偉大なミトコンドリア
腸の浄化というこのサイトからは少し話しがそれてしまいますが、私たちの体に常在している無数の微生物(菌、ウィルス)には、病気を引き起こす原因になるもののほか、腸内の善玉菌(ビフィズス菌)のように、体の調子を整え、健康を維持するのに欠かせない存在も多くいます。
いや、病気を引き起こす悪玉菌やウィルスにしても、暴れる理由があるから暴れているだけで、その原因は、宿主である私たちが作っています。要は、悪玉菌たちは、生き方のバランスが崩れていることを病気になることで教えてくれている。そう考えれば、悪いものが存在することの意味も見えてくるでしょう。
私たちは「目に見えない存在」に助けられて生きているわけです。でもそうは言っても、病気や体調不良ばかりでは体が持たないのも事実。やはり本来は、そのつらい状態の対極にある「心地よさ」や「快適さ」を感じていくことが必要でしょう。それには、細胞が元気でなくてはなりません。細胞が元気だということは、栄養補給と酸素補給、つまり「代謝」がうまくいっている状態だということ。その「代謝」のカギを掘るのが、「ミトコンドリア」です。
ミトコンドリアとは、細胞内に存在している「エネルギー製造工場」だとたとえるとわかりやすいかもしれません。この工場が働いてくれているから、私たちはいま、こうして生きている、元気に活動することができるのです。「食べること」と「呼吸すること」。「生きるための土台」であるこの2つの働きは、じつは「ミトコンドリアの働きそのもの」でもあるのです。
猛毒「酸素」をエネルギーに変換
酸素を取り入れて、エネルギーに変えるこれが「呼吸」です。いまでは多くの生物が呼吸をしますが、酸素は、その分子構造が非常に不安定であり、周囲のほかの物質から電子を奪って「酸化」させてしまう働きがあります。
「酸化」とは、生物にとって「老化」や「死」を意味します。そう、酸素は、呼吸をおぼえる前の原始生物にとって、恐ろしく有害な物質なのです。実際、原始の地球は、大気中の酸素濃度が圧倒的に低かったこともあり、誕生した菌たちのほとんどは、嫌気性菌(酸素を嫌う菌 だったと言われています。
そんな酸素が、なぜ多くの生物にとって、なくてはならないものになったのか?きっかけは、まだ原始の細胞が分裂を繰り返していただけの20億年ほど前のこと。太陽の光からエネルギーを生み出す「光合成菌」が繁殖することで、地球の大気中に、彼らの排泄物である「酸素」が徐々に充満していき、その結果、多くの嫌気性菌は、生存の危機に瀕しました。そこに登場したのが、酸素をエネルギーとして好む「好気性菌」です。この好気性菌が繁殖する場所は酸素が少なくなるため、酸化に苦しむ嫌気性細菌たちが集まるようになり、やがて、その好気性菌と同化するものまで現れました。
それはつまり、「好気性菌に栄養を分け与える代わりに、酸素処理を委託するという取引きが成立した」ということでしょう。ただ、取引きと言っても、成立しなくて困るのは、宿主である菌たちのほうです。酸素処理ができなければ生きていけませんから、自分たちがせっせと取り込んだ栄養素をたっぷり渡して厚遇したはずです。
なぜこう言えるかというと、細胞内に棲みついた好気性菌たちは、いつしか生物としての独立性を失い、嫌気性細菌の1つの器官と化してしまったからです。同化するくらいですから、よっぽど居心地が良かったということでしょう。この同化した器官こそ、現在、私たちヒトの細胞内にあるエネルギー製造工場、ミトコンドリアだと考えられています。ミトコンドリアは、もとは外にいた「生き物」だったのです。