深い悲しみに遭遇すると「うつ」になるのか?

人はだれでも、愛する人の死、大好きなペットの死、事業の失敗、婚約者からの婚約破棄、受験の不合格、車の事故で腕や脚を失う、不治の病にかかっていることを知る等々、大きな喪失や悲嘆を味わいます。いや重大な喪失を経験すると、それが癒されるまでに次に説明するようなグリーフ(深い悲しみ)の5段階を全部通ります。グリーフ反応はうつとは違いますが、グリーフの第2、または第3投階にあまり長くつまずいていると、うつになる場合もあります。

第一段階「現実を否認」
自分の身におこつていることを信じないことで、これは通常長くは続きません。

症例

5歳の女の子、ジェーンは、お父さんが大好きでした。ある夜、ジェーンと添い曝している間にお父さんは心臓発作をおこして、救急車で病院に運ばれました。ジェーンには「かならず戻るから」と言って出かけたお父さんでしたが、病院で死亡しました。そのことを聞かされたジェーンは数年間にもわたってその事実を否認し、父親の死後もクローゼットやベッドの下を探そうとしました。10代になってもジェーンは、ときに父親が部屋に入ってきて、やさしい言葉をかける妄想を抱いていました。彼女は否認の段階にひたりきっていたのです。そこから抜け出すためには、二年間(十四歳から十六歳)毎週の精神療法が必要でした。

第二段階「怒りがでてくる」
大きな喪失を経験するときに私たちにおこる反応の第二段階は、「自分以外のだれかに対する怒り」です。
たとえば、死別した人のせいではまったくないにしても、死んだその人に怒りを感じたりします。これは、親の死や離婚を経験した子どもにはかならずおこる、正常な人間の反応です。この段階では、こんなことを許した神に対する何らかの怒りを含みます。しかし、神への怒りは抑えてしまうため、普通気がつかないことが多いのです。
第三段階「怒りの対象が自分に向かってくる」

重大な喪失が受け入れられ、神、その他の人たちへの怒りが出たあとは、かなりの罪悪感を感じるようになります。この段階では、何でも自分のせいだと考える傾向があります。「あと知恵」はつねに「見通し」より良く、「ああすればこの喪失はおこらなかっただろうに」という思いを禁じ得ないのです。

怒り、恨みをすべて内側に向けます。神に自分のあやまちを告白して、完壁な見通しを持ち得なかった自分を許すのではなく、自分自身を恨みに思い、自己批判的な考えで、自分を糾弾し始めるのです。たいていの人はこの投階をすばやく通過( 1~2週間のうちに) して、第四段階に進みます。この怒りが内側に向かった状態に長くとどまると、グリーフはうつに姿を変え、セラピーでも数ヶ月かかるようになってしまいます。セラピーなしでは、うつのまま一生を送る人もいます。

症例

婦人は牧師の妻で、うつ、不安、自殺願望を訴えてセラピーにやってきました。血圧は上がるばかりで、危険な状態にまで達しています。彼女の父親は、彼女が精神科の援助を受けると決める一年前に亡くなっています。セラピーで、彼女は1年前の父の死のグリーフの第三段階でずっとつまずいていることがわかりました。父親に「さよなら」も「アイラブユー」も言わなかったことが罪悪感になっていたのです。

またあることで父親に腹を立てていたこともあり、死人に恨みを持っている自分をうしろめたく思っていたのです。私たちは人が死ぬと、その人の悪いことは忘れ、死人に怒りを持つという考えそのものがおぞましいとする傾向があります。彼女の内向した怒りは彼女をうつにしていたばかりか、心臓発作で死ぬ危険があるほどまでに血圧を上げていました。

彼女の精神科医は、ゲシュタルトセラピーよって開発された精神療法の方法。分析や解釈などをせず、「今ここで」の出会いを重視する。

よく用いられる技法に、2つの椅子を用いたチェア・テクニックがある。ゲシュタルトとはドイツ語で「全体性を持った形態」の意) のテクニックを使って彼女の亡くなった父親になり、彼女の中にとどまっているいろいろな感情や考えを全部吐き出すように援助しました。彼女は最初、自分自身の感情が恐いために拒否していましたが、精神科医はとうとう説得に成功しました。

はじめは大変でしたが、いったん始まると彼女の喪失感や愛情、怒り、罪悪感がたくさんの涙とともにどっと出てきました。20分後、彼女は1年間ためこんでいた全部の感情を出し切りました。1週間のうちに彼女のうつは晴れて、血圧も正常に戻り、現在もその状態を維持しています。

第四段階「真の悲しみが訪れる」
これはもっとも大切な段階で、かつ必要不可欠です。重大な喪失、逆転を体験する場合はつねに、男女ともにしっかり泣くことが大切です。私たちの文化は男性に、そしてある女性に、ストイックに感情を抑え、泣かないことで(葬式ですらも) いかに強いかを見せることを強いています。
父親の死に際して泣くのは、弱いからでしょうか? イエスキリストが、友人ラザルスの死を嘆いたのは、弱かったからでしょうか? もちろんそうではありません。重大な喪失に際して泣くのは、人間的、かつ神の目にかなっています。
深い悲しみを表出しないで蓄積してしまうと、うつになって、長年それを引きずることになります。思いきり泣いてしまえばよいのです! そうすれば、早く第五段階に移ることができます。
第五段階「癒されて意欲と喜びを取り戻す」
第五段階は、喪失という現実の否認、外側と内側に向けられた怒り、真のグリーフがなされたあとにもたらされる段階です。ここでまた、人生に立ち向かう意欲と喜びを再び取り戻します。
第一から第四までの段階が終われば、自動的におこる段階なのです。人間はだれでも、大きな喪失を経験したあと、五段階全部を通ります。友人との死別などの重大な喪失では、成熟した大人でも仝プロセスを超えるのに3~6週間かかります。こうした仝五段階のプロセスを知っているからといって、グリーフがおきないのではありません。
しかし、知っていればこの五段階をより早く、恐れも少なく過ごせるでしょう。だれでも人間はときに喪失による一時的な悲嘆の反応を経験するでしょう。もちろん人口の1% に見られる遺伝的な要素の強いうつの場合は除きますが。他の99% の人にとっては、結局のところ幸福は自分が選ぶものなのです!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください