うつが起こる仕組みの解明

では、うつの心理的、生理的メカニズムについてざっとまとめたいと思います。不健全な家族パターン、とくに人生最初の六年が、その後の人生でその人がうつにおちいるかどうかの重要な鍵となります。

そのおもな原因のひとつは、幼いときに、怒りをうまく建設的に表現するかわりに、怒りを抑圧することを教えられることです。それほど重要ではありませんが、遺伝という要因も考えられます。

強迫的人格(完全主義的)、演技性人格のダイナミクスについては、前にふれました。これらの要因のすべてがうつの土壌となり、そこヘストレスが加わるのです。

一時的にグリーフ反応はあってもうつにおちいることなく乗り切ることができるでしょう。しかし幼児期の環境(もしかして遺伝も) 要因を持っており、怒りを抑圧することを学んだ人は、うつをひきおこすまで肥大してしまうのです。そして前述した生理的症状などが出てきます。

学習によるパターン化

うつは学習によってパターン化します。親がうつだと子どもも同様に、うつのライフスタイルを発達させるようになります。

生き方として、ストレスの対処法として、うつを学習するのです。うつの家族は、次世代にもこのうつのライフスタイルをひき継がせます。子どもたちの人格も、親に似てきます。

脳には気分を司る大脳辺縁系と呼ばれる部位があり、上機嫌、意気消沈、安定した気分などをコントロールします。脳内アミンは神経細胞間のシナプスを行き来する神経伝達物質です。こかつこうした伝達物質( ノルエビネプリン、セロトニン) の枯渇がうつの一大要因であると考えられています。

ためこまれた怒りはこうしたアミンの枯渇をもたらし、その結果、神経系が正しく機能せず、不眠、疲労感、食欲の変化、動惇などがおこります。子ども時代を、否定的で、慢性的にうつ状態の親とすごした子どもも、同じような態度を学習します。

よって、彼らは普通の人以上の怒りを持ち、脳内アミンはほとんどいつも枯渇しているようになります。ぜひとも私たちの子どもを、うつのライフスタイルのなかで育てないようにしましょう。

他人を操作するためにうつになる人

ときには、うつは人に対処する手段となります。実際、うつは人を操作し、自分の思い通りにするためのパワフルな手段となりえるのです。伴侶を操作するためにうつを使う人もいます。子どもは感情を分かち合うよう奨励されるべきですが、悲しいふりをして人を操作するやり方に、あまり左右されないようにしましょう。

自分で自分を罰する人

うつは、自分で自分に歯向かう病です。ですからうつを感じ、みじめになると、それで当然だと思ってしまうのです。そして、自分で自分を罰してしまうのです。もし罰を受けるべき行為をしたとしても、それは神が与えるものであって、自分でもたらすものではないことを知る必要があります。神は何とか彼に教えをさとそうと思うかもしれませんが、それは神がすることであって、自分ですることではないのです。

つら い思考 が エスカ レート す る人

うつになると、どんどんつらい思考に向かっていきます。希望はますますなくなり、無価値感、罪悪感を強めていきます。自己批判が強くなり、自己評価も低くなります。

そしてうつに2なると、全般的につらい思考パターンが現れてきます。不適当な思考はより不適当な思考を生10むという循環を招くというわけです。この思考を変えることはできるのでしょうか?

カウンセリングを受けている人は、自分にこく言い聞かせるメッセージを変えることでずいぶん気分が楽になっています。自分をそんなに酷し便せず、批判的にならないことが大切だと感じています。

うつの人は、20人からほめられても、たった1人に批判されると、20人からほめられたことを忘れてしまいます。これを逆にして、人からの肯定的な評価を重要視するようにし、それほど大切でない、たまにしか出ない否定的な意見ばかりに気を集中させないことが大切です。

うつになって得た報酬に味をしめる人

子どもは子ども時代にどんな報酬を与えられ、しつけを受けたかによって反応の仕方を学びます。

たとえば、うつになると学校を休むことが許されて、余分に関心をかけてもらえることを学んだ子どもは、うつをライフスタイルとするようになります。うつに不適当な報酬が与えられたので、それが強化されたのです。

夢をみないとうつになる

うつの最大原因のひとつが、ありふれた疲労です。身体的、精神的に頑張りすぎると、うつがおこります。

よく学生が徹夜して勉強したり、幾晩も連続で5~6時間の睡眠ですませようとしたりします。催眠のニーズを無視するのは危険です。私たちの体は平均して8時間の睡眠を必要とするのです。

健康を保つには、夢をみる時間も必要です。大人はみな寝ている間、90分につき約20分は夢をみています。

しかし、途中で起きることがないかぎり、その夢を覚えてはいません。3晩夢をみなければ(睡眠は十分でも)、大半の人がうつになり、また妄想的になるでしょう。では、どの脳内物質が人に夢をみせるのでしょうか?

最近の研究では、ノルエビネフリンとセロトニンが夢の開始、維持を司ることがわかっています。夢では、現在の無意識の衝突がすべて象徴化されます。どの夢にも象徴的な意味があります。幸福を選ぶのなら、健全な睡眠パターンを選ばなくてはなりません。睡眠、夢は健康と命を保つのに必要なのです。

思春期のうつ

成人は、うつになると行動でわかります。しかし思春期の子がうつになっても典型的なうつの現れ方をしません。

そのかわり、嘘をついたり、不法薬物に手を出したり、性的にまずい行動をしたりします。ある10代の女子の例を見てみましょう。

彼女は最近まで極めて健康な子でした。娘がうつにかかっていると知らされた母親は、娘に性的行動や薬物の乱用に制限を設けるようにと言われました。娘はセラピーを受け、抗うつ剤を服用すると、数週間のうちに、以前のような健康な子に戻りました。

数多くの思春期の子が同じょうなことで治療を受けています。しかしこの治療は、甘やかされて、小さいころから好き放題してきた子にはうまくいきません。親が離婚したあと、子どもがうつにおちいることはよくあります。

子どももまたうつを行動化します。10代のうつ、自殺はアメリカで過去40年の間に300% の増加を見せています。これは家族崩壊のためです。親の離婚に関する子どもの怒りを話し合い、そして親を許すことができれば、子どもは良くなります。また、父親の死後、グレたり薬物に手を出したりする子は、父の死について、感情を話し合うことができ次第、改善されていきます。

産碍期のうつ

女性が出産後(とくに第1子の) にうつになることはよくあることです。この産後のうつは、とくに出産に関する複雑な感情を抑圧している母親にもっとも多く見られます。

複雑な気持ちを持つことは正常です。赤ん坊を産んで、一生親となることは大変な責任です。しかし、赤ちゃんを産むことの恐れが母親にとって受け入れがたい場合、そしてこの感情を抑圧すると、うつがおこります。こうした恐れを素直に認めて、夫や友人に話をするほうがはるかに簡単ですし重要です。母親がこうした感情を話し合うことができれば普通、うつは消えますが、抗うつ剤を必要とする場合もあります。ただし、抗うつ剤は、妊娠中、授乳中は普通は避けるべきです。

中年期のうつ

中年期にうつがおこることはよくあります。自分で設定した目標にけっして到達できないと感じている強迫的な人には、とくに顕著に見られます。これに気づいた彼らは自分自身に非常に腹を立て、うつになります。それとは逆に、目標を達してうつにおちいる人もいます。

目標に達しても不安定に感じているからです。彼らのつらさは外的要因でなく、自分とつき合って生きなくてはならないところから来ています。彼らはよくうつになって、つらさを罪のない伴侶やだれかのせいにします。

中年期には多くの喪失がおこり得ます。たとえば研究によると、中年女性の最大の恐れは、美貌が衰えるということです。その次の恐怖感は、伴侶に先立たれ、1人になってしまうのではないかという恐れです。こうした恐れのほかに、女性は子どもが家を離れて独り立ちしていくこと、子離れもあります。

また、以前はあった夫からの関心がなくなるという喪失に反応しても、うつになるのです。閉経にともなうホルモンの変化によって、うつになる場合もあります。データははっきりしませんが、女性によってはエストロゲンなどのホルモン療法が有効な場合もあります。

男性も中年期にうつになり、これを不適切な性的行動で表すことがあります。自分がまだ若いことを確認するように、若い女性にひかれたりします。これは深刻な不安定さ(自分が老いていくのではないと信じこもうとしている) のためです。

中年期のうつは性的行動に現れることが多く、または飲酒量が増える、体重増加、さらに前述したうつの諸症状として現れることもあるでしょう。

加齢とうつ

高齢化すると、個人の人格が際立ってきます。そしてこれまでもずっとうつの症状があった人は、加齢とともにいっそううつの症状がひどくなります。村照的に、人生を肯定的にとらえ、ありのままの自分に自己評価を感じている人は、成長し続けるために加齢とともにいっそう満ち足りて、賢くなっていきます。

基本的ニーズ(自己評価、他者との親密さ) は以前にもまして満たされることでしょう。一方、年をとると、脳細胞の一部が減少していくために差恥心が減っていき、罪悪感が増えることが問題となります。

老人はまた、孤独になるためにうつになることがあります。伴侶を失って、落ちこむこともよく見られます。この場合、同性の友人たちが大きな支えになります。

仕返しの手段としてうつになる

多くの人が、仕返しのための手段として、うつ、怒りを吐き出します。こうしてある程度の怒りは出せますが、しかし他者もみじめにしてしまいます。慢性的なうつの伴侶と暮らすことは相当に刑罰的ですが、これはその人の無意識の仕返しの場合があります。こうした患者には、私たちはほかの方法で伴侶に接する方法はないか考えてもらいます。そして怒りと向き合い、伴侶を許し、それによってうつを晴らすようにと薦めます。

人の関心をひくためにうつになる

うつを、人の関心をひくための手段として使う人がいます。これはすでにふれたようにうつで人を操作するのと同じです。

実際、うつは最初は人の関心を集めますが、しかし本人に舞い戻ってきて、やぶへびの結果に終わります。本人と向き合おうとする家族や友人がイライラするようになって、いっそうのトラブルをひきおこします。関心をひくためのうつは、伴侶や友人の喪失につながることが多く、さらなる深刻なうつにおちいることになります。

仮面うつ

1950年代に一般に知られたのが、この「仮面うつ」です。これは、病理学的には何の根拠も持たないように見える体の不調をいいます。

この状況には抗うつ剤が効果的です。前述したように、自分には何ら感情の衝突はないとして自分をごまかすために、感情の衝突を身体の衝突にすりかえます。これは面子を保つ防御メカニズムです。こうした人の多くが、筋肉痛、咬合不全、慢性疲労感、内耳障害、多発性硬化症などの不安を訴えますが、根拠が見られません。

生活の変化は想像以上のストレスとなり、うつを招く

自分がなぜうつなのか理解できないある若い男性です。しかし、よく話を聞いてみると、彼は前の年に多くの変化を経験していたのです。

実際、彼が経験した人生の変化を、「変化適応ストレスチャート」で加算してみると、なんと400以上になりました。研究者は、人生の変化のポイントが年間で合計200以上の場合、精神障害の深刻な増加につながると言っています。

また、ストレスをおこすひとつの原因に、喪失のひとつである引越しがあります。何度も引越しをさせられる子どもは、うつになることがよくあります。

もっともストレスをおこす変化は、配偶者、親、その他の親しい親戚との死別です。そして、死亡率は死別の1年目にぐんと高くなります。しかし、私たちが全米中の治療した数千件のケースでは、愛する配偶者の死よりも離婚のほうがより高いストレスとなっているようです。

子どもにとっては、親の死がもっともつらいものです。明らかなうつになったり、してはいけないことをしたり、未練がましい行為などでそれが示されます。子どもが不安定であれば私たちはほかの方法で伴侶に接する方法はないか考えてもらいます。そして怒りと向き合い、
伴侶を許し、それによってうつを晴らすようにと薦めます。

うつを多角的に見る

精神疾患は、普通ひとつの要因のみでおこるのではなく、いくつかの要因がかかわっていることも多いのです。たとえば精神疾患の場合、遺伝的背景は重要です。

とりわけ躁うつ病(気分障害) の場合、血縁者のなかに同じ症状を持つ人がいる確率が高いと言えます。また、統合失調症(精神分裂病) の親を持つ子どもは、子どもがたとえ親から離れて育てられても、同じく統合失調症(精神分裂病) になる確率が高いと言われています。

次に人格の形成に影響するのは、環境です。子どもはときに控えめに、積極的に、ときに行儀よく、そしてときに粗野にしつけられるのです。たとえば、16歳の男の子がなぜ行儀が悪く、反抗的で、すなおでないのか、彼の親は頭をかしげます。しかし親は一度もしつけをしていなかったのです。

このなかには身体の健康に対する正しい知識も含めてもいいでしょう。大人も子どもも、体が不調だと感情的ストレスに耐える能力が低くなります。普通、心理的な問題にもっとも大きな影響を与えるのはやはりストレスです。ある人が遺伝的要素を持っていて、幼児期の環境も劣悪だったとしても、何らかの急性のストレスが生じなければ、心理的問題はおこらずにすむかもしれません。

遺伝と環境的背景は非常に重要です。これをないがしろにするわけにはいきません。しかし、これらだけを現在の行動の言い訳にするのも誤ったことです。多くの問題は、機能不全な行動ゆえにもたらされたのです。遺伝が要因と強調されるうつは、内因性うつと呼ばれます。これは内側から、生物化学的に、そしてもちろん遺伝的なことが誘因となっているということです。

環境が要因となるものは、神経症性うつと呼ばれます。これは子ども時代の無意識レベルの、未解決の葛藤からおこります。急性のストレスが原因とされるうつは、反応性うつと呼ばれます。つまり圧倒されてしまぅような問題のある状況がうつの原因になっているということです。

うつ患者の特徴

うつの人には、いろいろな共通した人格特徴が見られます。

  1. 心配症で悲観的なものの見方をする
  2. 何をやっても無駄、ダメだと感じる
  3. 自分に無価値感を持っている
  4. 過去にひたる
  5. イライラしている
  6. ものごとに集中できない
  7. 体を動かすことがおっくう
  8. 死の不安がある
  9. ものごとに興味がなくなる
  10. 朝起きるのがいやだ
  11. 食欲減少(普通は減少するが増加もする)
  12. 体重減少(普通は減少するが増加もする)
  13. 疲労感がある
  14. 手足が冷たい
  15. 眠れないことが多い
  16. ときどき睡眠が増える
  17. 朝早く目がさめる
  18. 性欲の減退
  19. 生理不順
  20. 自殺念慮
  21. しよっちゅう泣きたくなる
  22. ユーモアのセンスがなくなる
  23. 緊張性頭痛、動惇、感染症、胃腸障害がある
  24. 熱意が失せる
  25. 自分の体に現実感がない
  26. 他人に意地悪されていると感じる
  27. 人に過剰に期待し、かといって拒否されるのを恐れる。
  28. 人は自分に腹を立てていると(そうでなくとも) 確信する
  29. 他の家族員の怒りの対象となる

甲状腺機能低下症とうつ

甲状腺機能低下症がうつをもたらすことがあります。医師は長年の知識として、甲状腺の薬がうつに効くということを知っています。

低甲状腺症によってひきおこされるうつばかりでなく、他のいくつかのうつも含みます。甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH6)が効くこともあります。

うつは甲状腺に影響を与え、低甲状腺症の発症を促すことがあると、科学者は考えています。心と体は緊密に関係しあっていることはよく知られていますが、どちらが先に発症するかはかならずしも知られてはいません。しかし、感情的、精神的に成熟すれば、身体的な病気の大半は避けられると、私たちは信じています。

低血糖がうつの原因

低血糖は、今日強調されすぎており、低血糖について善かれた本が多く出版されています。疲労、うつ、その他ありとあらゆる病気の原因が低血糖とされてきました。

この考えについては、医学界で疑義を抱く人も多いのです。低血糖は実際に存在し、不安を高じさせ、既存の感情的問題をさらに悪化させますが、不安やうつの大半がそれで説明しきれるものではありません。

うつの原因かもしれない「低血糖症」

生体アミンのアンバランス

脳内アミン(とくにセロトニン、ノルエビネフリン)が神経細胞間のシナプスを行き来している神経伝達物質であることは前述しました。こうした神経伝達物質の減少はうつの一大原因と考えられています。この仮説を支持する土壌には以下のようなものがあります。

  1. ずっと前に、レザピンという薬物が高血圧の治療に用いられており、レザピンを服用していた人の多くがうつになったと報告されました。現在では、レザピンは脳内アミンを枯渇させることが研究室での動物実験などによって明らかになっています。
  2. うつの治療に使われる薬は、脳内アミンレベルを上げることで知られています。脳内アミンが正常レベルに達したとき、明らかにうつの多くが消えます。実験によれば、これらの薬物は過敏で、落ち着きがない状態をひきおこすこと、つまり気分を上げることもわかっています。
  3. 深刻なうつ患者の尿中には、カテコラミン代謝物(生体アミンが小さく分解されてできるもの)が少量しか見られないことがわかっています。
  4. うつには強力な生物学的要因があるという証拠に加え、心身症はうつがあるときにおこると言われています。たとえば、睡眠障害、食欲の増加・減退、性欲減退などが見られます。また、うつは代謝障害などの病気とも関係することもわかっています。これは、うつには生物学的要因があるという仮説を裏づけるものです。
  5. 脳内アミンのうち、アメリカでもっとも注目を浴びているのがセロトニンとノルエビネフリンです。これらアミンの研究から、うつはこうした脳内アミンの枯渇の結果おこるという理論が出てきました。セロトニンが枯渇し、パキシルのようなセロトニンのレベルを上げる薬に効果が見られる場合もあります。トフラニールはおそらくノルエビネプリンとセロトニンの両方のレベルを上げ、パキシル、プロザック、ゾロフトのような抗うつ剤との組み合わせでよく使われます。プロザック、ゾロフトを服用すると、体重が減少する傾向があり、やせすぎる場合は服用を中止しなくてはなりません。

内分泌のアンバランス

うつと内分泌障害に関連があることは以前から知られていましたが、最近の研究の結果、この関係はより明らかになってきました。

脳下垂体はAC H(副腎皮質ホルモン)、成長ホルモン、黄体形成ホルモン、、甲状腺刺激ホルモンなどを分泌しています。

視床下部は放出因子を分泌し、プロラクチこれを受けて脳下垂体が前述したホルモンの放出をひきおこすのです。さらに、視床下部からの放出因子はノルエビネフリンなどの生体アミンによってコントロールされていることが知られています。

もちろん、これはセロトニンと同じくうつの場合に枯渇することが知られている物質です。よって脳内生体アミンに乱れがあれば、うつがおこり、また内分泌異常がおこる可能性があります。これは正しいことが証明されてきています。

またうつの場合、血中コルチゾール( ストレスホルモン)レベルが上がることがわかっています。考えられるのは以下のことです。

コルチゾールレベルが上がると、抗体を作り出すリンパ球(白血球の一つ) が抑えられます。抗体が減少すれば、人はありとあらゆる病気にかかりやすくなります。つまり、ためこまれた怒りはノルエビネフリンを減少させ、これが視床下部からのACTH放出因子を増やし、脳下垂体からのACTHを増加させ、副腎腺からのコルチゾール放出を促し、リンパ球を減らし、抗体を減らし、あらゆる感染症にかかりやすくさせるのです。蓄積された怒りが主要な死因となるのです。

また、黄体形成ホルモン、成長ホルモンのレベルが下がることがあることがわかっています。性衝 動 の低 下 は 、 う つの場 合 によ く お こ る こと が 知 ら れ て いま す 。 これ は 、 性 ホルモンへの内分泌システムの影響によるものかもしれません。甲状腺刺激ホルモン放出因子が投与されると、うつの症状が一時的にやわらぐという興味深い報告もあります。こうしたデータはすべて、うつと、セロトニンやノルエビネフリンなどの脳内アミンの低下、そして内分泌障害の間には関連があるという仮説を支持しています。

電解質の障害とうつの関連

うつ障害には、よく電解質の異常が見られます。たとえば、ナトリウム、カリウムの障害が、うつ、および操の両方の患者に見られます。

この電解質の乱れ(障害) がうつをひきおこしているのか、それともうつの結果としておこつているのかは不明ですが、おそらく後者でしょう。電解質は、うつ要因であるノルエビネフリンなどの神経伝達物質の合成、保存、放出、不活性化に重要な役割をはたしています。

電解質の分布はいくつかの方法によっておこります。たとえば、ナトリウムの分配はコルチゾール、アルドステロンなどのホルモンに影響を受けます。そして、コルチゾールはまたノルエビネフリンなどの生物アミンレベルによって影響を受けます。最初にどちらが影響を与えるのかははっきりとわかっていません。電解質が感情障害とかかわっているという私たちの最終的証拠のひとつは、炭酸リチウムが感情障害の治療に劇的な作用を発揮することでもわかります。この炭酸リチウムのはっきりした電解質代謝への効果はわかっていません。

ウィルス感染を併発する

うつはよくウィルス感染症をともないます。ウィルスによる比較的軽度の呼吸器系感染症を持っている場合でも、気持ちが落ちこむことがあります。

これは身体的、生化学的レベルでのことです。一時的なウィルス性の疾患は、一時的なうつに似た症状をひきおこすことがあります。また前述したように、うつになると、ウィルス性疾患を含めたあらゆる感染症にかかりやすくなります。

 

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