ミトコンドリアの工場の規模が大きいのは、酸素処理の工程が複雑であることに加え、利用している原料の違いなども大きく関係しています。糖のほか、タンパク質や脂質など、細胞に取り込んだ栄養素をすべてエネルギーに変えられる高度な処理機能を持つからです。
まず、ミトコンドリアに取り込まれた栄養素は「TCA回路」という渦のなかをグルグルと回り、様々な種類の有機酸に変化する過程で、水素を含んだ「NADH」という物質が取り出されます。このNADHが次の「電子伝達系」に運ばれると、電子が取り出され、5つほどある関所(複合体Ⅰ~Ⅴ)に次々と伝達されていきます。
食べ物に含まれていた水素は、この電子が伝達される過程でようやく放出され、細胞の内部に蓄積されます。別経路で運ばれてきた「酸素」が水素と結びついて水に変化するのは、この電子伝達系の最後の局面です。こうして懸案だった酸素処理がすんだあと、たまった水素を利用することでエネルギーが生み出されます。
ミトコンドリアではこうした複雑なプロセスを経て、解糖系で生み出されるエネルギーの、じつに18倍ものエネルギーが生産されます。エネルギーは、ATP(アデノシン三リン酸) という電池に蓄えられ、必要に応じて消費されていきますが、解糖系は3個の電池(3分子)しかエネルギーが生み出せないのに対し、ミトコンドリアが生み出す電池はじつに36個(36分子)しかもミトコンドリア工場は、1つの細胞のなかにかなりの数が存在しています。
平均300個、場所によっては数千にも及びます。要するに、ミトコンドリア七合体することで細胞そのもの、生命そのものが飛躍的に進化したわけです。私たちの体を構成する細胞内では、解糖系という「小さなエネルギーを生み出す工場」と、ミトコンドリアという「大きなエネルギーを生み出す工場」の、規模の異なる2つの工場が動き続けていますが、莫大な活力が生み出せるのは、ミトコンドリアのほうです。
そう、このミトコンドリア工場をしっかり賢く活用すれば、飛躍的にエネルギー代謝がアップするのです。そうなれば、たくさん食べなくても長時間動けるスタミナがつき、疲れない体に変わり、よりエネルギッシュに生きていけます。
すると、心にも余裕が生まれ、集中力だって、思考力だって増すでしょう。逆に、ミトコンドリアがうまく使えないと、せっかく摂取した栄養素がうまく活用できないため、疲れやすく、すぐにスタミナがなくなり、糖尿病をはじめとする生活習慣病やメタポリックシンドロームなどになるリスクが高まります。こうしたすばらしいミトコンドリア大工場を、十分に使いこなせているでしょうか?
じつはそれを叶える秘訣も、「植物の食べ方」にあるのです。