うつ病発症から復職までの実際の例

「産業人メンタルヘルス自書」によると、アンケートに回答した241組のうち、7割近くが最近3年間で心の病は増加傾向にあり、約9割が今後とも増加傾向にあると回答しています。また、心の病のうち、組合員に最も多い疾患として8割以上が「うつ病」をあげており、心の病による1ヶ月以上の休業者を抱えるところは6割を上回っています。

サラリーマンは、うつで休むことになった時、「日々の勤務のつらさから解放され、ほっとした」思いとともに、「この先どうなるのだろう」という暗澹とした思いにかられるものです。

「うつは本当に治るのだろうか」「将来仕事に戻れるのだろうか」「復職の時期というのはどう判断するのか」など不安は尽きることがありません。

「こんな状態になったのは自分だけではないか」と思い悩む人は大変多いのですが、発症時から、復職、復職後に至るプロセスを見てみますと、多くの人が共通に悩んだり不安に思ったりする事柄が見えてきます。

MDAのバック・トウ・ワーク(復職)キャリアセミナーに参加したBさん(40代公務員)の実体験に基づいて、休職から復職に至るプロセスを振り返りながら、対処のポイントについて説明したいと思います。

Bさんは約1年半の休職期間を経て復職しました。同じようにうつで休職した方にもご自身の回復プロセスについて客観的に、また前向きにとらえることができれば幸いです。

なお、以下の本文で休職期間を初期、中期、後期とわけて記載していますが、明確な概念ではなく、説明の便宜上のものです。ご了承ください。

Bさんの発症時から休職までの状況

Bさんは、妻と子ども3人の5人家族です。入社以来、いくつもの重要ポストを担ってきました。Bさんがうつ病となったのは、十数年乗積み上げてきたプロジェクトの仕上げを担当する課長職として異動してしばらくたった頃でした。

先任、先々任の課長が積み上げてきた仕事であるという重圧を感じていた頃、新しい部長が異動してきましたが、それまでのプロジェクトの方向性と逆の立場をとる人で、意見がぶつかり合い、長時間にわたって怒鳴られるということも度々でした。プロジェクトの取りまとめ役の重責と、新しい部長からの叱責でつらい思いが続いていたBさんにある症状が出てきました。

  • 頭がぼーっとして膜がかかったような感じで思考できない
  • 顔が突っ張ってしまって体に力が入らない

でした。

以前職場の部下でうつになった人がいたため、すぐ自分でうつだと気づいたのですが、重要な時期だったために仕事を続けていて、初めて専門医を受診したのは「もうどうにもならない」と思ってからでした。医師から3ヶ月の休暇をとるように言われましたが、忙しい時期に長くは休めないということで無理を言って1ヶ月にしてもらいました。

医師からは、「1ヶ月でも仕方がないが、引き返す(また休む)勇気を持って出勤してください」と言われていました。

1ヶ月後に復帰した際、前の部長と離れること、難しい対応のない部署という職場の配慮で、配置転換が行われましたが、「自分がいなくても仕事は進んでいくんだ」というちょっとした寂しい思いから、この異動後まもなく燃え尽きたような感じで起き上がれなくなってしまいました。3ヶ月の入院、その後のリハビリテーションと、約1.5年にわたる闘病生活の始まりです。

この時期の対処のポイント

  1. うつの症状に気づいたら、迷わず専門医を受診し、薬を処方してもらいましょう。集中力や気力の減退があり、以前のように仕事に取り組めない自分に対して焦りが募ると思いますが、服薬により症状は改善しますので、早めの受診が大切です。
  2. Bさんのように、仕事上迷惑をかけることへの罪悪感や、人から遅れるという焦りから、何ヶ月も休むことに抵抗を示す人を多く見かけます。けれども、そういう人はど休みに入っても仕事のことが気になり、実際にはそうすぐには心が休まらないものです。
    さらに、薬の効果が出てくるのにも時間が必要です。復職を焦ったために初めの復帰に失敗し、その後症状が悪化して休みが長期となるケースはよくあります。わずかに残っていた自信やエネルギーが打ち砕かれてしまうのです。
  3. 定年までの長期にわたるキャリアを考えた時に、この数ヶ月を焦ることにどれはどれほどの意味があるのか考えてみましょう。職場によっては休めばリストラの対象になるところもあるでしょうし、

    在職年数の短い方は、長期の休職が難しいこともあるでしょう。個人の事情によって異なるので一概には言えませんが、主治医の指示(休養の期間も含めて)に従い、まずゆっくり休養をとることが回復プロセスの第一歩です。
    うつ病かもしれない?と思ったあなた少し立ち止まってください

  4. 主治医の診断書が、たとえば「1ヶ月の休養を要す」となっている場合、1ヶ月後には復職しなくてほいけないというプレッシャーを感じ、期限が近づくと「心配で眠れない」などとかえって体調を崩す人を見かけます。診断書は、様子を見ながら書き換えられていくものです。焦る必要はありません。
  5. この時期、会社に申し訳ないという気持ちで、辞めることを考える人もいますが、思考力や集中力が低下した中での判断は、回復してから大きな後悔を生む原因になります。この時期に大きな決断は禁物です。

休職初期の状況

Bさんは毎週1回必ず通院をして、三環系、SSRIなど様々な抗うつ薬を試し、一時は抗不安薬を含めて7種煩の薬を飲んでいましたが、「なかなか薬が効かない、全然起きられない」という訴えが強く、在宅での療養に限界があったため、大学病院に入院をしました。
入院中、先生から「薬はあくまで自然治癒力を高めるものなので、自分の力を信じて行動しなさい」と言われました。入院していた3ヶ月間は、病院の中を歩いたり、同じ病棟の仲間と話をすることもできるようになりましたが、退院後は、近所の目が気になって外出がはばかられ、食事のときだけ起きて、後は布団にもぐりこんで寝てしまうという生活になってしまいました。

この時期の対処の大事なポイント

  1. 自分にあう薬、しかも自分にあう量がどれくらいかを知るには時間がかかるものです。新しいタイプの薬があう人もいれば、古いタイプの薬の方があう人もいます。
    薬を飲み始めてから効果があらわれるのにも日数がかかります。真っ暗闇の状況が一体いつまで続くのか、果たして回復するのかとても心配で、気ばかり焦る時期ですが、主治医の処方どおり服薬しながら根気強く様子を見ましょう。

    「この苦しみがいつまで続くのか」と思えば思うはど、皮肉なことにその思いから解放されないものなのです。「必ず回復する」と自分を信じてください。

  2. 現役サラリーマンが毎日を家で過ごすということは、本人にとっても、家族にとっても大きな環境の変化です。取り残されるという焦りや将来への不安で、「どうしてこうなったのか」について思いをめぐらしてしまいます。

    「上司との対立が原因」「職場環境に問題があった」など外的な要因に答えを求めることもあれば、「自分の力不足」「自分は気持ちの弱い人間」というように内的な要因に答えを求めることもあるでしょう。でも、因果関係を特定することは難しいものです。結論づけたり、関連づけたり、考え込むのをやめましょう。当時の状況では精一杯対処していたのですから。思い起こすこと自体つらいものです。

  3. 休職中に寄せられる上司からの連絡にどのように応じたらよいか、悩むことがあると思います。人と関わること自体が負担となる時期ですので、心配して下さっていることへの感謝の気持ちや、主治医の指示に従い療養するつもりであることなどを簡単に伝えることでよいでしょう。
    同僚や友人などからの気遣いの連絡をもらっても、返事をすることが億劫で、そんな自分を責めがちですが、良い交友関係は体調が回復すれば再開できるものです。気持ちの負担を感じる関わりは控えましょう。
  4. 当たり前のように読めていた新聞や本が読めなくなり、情けない思いにかられますが、それも一時的なものですので気にしないように。「したくないことは何もしない」という選択でよいのです。ただし、定期的な通院は欠かさずに行います。

求職中の状況

Bさんの妻は、同じ職場の異なる部署で働いています。Bさんの入院中、職場の同僚を通じてMDAの活動を知りました。MDAのバック・トウ・ワーク(復職)・キャリアセミナーは、参加に際して主治医の許可が必要となるプログラムですが、Bさんは退院後半年ほどしてようやくセミナーに参加できるレベルにまで回復しました。
一方妻は家族会に参加して、うつ病の家族に対する接し方を学びました。文字通り二人三脚のリハビリテーションです。
大学受験、高校受験を控えていた3人の子どもたちも父親を支えました。振り返ってみて、Bさんは、自分を支えてくれた大きな支援の中で、家族の支援が大きかったと語っていますが、Bさんの妻は、「つらくてたまらない」という夫の話を、時には食事のとき、時には夜近くの公園でブランコに乗りながら、耳を傾けて受け止めていました。

3人の子どもたちも、「母親には正直な気持ちを話してていいたようだが、「死にたい」など愚痴はかり言っている父親に対して、面と向かっては一切文句を言わなかった」ということです。

この頃、Bさんにはようやく自分から行動を増やしてみる気持ちが湧いてきました。家庭においても、妻が出勤している間、洗濯干しから始まり、犬の散歩、お米とぎ、晩御飯の仕度などどんどん活動が増え、妻が「これだったら毎日家にいてほしい」と思うほどだったそうです。

この時期の対処のポイント

  1. 日常生活の中で活動への意欲が湧いてきたのは、着実な回復の兆しです。犬の散歩や、スーパーへの買い物など、調子のよい時を選んで外出を始めてみるのはよいことです。
    外出でなくとも、それまで時間があればやってみたかったこと(たとえば音楽や絵画など、思い出してみて、生活に取り入れるのもよいでしょう。目立った活動でなくとも、これまでただばんやり見ていたテレビ(あるいは読めなかった字幕)が見られるようになるなども回復を示す変化です。
  2. Bさん夫妻は、振り返って、もっと早く活動を開始していたら、復職までの時間が短くてすんだのではないかと思うことがあります。どの時期までが休養で、どこからが活動を取り入れる時期なのか分からなかったということです。

    いつからが活動期という目安は明確ではありません。大きくとらえれば、休職に入った暗からすでに復職に向けてのリハビリテーションは始まっているのですが、「その時の自分の体調と環境( たとえば自′分を支えてくれる人たち、気候、自宅の立地など)に照らして、ちょっと頑張ればできそうなことがあればやってみる」のがリハビリテーションのコツです。

    たまに車や他の交通手段を使って遠出をして気分転換を図る人を見受けますが、スタミナが充分でない時の無理な計画は控えましょう。

    帰宅後体調を崩すことがよくあります。小さなステップの積み重ねが回復プロセスなのです。回復の仕方は個人差が大きいものですので自分のペ耶l- スを大事にしましょう。結果として復職までにかかる時間は、自分にとって必要な時間であると考えることも大事です。

  3. うつの回復プロセスは単純な右肩上がりではなく、よいとき、悪いときを繰り返します。今日は調子がよいなと思っていても、翌日は朝から憂うつだったりするものですが、悪い時の底は少しずつ上がってくるものです。
  4. 調子がよいと、薬を飲むのをやめてしまう人を見受けますが、再発防止の観点からはとても危険なことです。主治医の指示に従い、治療を続けましょう。

Bさんの休職後期の状況~復職に向けて

Bさんは休職していた間、会社から辞めてくれと言われるのでほないかと恐れていましたが、人事担当係長が3ヶ月に1度、病院での診察に同席し、状況を上司に伝えてくれていました。Bさんの方も、病院の話やMDAでの活動状況を連絡していました。

Bさんは再発が怖く、完全に治ってからにしたいという気持ちで復職に踏み切れずにいましたが、主治医が「もう大丈夫」と言ってくれたことと、MDAのスタッフから、「とりあえずやってみて、だめならまた休めばよいのでは」と言われたことで気持ちが楽になり、職場と相談して、リハビリ出勤利用とともに降格を申し出ました。

会社ほ初めてのケースとして降格を認めてくれた上、2ヶ月間のリハビリプログラムを策定してくれました。最初は1日2時間を週3日くらい、次の週は半日を1日おきなどと徐々に延ばしていき、復帰直前は週五日入時間をこなすことができるようになりました。業務の内容も、初めは軽作業から、徐々に負荷のかかる仕事へと配慮されました。

この時期の対処のポイント

  1. 休職期間中に職場とのコンタクトを継続するかどうかはケースにより異なると思います。Bさんの場合は、定期的に人事が関わってくれたことが安心感につながったようですが、会社との連絡自体がプレッシャーになると感じる方も多く、診断書の提出など書頬のやり取り以外は特に連絡を取らず、復職可能な段階となってコンタクトを再開するケースも多く見られます。
  2. 復職の話が見えてくると、「今回は戻れるだろうか」という不安が強まり、体調を崩すことがあります。復職を不安に思う気持ちは当然ですが、不安が強すぎて眠れないなど、症状が再燃するようであれば、まだ早いというサインかもしれません。主治医など専門家に遠慮せず相談しましょう。
  3. リハビリ出勤などの制度がない会社も多いと思います。その場合は、復職トレーニングとして何度か模擬通勤を行うことが望まれます。
    久々のスーツ着用、通勤ラッシュの経験のはか、勤務地の変更を伴う場合は通勤経路や通勤時間の確認も必要となります。会社近くの喫茶店で一息ついて帰ってくるといった体験は自信につながります。出勤時の起床時間に生活リズムを合わせていくことが大事です。
  4. 「うつの完治」が復職のタイミングかという質問をよく受けます。まず、主治医が復職可能なレベルまで回復したと見る時がそのタイミングにあたりますが、本人の復職への意欲や受け皿である職場環境も重要な要素となります。
    復職後しばらく、服薬を続けながら働い働いている方ほ多いものです。調子が悪い時でも休まず働けるというのが1つの目安です
  5. 自分に自信が持てないために仕事に不安があるのはもっともです。けれども、自信の回復は、頭で描いてできるものではなく、実際に仕事をこなしていくことによって、また職場の同僚に受け入れてもらっているという感じを持つ中で伴ってくるものです。

Bさんの場合の復職直後の様子と状況

Bさんは、2ヶ月間のリハビリ出勤を無事終了し、新しい部署に配属となりました。Bさんの場合は、休職の発令が職員中に知れ渡っており、初めは周囲の人がどう思っているのか気になりもしましたが、「出てこれて本当に良かったね」と声をかけてくれる人や、中には手を握って本当に喜んでくれた人もいたとのことです。

再発の不安もあるようですが、復職後も月1回の通院とカウンセリングを継続し、復職して1年以上経った現在、休まず勤務しています。この間、当初7種額飲んでいた薬ほ2種頬となり、量も徐々に減ってきています。

この時期の対処のポイント

  1. 復職したら、これまでの遅れを取り戻そうと頑張ってしまうケースをよく目にします。これは自分にプレッシャーを与えるだけです。数ヶ月の休みでも、復職当初は心身ともにとても疲れます。

    毎日の出勤で生活リズムが安定してくれば体力は少しずつ備わるものですので、初めの1ヶ月は体慣らしと割りきりましょう。軽い仕事から始めて徐々に負担を増やすのがソフトランディングのポイントです。

  2. 周囲の人が忙しそうに見え、ぼんやりしている自分がどう見られているのか、不安になり、疎外感を感じやすいものですが、人の目を気にすることは得策ではありません。

    自分だけ進歩がないように思うかもしれませんが、復職後、毎週毎週の自分の仕事や生活を振り返りましょう。スタミナがついてくる、だるさがぬけてくる、文字やデータが頭に入ってくるなど、着実な歩みが見えてくるものです。

  3. ある程度課題があった方が張りが持てるという人は、その内容について上司と相談してみましょう。ただし、焦らなくとも、上司から見て休まず安定して働いてもらえそうだと見えてきた頃には、嫌でも仕事が任されるものです。逆に仕事の内容や期限が自分の体調にはきついと思う場合にも、思い切って上司と相談してみましょう。
  4. 復職後、仕事が忙しいなどの理由で、薬を自己判断でやめてしまう人をしばしば見受けますが、再発リスクの観点から見てとても危険です。
    主治医は、本人の体調を見ながら徐々に薬を減らしていきますので、復職後も定期的な通院と服薬は重要です。
  5. 自分がうつで休んだことを同僚に話すのか、話すとすると、どのように伝えるのかという「開示」の問題はとてもデリケートな問題です。
    上司は当然事情を知っているわけですが、同僚が偏見を持つことを回避するために、「胃腸の疾患」などと別の理由を話す人もいますし、チーム全員に理解を求めたいとして、うつであったことを話す人もいます。復職する職場の理解度や自分の気持ちなどをよく整理して、慎重に対応することです。

    上司から体調について聞かれた時には、業務への影響に焦点を絞って話すのがポイントです。「主治医から、当面は業務量や残業時間の配慮が必要と言われており、その範囲で働くことは大丈夫です」、「朝は気分が落ち込みがちですが、業務の遂行には影響ほありません」など、上司が本人の業務内容を決定する上で参考になるような、またその範囲であれば仕事を任せて大丈夫との印象を持てるような話し方が望まれます。

    「思考力や集中力がまだ戻りません」とか「睡眠が充分にとれません」など症状だけを伝えると、業務を任せて大丈夫なのだろうかと不安を残すこととなります。

復職後のキャリア再形成に向けて休職期間に得られるもの

サラリーマンとして生活していますと、半期ごと、もしくは在籍期間ごとの成果を目指し、同僚や他社との短距離走に追われているように感じるものです。

けれども、在籍する会社が変わることこそあれ、入社以降退職まで、サラリーマンのキャリアははほぼ40年。これはフルマラソンに該当するのです。初めの10 km、20 km、30 km以降と、それぞれの区間には様々な課題があり、苦しみを伴うものですが、マラソンランナーは体調をみながら必ず給水ポイントに立ち寄り、自分のレースを展開しています。

それぞれの区間の走りほ次の区間の走りにつながります。無理な走りは最悪、レースの棄権をもたらしてしまいます。サラリーマン生活も同じです。入社以来、初めの10年は若さもあって1人の力で突っ走ることができるかもしれません。しかし、その後ほ結婿、育児など家庭での役割が増えるはか、役職につくなど仕事上の責任が増し、一方、体力は年齢相応に衰えるものです。昔のような馬力がなくなったと思うのは当然で、働き方を自分の体調や環境に応じて変えていかないと、突然失速してしまうということがあるのです。

体調がすぐれずに崩す時、それは、それまでの走りがそのままでは続かないという、体のストップサインです。休職期間は、長期のキャリアというフルマラソンにおいて、給水ポイントに当たります。次の走りのためのブレイクなのです。

このブレイクにおいて、それまでの自分の走りを振り返り、今後の走りを考えることがとても重要です。たとえば、自分の性格やそれまでの働き方、苦手な場面など、自分についての「気づき」がどのように得られるかがポイントです。

Bさんは、「昔だったら仕事にかこつけてうちにも帰らず、ストレス解消と称して残業がなければマージャン、たまにまっすぐ帰ったら、残業している妻を待ってご飯を作ってもらう生活をしていた」そうですが、休職して改めて家族のありがたみを感じました。仕事一色の人生ですと、そこで行き詰まったら逃げ場がないと思ってしまいますが、「これからは家族を大切にしながら働こう」と思いを新たにできたことは、ストレス対処の観点からも大きな収穫です。

「今までは、どうしても人に助けを求めることができず、自分で抱えてしまっていた。今後は無理しないで、わからなければ人に聞くようにしよう」「自分は細かいことが気になる性格で、仕事の要領が悪い方であった。与えられた時間と持てる力の範囲でできるところでよしとしよう」「人の目を気にしすぎることをもうやめよう」、「休職当初は病気になる自分がだめな人間と思っていたが、体調を自己管理する必要性を感じた。これからは、体調にも気をつけながら仕事をしていこう」…これらもこれからの働き方に向けての素暗しい気づきです。

復職後のキャリア再形成を考える上で、一番重要なのは、肯定的なセルフイメージ(「自分は何とかやっていける」という感じ)です。休んでしまったことで自信を失い、「また自分はだめになるのではないか」と思う人が多いのですが、そのような否定的なセルフイメージそのものがキャリア再形成を阻んでしまいます。休職の間、働いていてほ気づかなかった様々なことが見えてくることでしょう。

そのひとつつひとつが自分の財産になるのです。どんな人にも強み、弱みはあるものです。復職後、少しずつ仕事を積み上げることによって「何とかやっていける」という、ささやかながら肯定的なセルフイメージを築いてください。勝つことだけがマラソンの目的ではありません。自分の走り、あるいは歩みを大切にと願います。