ミトコンドリアの工場は膨大なエネルギーを生み出せますが、その工程は非常に複雑です。うまく稼働させていくためには注意点もありますし、工場のメンテナンスもしていかなくてはなりません。つまり、ただ何でもいいから食べて、呼吸していればミトコンドリア工場をフル稼働させられるわけではないということ。
では、何がポイントなのか?ミトコンドリアの主なエネルギー源、炭水化物や脂質をエネルギーに変えるには、植物に含まれる「ビタミン」「ミネラル」「ファイトケミカル」などの「微量栄養素」が欠かせないのです。
日本人の主食、コメの場合は、コメの主成分は糖質(炭水化物) で、この糖質は、腸でブドウ糖に分解されて取り込まれます。その取り込んだブドウ糖をミトコンドリアでエネルギーに変えるには、工場のスタツフとしてビタミンB1が必要です。
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ところが、コメは精製して白米にするとビタミンBlが取り除かれてしまいますから、ミトコンドリア工場は稼働しません。だから白米だけをガツガツ食べていたら、「解糖系」しか利用できないのです。スイーツも同様です。
砂糖も小麦粉も精製されていて、お菓子やケーキにはビタミンB1はほとんど含まれていません。甘いものを食べるとすぐに元気になれるのは、糖を分解するだけでエネルギーが作れる「解糖系」が利用されるからです。ただ、少量のエネルギーしか生み出せないため、すぐにお腹が減ってしまうのです。
要するに、小さな工場「解糖系」だけでエネルギーを生み出そうとするかぎり、餓鬼のようにガツガツと食べ続けなくてはならないのです。でもこれでは体に負担がかかりますし、結果的に心に余裕も生まれません。
よく知られているのは、「血糖値」との関係でしょう。精製した糖は小腸から一気に吸収されるため、血糖値が一気に上がり、これが日常的に繰り返されると血管に負担がかかってボロボロになっていきます。血中の糖を細胞に届けるには、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンが必要であり、高血糖状態が慢性的に続けば、インスリンの分泌も過剰になり、やがて、すい臓にも負担がかかってきます。
こう見ていくと、糖尿病と呼ばれる病気や、その延長上にあるメタポリックシンドロームは、「解楯系の使いすぎ」に問題があると見えてきます。逆に言えば、ミトコンドリアさえしっかり働いていれば、血液中の糖も十分に活用することができるということです。そうなれば結果的に代謝が上がるため、肥満やメタボの問題が改善されやすくなるわけです。代謝が盛んな若いころは、すばやくエネルギーが生み出せる「解塘系」にある程度はたよっても問題ありませんが、年を取って代謝が落ちてきたら、エネルギー効率のいいミトコンドリアの工場を稼働させたはうが、体に負担はかかりません。それが健康長寿のカギと言えるのです。