のうちでも、腸と腎臓が最も早く老いるのです。

これは、腸と腎臓が最も多く血液を使う臓器であることが関係しています。心臓から送り出される血液の分配量を調べると、腸が1位で全体の30%、腎臓が2位で20%、3位が脳と骨格筋で15%。多くの血管で養われている臓器ほど、老いやすいのです。労力が増えるのと比例しているということです。

しかも、ペースメーカーである腸が老いてきた場合、腸だけの老化が進んでいるのではありません。腸が早く老いると、それと共に、ほかの臓器の老いも促進されてしまうのです。つまり、腸が早く老いると、全身の老いも加速するのです。

内臓にはそれぞれ、その人の一生分の仕事を、最適のペースでこなすための時間が設計されています。この臓器固有の寿命、いわば臓器の賞味期限が、それぞれの「臓器の時問」です。その中でも、腸は、最も臓器の時間の流れが早い臓器です。

ただ、生活習慣やその人の心がけによって、臓器の時間の進み方を早くすることも遅くすることも可能です。私たちは老化予防のためにも、ペースメーカーである「腸の時間」の進み方をゆっくりさせる配慮と工夫が必要になります。

時計遺伝子の乱れはメタボの原因

では、腸の時間をゆっくりさせるために、どんなことに気をつければいいでしょうか。

まず第1に、過食を慎むことが肝心です。腹8分めが長寿の秘訣といってもいいでしょう。これは従来から健康を保つための必須条件としてもかならず挙げられる条件のひとつです。過食は内臓にとって大きなストレスです。
過食をくり返すと、体に栄養が余っているところに、さらに栄養が取り込まれます。このよけいな栄養分を、体は「外敵」と見なし、強いストレスを感じ、対抗しようとします。交感神経が緊張し、これ以上の栄養を取り込まないように働きます。

同時に、血圧も血糖値も高くなります。こうした交感神経のがんばりが続いた結果、人はメタボになるのです。このとき、当然に腸の老化も加速することになります。

また、食事は、できるかぎり規則正しくとったほうがいいでしょう。忙しい現代人は、「仕事の合間に食事をしがち」ですが、「食事の合間に仕事をする」ことが理想です。

近年の時計遺伝子研究の進展により、私たちの臓器も、時計遺伝子がもたらす周期性によって、それぞれリズムを刻みながら働いていることがわかってきました。時計遺伝子に異常が生じると腸の時問の流れが早くなり、メタボにもなりやすくなります。これはマウスの実験でも確かめられています。

時計遺伝子の働きを整えるためには、朝、太陽の光を浴びることが重要ですが、もう1つ規則正しい食事も重要です。それが刺激となって、周期性を調整してくれます。

そして、ゆっくりと食べることや、よくかむことも大切です。

腸の老化を抑える以外にもしっかり噛んで食べることで脳と体が鍛えられるなどの効果もあります。

食事をストレス解消の手段として考えている人がいますが、早食いは決してストレス解消になりません。逆に、腸にはストレスとなり、腸の時間をどんどん加速してしまいます。
大食い選手権のようなTV番組もよく目にしますが、腸にとってはかなり残酷ですし、老化を早めています。

目の前の食事を、ストレス解消のターゲットとして見なすのではなく、生きるために自然が与えてくれたものとして、心静かに向かい合ってみてください。食前にひと呼吸おき、「いただきます」といって食べ始める習慣をつけてみましょう。これだけでも、ただの食事が健康食になる契機になるはずです。

そして、ゆっくりと食べ、よく噛むと、岨噂の刺激が腸に、「これから食べ物が入っていきますよ」というメッセージを送ります。すると、脳がホルモンや消化液の分泌を速やかに促し、腸はストレスを感じることなく消化吸収を行えます。これによって、腸の時間が非常に効率的に使われることになります。こうした毎日の積み重ねが、腸の時間をゆったりしたものにしてくれるのです。

食事の内容については、発酵食品を食事に上手にとり入れる工夫などが大事ですが、腸にとっていい食生活ができているかどうか、目安があります。たくさんあるのですが、わかりやすいように1つだけ紹介します。
それは、毎日の便の状態で判断する方法です。「快便」なら、いい食事ができていると考えていいのです。逆に、便秘が続いたり、下痢ぎみであったり、便秘と下痢をくり返したりしているようでしたら、日ごろの食事内容や生活ぶりを1度見直してみてください。
便の中身を詳しく知るなども参考にするといいでしょう。

腸の調子が整ってくると体はスリムになり、体調が良好になります。

過敏性腸症候群で治すためには食習慣も重要でモズクなど水溶性食物繊維の豊富な海藻が必須

ストレスがひとつのきっかけで起きる

便秘に悩むのは女性が多いのですが、最近は、「過敏性腸症候群」を発症する人が増えています。こちらはどちらかというと働き盛りの男性に多く発症しています。ばりばり仕事ができる人に多く、お昼を食べると必ずといっていいほど下痢をします。これまで何ともなく外食をしていた人が、トイレのために外食を控えて、社食やコンビニのおにぎりを食べるケースが増えています。

過敏性腸症候群とは、心因性の病気で、下痢や便秘などの便漕層や、腹痛あるいは腹部膨満感が慢性的に起こります。人によっては、おなかがゴロゴロと鳴る、残便感がある、ガスがよく出るといった症状を伴う場合や、胃のむかつき、吐きけ、食欲不振など消化器全体の症状として現れることもあります。

過敏性腸症候群の最大の特徴は、病院でさまざまな検査を受けても、腸自体には異常が見つからないこと。この病気は、満神的なストレスが引き金となって起こります。特に、まじめで几帳面、内向的な人がかかりやすいとされています。

こうした性格の人が、職場や家庭内のトラブル、受験や昇進などからくる精神的な圧迫、会議やプレゼンで発表するといった緊張感による強いストレスを感じると、それをきっかけにして自律神経のバランスが乱れることがあります。腸の働きは、自律神経によって左右されているため、便通に異常を来すようになるのです。

症状の改善には食物繊維の摂取とストレス解消

過敏性腹症候群は、便の状態によって「下痢型(何度も便意を催して、軟便や下痢をくり返すタイプ)」、「便秘型(思うような排便ができず、コロコロした硬い優しか出ないタイプ)」、「混合型(下痢も便秘もあるタイプ)」、「分類不能型」の4つに分けられます。

どのタイプにしても上手なストレスの発散法を見つけることが大切です。もし、どうしても仕事の内容が合わない場合は、転職も考慮しなければいけないかもしれません。

もう1つ、重要なポイントは食事です。すべてのタイプの過敏性腸症候群に共通するのは、消化の悪いもの、熱すぎるものや冷たいもの、脂肪の多いもの、アルコール、炭酸飲料、香辛料、酸味の強いものなど、腸を刺激する飲食物をさけることです。

下痢型や混合型の人は、どのような食品をとったときに下痢になるかを確認し、その食品をとらないことが、症状を改善させる近道になります。

また、特に便秘型の人は、排便を促すため、食物繊維をとることが有効です。しかし、水に溶けない不溶性食物繊維は大腸への刺激が強すぎるので、水に溶ける水溶性食物繊維を中心にとることを心がけてください。

水溶性食物繊維は、モズク、ワカメ、ヒジキ、寒天などの海藻類に多く含まれています。過敏性腹症候群の改善のためにも、毎日1回は海藻類の摂取を習慣化しましょう。

ストレスフルで眠れなくなったが脳マッサージ整体でその他の不調も改善